昼間には目も眩む程の闘争が繰り広げられた川神市も、今は雨が下品にびちゃびちゃと音をたてるばかりだった。人の気配が感じられない無機質にくり抜かれた世界で、雨音に呼吸音がかき消された人物は確かに歩いていた。
目は強く光るが、気持ちは灯っていない。だが、死人とは程遠い姿勢は、針金を通したように伸ばした背筋に留まらず、空気を張り詰めさせていると錯覚させる程だった。
それが川神院の武道家が、高昭に抱いた印象だった。
「荒れ狂う激情とは、思って居なかったがここまで鋭いとは驚きじゃわい。」
「表情一つ変えないガ、剥き出しの『修羅』デスネ。」
鉄心に並んでルーが立ち止まるが、彼らの見据えるターゲットが立ち止まる様子はない。道を阻むものが誰であっても、何人であっても、高昭の視界に入らないかのように、水浸しの道路に作られる波紋は規則的に広がっていた。
「あれが修羅……。」
川神院の人間として鉄心や師範代と共に死地へと踏み込む決断をした一子は、刃先の煌めく薙刀をゆっくりと高昭へと向ける。
次いで鉄心が構えを取り、ルーと釈迦堂も目を細めた。
「指折り数える必要もねえな。これだけ戦力に差があって止まる気は――。」
「お前は何を見ている。」
釈迦堂の問いかけを聞き流して高昭が口を開いた。高昭の問いかけに誰もが身持ちを固くした。語りかけた釈迦堂ですら、高昭が言葉無く襲いかかると考えていた為、問いかけに反応出来なかった。
「お前らは、『修羅』と見るか?『生徒』と見るか?過去の自分を乗り越えた今、『用無し』に何も重ねて見るものなど無いだろうになぁ。」
「どういう事だ。」
「お前たちがやっているのは、汚泥に埋まるものが自分の予想に当てはまるものであると信じるのと変わりない、滑稽な振る舞いだと言っている。」
高昭は、歩みも、口も止める事は無い。
「俺にとってもお前らにとっても、得る者のない戦いをするつもりであるのなら失うモノが無い俺は、拒む理由は無い。」
大きな水飛沫が上がる。
目にも止まらぬ速さで大きく踏み込んだ高昭に鉄心と釈迦堂が反応する。
「顕現の参・毘沙門天!」
「行けよリングゥ!」
鉄心が闘気によって具象化した巨大な足は、如何に巨躯である高昭と言えど蟻と巨象であった。受け止めようとする高昭を地にめり込ませようとする鉄心の攻撃は、支える高昭の足元から道路を砕き、衝突で舞い上がったコンクリートによる砂埃が互いの視界を奪う。
その砂埃を切り裂きながら釈迦堂の放った気弾――リングが高昭へと直線に飛ぶ。独特の回転をによって砂埃は蠢き、掻き分けるように、巻き込むように、高昭へと着弾した。
「ルー、撃てるな!」
「しかシこれ以上は彼の生命の維持ニ……。」
「奴は膝すらつい居ないわい!」
視界が晴れてくると左腕一本で鉄心の攻撃を受け止める高昭の姿が見える。直撃は避けられない筈であったリングによる負傷は一切見られない。
「稲妻を喰らえ。」
高昭は鉄心の攻撃を受け止めながら『渦雷』を放つ。如何に鉄心であっても、全身の気を全て放出する大技を抑えきる事が出来なかった。
まず、鉄心の作り出した巨大な足諸共、天を貫く嵐が放たれる。
振り下ろされた『渦雷』はたった四人に撃たれる規模ではない。戦闘の終盤に放たれるものとは桁違いの攻撃。燕や項羽達に放った『渦雷』と比べると、一切の消費を行っていない状態での『渦雷』は災害にも劣らない威力であった。
神の名を冠する川神院の武道家へ落ちてきた神の鉄槌と思う程の規模を飲み込む攻撃に誰もが度肝を抜く。
「ストリウムファイヤー!」
ルーの取った行動は、他の人間が逃れる為の時間稼ぎであった。全く拮抗のない技のぶつかり合いであるが、それでも少しばかり勢いを殺す事が出来ている。それは十分な時間稼ぎであった。何よりまだ高昭が人の道に戻れると信じているルーにとって、生身の人間に撃つよりは余程、気が楽だった。
