サムライ・ドラ   作:重要大事

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昇「ふふふ・・・ついに俺の時代がやってきたな。今日は俺が主役だ!!残りのキャストは全員俺様のための手となり足となるがいい!!なーはははははは!!!」
ド「長官が主役の話?誰もあんたの活躍を期待している人なんかいないって言うのに・・・」
駱「つーか聞いたぞ、長官!今日の話、なんかものすごく羨ましいウハウハな展開になるって!!俺たちはモテない男同士仲良くしてきたつもりだったんだけどな!!」
ド「R君、ネタバレすると話がつまんなくなるから。ま、今日の話はホントにつまんないから見なくてもいいけど」
昇「見ろよ!!簡単につまんねぇとか決めつけてんじゃねぇよ!!」


ラプソディー・オブ・ホワイト

西暦5538年 12月19日

TBT本部 特殊先行部隊“鋼鉄の絆”オフィス

 

 深々と雪が降り積もり小樽。季節は12月―――亜寒帯湿潤気候に属する北海道の厳しい冬が本格的に到来したと言える。

「写ノ神く―――ん♪」

 仕事中、満面の笑みを浮かべ顔を近づけ茜が写ノ神へと近づいてきた。見慣れた女性とは言え、まだまだ初心な写ノ神には少々刺激が強かったらしく茜に笑顔で見つめられるだけで心臓の鼓動が高鳴る。

「いよいよですね」

「いよいよ・・・?」

「はい。今月は年に一度の一大ビッグイベントがあるじゃないですか」

 そう言われて写ノ神は机のカレンダーに目をやり、赤いペンで25日にはっきりと丸が書かれているのを確かめる。

「もしかして、クリスマスの事か?」

「そうです!!今年のクリスマスは去年よりもプレゼントの精度を高めておくつもりです。当日にどんなプレゼントがあるのか楽しみにしていてくださいね♪」

「あ、ありがとう・・・期待してるぞ」

「はい♡」

 本当に幸せなそうなオーラを醸し出す茜と、彼女の自分への愛に期待しつつ成る丈平穏なクリスマスを過ごしたい写ノ神は、秘かにキリストに祈った。

 

 クリスマスに期待を寄せているのは写ノ神だけではなかった。

 駱太郎は多量のワックスをつけ、真剣な眼差しで鏡と向き合い髪の毛を固めている。

「何じゃ駱太郎。さっきから髪なんぞイジりおって」

 かれこそ30分以上も鏡と向き合い髪の毛をいじり続けている駱太郎を見ていた龍樹が若干呆れた様子で声をかけた。

「クリスマスは聖夜っつーんだろ。まだ本番まで時間があるからな、これから街に繰り出して俺の恋人を探してくる!!」

 要するに独り者の駱太郎は千葉夫妻を羨み、クリスマスまでに彼女を作って彼らのような甘い時間を過ごしたかった。

 年末が差し迫った今日この頃、何としてもクリスマスまでに彼女を作ろうと躍起になっている駱太郎を横目にTBT一恋愛に無頓着だが女性人気ダントツの幸吉郎、恋愛感情すら持っていないドラは自分の武器の手入れをしながら口を挟む。

「つくづく阿呆な男だ。おめぇみたいなトリ頭の単純脳細胞バカ・・・好きになる物好きがどこにいやがる?」

「時間の無駄だと思うよR君。ここで侘しくみかんでも食べていようよ」

「うるせぇ!!おめぇらに何言われようがな、俺は絶対運命の彼女をこの手で掴み取ってみせる!!待ってろ、俺の花嫁!!!今すぐに迎えにいくぞ―――!!」

 ワックスでガチガチに固めた今日のヘアースタイルに絶対の自信を持ち、駱太郎は氷点下5度を下回る極寒の街へと繰り出した。

 上着も羽織らずいつもの一張羅だけで飛び出した彼を、残されたドラたちは哀れに思い溜息を漏らす。

「あいつ自分がモテない理由を分かってるんすかね?」

「そこまでして独り身が嫌な理由がオイラにはわからないよ。だって一人の方が気楽だし、自分だけの時間を楽しめるじゃん」

「あれは独り身が嫌というよりも儂らに自慢したいだけなのであろう」

「というより、私と写ノ神君がいつもラブラブなものですから妬いているんですよ」

「ま。俺たちの事が羨ましくて一度でいいから見返したいから自慢したいっていうあさましい理由で彼女がゲットできるほど、世の中甘くないけどな」

「そういやウチにはもう一人、女とは縁の遠い上司がいましたっけ」

 ドラたちはおもむろに自分たちの上司がいる席へと振り返る。

 特殊先行部隊“鋼鉄の絆(アイアンハーツ)”の上司―――長官・杯昇流はただ今席を外しているが、彼もまた駱太郎同様かわいそうなくらいモテない男として認識されていた。

 そう・・・・・・・・・・・・・・・今日が終わるまで。

 

 

小樽市 駅前通り サンモール一番街

 

 小樽では毎年冬になると全国各地から観光客が訪れる。

 パウダースノーと呼ばれるほどに北海道の雪質は良く、海外のスキーヤー人口の急増もあって駅前は外国人観光客でいっぱい。

 また、時期は早いが「雪あかりの路」と呼ばれる雪ろうそくの祭典が2月に催され、歴史情緒あふれる街並みに並べられたそれを見る為に最近では中国や東南アジアからの観光客も増えている。

