憤怒の暴君、転生する 作:鯱丸
これも全てザン様チームの強さのせいです。十年後テラチート
ストックがチョイス当日の戦う前まであるので、そこまでは問題なく更新できるです
それにしても、雲雀恭弥がチェッカーフェイスとは衝撃的だ。しかもこっち側となると……な。
マーモンは雲雀恭弥であると認め、さらに続けた。
「チェッカーフェイス、もとい雲雀はボンゴレ側の人間としてチョイスに顔を出す予定だ。一応表向きは戦闘狂だし、いざとなったらこっち側として出られる……被ったら誘拐するしかないけど。で、問題は他の属性だよ」
「霧と雨をお前らとして除外、雲は雲雀として考えると残りは四つか。俺は大空と嵐なら兼任できる。あと、白は大空と雷だな……あいつが来られるならの話だが」
「ムムッ、だとしたら晴がいないね……ま、いっか。誘拐すればいいし。あと、何かあった時のために僕らの属性分、誰か入れて欲しいな」
マーモンとコロネロはアルコバレーノのため、戦闘に参加できない可能性もあるらしい。
おしゃぶりを持っているため、チョイスで死んだら困るということだろう。チェルベッロがその辺りを決めるらしいが、参加できない確率の方が高いようだ。
マーモンの代理となる奴といえば凪かデイモンだろう。いや、デイモンはボンゴレの件もある筈だし参加はしないか?
まぁいい、一人いればそれでいい。そしてコロネロの代理だが……
「雨なんてうちにいたか?」
思わず洩らしてしまった言葉に、今まで独り言をぶつくさ言っていたカスチビが「いいや」と返した。
「僕らは全員、夜だよ」
「役に立たねぇな」
俺や凪の件もそうだが、特殊な属性の場合はどうなるんだろうな。この中には含まれないという意味で無属性もありだと思うんだが。
それは後で考えるとして。
雨属性を持つ味方のこともとりあえず後回しだ。適度に探してれば見つかるだろ。いなければミルフィオーレの誰かを誘拐して人数合わせにすればいいだろうしな。
そいつは死んでも別に構わねぇ。ただの人数合わせだからな。一人減ったところで、碌に戦闘経験のないガキ共とクソみたいな女相手に負けるわけがない。
雨の方はまだ考えていないとマーモンに言えば、あまり気にしていない様子で奴は返した。
「もし雨がいなかったらコロネロ出すから心配はないさ。しぶといから死なないでしょ」
「おいっ!」
「で、大空七属性以外にも無属性があるんだけど……これはどうする?」
「イェーガーとエレナにしておけ」
イェーガーはともかく、エレナはヘルリングに宿っているからどちらかといえば霧だが……霧属性を使わなければ別に問題ないだろう。ダメだとしてもイェーガーを使えばいいしな。
復讐者のイェーガーは夜属性になるかもしれんが……夜属性を生産しているのはカスチビだけだから、カスチビだけが属性保持者ということにならんか?つまり、イェーガー含めた他の復讐者は無属性ということだ。
ああ、凪が言うにはリングを外していれば無属性として認められるらしいな。ということは、リングをしていないイェーガーは無属性か。なら問題ない。
「イェーガー」
名前を呼べばどこからでも現れるイェーガー。今回も名前を呼べばその外見からは想像できない甘い香りを漂わせて転移してきた。
アップルパイを片手に、パンプキンパイをもう片方に持つイェーガーに視線を移せば「大丈夫だ、問題ない」とドヤ顔で言ってきた。
本人の了承もあるのでそういうことにしておくか。
そういう風に話が決まろうとしたが、やはり事は上手く進まなかった。
「って、待てー!!!ダメだよダメダメダメ!XANXUS君と凪君は良しとして、僕らは表には出ないよ!だからイェーガー君の件もダメだ」
話が進みそうな時に限って妨害する邪魔なチビ。その名も、カスチビ。
イェーガーは仲間に入りたそうな顔をしているというのに、連れ戻したがっているようである。
だが奴のこの言葉はイェーガーの好感度を下げるだけだったようだ。
「バミューダが何を言おうが駄々を捏ねようが金を出そうが聞かんぞ。それでも否と言うのであれば、ここで決着を漬けようではないか」
「だから、なんでパイを構えてんの!?それ、僕のおやつ!!」
