特別になれない   作:解法辞典

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お久しぶりです。
忙しかったのと、本当なら全部書き上げてから投稿していきたかったという気持ちでした。しかしながら自分で決めていた二年という時が過ぎようとしていたので投稿した所存です。

あと前回がちらっと日間ランキングにあがっていました。ありがとうございます。

兎に角エタる気は無いので気長に待っていただけたらと思います(自分以外にこの作品が好きな人が居ればの話ですが)

誤字等ございましたら報告よろしくお願いします。


第二十三話 こんなにも平和で居られるのなら

 夏休みとは、誰もが望んで止まないものであろう。学生であれば普段出来ない事を行える程に長い時間を確保できる。既に学生でない人間からすれば、そんな暢気な頃の自分を望んで止まないものだ。

 高校生になってから俺にとっては初めての夏休みとなっている今日この頃。

 例の武士道プランの弊害は少なからずあるものの、『壁』としての責務を果たさなければならないこの身は然程のんびりしていられない。加え、板垣家の面々も夏休みという比較的実入りの良いバイトを行える期間であるので、寧ろ例年よりも時間がない様な気さえするのだった。

 故に、遠出する事も出来ず――つまりは何時も通りに黒田家に数人の友人で集まって遊ぶくらいのものである。今年になって特別変わった事といえば、まゆっちの友人である大和田伊予さんが遊びについてくるようになった事だ。まゆっちとは友達が少ない同士の友達であるらしく、まあ実際俺の周りの人間は委員長以外の殆どが友人の少ない人たちばかりなので、その点では割と俺や天ちゃんとも意気投合出来ていたりする。因みに、同じクラスの武蔵小杉は友達ではない。少なくとも俺は。

 そんなこんなで、ゲーセンに連れて行くくらいには大和田さんは天ちゃんともそれなりに仲良くしているのだ。逆に、高校になって出来た友人と言えば、俺にとって九鬼英雄は友人であるが、現状は会えば話す程度のものである

 そして、天ちゃんにも友人が出来ていた様で、家主に承諾を得る前から何故か黒田家で遊ぶ手筈になっていたのだった――まあ、板垣家にも事情があるので断るような事はしない訳だが。

 

 

「ここが黒田家か。」

 天使に書いてもらった地図を片手に呟いたのはクリスだった。半歩後ろには、同じく天使の友達としてこの家に呼ばれたマルギッテの姿もある。

「よもやTVゲームをする為に此処に来るとは夢にも思いませんでした。」

 声色はおどけている様に話しているマルギッテの表情は苦々しいものであった。理由は二つある。天使が友人を遊びに来る様に誘ったのが黒田家であるという、板垣と黒田の家族関係と一般との価値観的な歪み。そして、武家に訪れる目的が遊びに来る為という、吐き気を催す様な歪みであった。特に此処が『黒田家』であるから尚更であった。

 これは、マルギッテが黒田の人間の良識性を知らないが故に感じる事であるのだが、しかし、それを知ったからといって、何れにせよ驚く事となるのだ、その内に。

「お邪魔します。」

 クリスが玄関に入ると、他の人たち、由紀江と大和田伊予、委員長と呼ばれる男も丁度この家に着いたところだったのだとわかった。

 この前、つまりはこの二人をゲームセンターに連れて行くという試みの際に、既に高昭以外の人とは知り合いになっていた。その時に上手く出来なかったから練習も兼ねて遊びに来たのが、この日集まることとなった原因の一つであった。プライドが高く負けず嫌いなクリスとマルギッテにとって負けたまま、下手なままに終わる事は出来なかった。

 無論、遊びであってもだ。

「どうも始めまして、最近天ちゃんがお世話になっているみたいで。」

 天使に小突かれながら、苦笑い混じりに出迎える高昭を見て、マルギッテは不意を突かれてしまった。

 天使との会話の中で高昭の話は聞いていたものの、仮にも武家の、それも『黒田』の人間である黒田高昭の事だから、話半分に信じていたマルギッテにとっては目の前の光景はにわかに信じがたいものだった。