 このように冬イベントや直近のクリスマス商戦で経済の活性化を図り、街も人も活気づく中―――杯昇流の胸中はこの冬よりも凍てついている。

「クリスマスケーキのご予約はきのとやで!!おいしいクリスマスケーキを家族や恋人と一緒に食べませんか!?」

 ケーキ屋の前でサンタの格好をした売り子が道行く人に呼びかけ、すぐ近くを家族連れや恋人たちが素通りするのを昇流はチラチラと見る。

「クリスマスは私の家で過ごそう!」「プレゼントは何がいい?」「わたしね、パンダさんが欲しいってお願いしたの!」「最高級のフレンチでおもてなしするよ」「今年は黒サンタこないといいなぁ」「つーかまだサンタなんか信じてんのかよ!!」

 様々な声が飛び込んでくるが、取り立てて耳から入ってくる情報で昇流を苛立出せるのは恋人たちの会話。実際に歩いていると、腕を組んで必要以上に体を寄せ合いイチャイチャするカップルたちが沢山。彼らを見るたび、昇流の心はささぐれだち今にも爆発しそうになる。

 

 ―――俺の名は杯昇流、22歳。TBT本部長官、今年で勤務4年目。俺は今、焦りに焦っていた。年に一度のモテない男の有害イベント『クリスマス』が今年もやってこようとしていたのだ。

 ―――クリスマスは、大方イエス=キリストの誕生日だと思われ世間に浸透しているようだがそれは実は間違いだ。異教徒が農耕の神“サトゥルナリア”を祭っていた12月25日の太陽祭をキリストの誕生日に当てはめることで、教会がキリスト教の浸透を促そうとしたのが魂胆だ。しかし現代においてキリストの誕生日という認識すら至極どうでもいい話。人間にとって重要なのはその日になるとサンタクロースと称したひげ面の老父義賊からプレゼントをもらえる事にある。

 ―――子どもの間ほどクリスマスは一年の内で最も待ち遠しく、嬉しいイベントは無かったものだ。しかし大人になり、恋人ひとり居ない独り身に成り下がればクリスマスなんて行事、忌むべきイベントでしかない。

 ―――例年、俺のクリスマスは決まって悪い事が起こる。3年前は、大手お菓子メーカーが作ったクリスマスケーキの生地に使われた卵から黄色ブドウ球菌が発見され、食中毒を起こし2週間病院に缶詰にされた。

 ―――2年前は、目当ての女の子との戦国自衛隊1549デートに失敗し、その上その女の子がマル暴(暴力団のこと)の妹で、後日そいつらからお礼参りを食らい全治一か月の大けがを負った。

 ―――そして去年、鋼鉄の絆(アイアンハーツ)の結成後はじめてのクリスマスと言う事で大々的に開かれたパーティーだったが、俺は体を張り過ぎた宴会芸で腰をおかしくしてしまい、急性の椎間板ヘルニアを患い全治三か月を宣告された。

 ―――これらの事から12月25日クリスマスは俺の人生で最も運の悪い日、鬼門である。25日を迎えることは、俺にとっては死刑執行を言い渡され首切り台に立つ意を指していた。

『長官~~~こっちへいらっしゃ~~~い!!!』

『楽に切り落として差し上げますよ~~~』

『いやだぁあああ!!!俺はマリー・アントワネットみたいにはなりたくないんだ―――!!!』

 死刑囚となった昇流は、処刑人に扮したドラたちによって強制的にギロチン台へと連れて行かれ、抵抗する彼の体を装置にセットし、悪魔の笑みを向けながらドラたちが頭上からギロチンを下ろそうとする、そんなイメージが湧いてくる。

 ―――何としてもクリスマスから逃れなくては。そのためには、クリスマスというイベントそのものが及ばない僻地に行く、あるいは24日から25日までの間家に閉じこもり一歩も外に出ることなくボトルシップを作って時間が経つのを待つしかない・・・。

 ―――しかし、事あるごとにそうした浅はかな試みは失敗に終わって来た。ドラを始めとする疫病神が俺の周りを365日徘徊し、年を重ねるごとに厄災の程度も悪くなっていく。

 ―――クリスマスまでの僅かな時間、死刑執行を待つだけしかないこの俺を暗い牢獄から救い出してくれる、そんな救世主みたいな奴はいないのか―――!!!

 

「きゃ!」

「あ(いて)っ」

 などと考えていたとき、不意に誰かと肩がぶつかった。

 黒いリクルートスーツに身を包んだ女性はビジネスカバンを落とすと、直ぐに昇流にぶつかった事を謝罪した。

「す、すみません!よそ見してて・・・大丈夫ですか?」

「いえこちらこそ。考え事してて上の空になってまして・・・怪我とかしてませんか?」

 昇流も自分の非を認め、誤りながら相手の女性と目を合わせる。

 瞬間、女性が昇流の顔を見るなり目を見開き、訝しげな表情でつぶやいた。

「・・・・・・・・・昇流君・・・・・・?」

「え?」

「ひょっとして、昇流君?!」

(昇流君?誰だこの子?すっげー美人だけど、俺の知り合い?というか、何でこんなグラマーな女の子を前にして俺は平気でいられる?)

