ベクター?誰それ、俺真月   作:野球男

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こんにちは。
Ⅳ・真月・シャークvsクラゲ先輩 4となっております。

忙しさを言い訳にするつもりはありませんが…忙しいもんは忙しい。
私自身、安定するまではしばらく投稿ペースが乱れるかと思われます。
それでは、どうぞ。


第111話

「シャーク‼」

 

シャークが起き上がってこない…‼

最悪の可能性が脳を過る。

あの男はシャークの身体の自由を奪う為、毒をシャークに打ち込んだと言っていた。

だが、その毒が致死性のものではないとは言ってはいない…‼

 

「ぐっ…‼」

意識はまだある。

だが…手や足に力が入っちゃいない。

このままでは…‼

 

 

 

心配気な声を出した真月とらしくもない顔をしたⅣが俺の側に寄ってくる。

くそ、何をもたついてやがる‼ 動け‼ 動けよ、俺の身体‼

Ⅳと真月があんだけあったライフを減らす為にどんだけ頑張ったと思ってんだ…‼

「ハハハハハッ‼ もはや立つことすらままならないか。いい姿だな、サメ野郎‼ そうやって浜に打ち上げられたみたいにへたり込む姿はお笑い種だぜ‼」

 

俺を馬鹿にした言葉がクラゲ野郎の口から聞こえてくる。

「チッ…‼ おい、クラゲ野郎‼ 俺が代わりに凌牙もターンをする‼」

「あぁん? 何言ってんだ。お前のターンは2ターン先だろうが」

Ⅳの提案を奴は一蹴する。

 

「…ッ‼」

「‼ シャーク、動かない方が」

そうやって制止しようとする真月の腕を掴んだ。

「手を、貸せ…‼」

 

 

 

「まだ、俺は終わっちゃいねぇ…‼」

俺とⅣが手を回し、寄りかかるようにしてシャークは立ち上がった。

「だが、そんな状態でどうする‼ 身体にまともに力が入らないお前ではデュエルはできねぇ‼」

「それは、どうだろうな…‼」

そう言い、不敵に笑った。

「いくぜ…‼」

「ああ‼」

「フン…‼」

 

「「「俺のターン‼」」」

 

 

 

「ドロー‼」

凌牙が力を振り絞り、デッキからカードをドローする。

奴の残りライフは3700。

元のライフが12000だったとはいえ、そのライフは通常のデュエルによる初期ライフとほぼ同等。

凌牙にはこのターン耐えてもらい、次の俺のターンで…と言いたいところだが、凌牙の体調はかなり悪い。

加えて、相手のフィールドには攻撃力3000のシーラカンス、2900のエンタープラズニル、2000のランスロットの3体。

タッグパートナーとはいえ、俺や真月は手札の確認をすることはできない。

 

「…?」

そういや、さっきのターン。

真月はカードを1枚伏せていたな。

一体何のカードを…

 

 

 

「………」

このターン、俺達が確実に勝つ方法が1つある。

シャーク・ドレイク・バイス…あのモンスターは墓地のモンスターを除外することで、モンスター1体の攻撃力を0にする効果がある。

奴のライフは3700。攻撃力2000のランスロットを破壊し、効果で蘇生、もう一度破壊すればライフは尽きる。

だが…俺達のライフは1600。

1000ポイント以下でなければ効果は使えない。

それに、モンスターも足りねぇ。

どうする…‼

 

「シャーク、デュエルに必要なものはなんだと思う?」

真月が唐突にそんなことを言う。

「俺はカードとカードの絆だと思う。フィールドのモンスターに装備魔法をつけるように、カードとカードを繋げていく。そうやって繋いでいけば、負けて悔しくて涙を流すことがあっても、いつか勝利に辿り着けると信じてる」

カードを繋げる…

そういや、真月のセットしたリバースが1枚残っていた。

セットしているリバースは…

 

「‼」

これは…‼

俺が驚き、真月に目をやると真月はこちらを見て小さく笑みを浮かべた。

「まだ、希望は尽きちゃいない」

ああ、全くだ…‼

 

「希望は尽きちゃいないだと? 何を馬鹿な。俺様のフィールドには高レベル・高ランクのモンスターが3体‼ 対するお前達はリバースカードが1枚‼ この状況下の何処に希望がある‼」