 クリスは、由紀江からも話を聞いていた分、マルギッテ程の同様は無かったがそれでも動揺するのには十分な光景であるのには変わりなかった。

 目の前で、釈迦堂との死闘を見た人間であるならば、そして高昭の事情や黒田家も知る人間ならば、クリスやマルギッテの様な反応をするのであろう。

 悲劇の『壁』であり、一度は右腕を故障を経験し、挫折から立ち直った黒田高昭が、同年代の人間と冗談交じりに会話している様子はその巨躯も相まって、違和感を覚えるものだった。武道から余りにかけ離れた言動が、釈迦堂と同等に渡り合うまで這い上がった男とはかけ離れて見えた。

「ところで、天ちゃんがしているのと同じような接し方で良いでしょうか。年上には敬語を使うように心がけているのですが。」

 高昭は、未だ混乱しているクリス達に、声をかける。

「あ、ああ勿論だ。天の友人なら自分の友人でもある。そんなに硬く話されても困るし、気軽にクリスと呼んでくれ。」

「私はドイツ軍人である以上、此方の口調を変えはしませんが、お嬢様の許可が下りた今、遠慮は要らないと知りなさい。」

 そんな最低限の人間味がある会話をしている内に、マルギッテの不安は小さくなっていた。だからこのまま二階へと上がるのに一切の警戒を持たなかったところで、委員長が必要もない一石を投じたのだ。マルギッテだけに聞こえるように呟いた。

「警戒する必要はありませんよ。あいつは今『壁』として居ないし、もし何かあれば、まゆっちが切り伏せる方が早いですからね。」

 半分笑いながらの委員長の言葉は、ある意味でマルギッテを安心させたが、同時に何か底知れなさというものをこの男に感じさせた。特に意味のないやり取りに頭を捻る軍人を見て、男はケラケラと笑っていた。

 

 

 合計七人を押し込んでなお遊べているのは部屋が広く快適であるからではなく、各々が楽しめているからであろうこの部屋。無論、高昭の部屋なのであるが、夏真っ只中であり、冷房をつけても暑いものは暑いのであった。

「だからな、まゆっち。一番人口が居て且つ取っ掛かりが簡単なやつの方が良いだろ。ああ、高くんは二人にキャラ選ばせといて。」

「しかしですね。天ちゃんは格ゲーが好きだから良いかも知れませんが、クリスさん達をゲームに馴染ませる目的なら他のジャンルとも付随しているものの方が良いのではないでしょうか。」

 そういってちらちらと伊予を見る由紀江に気づいて、伊予は苦笑いを浮かべる。

「まあオラが推察するに、どこぞの野球少女が飽きない様に、野球キャラがいるゲームの方が良いんじゃないかっていうまゆっちの思いやりなんだぜ。」

「そんな気をまわさなくていいよ、まゆっち。ほら、私はあの選手好きじゃないけどGGだから野球に無関係とも言い切れないし、ね。」

 由紀江の伊予に対する遠まわしの思いやりを、松風に喋らせ自ら暴露した――由紀江本人は幾ら感謝される事態に陥っても松風が九十九神である設定を貫き通す。故に、目線を合わせずに白を切ろうとする由紀江を見ながらも伊予はその言葉を嬉しく思っている様で、少し恥ずかしげにしていた。

「うん!自分はこの騎士っぽい奴に決めたぞ。マルさんは決まったか?」

「このトンファーもどきを獲物にしているのにするか、それともこの軍人か。お嬢様はどちらが良いと思われますか?」

 クリスとマルギッテは画面を見ながら唸ったり、話し合いながら楽しんでいた。戦いに身を置く人間であるから、こういったゲームには興味があるよう、というのは強引なこじ付けではないのだろう。以前の時に天使が、高昭もこういったゲームから影響を受け武道にも活かしている、という嘘でも本当でもない言葉が利いていた可能性もゼロではない。

 だが、何にせよ今は純粋に遊ぶ事に集中している様で、皆が友人と遊ぶ事に夢中であった。

「高昭よお、てめえのお部屋のエアコンは壊れてんじゃねえのか。何だってこんなに暑いんだよ。」

「テレビを二台置いて、ハード本体二個置いて、この人数で真夏に一つの部屋でこの人数で遊んだら暑いのは当然だ。『遊べる時間は有限だから効率を考えろ』と言ってハード持ってきて、テレビを運ばせたのはどこのどいつだ。」