 ふんわりとしたブラウンのロングヘアーを持ち、小柄ながら目測でEカップの巨乳を持つトランジスターグラマーを前にしても、昇流のもっこりセンサーは反応しない。通常、昇流はこの手の美女を前にすると顔を赤らめ、次第に股間にあるものが怒気を帯びて固くなる。

 だがどういう訳か、普段起こるはずの反応が起こらなかった。胸中女性をかわいいと思っているのに、下心が湧かず顔も熱くならない。

「あの・・・・・・私の事覚えていないよね」

 女性が少し寂しげにつぶやいた。昇流は罰の悪そうな顔で「えっと・・・・・・悪りぃ。誰だっけ?」と聞き返すしかなかった。

「私だよ、住吉中学校で2年生まで同じクラスだった栄井優奈(さかいゆうな)!」

「栄井・・・優奈・・・・・・・・・ああ、お前栄井かっ!!」

 

 その頃、街に飛び出し恋人探しに明け暮れていた駱太郎だったが、結果は言うまでも無く惨敗―――目当ての女性どころか誰からも相手にされず一人寂しく雪が降る市内を歩いていた。

「ううう~~~・・・さみぃ・・・体じゃなくて心が///どうして・・・どうして俺はモテないんだ・・・・・・俺に足りないものってなんだ?!そんなに魅力がない男なのか俺は///」

 すっかり自信を無くして悲嘆する事しかできないでいる。体の熱よりも心の熱を急速に奪われていく感覚ほど残酷な物はない。

「あれ?なんだ、駱太郎じゃねぇか!!久し振りだにゃー」

 どこかで聞いたことのあるネコボイス。覇気のなくなった顔で振り返ると、冬なのにアロハシャツ一枚に身を包んだサングラスをかけたネコ型ロボット、ドラの義理の弟である隠弩羅と偶然にも出くわした。

「隠弩羅・・・・・・よう、相変わらず元気そうだな」

「そういうおめぇはなんだ?そんな格好で外にいたら風邪ひくぞ」

「オメェに言われたくねぇなそれ・・・・・・つーか、いつ北海道(こっち)に来たんだ?」

「なーに、クリスマスはこっちで過ごしたくなったものでさ。やっぱクリスマスは雪がないと気分でねぇしよ。まぁ積もる話もあることだし、近くの喫茶店にでも言って暖をとろう!」

 体も心も冷え切った駱太郎にとって、隠弩羅の言葉がとても温かく感じた。彼は滝のような涙を流すと、隠弩羅を力いっぱい抱き寄せ涙腺を崩壊させた。

「オオオオ!!!!心の友よっ!!!お前だけだ、俺の気持ちを分かってくれそうな奴は!!」

「な、なんだよいきなり抱きつくなって気持ちワリーな!!!」

「どうせ俺はモテない男なんだ!!!一生彼女なんかできっこないんだ―――!!!」

「何の話をしてやがる!?とにかく一旦離れてくれ!!」

 

 

同時刻 駅前通り 喫茶One Six

 

 同級生との再会を祝して、昇流は栄井優奈とともに積もる話をするため喫茶店へ立ち寄った。

 コースターにカップを置くと、優奈は目の前の昇流を気恥ずかしそうに見ながら、感慨深そうにつぶやく。

「何年ぶりかな。私が東京に引っ越して以来だから・・・・・・」

「7、8年ってとこじゃねぇか」

「そっか。もうそんなになるんだね」

 月日の経過とは二人が思う以上に早い物だった。あどけなさが残っていた当時の容姿は影を潜め、二人は紛れもない大人へと変わっていた。

 昇流は当時の面影を今に残しつつ美少女から美女へと変わった優奈に見つめられながら、彼女が着ている服や鞄を見て推理する。

「お前、その格好・・・ひょっとして就活?」

「うん。私お茶の水大に通っててね、ちょうど合説(合同企業説明会のこと)の帰りだったの。そしたら昇流君とばったり会えたものだからビックリしちゃった!」

「いや俺もビックリしてるよ。こんなところで昔のクラスメイトに会えるとはな。合説の帰りって事は、こっちで就職するつもりなのか?」

「北海道は私の生まれ故郷だし、できればこっちの方で就職したいなぁーって思ってる」

「就活か・・・・・・俺はやったことがねぇからよくわかんねぇけど、大変みたいだな」

「うん、私4年生なんだけどなかなか内定もらえなくてあちこち回ってるから、大変と言えば大変かな。ところで昇流君は今何してるの?就活したことないって言ってたけど、ひょっとしてもう働き先があるの?」

「一応・・・・・・」

「羨ましいなぁ。ねぇねぇ、どんなところで働いてるの?」

「・・・・・・TBT」

「え!!TBT!?TBTで働いてるの!?」

 驚愕しながらも嬉々とした声で優奈は声高に叫んだ。TBTと言えば、公務員さながらの給与や職場待遇を持ち、全国の大学からも応募者が殺到し倍率100倍を超える超難関就職先の一つだからだ。