「ふっ、二つのパイはもうおやつではない――立派な兵器と化した」
「はぁ?」
俺が口を開く前に、イェーガーはアップルパイをカスチビ目掛けて投げた。勿論カスチビは躱す。
ここでパイはあらぬところにぶつかって見るも無残な姿になるかと思われたが、イェーガーの実力は甘くない。
奴はパイが投げられた方向に出現し飛んできたパイを上手く受け止め、そして再びカスチビへと投げた。
その際、何かがパイから飛んだ気がするが気付かなかったことにする。流石にスピードで崩れたパイから飛んだリンゴは奴の技術をもってしても防げなかったようだ。
「まだまだ!これでもくらうがいい――
「名前おかしくない?!って、ギャース!!」
哀れなカスチビは、イェーガーによりパンプキンパイを顔面から被ることになった。無様な顔をしてやがる。
面白かったのでカスチビにこう言ってやる。
「その姿の方がお似合いだぜドカスが。普段の格好よりその方が無様でテメェらしい」
「それって普段から僕が無様だって言いたいのかい?!」
「自覚しているのか」
「ムキーッ!」
ハンカチを噛み締める素振りをするカスチビ。何故ハンカチなのか疑問に思うが、ツッコミを欲しがるカスチビの策略とも言えなくもないので敢えて口を閉じておく。
俗にいう「かまってちゃん」なカスチビは無視をされたからか悔しげに顔を歪めた。
「というわけでだ、イェーガー。テメェは何かあったら戦え。カスチビが煩すぎて今のところ出る可能性は低いだろうがな」
「それは残念だ」
手にギラリと妖しく光るフライパン返しを持つイェーガー。至極残念そうな顔をしている。
それで本当に戦うのか気になるところだが、ここでそう口に出しては現実になってしまう。俺としてもカスチビの考えていることはわかるし、イェーガーを本来なら出すべきではないことくらいは承知の上だ。
だが、カスチビの事情なんてユニの事情と比べれば大したことない。奴らにとっては重要だろうが、世界規模で見ればユニの方がずっと重要だ。
奴らがチェッカーフェイスを嫌っているのはわかる。だがそもそも、こちら側の推定するラスボスがチェッカーフェイスだ。
奴と戦う前に力をつける必要はある。それは既に完成された戦闘技術を持つこいつらとて変わりはしない。
ここは時代に倣って近代的な技術を使うべきだろう。匣兵器ごときで奴に勝てるとは微塵にも思ってないがな。
カスチビに提言すると、意外なことにカスチビはあっさりと頷いた。
「何年も変わらない僕等が時代に負けるのは自然の摂理さ。君から前世の僕等の大敗を聞いて、何も考えないわけがないだろう。僕等は人間だよ、成長しようと思えばできる」
「人間ねぇ……」
「ちょっとマーモン君、その視線は何か言いたげだね!?まさか僕が人外だとでも!?」
マーモン、コロネロと顔を合わせて三人で頷く。数百年単位で生きているような奴が人間とか笑えるぜ。
デイモンも人外を自称しているのに、あいつより長生きしている奴らが人間を自称していてもな。
カスチビは影を背負いながら「僕は人間の筈だ」と絶え間なくぼやく。煩わしかったので奴を蹴り飛ばし、イェーガーに捕獲してもらう。
俺の指示に従ったイェーガーはカスチビを「カス入りカゴ100円」と書かれたカゴに突っ込んで、どこかへ持ち去った。これで平穏が訪れたな。
「話を戻すが、雲雀は過去から来るんだったな。その辺りは大丈夫なのか?」
「うん、過去の自分宛にメッセージを残しとくから問題ないって。じゃあボス、僕等はちょっとユニと話してくる。あ、そうそう。チョイスの前日にそっちに来るよ」
「ああ」
マーモンは別れの言葉を言ってから通信を切った。切ってから気付いたが、俺はチョイスの前日がいつの話かわからない。予定表を見ればわかるかもな。
さて、雨の代理人を探さねぇとな。といっても、話している間に今更といった感じで気付いたんだがな。
前世ではとっくに死んでいたらしいから全然気づかなかったある男のことだ。息子は死んだと思っているだろうが、実はこっち側にいたりする男――山本剛である。
「なんとなく手元に置いといてまさかこう繋がるとは」
まったく、行動がどう繋がるかなんて……もう前世も何もクソも関係ない。チョイスも恐らく前世通りの結果にはいかない。いや、させない。