「高昭、ドイツがどうかしたのか?」

「いやクリス、高くんが言ったのはそういう意味じゃなくてな。」

「そいつはオラんだ、なんつってな。」

「しばくぞ、松風。」

 暑さのせいで、それなりに気の立っている委員長の、怒り半分冗談半分の言葉で一連のボケに落ちがついたところで、伊予が疑念を投げかけた。

「まあ、暑いのもそうだけど、こんなに色んな電化製品とか一度につけてて、黒田くんの家は大丈夫なの?遊んでる時に聞くことじゃないかも知れないけど。」

「それなら自分も聞きたい事がある。日本の武家はどうやって生計を立てているんだ?興味があるんだ。」

 便乗する形でクリスが質問を重ねると、高昭は暫し考え、由紀江に視線を送る。すると少し伏し目がちに首を振っている事に気がついた。

 それはつまり、余りべらべらと喋りすぎるな、という警告でもあったし、語るならば自分の家に留めておいた方が懸命だ、という通達でもあった。

「黒田家はその歴史で以って、食い繋いでいる。正確に言えば、記録だがな。」

「何が、食い繋ぐ、だ。高昭のが俺の家よか余程良い暮らしをしてるだろうに。」

 委員長が、至極どうでも良い部分に食いつく。言うまでも無く、高昭はそれに答える事をせずに言葉を紡ぐ訳だが、軽口が挟まれたせいで、これからの話はあくまで世間話に過ぎない話となり、高昭としてもそのつもりだった。。

 指し示したかの様な無駄な言葉は、一方で周りの緊張を無くし、しかし一方でマルギッテに警戒心を再度抱かせるのであった。そして、その実、先の一言はマルギッテに要らない動揺、疑心を誘う委員長の戯れである。

「長い間、『壁』としてつけてきた記録は、色々な武術のルーツを辿るのに重要で、失われた武術が記されているものもあるから、価値があるんだ。」

「へえ、じゃあ開かずの間には、その資料があるんだな。」

「開かずの間?」

 天使の呟きに興味を示したのか、クリスが聞き返す。

「おじさん、高くんのお父さんが作業してるらしかった部屋なんだけど、ウチらも紗由理さんも入っちゃ駄目なんだってさ。あ、そうだ高くん。紗由理さん今日帰って来んだよな。」

「夕方までには着くって言ってた。少し用事を済ましてから来るってさ。っと、どこまで話したっけ。」

 高昭はどこか上機嫌になった天使のせいで折られた話の腰を戻した。

「開かずの間、についてだったぜ。しっかりしろよなシニョール!」

「……あのねまゆっち、クリスさんたちに合わせたのかもだけどシニョールはイタリア語だよ。」

「い、今喋ったのは松風であって、私では無くてですね。待ってください、皆さんなんでそんなに優しい目で私を見るんですか!」

 元々残念な目で見られているというのに普段よりも可愛そうなものを見る目で微笑まれた由紀江はぷんすかと怒っている。しかし、実のところ友達っぽい会話ができているな、と内心で喜ぶ由紀江であり、満更ではないと感じていた。

「中途半端な人が見ると危険だからな。姉さんは表向きは一般人だし、そうでなくても黒田の技を真似して昔怪我したどっかの誰かさんも居るから俺と父さんしか入れないようにしてるんだ。」

「どっかの誰か……。一体なに兵さんなんだ。」

「つーかリュウの事だろ。」

 今となっては笑い話であるが、当時、黒田の奥義を見様見真似でやって筋繊維をズタズタにして怒られていたリュウを思い出して、天使は苦笑いを浮かべていた。

「達人なら大丈夫って事は、まゆっちなら見て良いって事?」

「そんな達人だなんて恐れ多い!私はまだ修行の身の上ですので!」

「そうだぜ伊予っち、そんなにまゆっちの事煽てても何も出てこないぜ。それにオラ的にもまゆっち的にも、黒田の書物必要ないしな~。」

 松風の――つまりは由紀江が断言した『必要ない』発言に、クリスやマルギッテは、普段見せない由紀江の自信だと勘違いして唖然として、委員長はそれを焚きつける様に由紀江を煽り立てようとする。