「親爺のコネで入ったようなものだけどな。これでも長官って肩書きがあってな」

「すごいすごい!!という事は昇流君って、TBTのお偉いさんってことだよね!!私と年同じなのに凄いスピード出世だ・・・・・・やっぱり昇流君って、ただものじゃなかったね!」

「ただものじゃないって・・・・・・言っとくけど栄井が思ってるよりもひでー扱いされてんだぞ俺。そもそも長官っていう肩書はあってないようなもの・・・権威を誇示するための飾りみたいなもんさ。ぶっちゃけた事言うけど、大長官の親爺が自分の仕事を継がせるために俺を後釜に据えて、長官なんぞという体のいい肩書をつけたんだ。管理職のはずの俺がことある度に世にもえげつない奴らに振り回されて死と隣り合わせな現場に連れ回されている・・・信じられねぇ話だろうけど」

「それでも自分の仕事をしている昇流君はえらいと思うな。私なんか、勉強ばっかで運動音痴だし、融通も利かないし、アルバイトもしたことない人生経験不足のダメダメな女だから・・・・・・」

「バカ言ってんじゃねぇよ。勉強も碌にしたことがなくて、遊びほうけてばっかりの俺に言わせれば栄井の方がずっとえらいって」

 自分を卑下し悲観する優奈だったが、昇流は彼女と面と向かい落ち込む彼女を元気づけようとフォローした。

 途端、昇流からの励ましを聞いた優奈の顔は熱を帯び、頬を赤く染め上げると―――優しい言葉を掛けてくれた昇流に屈託のない笑みを浮かべた。

「ありがとう、昇流君・・・・・・そう言ってもらえると、私元気出て来た♪」

 二人の雰囲気は誰の目から見てもよく、恋人と錯覚してもおかしくはなかった。

 そして、この現場の様子をたまたま近くで目撃していた駱太郎は隠弩羅は天地がひっくり返るほどの衝撃を受け、瞬時に体を氷漬けにした。

「「な・・・・・・・・・なんじゃこれは!!?」」

 

 

12月20日

小樽市沿岸部 TBT本部ビル

 

 ドミノ・メイソンを中心とした建築家国際委員会が設計し、総合施設とTBTオフィスが併設された180階建て構造(地上1階から50階が商業施設。51階から80階がホテル部分。その上からTBT本部となり関係者以外の立ち入りは厳禁)の超高層ビル。

 いつものように出勤し、81階にある受付でタイムカードを切ろうとした昇流。

 が、直後背中に刺すような殺気を感じ、身震いした彼が恐る恐る辺りを見てみると、男性局員からの冷徹な眼差しが向けられていた。

「な・・・・・・」

 この時、彼は事態がどのように進展しているのかその全貌を知らずにいた。訳も分からず男たちからの嫉妬の眼差しが向けられる圧迫感は思いのほか半端ない。

(朝からどういう事だよ、なんで野郎どもから怒り・恨み・妬み・嫉み・その他諸々の負の感情が凝縮された眼差しを向けられなきゃいけねぇんだ!?俺が何したっていうんだよ・・・)

 必死になって理由を考えるが、未だに理解しかねていた。

 エレベーターに乗り込めば、狭い空間ゆえにより一層強い殺気にあてられ恐怖の余り失禁しそうになった。

 

 

同建物内 特殊先行部隊“鋼鉄の絆”オフィス

 