覚悟しろよ白蓮。チョイスではテメェらミルフィオーレに大敗をぶちかましてやる。
…… ……
…… ……
「ん?とあるゲームの代理参加?おう、いいぜ!」
寿司を握る山本剛に話しに行けば、案外簡単に了承が取れた。予想はしていたがここまであっさりしていると何とも言えねぇ。
まあ、理由が理由だからと無理に納得しているが。
山本剛の握った寿司は俺達の胃袋に収まっている。他の囚人達にあげるほどたくさん作れるわけでもない山本剛は、六道や白といった一部の囚人と俺達に寿司を握っている。
魚料理全般はできるということで、イェーガーやエレナに続いての料理担当だ。ちなみにエレナやイェーガーは魚料理については山本剛に首位を譲っているらしい。
あいつら、よくわからない戦いをしてやがる。デイモンは全ての料理においてエレナが最強だとほざいてるが、俺としてはどうでもいい。
なのにあいつら全員は何かと俺に審査員をさせたがる。平等なのは俺だけだと言っているが、これで俺は嫌でも思い知った。俺達側の人間は何かしらのエサで釣れる人間ばかりということに。
凪は泣き落とし。カスチビは人には見せられない雑誌(何とは敢えて言わない)。マーモンは金。デイモンはエレナに限っては色気でそれ以外は怪しいグッズ。
とりあえず、凪以外は一度死んでも良い。マーモンはもう嫌というほど知っているから、寧ろそれを貫いてもらわないと困るがな。
というかなんで料理の話になっていたんだ?まあいい、とりあえず山本剛はこっち側の料理人として働いている。
息子がマフィアだとかいう話は既にしている。あと、狙われた理由とかもな。それでいて保護――その実情は新たな料理を探究していたカスチビと俺による強制的な移動措置――してやったわけだ。
山本剛は息子そっくりの天然さで、息子が生きていることとまた会わせることを条件に受け入れた。
心が広いとかの問題じゃない。こいつの頭の中身が呆れを通り越して心配になってくる。
作りたての寿司をカスチビから奪って口にする。わさびが入っていなかったので、わさびを入れずに食べるガキの味覚を持つカスチビを鼻で嗤っておく。
何やら喚き始めたカスチビをスルーして、ネタを握る山本剛へ告げる。
「チョイスとやらに、テメェの息子は必ず顔を出す。代理人として出るにせよ出ないにせよ、息子と話しても構わん」
「ありがとよXANXUS!やっぱりお前さんは優しいなぁ!!」
「気色悪いこと言うんじゃねぇ」
俺が優しいだと?俺が優しいなら、吐きそうなほどに甘い沢田綱吉や凪は何だ?大体、基準が違うだろう。俺を基準にしたら世界の半数が優しい人に認定されるだろうよ。
それを言ったら、奴は大きく口を開けて笑った。
「優しい奴は自分で優しいなんて言わねぇさ!お前さんは否定してもいいんだ、俺が一人でそう言っているだけだからな」
「大人の言葉だね、カッコいいと思うよ」
「おうっ!って、照れちまうじゃないか、バミューダさん」
「いいんだよ照れちまいなよ。君も照れてみるかい?XANXUS君」
イラッとする笑みを浮かべるカスチビの目にわさびを飛ばす。どこかの誰かのように「目がァア」と悲鳴を上げるカスチビは捨て置き、立ち上がった。
「時間はそれほどないが、戦い慣れておいた方がいいだろう。武器がないならテメェが押し付けた竹刀をくれてやる。俺はあまり使わねぇからな……というか、使いたくない」
「あ、それって……ソウエンか?」
見覚えがあるであろう竹刀を投げ渡せば、危なげなく受け取られた。カス鮫を斬った以降は全く使っていない竹刀。竹刀を使わなくても勝てるというのはあるが、それ以上にこれを使いたくなかった。
たまに剣の練習はするが、その時は凪に作ってもらった幻覚の剣を使っている。
山本剛も俺も同じように、これを使いたくないと思って手放している。だが今回はそれを使わざるを得ないだろう。
幻覚の剣で倒せるほど奴らは甘くはない。本気を出すなら銃と素手が一番いい俺は、別にそれを使わなくてもいい。
「俺も使いたくねぇんだけどなぁ……なんか握ってる時、妙な感じがするからなぁ……それにこいつで……ま、今回は仕方ないか!じゃあ久しぶりにやってくらぁ」