「まゆっち、これは『壁越え』の挑戦も近いって事かな?」

「いえいえそういう訳じゃなく、必要ないのもそういう訳じゃなくってですね。いやでも自信がない訳ではないのですが、その、ですね。」

 ばつが悪そうに話す由紀江を見て、女性陣は微笑ましく見つめ、高昭は溜息を吐き、委員長はケタケタと笑っていた。

「まゆっちは家の資料は本当に必要ないんだよ。」

 結局高昭が助け舟を出す事となる。

「黛の活人剣と違って、黒田の武術は殺人拳だから。」

 

 

 真夏。その暑さから逃げて来た人が集う喫茶店で、三人の男女が向かい合っていた。

 一人は紗由理。『友達の友達』の相談を聞いて欲しい、と高昭に頼まれてここに居る。その時は、つまりはそれは『自分』の事の相談なのではないか、と考え、あの時から頼る事をしなかった高昭に内容も聞かず受けた訳だが、勿論そんな訳がなかった。それでも頼られた事には変わりなく、十二分に嬉しいのは事実であった。

 残る二人は葵冬馬と井上準。彼らからしてみても、全くの無関係の人が相談に乗ってくれて戸惑っているが、経歴や他の人の話を聞く限り適任である事は分かったし、『彼』にしては上手い事取り次いだものだと、呆れていた。

「ごめんなさいね。貴方達は色々教えて貰ったみたいだけど、あの子は私に待ち合わせ場所くらいしか教えなかったから。どっちが、マロードくん?なのかな?」

「ああ、私の方ですね。そっちはあだ名の様なものでして、本名は葵冬馬と申します。こっちは井上準です。」

「どうも。」

 紗由理の不意打ちに、二人は一瞬閉口しかけてしまった。いや、正確には『彼』が仕組んだ事ではあるのだ――紗由理は何も知らないのだから。そしてそういう悪戯を止めない程には高昭も冬馬達の事を良くは思っていないのだろう。何せ、彼らと黒田は対立していたと言えない事ない時期もあったのだから。

 それは紗由理も板垣も伝えられていない事であり、これからも伝えられる事もない。黒田家にとっては些事であり、『彼』が、九鬼に介入されて火遊びも終わりだ、と高昭に伝えた時も興味無さげに相槌を打っただけらしかった。

「なんかコードネームみたいだね。」

「男子だからガキの頃はやったりしますから。特に『あいつ』はそういう事やってるのが好きだったみたいで。」

「委員長くん、そういうの好きそうだもんね。」

 紗由理と準が話していると、あからさまに次の話題に入りますよ、といった具合に冬馬が口をつけていた飲み物を置いた。

 紗由理も佇まいを一度直す。

「相談と言うのは友人の事なんです。小雪という女の子なのですが、どうにも私や準に依存しているようでして……。」

「依存?」

「ユキ、小雪は子供の頃に俺らに近しい人の養子になったんです。そういう事情とか、加えてその頃からずっと一緒に居たからなのか、依存、するようになってしまって。」

 今度は、乾ききった口を潤すために持ち上げていた飲み物をおろして、冬馬が言う。

「でも、結局、だからといって、どうすれば正解なのか分からないんですよ。そこで黒田家の話を思い出したものですから、不謹慎ではありますが、意見をいただきたくて。」

 少し、紗由理は考え込んだ。そして、値踏みするように二人を見ると、注意するように話し出した。

「深く、知られたくない事情があるのかもしれないけど、その程度の情報しか教えてくれないなら的確なアドバイスもできないわ。」

 的確に急所を突かれた二人には動揺が走る。

 出来るだけ、隠したものの、冬馬とてバレずに済んだとは思えない。

(相談だけが目的でない事がバレている?だが、この人は裏の事情に関わっていない筈であるし、仮に知っているとすれば黒田高昭が私や準にそれを教える事に何のメリットが?)