「ちゃおーっす・・・」

 男たちからの冷たい眼差し攻撃から逃れ、いざオフィスの扉を開けた瞬間―――

「「このウンコ野郎!!!」」

 何も前触れも無く駱太郎と隠弩羅からの強烈な鉄拳が顔面に直撃した。

「ぐっは!」

 盛大な鼻血を伴い仰向けに倒れ込んだ昇流を、駱太郎と隠弩羅は押えつけ、二人で一緒にプロレス技をかけ理不尽に責め続ける。

「この腐れ長官がぁ!!俺たちはモテない男同士永遠の友情を誓い合った仲じゃねぇか!!なんだこの手酷い裏切りは!!!」

「うぎゃあああああ!!!何の事だよチクショー!!!」

「とぼけんじゃねぇ!!昨日一緒にいたあのカワイ子ちゃんは何だ!?証拠写真はとっくに本部内で出回ってんだよ!!」

「お前なにしてくれちゃってんだよ!!つーかなんでオメェがここに居るんだよ!?」

 いつもなら居ないはずの隠弩羅までもが職場に居て、有無を言わさず羽交い絞めにされる昇流が何を言ったところで嫉妬心でいっぱいの二人はまるで聞く耳を持たない。

 昇流が理不尽ないじめを受けている間、ドラたちは隠弩羅が撮影した昇流と優奈のツーショット写真を見ていた。

「まさか長官さんにこんな美人なお知り合いがいたなんて思いませんでしたよ」

「出るとこ出て、締まるところが締まったエロい体をしているのう~・・・おっと!興奮してつい鼻血が・・・///」

「普段美女を見ると甚だしいもっこり変態野郎に変貌する長官が、この女性の前では随分としれっとしてるのはどういう事ですか?」

「実は中世的な顔をしているだけの男だったりして!」

「女だよ!!れっきとした女だよ、栄井優奈は!!」

 写ノ神の冗談染みた一言に腹を立てた昇流がそう言い返すと、途端に駱太郎と隠弩羅によるいじめが酷くなる。

「へぇ~、優奈ちゃんっていいのか・・・・・・長官の彼女は!!」

「彼女じゃねぇよ!中学校時代一緒だったただのクラスメイト!!」

「ふっざけんじゃねぇ!ただのクラスメイトとの会話でこんなデレッとした顔になるかよ!?見てみろ優奈ちゃんのこの顔!!まるでおめぇに恋してるみたいじゃねぇか!」

 写真に写った優奈の顔は隠弩羅が指摘した通りの笑み。さながら本当に昇流に好意を抱いているようにも思えるが、その指摘を受けた昇流の口から意外な言葉が返ってきた。

「恋してるみたいじゃなくてそうなんだよ」

「は?!」

「おい・・・今なんて・・・・・・」

 耳を疑う言葉が聞こえてきた。解放された昇流は首を一回半回すと、ドラたちが居る前で平然とした顔で言い切った。

「栄井優奈は、俺にぞっこんなんだよ」

 刹那、5秒間の沈黙が流れた。目を点にしたドラたちは絶句し、呆然と立ち尽くす。そして5秒経ったのち―――彼らは天地がひっくり返るほどの過剰なリアクションで、

「「「「「「「えええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!」」」」」」」

 衝撃波のような大声には、耳を押えてもあまり効果が無かった。昇流は苦い顔を浮かべ「そんなに驚くことか?」と聞き返した。

「驚くわバカタレ!!!」

「そう言う事ってもっと照れた感じで言うものじゃないんすか!?」

「あと普通バカって恋って奴を自覚することもままならない鈍チンって相場が決まってるはずです!長官が相手の好意に気付けるはずありません!!」

「てめぇら揃いも揃って俺をなんだと思ってやがる!!」

 周囲からの認識はあまりに酷すぎた。だが実際のところ昇流自身バカである事を一番に自覚している。だからこそ皆が驚愕するのも致し方ない事だと思った。

「確かにおめぇらの言う通り俺はバカだ。だがな、俺は相手の好意には直ぐに気付いちまう聡い男でもあるんだ」

「聡い男ならどうして彼女の気持ちに答えてやらないんですか?」

「俺自身の気持ちの整理がついてねぇんだよ。何しろ栄井の事を好きか嫌いか、正直なところ良く分からねぇ」

「分からねぇって・・・・・・こんな美人を好きにならない男がどこにいるんだよ!?」

「そんな性的な意味じゃねぇよ。心の問題だ」

「中学校の同級生なんですよね。でも、オイラこの子の事知りませんけど」

「お前は知ってるだろ。あれだよ、中2の終わりに俺が手製のブレスレットをプレゼントした子がいるって前に一度話してるはずだ」

「手製の・・・・・・あああ!あれって、この人だったんですか!?」

「ブレスレットって?」

 合点がいったドラを横目に写ノ神は気になる単語を拾い、昇流に追及する。

「それについて話す前に俺と栄井の関係性について詳しく掘り下げねぇとな」

 昇流は自分のデスクに向かうと、引き出しから一冊のアルバムを取り出した。

 中をパラパラっとめくった彼は住吉中学校時代に撮影したクラス写真の中から、当時の栄井優奈と自分が映っている集合写真を取出し、当時の事を思い返す。

「中学生の頃、栄井優奈は学校内問わず他校からも人気が高くてな、すべての男女の憧れの的存在・・・アイドルだった。容姿端麗で成績優秀。誰にでも分け隔てなく優しいから、その魅力にほとんどの奴が取り憑かれ彼女の周りに集まった――――――ただ一人、この俺を除いてな」

「どうして長官さんは栄井さんに魅入られなかったんですか?」

 根本的な謎についてを茜がストレートに尋ねる。

「俺にもよくわかんねぇんだ。まぁ俺がそんなんだからか、あいつ自身は俺を振り向かせようと色々とアプローチをしてきたんだが、どれも不発に終わった」

「相手の好意に気付いていながらその気持ちに答えないとはどういう猟犬だ!」

「このナマ地蔵!今すぐ死んじまえゲリワカメ!」

「ピンとこない悪口はやめろ!!」

 駱太郎と隠弩羅からの非難の嵐を受けながら、それに耐え昇流は当時の優奈の気持ちを考え、罰の悪そうな顔でつぶやいた。

「あいつは当然やきもちしていたはずだ。いくら頑張っても俺を振り向かすことができず、いたずらに時間だけが過ぎていったんだ。そして2年生が終わろうとした時期に、親爺さんの仕事で急遽東京に引っ越す事になった。俺は最後の日まで彼女の気持ちに答えることが出来なかった。だから、そんな彼女への罪滅ぼしと彼女の新しい出会いを祈願してブレスレットを送った。白樺から作った手製のブレスレットをな・・・・・・」

 アルバムを閉じ、昇流はドラたちの方へ振り返る。無言の彼らに自嘲した笑みを浮かべると、昇流は頭を抱えた。

「そしたら会ってみて驚いた。栄井の奴、あのブレスレット未だに着けていやがった。参ったぜ・・・・・・まさかあいつがそこまで一途に俺を思っていたとは知らなかった」

 とっくの昔に良い人が見つかったと思っていた。記憶の片隅に追いやっていた中学時代の甘酸っぱくも切ない思い出が、今再び鮮明に蘇り現実の問題として浮上してきた事に昇流はどうしていいか分からず、椅子に座ったまま優奈への罪悪感だけを募らせる。