釈迦堂は一子と抱えて射線から脱し、鉄心は高昭へと肉薄する。少しでも防御へと気を引く事が出来れば、ルーの脱出も可能だと考え、加えて、これ以上戦いを長引かせない為の行動。。
高昭は鉄心を迎え撃つ準備に入り、攻撃を中断する。他の誰よりも距離を離された状態だと厄介な鉄心が近づいてきた。高昭がそのチャンスを逃す道理は無かった。
そして、この肉薄する事が失策であったとしても、鉄心が近づいた理由はもう一つ。
「釈迦堂、一子。ルーを連れて逃げるんじゃ!どんな奥の手が知らんがこやつは傷一つついておらん!」
二度の直撃を受けて、高昭は無傷である。どんなに固くとも、鉄心と釈迦堂の本気を受け止めて無事で済む訳がないと、鉄心は経験から分かった。
未知の恐怖。人間の理外の存在であると、目の前の存在が間違いなく『修羅』という人とは区別されるべき存在だと、鉄心が認識した時には、手遅れだった。
「『火の構え』。」
自らが攻勢に転じたにも拘らず、会話に気を取られた鉄心には、その攻撃を避けるだけの猶予は無い。だが、幾ら昨日の川神院への襲撃で疲弊しているとしても、一子らが逃げるだけの時間を稼ぐ自信はあった。どんな攻撃も無傷に抑える防御の手段が有ったとしても、精々が必殺程度の攻撃は受け止められる筈だった。
昨日の項羽との戦いこそが、高昭という人物の人としての力量に限界がある事を明確に示していた。
しかし、鉄心は、その自信諸共砕かれて、膝を折る事となる。受け止めた腕に痣一つない。体の内側から何かが爆ぜたような衝撃と共に、地に倒れ伏す。痛みだけではない、理解不可能の一撃を受け思考が体の操作を受け付けない。
痛みに低い呻き声を上げる鉄心に止めを刺すべく高昭は足を振り上げる。
「そこをどけぇ!」
一子は、誰よりも早く高昭へと薙刀を振り下ろす。首元を狙った一撃を高昭は見切って躱す。ハラリと舞った髪の毛は、あと一歩で届いた証明ではなく、決して届かない事の暗示であるかのように一子の目に映った。
修羅云々と考える以前に、一子では高昭との地力の差がある。
それでも、一子は一歩踏み込むのだった。高昭の繰り出す右の上段蹴りを間合いを詰める事によって潰した一子は、軸足に重い蹴りを放つと半歩、身を引く。
そこは互いの射程圏内。じりじりとした攻防など無く、一子が常に先に動き、高昭がそれに阻まれる。奇妙な事に、二人の戦いを支配していたのは一子であった。
才能を努力で埋めるというのは生半可な事ではない。それでも川神一子は才能というものに必死に喰らいつかなければならなかったのだ。
故に、この瞬間、黒田高昭と同等に戦う事が出来ているのは奇跡でもなく、しかし順当な結果ではなかった。
「俺らの癖からの経験則だと思って居たが……。」
釈迦堂は戦いの様子を見ながら呟いた。
才能を埋めた要因は、勘と呼ばれるものでもあり、経験則とも言えるものだった。一子は、強くなる為に何度も何度も戦った。強くなるという道程の中で、過去から累積して数えれば、格上と戦った回数の方が多いだろう。格上の取る行動。その最善手や布石、とどのつまりは取りやすい行動を経験的に体に刻み込んでいるのだった。『壁』として、模範も模範な立ち振る舞いが染みついた高昭を相手取るのにこれ程相性の良い人材は居なかった。
その前提がある上で、一子の読みは冴えていた。未だに被弾はゼロで、浅いものの高昭に対して切り傷をつける事に成功している。もし高昭が此処に『壁』として立っていたならば、見守っている釈迦堂とルーは同門の弟子の成長に感動していただろう。だが、それは一子以外の人間にとって拭えない違和感でもあった。
「釈迦堂。彼は何故、気の壁を使わなイ?」
息も絶え絶えながら外傷の少ないルーが釈迦堂に問いかける。
鉄心の接近によって高昭の攻撃は中断され、まだ十分な気は残っている筈であった。だというのに高昭は状況の打開の為に新たな行動を起こそうとしない。
