ベクター?誰それ、俺真月   作:野球男

10 / 161
こんにちは。
早いもので10話到達。お気に入りもとんでもない勢いで増えており、毎日嬉しいかぎりです。

それでは、どうぞ。


第10話

 久しぶりに誰とも予定が会わず1人の休みの日、家でじっとしているのにも飽きた俺は散歩がてら何時ぞやのカードショップに足を運ぶことにした。

「こんにちは」

「いらっしゃい、真月君」

 

 あれから俺は結構な頻度でショップに通い、最新のカードを見ず安いバラ売りの場所に直行しては喜んで買って帰るという周りからすれば相当におかしな奴としてショップ店員から名前を覚えられる程度には仲良くなっている。

 

「今日もかい?」

「はい」

「好きなだけ見て行くといいよ。今の時間だとあそこは真月君ぐらいしか寄り付かないからさ」

 と言うと店員は人の良さそうな笑みを浮かべ俺はいつも通りバラ売りのコーナーに向かった。

 さてさて…どんなカードがあるかなと…

 こういった場所で売られているカードはステータスの低いバニラモンスターや微妙な効果のモンスター、アドバンス召喚や儀式召喚など時代に置いていかれたカードが多く、それらが現役だった時期を知る俺としては見ているだけでも結構楽しかったりもする。

 

「お、アトモスフィア。懐かしいモンスターだ」

 と俺が懐かしいカードを触っていると何やら表が賑やかになっており、眺めていたカードを置くと俺は騒ぎのする方に近付いていくとどうやら業者らしき作業着姿の男達を従えたスーツ姿の男がいた。

 

「あ、ほら‼彼です‼」

 といきなり店員が俺を指さし困惑していると俺をスーツの男が見た。あまりガラのいい男には見えない。

「お前があの古いカードを利用する客か?」

「ええまあ。一体何がどうなっているんですか?」

 そういうと店員の1人が掻い摘んで事情を説明してくれた。

 

 どうやら彼らはカードの卸しをしている業者のようで、いわく古いカードは使えないし買い手はいないから廃棄して新しいカードを卸させろということを言っているらしい。

 しかし、店側としても俺をはじめとして買い手はいるらしく、今あるカードだけで充分なので必要もない。また、そもそも古いカードが使えないことはないという理由から撤去はできないと言っているそうだ。

 

「店側にも都合がありますし、諦めて他の店に行かれた方がいいのでは?」

「ああ?使えない古いカードを欲しがる変人なんていやしねぇよ。だったらそこを退けて新しいカードを置けばいいだろうが」

「いえ、少なくともその変人がここにいる以上需要はあります」

「ならお前があれをなんとかしろ」

 

 …埒が明かないな。

「ならこうしましょう。俺がデュエルして勝てばこの店から手を引いてください。負けたらあの古いカードは廃棄するなりなんなりどうぞ」

「いいだろう。ただし‼お前が使うカードはあの古いカードの中からだけだ‼」

「それは…‼」

 と店員がざわつき始めた

「わかりました。いいですよ」

「言ったな?」

「ええ、では少し時間をください。組みますから」

 と言うと来た道を戻り触ろうとすると店員が近付いてきた

「すまない、真月君。君は店には関係がないのに」

「いえ、俺も古いカードには愛着がありますから。それよりも、今から言うカードを探すのを手伝ってもらえませんか?」

「わかった」

 

 

 そうやって数十分が経過した頃ようやく探していたカードを全て揃え終え、俺は組みたてほやほやのデッキを片手に男の待つデュエルスペースに姿を出した。そこそこのギャラリーもいるようだ。

「遅かったな。少しはまともなカードはあったか?」

「やればわかるんじゃないですか?」

「面白ぇ…いくぜ‼」

「「デュエルディスク、セット‼Dゲイザー、セット‼」」

 

 ARビジョン リンク完了

 

「「デュエル‼」」

 

 真月 LP4000

 男 LP4000

 

「俺の先攻‼ドロー‼ブラッド・ヴォルスを召喚‼」

 

 ブラッド・ヴォルス

 ☆4 闇属性 獣戦士族

 ATK 1900

 DFE 1200

 悪行の限りを尽くし、それを喜びとしている魔獣人

 手にした斧は常に血塗られている

 