 冬馬の読みは間違っていない。

 しかし、その思考は黒田の事情を少なからず知っているからこその思考であり、紗由理がそれらの実家の事情を何も知らない、という事を知らない故の愚考であった。

 そして紗由理は、冬馬と準が考えるよりもずっとお人好しであるのだ。だから、自分が板垣達と仲良くなった経験と、高昭の右腕に気づけなかった経験に思いをはせながら口を開く。

「でも、あなた達がその娘をどれだけ考えてるのかは、伝わってきた。だから、もしかしたら役に立たないかも知れないけど、ちょっとしたアドバイスはしてあげられる。」

 元から、そのつもりで来ている紗由理と、複雑な思考のせいで肩透かしをされた冬馬と準の様子は、何とも歪である。だが、過去の自分を重ねて見る紗由理にとっては、彼らの後ろに高昭の姿を幻視する。ぎこちなく表情を変えようと努めるようになった実の弟の姿を思い出してしまう。

「もし、一度距離を置こうと考えるにしても、お互いに本音をぶつけ合おうと思っても、絶対に軽はずみではしない事。後悔をしないと心に誓ってからする事。私たちと違って偶然の事故に対処するのじゃなくて、自発的に解決するんだったら余計に責任から逃げられないから。それに……。」

「私みたいな一般人と違って、あなた達みたいな人は危ない方へ進んでいくでしょう?自分の事を蔑ろにする人が他人を喜ばせられないって事だけは心に留めて置いてね。」

 

 

「なんか、普通に良い人でしたね。準。」

「そうだな、ざっと十年前に出会いたかった。」

 相談事を終えて暫くたってから二人は喫茶店から出た。

 禅問答の様な質問を、同じ様に返されたお陰で、考える時間が必要だったが、少なくとも準は納得のいく答えが出た様子で、すっきりとしていた。

 対する冬馬は、まだ悩む素振りを見せている。

「しかし我ながら要領を得ない質問でしたが、良く答えてくれましたね。」

「まあ、多少本筋からずれた様なアドバイスだったけどな。結果として参考になる考えが聞けたから、ちょっと思い込みが激しい程度は目を瞑るよ、俺は。」

 誰かさんと違って、と暗に言い含めた準が目配せすると、冬馬は肩を竦める。

「最近色々ときな臭いですから、私たちの弱点を晒しつつ、一番怪しい黒田へ牽制のつもりだったのですが……。」

「目論見でも外れたか?」

「いいえ、判断材料が増えすぎて、寧ろ黒田が怪しくなく思えてくる。というより、恐らく私たちが結論を導くには何か大切な部分が足りない。」

 冬馬はケータイを弄りながら半ば諦めたように呟いている。

『はい、もしもし。遊びに行ってるの知ってて電話かけるの止めてくれませんかね、マロード。』

「いい加減その名で呼ぶのは勘弁して欲しいのですが。自分は『委員長』である事に執着しているのに、大人気ないと思いませんか。」

『……。』

 都合が悪くなると喋らなくなった委員長に対して冬馬は、電話越しの相手にも聞こえるように溜息を吐く。

「子供じゃないんだから黙らないで下さいよ。」

『――役割の中でしか何も成し得ない。』

「どうしたんですか、いきなり。」

『マロードなら分かってると思いますが、川神の地で何かが起こる。俺たちがかつて起こそうとしていた事よりも危険な何かが。』

 そこまでの言葉を聞いていた準が、冬馬からケータイを引っ張った。

「お前なぁ、何を知ってんだかわかんねえけど、俺らの心配すんのもいいけどよ。俺たちだって心配すんだからな。こんな回りくどい真似しねえで、ちゃんとユキにも伝えてやれよな。」

『……。』

「じゃあな。」

 準がすっきりした顔で冬馬にケータイを返すと、冬馬は呆れていた。

「まっ、細かい話は今度皆で直接って事にしようや、若。」

「そうですね。機会があれば、久しぶり彼とも直接話したいですね。」




格ゲー用語解説

GG……言わずもがなギルティギアの事であって、G.G.ではない。作中ではプレイ人口が云々と言っているがそんな事実はなく、本当の理由は初心者に嬉しい機能が充実しているからである(初心者向けとは言ってない)。


クリスとマルギッテが言っているキャラについて……上記にあるギルティギアに登場するカイ、レオ、ポチョムキンの事である。

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