牽制の攻撃は全て一子が上手く薙刀を使って受け流す。踏み込むか踏み込まないかの読みあいを全て一子は制して、高昭が引けば逃がさずに切りつけ、高昭が踏み込もうとすれば蹴りを用いて足さばきを阻害する。
確実に、少しずつ一子が押している戦況であったが、高昭からは必死さが感じられない。ルーが指摘しているのは、そういった内容であり、釈迦堂も十分共感が出来る話であった。
「仕掛けてみるか。」
釈迦堂がリングを打ち出すと同時に、ルーも動き出す。一子に当たらないように放たれた攻撃は高昭に躱される。だが、戦いを仕切り直した状態で、頭数で再び川神院が優位に立つ。間合いを量るルーであったが、一番疲弊している焦りからなのか、大切な情報を見逃していた。
初め、防いだ筈のリングを高昭は避けた事に釈迦堂は気づく。だが、思考を巡らす時間は無い。一子はルーの動きに合わせて高昭の行動を制限するように立ち回る。ルーへと視線を向けようとする高昭の死角を、釈迦堂は徹底して位置取りをした。
高昭が気配を追わなければならないのは、二人だけではない。
風切り音と共に飛来した攻撃を、高昭は気の壁を展開する事で対応するが、即席の防御はすぐさま食い破られる。釈迦堂の放つ気弾は、この場の全員にとって、改めて説明する必要がない程に鋭く、速く、そして力強い。
先程まで一子が独占していた修羅との攻防は、釈迦堂の一撃を皮切りに師範代二人と高昭との中距離戦へと移る。だが、中距離への明確な攻撃手段を持たない高昭は、壁を展開し、目にも止まらぬ速さで駆けるばかりで、一切の反撃を行わない。
ルーも釈迦堂も一子も、反撃をさせる暇を与えない。師範代二人の遠距離攻撃が高昭を直接狙い、退路を塞ぐように一子が先んじて動く。
「しかし十分に失策だ。」
高昭は我武者羅に動く訳もなく、全員を見渡せる位置に足を運ぶと、全員を視界に入れた。その左腕には不規則に蠢く、気の暴風雨。
「これだけ戦いを続けてもまだ、十全に撃てるだとっ!」
釈迦堂が叫び声を上げるのも当然だった。『渦雷』は全ての気をつぎ込む事であれだけの威力を発揮するのだ。二発目を考えないからこその攻撃を、念頭に置くはずもなく。もしも、と考えた上で気弾を防がせたというのに、釈迦堂の策は全くの無意味となる。
しかし、高昭が撃ち出すよりも早く、腹部を貫く拳があった。
「死に体の拳でもちょっとは効いたじゃろ。」
鉄心の拳は高昭の拳に深々と突き刺さる。完全な奇襲は人体の正中線を的確に捉えた一撃である。並みの人間にとっての急所を鉄心が迷いなく選んだのは、目の前の男を止めたいと思う、その一心からだ。
膝から崩れ落ち、気を失ったのはただ一人。
そして、身をもって一つの証明は果たした。
「『渦雷』。」
此処に居るのは、どうしようもなく『修羅』であるという証明であった。
まるで嵐が過ぎ去った跡には、二人の大人が倒れている。師範代であるルーと釈迦堂だ。致命傷には至らなかったものの傷は浅くない。予め身構えていなければ、避けられるはずもなかった。寸前で防御しただけでも御の字だった。
それでも戦いは続いている。
「まずは一発。」
一子の薙刀は、戦いが始まって漸く直撃を喰らわせた。高昭の腹部から流れる血が、道着に染み入る。
そこは互いの射程内。高昭が軸足を右足にスイッチして掴みかかろうとすると、それよりも早く、一子の攻撃が高昭の右肩を襲う。
――林の構え。
高昭は、迫りくる斬撃よりも速く身を引いた。そして、完璧に躱すと、右足にかかっている重心を一気に前面へと押し出す。
黒田の奥義の真髄は、全ての奥義同士の組み合わせである。加えて、高昭にはそれ以上に素早く動ける気の操作技術がある。体に纏わりつく気で以って姿勢を制御する。温い行動を刈り取る最高速のカウンター。それは、反応では確実に避けられない一撃。
「十字架討ち!」