「あ~あ・・・・・・何か取り返しのつかないことしちまったな。なんで栄井はこんなサイテーな男を好きになったのかはわかんねぇ。でも俺は結局8年近く、あいつと連絡もせず、あいつの気持ちを知りつつずっとほったらかしてやがったんだ。タチの悪い事に、俺はあいつを異性として好きなのか友人として好きなのかすら分かってねぇんだ」

「・・・・・・長官」

 ちょっとだけドラたちは昇流の事を可哀そうだと思った。

 だが直後、ドラは嘆息を突いてから昇流の方へ歩み寄り、彼の直ぐ目の前で言い放つ。

「あんたは確かに最低なチンコ野郎だよ。でもそれ以前にあんたはバカなんだ。バカの癖にいろいろ難しいこと考えるからややこしくなるんだ。長官が栄井優奈を好きか嫌いかはこの際どうだっていい。問題なのは彼女の中でくすぶっている杯昇流への気持ちをこれからどうするか」

 部下からの言葉に耳を傾けつつ、昇流は背中を向けたまま口籠る。

「魔猫が愛についての何たるかを語るなんて、滑稽といよりも不愉快に思えるかもしれません。ただ、このまま何もせずに長官が逃げ続ければ彼女は確実に不幸になるでしょう」

 一瞬だが、昇流の首筋が動いた。ドラはそれを見るなり、口元をつり上げ更に発破をかける。

「愛って奴はこの世で一番奇妙な病原菌ですよね。中にはこの病原菌に罹りたくても罹れない人って奴がざらにいるようですけど、少なくとも罹ってしまった人の方が幸せに思えます。長官は心の片隅では“恋の病”という奴に罹りたいと思っているが、肝心の病原菌が潜伏期間にあるって感じですね」

「潜伏期間か・・・・・・」

 そう声を漏らし、昇流は不意に立ち上がった。

 そして携帯を取出し、登録されているアドレスの中から「栄井優奈」を選択し、彼女に電話をかけた。

 プルルル・・・・・・

(正直俺はガチの恋愛経験なんてしたことがない。俺自身が本当の恋って奴を畏れていたからだ。誰かを本気で好きになるのは怖い事だから)

 プルルル・・・・・・ガチャ

「もしもし、栄井か?俺だ・・・・・・実はさ」

(でも、俺自身が恋から逃げる事で俺を好きになってくれた奴が不幸になるっていうなら――――――俺は)

 

 

12月24日

札幌市 日本ドームホテル

 

 杯昇流にとって最も不運なイベント―――クリスマスがやってきた。

 だが例年と違って、今年は目立った不運の兆候すら見られず平和な時間が続いている。おそらく理由には今までのクリスマスには無かった物が深く関わっているからだろう。

「あ!昇流君―――っ!!」

 ホテルのロビーで待っていた昇流の元に、私服姿の優奈が現れ走って来た。そう、昇流は彼女の気持ちに答える覚悟を決め、思い切って彼女をデートに誘ったのだ。

「今日は誘ってくれてありがとう。私、ケーキバイキングって初めてだからドキドキしてるんだ!」

「ああ、そうか・・・」

 心底幸せそうな笑顔を浮かべる優奈とは違い、昇流は少し顔が強張っており言葉もややぎこちない。

 お茶の水大学に通う彼女は就活のために3週間前からワンスリーマンションを借り、北海道に滞在している。そんな彼女を今日、昇流はこのホテルで開催されるケーキバイキングに誘った。

 すると、態度も返事もぎこちない昇流を見かねたように優奈が積極的なアプローチで昇流の腕に自身の腕を絡めてきた。

「行こう、昇流君♪」

 本来ならこの上も無く嬉しいはずの状況で、昇流は喜ぶに喜べず複雑な気持ちを抱きながら彼女と一緒にケーキバイング会場へと向かった。

「やろう・・・ふざけやがって。あんなかわいい子ちゃんの気持ちも碌に理解してねぇ分際でケーキバイキングだぁ?」

 影ながら二人のデートを見守っていた隠弩羅だが、昇流への嫉妬心が強すぎる余り本来の目的を忘れ、彼らは隠し持っていたライフル銃を取出し、植木鉢の隙間から銃口を構える。

「おい、兄貴。ちょっと土台になれ!」

「待たんか―――い!!」

 刹那、義兄のドラからの容赦ないツッコミが炸裂。最早ツッコミの域を超えた飛び蹴りの勢いで隠弩羅は全身を強く壁に打ち付けた。

「何でオイラがお前の嫉妬からくる下らない暗殺計画の踏み台にされなきゃならないんだよ!警備員今すぐ呼んできて警察に突き出すぞ!!」

「そういう兄貴だって、刀腰に帯びてんじゃねぇか。銃刀法違反だにゃー///」

「残念でしたー、許可証なら持ってます!!お前は不当だけどなぁ!!」

 相変わらずの魔猫兄弟のやり取りに幸吉郎たちは溜息を漏らし、その上で隠弩羅が及ぼうとした行為を厳しく諌めた。

「隠弩羅、折角長官が勇気振り絞って彼女の気持ちと向き合おうとしてるんじゃねぇか」

「野暮な真似はやめんか、このうつけ目が」

「だって悔しいじゃねぇか!!なんであんな他人の気持ちを弄んできた奴がこれから幸せになろうとするのを黙って見守らなきゃならねぇんだよ!!」

「いや、まだ幸せになるとは限らねぇさ。世の中のカップル事情が写ノ神や茜のように上手くいくはずがない。ひょっとしたら、ここであの二人の関係がキッパリ切れる可能性だって大いにある」

