「遅い!もう一回だ!」
あたりに怒号が響く。もう何度この怒鳴り声を聞いたかわからない。
俺は昨日、このガイオン軍地上部隊第19SSF(宇宙特務部隊)連隊の選抜試験に合格し、SSFに配属されることとなった。
そして今日は早速、ジャクソン大尉の監視下で、地獄のような訓練を受けていた。
今やっているのはキルハウス突破訓練(K.B.T.)だ。そこで俺は23秒44というタイムを出して怒鳴られたというわけだ。それにしても、俺が普通科連隊に居た頃は、23秒なんてタイムを出そうものならトップクラスの成績だったはずだが…SSFにはバケモノしかいないのだろうか。
「コーツ、遅いぞ。23秒もかかっていたらとっくに蜂の巣にされちまってる。一つ一つの動作を正確に、素早くこなすんだ。見たところリロードが遅いようだな、それならハンドガンに持ち替えた方が早いぞ」
そう、大尉は俺にアドバイスをくれた。俺は訓練の繰り返しでヘトヘトだったが、このK.B.T.が最後の新兵訓練だそうなので、なんとしてもこの訓練をクリアしてやるという意気込みで、もう一度LS-8(ビーム式アサルトライフル、GSSFの採用品。)を掴んでスタート地点へと向かった。
「よし、始めるぞ、準備は?」
「できています」
「では、スタート!」
大尉のスタートコールが響くと同時に、俺はキルハウスの最初のポジションへと向かった。
「第一地点!ターゲット3つ!撃て撃て!」
大尉のアナウンスと共に飛び上がったターゲット3つを撃ち倒す。
「次の地点だ!行け行け!」
「第二地点!ターゲット4つ!迅速に制圧しろ!」
大尉のアナウンスの前に全てを撃ち倒す。
「第三地点!グレネードだ!」
「第四地点!ターゲット5つ!」
「第五地点!フラッシュバンを使え!」
「最終地点!ターゲット6つ!」
「最終タイムは20秒12、良くはないが悪くもない。まあこれなら合格だろう」
と大尉は言った。普通科連隊の連中でも中々出せないタイムを叩き出してやっと合格らしい。ここにいたら体がもちそうにない。
「ふむ…まあ何にせよ、これで新兵訓練は終わりだ。お前には次から俺の指揮下に入って任務をしてもらう。初任務には心してかかれよ」
「了解です、大尉」
『国籍は地球連邦、行き先はガイオン共和国領星CN-21、ヴァンツーリア区だ。"積荷"の登録ナンバーは2121-8561-3300。交戦規定は特になし、自由だ。搭乗員への発砲は全面的に許可されている。…それから、"積荷"の確保は慎重に行うように』
『了解』
…外の宇宙は星で満ちている。
今回の任務は、核兵器を載せた貨物宇宙船の強襲、核兵器の回収だ。そしてこれが、俺のSSF隊員としての初任務となる。
『目標船へ到着まで30秒、各員準備せよ』
大尉の指示だ。俺はそれを聞き、宇宙服を着て準備をする。
『各機、ポッド射出まで3,2,1…』
『射出』
静かに、小さな個人用宇宙航行機から、小さな、隊員を乗せたポッドが射出される。そしてその後、射出されたポッドは完全に真っ二つに割れ、俺たちは宇宙空間に放り出された。
『各員、ブースターを確認し、スイッチを入れろ』
俺は大尉の指示に従い、ロケットブースターのスイッチを入れる。ブースターの炎で推進し、目標の宇宙船にどんどん近づく。
そして、もはや宇宙船は目の前となった。
『各員、グローブのマグネットで貼りつけ』
大尉の合図と共に、隊員達は一斉に、グローブに付いたマグネットで宇宙船に貼りつく。
『俺が外部ハッチを開ける。合図と共に侵入しろ』
『3,2,1…よし、侵入しろ』
合図と共に、俺たちは一斉に開いたハッチから船内へと侵入した。