それも、読んだ上で、一子は一拍置いてから連続して攻撃を放つ。一撃目の横薙ぎとは違い、下から掬い上げるような斬撃は、襲い掛からんとする高昭に、逆にカウンターとなる。眼前へと迫る刃を視界に納めながら、高昭は拳を止める事をしなかった。
高昭は、小さな気の壁を作り出す。目の前に出現させたその壁は、一子の攻撃を守るには意味をなさず、気休めにもならない程度のものだった。
もし、一子の薙刀が先に当たればの話である。
高昭はそれに思い切り頭を打ち付ける。
「キャアァァァ!」
ただのヘットバットではあり得ない程の衝撃が壁も一子も吹き飛ばす。
高昭の拳が一子に到達する事は無く、一子は衝撃で吹き飛ばされる。先読みで得ていたアドバンテージも、蓄積させていたダメージも、何もかもが一気に吹き飛ばされた。
「それでも一番、修羅に立ち向かう者として正しかった。」
もう、戦いが終わったものであるかのように話す高昭。一子は、掠れる意識の中で、懸命に思考を巡らせていた。
高昭の異常な強さの正体。
「余裕の違い。理由がそうであったとしても唯一『修羅』と定めて、殺してでも止めようと喉元に切っ先を向けられる。嗚呼、堕ちた事を実感できる。」
高昭は、喜色の混じった声色で喋りながらも、表情一つ変えずに一子へと近づいていく。狂気の塊が、気絶した大人たちにも目もくれず、若き武人に歩み寄る。
「勘づかれたくないと、隠そうとして隠し切れないのは悔しいか。まあ、それは先輩以外が愚かにも『修羅』というものが分かってなかったんだろうがな。」
高昭は、一子の首を掴みあげる。一子の瞳に映るのは、深い闇に沈んだ高昭の瞳。二人は目が合っているようで、見据えるものは全く違う。
一子は、目の前の敵を見る。
高昭は、今も、未来も、見ていない。
「折角、正解したというのに残念賞だ。貴女が暴いた『禁伝・陰撃ち』は冥途の土産に持って行くと良い。」
首にめり込む高昭の指から逃れようとする一子。
「その手を離せぇ!」
怒号と共に飛来した矢が、高昭の左腕に直撃する。驚きで高昭が手を離すと一子は水溜りの上に音を立てて落ちる。
「大丈夫かワン子!」
バンダナを身に着けた男が――翔平が声をかける。その男を筆頭に、豪雨の中で駆けつけたのは風間ファミリーであった。中でも百代と京からは、怒りをも超えた感情が高昭へと向けられている。大切な仲間を傷つけられた事に対する怒りだけでなく、武道家としての憤りを感じるのは当然だった。
しかし、未知の化け物を前に浅慮に飛び出す事だけはしなかった。それは翔平や岳人といった腕っぷしに多少の自身がある程度の人間でも分かる程、今の高昭は気味が悪く見えた。
沈黙を破ったのは、一子だった。
「皆、逃げて……。これ以上戦えば、どっちかが、死んじゃうから……。」
満身創痍でありながら、雨音に負けない声量で、一子は風間ファミリーに訴える。
「黒田君が、『修羅』であるのは、あらゆる衝撃を伝播出来るから。」
「そうだこんな風にな。」
――ドシャア。
高昭は一子の頭を掴みあげるとコンクリート塀へと叩きつける。
しかし、音をあげて崩れたのは、高昭の足元だった。一子の頭にも傷一つなく、しかし風間ファミリーの全員への挑発としては完璧だった。
「お前ぇ!」
その光景を見て我慢できずに矢を放つ京。高昭はそれをあっさりと躱すが、最早導火線についた火は消えない。
「人の体の、どこにでも、衝撃を伝えるだけじゃないの。黒田君は、体の中で乱反射させる事で留めている。だから――。」
体内に残っている衝撃のストックで一子の脳を揺らし気絶させ、口止めすると、高昭は百代達へと体を向ける。
ただ一度の腹部への一子の攻撃を除いて、斬撃を、矢を喰らい、鉄心の攻撃を直撃しながらも無傷だった事。その衝撃を利用して、釈迦堂のリングと一子の十字架討ちを防いだ事。それらから完璧に判断した一子の残した情報。
「さあ『武神』。邪魔せずに去ると言うのなら、殺さずに見逃してやろう。」