「だったらその前に俺たちの手で長官を潰す!!」

「最早野暮じゃなくて嫌がらせだよ、とことん最低なね!」

 

 ケーキバイキングは大盛況だった。主にケーキ好きの女性やカップルが周りを占めており、その中に交じっていた昇流は優奈とそれなりに会話をしつつどのタイミングで告白をすべきかを考えていた。

「昇流君」

 すると優奈が不意に声をかけて来た。昇流は慌てた様子で振り返り、ぎこちない笑顔で「なんだ?」と答える。

「あ、あの・・・・・・昇流君はこのブレスレットの事、覚えてるかな?」

 気恥ずかしそうに顔を赤らめた彼女は右腕に付けている白樺で作られたブレスレットを見せた。

「ああ、覚えてるよ」

 紛れも無くそれは中学生の頃に昇流が作ったもので、年季が入っていながらもしっかりとブレスレットの機能を保っているしぶとさが彼女が抱く昇流への好意と重なった。

「引っ越しの積荷も終わって、いざ出発しようって言う時にもの凄い勢いで昇流君が自転車をこいで家までやってきてさ、息も整えることもしないで私に近づいて、これが入った箱をくれたんだよね」

「お前・・・よくそんな細かい事まで記憶してるもんだな」

「忘れるわけがないもん!だって、私にとってこのブレスレットは昇流君と唯一繋がりを感じられたものだったから・・・・・・」

「栄井・・・・・・」

 彼女の昇流への気持ちは当時から何も変わっていないばかりか、ブレスレットをプレゼントをしたことが却って昇流の事を強く思わせるきっかけを作ってしまった。

 より一層彼女に罪深い気持ちを抱き、昇流は口を閉ざすと悔しげに左の拳に力を込めた。

 

 ギュルル~~~~・・・・。

「がっ・・・///」

 唐突にそれは起こった。酷い激痛が昇流の下腹部に走り、彼の顔から血の気が引いて見る見る青色へと変わっていく。

(こんなときに下り龍~~~!!?)

「昇流君、どうしたの?急に顔が真っ青になるなんて!?どこか具合悪いの?」

「さ、栄井///何だかとっても申し訳ないんだけど、ちょっとトイレに行ってくる・・・///」

 クリスマスの不運がここに来て到来した。昇流は今にも漏れ出そうな強烈な便意に耐えながら、優奈と一旦別れトイレへと直行する。

「あれ?」

 影ながらデートの光景を見守っていたドラたちは、昇流が優奈を置いてホールから出て行った場面を目撃。尋常ならない様子でケツを押え走っていく彼を怪訝そうに見つめる。

「長官の奴どこ行きやがった?」

「何気にケツを押えていませんでしたか?」

「人はどんなにかっこつけてもいざって時になると見られたくない醜悪な癖ってものがでるからね」

「こんなデートじゃ優奈ちゃんも浮かばれねぇよな」

 と、何気なく昇流の進行方向に目を向けたときだった。

「ん?」

 丁寧に包装された小さな箱が落ちているに気付いたドラがそれを拾い上げると、英語と日本語で「Merry Chrismas 優奈」と書かれていた。

「あ・・・」

「これって長官さんのプレゼントですか、栄井さんへの?」

「まったく、こんな大事な物落とすなんて。何をやってるんだよあの人は」

 

 ―――ドン!

 

 唐突に聞こえた重量感に満ちた音。何事かと思えば、バイキング会場となっているホールと廊下の間に核ミサイルにも耐えられるぶ厚い防護壁が下され、道を塞いでいた。

「え、何!!何なの一体!?」

 ドン・・・ドンドンドンドン。

 立て続けに建物の窓ガラスにも防護壁が下され、外側から中の様子が分からなくなった。クリスマスのサプライズとも思えない状況に優奈や他の参加者も動揺し、壁の外に追いやられたドラたちもこの不測の事態に困惑する。

「なんだこれは!?何が起きてる、システムの誤作動か・・・!?」

「いいや・・・・・・違う」

 と、隠弩羅が何か途方もなく危険な気配を感じそうつぶやいた次の瞬間―――

 ダダダダダダダダダダダダ・・・・・・・・・

「きゃああああ!!!」

 ホールの方からマシンガンの銃声と女性の悲鳴が鳴り響く。

 優奈は目を見開き驚愕した。眼前に映って来たのは、凶悪な顔で自分たちを見据える総勢数百名のテロ集団だった。

「我々はテロリスト集団“黒い彗星”だ。この日本ドームホテルは、我々黒い彗星が完全に掌握した!」

 