 攻撃力1900。並のモンスターじゃ突破は難しいだろう。まずはこいつで様子見だ。

「ターンエンド‼」

 

 真月 LP4000

 手札 5

 モンスター 1

 ブラッド・ヴォルス 攻撃

 魔法・罠 0

 

「たかが攻撃力1900のモンスター1体だけかよ‼俺のターン‼ドロー‼レスキュー・ラビットを召喚‼効果発動‼レスキュー・ラビットを除外しデッキからセイバーザウルスを2体特殊召喚‼」

 

 セイバーザウルス

 ☆4 地属性 恐竜族

 ATK 1900

 DFE 500

 おとなしい性格で有名な恐竜

 大草原の小さな巣でのんびりと過ごすのが好きという。怒ると怖い

 

「2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築‼エクシーズ召喚‼来い‼エヴォルカイザー・ラギア‼」

「‼」

 

 エヴォルカイザー・ラギア

 ★4 炎属性 ドラゴン族

 ATK 2400

 DFE 2000

 恐竜族レベル4モンスター×2

 このカードのエクシーズ素材を2つ取り除いて発動する

 魔法・罠カードの発動、モンスターの召喚・特殊召喚のどれか1つを無効にし破壊する

 

 なるほど、相手のデッキは【兎ラギア】か。

「いけ‼ラギア‼ブラッド・ヴォルスに攻撃‼」

 

 真月 LP4000→3500

 

「ハッハァ‼見たか‼1枚伏せてターンエンド‼」

 

 男 LP4000

 手札 4

 モンスター 1

 エヴォルカイザー・ラギア 攻撃

 魔法・罠 1

 ⁇?

 

【兎ラギア】…たしかシンクロ最盛期の終わり辺りからエクシーズ最初期くらいに登場したんじゃなかったっけか?

 あっちの世界では結構古いデッキ構成ではあるが…しかしそれはつまり、裏返せばそれだけ実力があったっていう証明でもある。気を引き締めてかかるとしよう。

「俺のターン‼ドロー‼」

 さて、ラギアがいるなら迂闊な召喚はできない。となれば

「モンスターをセット‼2枚伏せてターンエンド‼」

 

 真月 LP3500

 手札 3

 モンスター 1

 裏側守備

 魔法・罠 2

 ⁇?

 

「もう守りに入るのか?やっぱり古いカードは使えないな」

「ペラペラとよく動く口だな」

「あン?」

「ペラペラ喋るような奴は弱い証拠だ。本当に強い奴はいちいち口で説明したりしないからな。口で説明するくらいなら俺はカードで示すだろうな」

「…ッ‼俺のターン‼ドロー‼ハイドロゲドンを召喚‼」

 

 ハイドロゲドン

 ☆4 水属性 恐竜族

 ATK 1600

 DFE 1000

 このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時自分のデッキからハイドロゲドン1体を特殊召喚する事ができる

 

「いけ‼ハイドロゲドン‼セットモンスターに攻撃‼」

「セットモンスターは魂を削る死霊‼」

 

 魂を削る死霊

 ☆3 闇属性 アンデット族

 ATK 300

 DFE 200

 このカードは戦闘では破壊されない

 このカードがカードの効果の対象になった時このカードを破壊する

 このカードが直接攻撃によって相手ライフに戦闘ダメージを与えた時相手の手札をランダムに1枚捨てる

 

「こいつは戦闘では破壊されない効果を持つモンスター。ハイドロゲドンの効果は発動しない」

「チッ…ナメた真似を。ターンエンド‼」

 

 男 LP4000

 手札 4

 モンスター 2

 エヴォルカイザー・ラギア 攻撃

 ハイドロゲドン 攻撃

 魔法・罠 1

 ⁇?

