ベクター?誰それ、俺真月   作:野球男

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こんにちは。
デュエル開始直前までです。

謎の再登場時の半笑い顔!思わず引きちぎりたくなるコーディネート!おそらく兄弟唯一の稼ぎ頭!
お待たせしました、彼の登場です。

それでは、どうぞ。


第107話

「くそっ、シャークの奴出ねぇ‼」

 

璃緒さんを医者に任せ、俺達は病院の玄関口まで降りてきた。

今は遊馬がDゲイザーでシャークに呼びかけているが、連絡が繋がらないらしく歯噛みしている。

「真月、そっちはどうだ」

「…ダメだ。シャークの奴、Dパッドの電源を落としてるみたいで反応がない」

八方塞がりか…‼

 

「遊馬、こうなったら手分けして探そう‼」

「おう‼」

Ⅲの言葉に遊馬が頷き返す。

打つ手が無い以上、仕方ないか…‼

 

「おい、Ⅲ。何やってんだ」

 

 

 

「…ここに来るのは久しぶりだな」

病院へと向かう前。

ふと気になり、バイクに乗ること十数分、病院からも程近いハートランドシティの一等地の片隅にある巨大な屋敷に辿り着いた。

今でも手入れ自体はされており、芝生はきちんと整えられ、少なくとも外から見る限りここに誰も住んでいないようには見えない。

ここは、親父とお袋が俺と璃緒に残した遺産の1つーー子どもの頃、過ごしていた場所だ。

 

「荒れ放題、だな」

鍵を使いドアを開けると、舞い上がるホコリと共に、荒れたリビングの景色が広がる。

床に転がる熊のぬいぐるみの痛みがどれだけの年月が過ぎたかを否が応でも感じさせる。

「あれは…」

俺は寂れた甲冑が視界に入った。

あれは昔、璃緒と喧嘩した時俺に倒れた甲冑。

あの時、親父が怪我はないか?って心配してくれたんだっけか…

 

「クククククク…」

 

「誰だ‼」

俺が無意識のうちに傷のあった場所に触れ、思い出に浸っているとその場にそぐわないふざけた笑い声が聞こえてきた。

辺りをキョロキョロと見回していると、俺の視界に歪んだ部分が現れる。

その姿はクラゲ…か…?

 

「テメェが神代凌牙か」

そう言うと同時に半透明の触手のようなものが伸びてくる。

なんとかかわすことはできたが、ここは狭い。

そう何度も上手くかわせるとは思えねぇ。あの窓から外へ逃げる‼

 

「逃がしゃしねぇ‼」

突き破り、逃げた俺の背後から迫る触手に身体を縛られると首元に一瞬、ちくっとした感覚を受け、身体から離れていった。

地面に落とされるも難なく着地し、触手が戻る先にいる紫の帽子をかぶる男に視線をむける。

 

「テメェ一体…‼」

「テメェだと…? テメェ何個下だ‼ ドコ中だよ‼」

何を訳のわからねぇことを…‼

「何言ってやがる…‼」

「口の聞き方に気をつけろ‼ 人間如きがこのバリアン様に生意気言ってんじゃねぇ‼」

やはりバリアンか…っ⁉

「なんだ、力が…⁉」

身体に力が入らねぇ…‼

 

「どうだ、俺様の毒の味は」

「⁉」

毒だと…⁉

「その毒がお前の自由を奪うまで時間がある。よってその時間、俺とデュエルをしてもらう‼」

「ふざけんな‼ 誰がお前と‼」

突然の言葉に俺は反発する。

勝手に毒を打ち込んだ上にデュエルだと…⁉

 

「お前がそれでいいなら俺は構わねぇが…お前に打ち込んだ毒は俺を倒さない限り、解けることはねぇ」

なんだと…⁉

「さあ、どうするんだ?」

俺の耳に選択の余地の無い声が届く。

 