「俺は強欲なウツボを発動‼」

「馬鹿め‼ ランスロットの効果を忘れたか‼ ORUを1つ使い、発動を無効にする‼」

ORUを剣に纏わせたランスロットが強欲なウツボをバラバラに切り裂く。

「だが、これでランスロットは効果を発動できねぇ‼」

「…‼」

「強制効果が仇になったな‼ そしてお望み通り、見せてやる‼ 希望ってヤツをな‼」

「リバースカードオープン‼ 活路への希望‼」

 

活路への希望

通常罠

自分のライフポイントが相手より1000ポイント以上少ない場合、1000ライフポイントを払って発動する事ができる

お互いのライフポイントの差2000ポイントにつき、自分のデッキからカードを1枚ドローする

 

シャーク LP1600→600

 

「俺達のライフは600‼ お前のライフは3700‼ よって、1枚ドローする‼ ドロー‼」

モンスターじゃない…が、繋がったぜ、真月‼

 

「おろかな埋葬を発動‼ デッキからツーヘッド・シャークを墓地に送る‼ スピア・シャークを召喚‼ さらに、召喚に成功したことによりシャーク・サッカーを特殊召喚する‼ そして、スピア・シャークの効果により、シャーク・サッカーのレベルを1あげる‼」

 

シャーク・サッカー ☆3→4

 

「2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築‼エクシーズ召喚‼ 来い、バハムート・シャーク‼」

フィールドの2体のモンスターが爆発と共に消え去ると、六枚の背ビレと共に二本足で立つサメが現れた。

鋭利な爪を擦り合わせ、力のままに暴れ回るのを抑えるかのように瞳をギラつかせる。

 

「バハムート・シャークの効果発動‼ ORUを1つ使い、このターンの攻撃権を放棄し、エクストラデッキから水属性ランク3以下のモンスターを特殊召喚する‼ 来い、潜航母艦エアロ・シャーク‼」

バハムート・シャークがORUを飲み込むと大きく咆哮をあげた。

すると、地面が吹き飛び機械の羽を取り付けられた双子ザメが姿を現す。

 

「まだだ‼ 俺はエアロ・シャークを素材にオーバーレイネットワークを構築‼フルアーマー・エクシーズ・チェンジ‼ 現れろ、FA−ブラック・レイ・ランサー‼」

エアロ・シャークに取り付いていた機械の羽が分離するとそれぞれ半分ずつパーツを付けた2匹のサメになる。

その2匹が現れたブラック・レイ・ランサーに取り付くと、黒と紫に変色し装甲へと姿を変える。

合体を終えたそこには、身体に装甲を取り付け、一回り大きくなった槍を振り回すブラック・レイ・ランサーの姿があった。

「FA−ブラック・レイ・ランサーはORUの数だけ攻撃力が200ポイントアップする‼」

 

FA−ブラック・レイ・ランサー 2100→2300

 

「プッ…ダハハハハハハッ‼ なぁにがフルアーマーだ‼ たかが攻撃力2300じゃねぇか‼ サメ野郎、ソイツらでどうやってこの俺様に勝つつもりだ?」

そう言うとクラゲ野郎は笑い始めた。

たしかに、コイツらじゃランスロットを倒すのがやっとだ。

けどな

「誰がコイツらで勝つと言った」

「何ィ?」

奴が笑うのを止め、訝しむ。

「カード同士の絆か…真月、今ならわかる。俺達はこうやってカード同士を繋ぎ合わせて戦うのかもな」

「…ああ」

見ろよ、クラゲ野郎。

コイツがⅣと真月、2人が繋いだカードだ‼

「俺はジェネレーション・フォースを発動‼」

 

ジェネレーション・フォース

通常魔法

自分フィールド上にエクシーズモンスターが存在する場合に発動できる

デッキから「エクシーズ」と名のついたカード1枚を手札に加える

 

「俺はデッキからエクシーズ・リモーラを手札に加える‼ そして、ORUを2つ取り除き、エクシーズ・リモーラを特殊召喚‼ そして、エクシーズ・リモーラの効果により、墓地からスピア・シャークとツーヘッド・シャークを特殊召喚‼」

「レベル4が3体だと…⁉」

「3体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築‼エクシーズ召喚‼ 現れろ、No.32 海咬龍シャーク・ドレイク‼」