 

「エンドフェイズ時にリバースカードオープン‼終焉の焔‼」

 

 終焉の焔

 速攻魔法

 このカードを発動するターン自分は召喚・反転召喚・特殊召喚できない

 自分フィールド上に黒焔トークン(☆1 闇属性 悪魔族 ATK/DFE 0)2体を守備表示で特殊召喚する

 このトークンは闇属性モンスター以外のアドバンス召喚のためにはリリースできない

 

「俺のターン‼ドロー‼相手フィールドのモンスターを2体リリースし溶岩魔神ラヴァ・ゴーレムを特殊召喚‼」

 

 溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム

 ☆8 炎属性 悪魔族

 ATK 3000

 DFE 2500

 このカードは通常召喚できない

 相手フィールド上のモンスター2体をリリースし手札から相手フィールド上に特殊召喚できる

 自分のスタンバイフェイズ毎に自分は1000ポイントダメージを受ける

 このカードを特殊召喚するターン自分は通常召喚できない

 

「な、なんだこりゃ⁉攻撃力3000のモンスターを俺のフィールドに特殊召喚だと⁉」

 そうラヴァ・ゴーレムのオリの中から男は叫んだ

「わかりますか?これで俺は何もしなくても勝ちが揺るがなくなったことが」

「ああ?何言ってやがる」

「ラヴァ・ゴーレムは毎ターンスタンバイフェイズ時に使用者に1000ポイントのダメージを与える。貴方のライフは現在4000。魂を削る死霊は戦闘で破壊はされない。よって、足掻けるターンは保って後3ターン。勿論、貴方の【兎ラギア】にラヴァ・ゴーレムを除去できる…例えば強制転移や洗脳解除のようなカード、もしくは表側守備モンスターを破壊するカード…例えば地割れや地砕き、ラヴァ・ゴーレムをリリースしつつ魂を削る死霊を破壊できる痛み分けやラヴァ・ゴーレムをリリースしつつ俺にダメージを与える火霊術ー「紅」なんかがあれば突破も簡単なんですが…よく考えたらそんな『古いカード』使うわけがなかったな」

「くっ…このっ…‼」

「でも俺はあいにくと4ターンも時間をかける程お人好しじゃないもんで。黒焔トークン、そして墓地のブラッド・ヴォルスをゲームから取り除きThe アトモスフィアを特殊召喚‼」

 

 The アトモスフィア

 ☆8 風属性 鳥獣族

 ATK 1000

 DFE 800

 このカードは通常召喚できない

 自分フィールド上に存在するモンスター2体と自分の墓地に存在するモンスター1体をゲームから除外した場合に特殊召喚する事ができる

 1ターンに1度、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターを装備カード扱いとしてこのカードに1体のみ装備する事ができる

 このカードの攻撃力・守備力はこのカードの効果で装備したモンスターのそれぞれの数値分アップする

 

「効果発動‼相手フィールドのモンスター1体を選択し吸収‼吸収したモンスターの攻守分アトモスフィアは強くなる‼選択するのは当然ラヴァ・ゴーレム‼」

 

 The アトモスフィア

 1000→4000

 800→3300

 

「そ、そんな馬鹿な‼」

「いけ‼アトモスフィア‼ダイレクトアタック‼」

「ふ、古いカードに負けるなんてええええ‼」

 

 男 LP4000→0

 

「うっ…」

「ふぅ…これでわかったか?新しいカードが強くて古いカードが弱いんじゃない。使いこなせない決闘者が弱いんだ」

「くっ…‼」

「約束は守ってもらう。この店から手を引け」

「…いくぞお前ら‼」

 と言うと肩を怒らせ作業着姿の男達を従え去って行った。

「ありがとう、真月君‼」

「いえ、俺は大したことはしてませんよ」

 と言いカードを差し出すと店員にお礼だとやんわりと渡されてしまいそのまま居座れるような空気でもなかったので店を出ることにした。

 さて、予定より早く出たが、どうしようかーーー

 

 

「ん…?」

 と俺が意識を取り戻すとどうやら机で突っ伏していたらしい。どうやら寝ていたようだが…あれ?俺はさっきまでカードショップの前にいなかったか?

 全てが夢…というわけではなさそうだ。さっき使ったデッキが机の上にある。

 時間は…あれからざっと3時間程経っている。そろそろ夕日が沈む頃だ。

「あれ…?」

 俺はどうやって家まで帰ってきたんだっけ…?

「一体どうなってるんだ…?」




いかがでしたでしょうか?
今回の話、実はモデルがいまして…その辺りは活動報告にありますのでよければどうぞ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。