「吠えたな、黒田ァ!」
神の名を冠する百代の最高速は、高昭では及びつかない程の代物。如何に反射神経が優れようとも、全くの無策で対処出来る筈もない。
否、問題は高昭ではなく百代の行動。
これが考えの上なら高昭も迎撃に動けた。だが、怒りを煮え滾らせる百代の攻撃は、余りにも考えなしで、最短で、過剰であった。
「人間爆弾!」
射程に収めるや否や、命すら微塵に吹き飛ばすべく、百代が炸裂した。
市街地の喧騒が聞こえ出す頃。
病院の一室の窓は大きく開かれたままである。外から入り込んで来た雨で、カーテンは濡れてしまっている。未だに目を覚まさない女性は、風に晒されて、心なしか顔色が悪かった。
「バラバラの家族か。」
その病室に踏み入った委員長が呟く。
先代の黒田である高昭の父は病室から逃亡している。その結果として、伴侶である女性の体に障るように窓を開いたままにして許容する事を良しとする。そんな父親が大黒柱であったらしい。
息子は暴走。娘は友人に連れていかれた。父親は逃走。意識の戻らない母親も、そもそも、今回の騒ぎの原因を作った張本人である可能性が高い。
「この様子を見ると、親同士にも溝はあったんだろうか。」
委員長が窓から見える曇天に語りかけると、わざとらしく鉄の擦れる音を鳴らしながら、由紀江が部屋に入って来た。
「風間ファミリーの一団として行かなくて良かったのか?」
「友人の目を覚まさせに行くのに、助力は要らないですから。」
したり顔で返事をする由紀江に、委員長がはムッとした顔で答える。
「まゆっちの助力がないと親友一人助けられない俺への当てつけか。」
「当たり前だろバーカ。」
松風がそっけなく返すと、委員長は返す言葉を探そうとした後、肩を落として唸る。
由紀江はそんな事を気にもかけずに、ベットに横たわる女性を担ぐと、部屋を出ようとする。それを見た委員長は慌てて、それを止める。
「怪我人だぞ。連れてってどうすんだよ。」
「どうするかは、私たちが決める事ではありません。それに、当事者が蚊帳の外で終結しても癇に障ります。」
「まあ、俺らは会いに行くだけと言えばそれだけだからな。。」
委員長が携帯を操作すると、窓からジェット音が聞こえた。鼻歌混じりの委員長を見て、由紀江は呆れた風に足を小突く。
「アイタッ。」
「昨日でそういうのから足を洗うんじゃなかったんですか。貴方は過去と、折り合いをつけたと先程聞いたのは嘘だったんですか。」
「一機だけ命令撤回するの忘れててさ。」
小言を言いながらも、担いでいた女性を委員長の呼んだマガツクッキーに渡すと、由紀江は窓から身を乗り出す。
一人では窓から降りる事も出来ない委員長は、由紀江に次いで、マガツクッキーにしがみつきながら降りてくる。
「あの人らが馬鹿正直に通路を闊歩して病人連れ出してなきゃ、俺らもこんな真似しないで行けたんだがな。」
「阿呆な事言ってないで早く行くぞー。おらもまゆっちも病院に迷惑かける気ないからな。」
「そりゃそうだな。」
松風の催促に委員長は頷く。病院から出て、多勢から離れて走る二人は、闇夜に潜む襲撃者の正体に当たりがついていた。
由紀江は、ゆっくりと刀を抜いて襲撃者に備える。
「まゆっちも色々言いたいことあるかもだけど、高昭に会ってから、いや全部が終わってから、あいつをみっちり説教してやろうな。」
「当然です。」
漢が命を捧げた意味に、まず張り合えたのは人生を賭けた武道のみ。
救うも、止めるも、戦うも、一心不乱で無いならば、修羅の命の意味さえ塵と消える。
正直な話、最後まで書き終わってるからそのまま載せればいいや、とも思っていましたが、自分以外の誰かが評価してくれているというだけで、より良いものにしようという活力が湧いてきます。
出来るだけ早く、良いものを投稿出来るように頑張ります。
誤字等ございましたら報告よろしくお願いします。