「…いいだ」

ろう、と俺が言いかけると茂みから何かが飛んできた。

「ぬっ⁉」

触手が難なく受け止めると、潰され中に入っていた炭酸が溢れ出す。

「先輩、ジュースを奢ってやろう。9杯でいいかな?」

「テメェは…‼」

「真月‼」

俺の言葉に真月は不敵な笑みを浮かべて応える。

 

 

 

「お前、どうしてここに」

片膝をついているシャークに近付き手を貸す。

「教えてもらったんだ」

「教えてもらった?」

「ああ。 …あの人に」

そう言い指さした先をシャークが見るとそこにいる男を見て目を見開いた。

 

「お前は…⁉」

「忘れたか凌牙、お前の1番のファンの顔を‼」

そう叫ぶと、男は不遜な笑みを浮かべ屋敷の屋上から飛び降りた。

着地し、白い服が翻すと黄色と茶の髪を振りかざし、こちらを見る。

 

「Ⅳ⁉」

「お前はたしか…トロンの息子」

「ケッ…まったくだらしねぇな。毒? 刺されるかよ普通。こんな冴えない奴に」

「何ィ…」

「お前が何故ここに」

「頼まれたんだよ。Ⅲとそこの真月に」

そう言うとシャークが俺を僅かに睨んでくる。

「シャーク、Dパッドの電源落としてたから居場所がわからなかったんだ。それであのⅣが心当たりがあるって」

そうここまでの経緯を説明すると、シャークは納得したのか俺を睨むのを止める。

 

「先輩想いのいい後輩に恵まれたじゃねぇか、凌牙」

「誰がお前の助けなんか」

「お前のことなんか知らねぇさ。でもな…お前の妹も絡んでるってんなら話は別だ」

「璃緒が?」

「あの男はここに来る前に璃緒さんを襲ったんだ。被害はなんとか防いだんだが…」

「そういうことだ。 …お前の妹に何かあったんじゃ、俺も寝覚めが悪い」

そう言うとⅣは不遜な笑みを消し、真剣な顔つきになる。

シャークもそんなⅣの姿を見てか、黙り込んだ。

 

「だから、俺のファンサービスでこんな野郎やっつけてやるからよ。お前は真月と仲良く見学してな」

「ふざけてんじゃねーぞ‼ ドコ中だテメェら‼」

Ⅳのそんな態度を見てか、黙っていた男が途端に騒ぎ始める。

 

「ああ、いいぜ‼ なら3人まとめてかかってこいよ‼」

俺達全員を同時に…?

大きく出たな。それだけ自信があるのか?

 

「…だそうだが、どうする?」

「…もういい。真月、大丈夫だ」

そう言うとシャークはフラつきながも俺の手を離し、自力で立った。

「俺はやる…‼ どの道、コイツはぶっ倒さなきゃならねぇ」

「ほお…お前は?」

シャークの言葉に満足げなⅣが俺に話を振る。

「参加する。璃緒さんを狙ったこともそうだが、バリアンなら尚更放ったらかしにするわけにはいかない」

 

「異論は無いようだな。が、しかぁし‼ お前達はどう見ても俺より10コは下。後輩には先輩を立ててもらう。お前達のライフは1人につき2000。俺のライフは4000の3倍、12000だ」

6000と12000か…結構大きいな。

「先輩ってわりにはセコイ奴だな。いいぜ、丁度いいハンデだ」

 

「後輩風情が生意気な」

そう言うと男の姿が光を放ち、消えたそこにはクラゲのような姿をした存在へと姿を変えていた。

「せいぜい毒が回って浜に打ち上げられないことだな」

 

「それがお前の姿か…‼ いくぞ‼」

「「デュエルディスク、セット‼ Dゲイザー、セット‼」」

「…ハァッ‼」

俺達がいつものように準備を整えると、Ⅳは格納されていたデュエルディスクを張り出し、片目に刺青が入ると瞳の色が変わる。

 

「「「デュエル‼」」」




いかがでしたでしょうか?

そんなわけで、次回からデュエルが始まります。
お楽しみに。

それでは。

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