3体のモンスターが爆発と共に消えると赤紫の巨大なヒレを持つサメが現れた。

赤い瞳は噛み殺さんとばかりにギラギラしている。

 

「くっ…だが、シャーク・ドレイクの効果は調査済み‼ このターンの戦闘ダメージは最高でも3000‼ 俺を倒すには足りねぇ‼」

「まだ終わっちゃいねぇ‼ 俺はシャーク・ドレイクを対象にオーバーレイネットワークを再構築‼カオス・エクシーズ・チェンジ‼ 現れろ、CNo.32 海噛龍シャーク・ドレイク・バイス‼」

シャーク・ドレイクが大きな咆哮をあげると球体へと変化しながら空高く昇っていく。

すると、一際大きな爆発と共に巨大な白い背ビレが現れた。

巨大な身体に合ったヒレを振るうと大きく咆哮をあげる。

「シャーク・ドレイク・バイスの効果発動‼ ORUを1つ取り除き墓地のエクリプス・ワイバーンを除外し、シーラカンスの攻守を0にする‼」

 

超古深海王シーラカンス

3000→200

2200→0

 

「エクリプス・ワイバーンの効果により、除外していたレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンを手札に加える‼ さらに、アクア・ジェットを発動‼ シャーク・ドレイク・バイスの攻撃力を1000ポイントアップする‼ レミューリアの効果も合わせて1200アップだ‼」

 

CNo.32 海噛龍シャーク・ドレイク・バイス 2800→4000

 

「こ、攻撃力4000…‼」

「覚えとけ‼ 先輩はいつかは後輩に抜き去られることもあるってな‼」

「俺達3人の一撃、受けやがれクラゲ野郎‼」

「やれ、シャーク・ドレイク・バイス‼ 超古深海王シーラカンスに攻撃‼」

「ぐおおおおおああああ‼」

 

クラゲ先輩 LP3700→0

 

シャーク・ドレイク・バイスの攻撃を受け、男が吹き飛んでいき地面に倒れた。

クラゲを模したような容姿も敗北と共に解けたらしく人間の姿をしている。

すると、男から白く光るカードの塊が飛んできた。

Ⅳが掴むと、光は消え去りNo.23 霊騎士ランスロットと書かれたカードが現れる。

「シャーク、大丈夫か?」

「ああ…悪い、助かった」

「ったく…大体お前はツメが甘ぇんだよ、凌牙」

「なんだと。勝手に出しゃばってきやがったクセに」

「相変わらず可愛くねぇ野郎だな、テメェは」

Ⅳの軽口にもう調子を取り戻したのかシャークが突っかかる。

「まあまあ…」

そう言って仲裁に入ろうとすると、視界の端で男が起き上がった。

 

「‼ 2人共」

俺が促すと2人も男を見る。

「まだやろうってか…?」

そうⅣが挑発するように言うと、シャークを目を細めて見ていた男は急に目を見開いた。

そのまま、まるで幽霊にでも会ったかのような表情へと変化する。

 

「思い出した…」

「思い出した?」

「お前は俺がヘマやらかして追われていた時、事故に巻き込んじまった車に乗っていたあのガキ‼」

「‼」

 

シャークの顔色が変わる。

璃緒から聞いたことがある。

たしか、シャークと璃緒の両親は昔事故で亡くなったとか。

「いや、だがそんなハズはねぇ…あるハズがねぇんだ…‼ あの事故でお前らは全員死んだはず…そうだ、死んだはず」

それだけ言うと男は足下から消え始めた。

 

「おい、待て‼」

シャークがそう叫び、駆け寄るも男が消える方が早かったらしく、粒子になるようにして消え去った。

シャークはその場に立ち止まる。

 

「シャーク…」

いきなり明かされた衝撃の展開にかける言葉が浮かばず、何も言えなくなる。

シャークはナッシュ、璃緒はメラグ。

それはわかっている。

だが、ではここにいるシャークと病室にいる璃緒は誰だ?

決まっている。神代凌牙と神代璃緒だ。それ以外の誰でもない。

 

「シャーク、1つ聞かせてくれ。お前は誰だ?」

…聞かせてくれ、シャーク…‼




いかがでしたでしょうか。

勝った!クラゲ先輩篇、完!
…とはいきません。もう1話だけあるのじゃよ。

それでは。

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