複雑な顔でソウエンを握り、山本剛は外に出た。外には修行するための空間がある。ちなみにそこは俺が炎で山の穴をあけまくっていたら偶然できた空間だったりする。
重要なものがあるとか何とかでカスチビに怒られたが、奴の大事なものも特に大事なかったらしい。なら怒るなという話だが。
「ガルルッ」
「凪のところにいたんじゃなかったのか?エサが必要ならそこから取って行け」
「ガウッ」
どうやらベスターは凪たちの分も取りに来たらしい。山本剛が届け損ねた弁当の入った袋を咥えて機嫌よく去って行った。
それを見送り、俺も部屋から出る。と、急に肩に重みを感じた。
「酷いなXANXUS君。わさびを投げた僕に対して謝罪もなく出ていくなんて!」
「謝罪?」
「え、なんで『俺、悪いことしたっけ?』みたいな顔をしてんの!?してるじゃん、君は毎日僕に対して酷いことをしているじゃないか!!」
さて、どうだったかな。それに毎日こいつにどういう仕打ち……ではない、お仕置き?違う、悪戯……でもない、とにかくだ。毎日こいつに何かをしたかなんて一々覚えられん。
耳に近くて煩いので、カスチビを摘まんで近くに捨てる。直ぐにワープして今度は頭の上に乗られた。
「さっさと降りろカス」
「僕は軽いことに定評があるんだよ」
「凪とエレナの前でそれを言ってみるといい」
「え?なんで?まぁ別に良いけど。僕はみんなに言うからね」
カスチビは女心という俺もよくわからないものの存在すら知らないようだ。それも仕方がない、何せ赤ん坊だからな。
俺は面倒だが流石にそれを言ってはいけないことくらいは知っている。女の前で体重関連の話題は地雷というのはどの時代のどの女でも共通している。
凪はともかく、エレナの前で言ったらあいつは地獄を見ること間違いなしだ。
今夜くらいに死ぬであろうカスチビのために、今日は何も言わないでおく。随分と丸くなったと自分でも思うくらいだ。前なら叩き落として蹴り潰していた。
悪意にまみれている?何を言っているんだ、俺は悪意なんてない。断じてな。
おま毛~バミューダのその後~
エレナと凪が二人揃って雑誌を読んでいるときのこと。
「よいしょっと」
「ちょっとバミューダ、そこから退いて欲しいのだけど」
そこに邪魔者もといバミューダが現れた。バミューダは何を思ったのかエレナの頭上に座り、そこから二人の読む雑誌を見下ろしていた。
エレナの雑誌には美味しそうなお菓子の写真が散りばめられていた。お菓子のレシピ関係の雑誌なのだろうと推測したバミューダは、次に凪の雑誌を盗み見た。
「へぇ、意外な趣味だね」
「……ボスが読んでたものなの」
凪の持っている雑誌には様々な種類の酒の写真が載っていた。説明も添えられたこの雑誌、もしかしたらカタログなのではないかとバミューダは密かに疑った。
XANXUSはここから勝手に注文していたのか。
バミューダは若干イラッとしたが、注文した酒を分けてもらっている身では何も言えない。見なかったことにした彼は、怒ったエレナによって摘まみ出された。
「って、また私の所に!」
「どうして君達は皆、僕が頭の上に乗ることを嫌がるんだい?僕は軽いことに定評があるのに」
「あら……軽い……ことに定評があるのね……ふふふふふ」
途端にバミューダは悍ましい寒気に襲われ、思わず腕を擦った。一体何がどうしたのか。彼にはよくわからなかった。
「あれ?この沈黙は何だい?」
「何だと思うかしら?」
頭上のバミューダを掴んだエレナは、自分の顔の前まで移動させた。その凍えた視線にバミューダは冷や汗が流れた――XANXUSの嘲りしか含まない笑い声が木霊する。
背後から殺気を向けられた気がしてそっと背後を振り返ると、無表情の凪。見なかったことにして前に向き直ると、満面の笑みのエレナ。
「女性の扱い方っていうのを教えてあげないといけないわよねぇ……覚悟しなさい」
「いや、その……うわぁあぁーッ!!」
その日の夜は赤ん坊の悲鳴が延々と牢獄内まで届いていたという。
囚人たちは赤ん坊すら手にかける復讐者に恐れをなし、こうして復讐者の恐怖の代名詞が新たに作成されるのである。