『臨時ニュースをお伝えします。本日午後3時、北海道札幌市の日本ドームホテルにテロリストが侵入!現在、人質数百名とともに建物内に立てこもっています』

 白昼の悲劇だった。北海道に現れたテロリスト集団“黒い彗星”によって占拠された日本ドームホテルの前には、警察車両を始め報道機関の車が多数集まり、現場には大勢の野次馬がごった返している。

「人質となったのはケーキバイキングに参加していた客と優奈ちゃんか」

 辛うじてホテルから脱出を図ったドラたちは、元・公安調査庁第二課の課長という経歴を持つレンタルショップ“玄”のオーナー、生天目玄太郎(なばためげんたろう)から情報提供を求め、その答えを手持ちのパソコンから聞いていた。

『おそらく敵の正体は“黒い彗星”と呼ばれるテロリスト集団だ。構成人数は十数名程度。だがいずれも傭兵や元・軍隊といった者で構成された戦闘のプロ集団。こりゃSATでも容易に制圧できる相手じゃねぇな』

「黒い彗星と名乗るテロリスト連中の目的は?」

『おそらく栄井優奈とかいうお嬢ちゃんだろう』

「はぁ?何だって優奈ちゃんが・・・?」

 敵の狙いが栄井優奈であると聞かされてもドラたちはピンとこない。玄太郎は核心的な情報をドラたちのパソコンに転送した。

 直後、ディスプレイに表示されたのは栄井優奈の父親の経歴。その経歴にこそ、この事件の真相が隠されていた。

『父親の名は栄井優三(さかいゆうぞう)(51)。警察庁長官官房審議官・・・・・・つまりは、この日本の警察組織のナンバー2に当たるってわけだ』

「その娘が栄井優奈だっていうのかよ!?」

「成程な。官房審議官の娘を人質に取り、多額の身代金を要求しようという腹か」

『それだけじゃない。以前官房審議官の暗殺を企てたメンバーが逮捕されててな、その時のメンバーの釈放と官房審議官の首を要求してやがる。万が一要求が呑まれなければ、人質を30分に一人ずつ殺すと言ってる・・・どうやら連中、あの娘のここ数週間の動きを逐一監視していたみたいだ』

「怨恨絡みの復讐劇・・・・・・ふざけやがって!」

 テロリストの卑怯卑劣なやり方に腹を立て、駱太郎は今すぐにでも突入して敵をこの手で殴りつけたいと思った。

「現在、SITが交渉して時間を稼いでいる。その間に手分けしてオイラたちは侵入経路を探そう」

「「「「「「了解です(おう)(心得た)(わかった)!」」」」」」

「それから幸吉郎。長官とは連絡ついたか?」

「それがさっきからずっと掛けてるんですけど、まるで応答がありません」

 携帯で何度も呼びかけるも、昇流はどうやら着信そのものに気付いていない様子で、コール音だけがむなしく鳴り響く。

「ったく、こんなときに何をやってるんだあのボンクラ上司は!」

 

 

同時刻 日本ドームホテル 9階・男性用トイレ

 

「おい、誰かいるのか?」

「おかしいな。確かに臭うんだが・・・」

 建物内を巡回していたテロリストたちは、男性用トイレから誰かが用を足しているであろう臭いをかぎ取り、扉の前に立ち尽くす。だが人の気配は感じられず、臭いだけが一人歩きをしている様だった。

 不思議に思いおもむろに扉の取っ手に触れようとした直後、鍵の扉が解除され、ゆっくりと扉が開かれた。

「「げ!」」

 テロリストたちは中で身を潜めていた男の存在に目を疑った。その手にバズーカ砲を携え、全体的に冷たい雰囲気を醸し出す杯昇流が便器の上に座っていた。

「・・・・・・ったくよう。やっとこさ下り龍が収まったと思えばこれだよ」

 

 ド――――――ンっ!!!

 

「何!?」

 建物の内部から起こった爆発。ドラたちが黙々と上がる黒煙を凝視すると、中から現れた人影に目を見張る。

「あれは・・・!」

 勇壮な立ち振る舞いを見せ、右肩に担ぐはバズーカ砲。野次馬や警察関係者が唖然とする中、杯昇流は憂いを帯びた表情を浮かべていた。

「ちょ、長官!!」

「何やってるんですか、そんなところで!!」

 と、周りが呼びかける中―――ドラは昇流が落とした優奈へのクリスマスプレゼントを9階にいる彼へ投げつけ、飛んできたそれを昇流はポーカーフェイスでキャッチした。

「ドラ、感謝するぞ!おめぇのお陰で渡しそびれずに済んだみたいだ」

 言い残すと、昇流はプレゼントを懐に納め、踵を返して建物の中へと戻って行った。

(そこには、恋に怯えた小さな背中はもう無かった。その背中は紛れも無くたった一つの大切な者のために己を捨てる覚悟で戦いに挑もうとする男の巨大な姿だった)

 心の中でドラは独白し、大切な人を守る為に戦地に向った上司の背中を、姿が見えなくなるまで見続けた。

 

 

同時刻 日本ドームホテル 30階・メインコントロームルーム

 

 ホール内に集まっていた参加者はすべて捕えられ、この場所に集められた。優奈も人質の一人(彼女こそ人質として最も意義ある存在)としてロープで体を固定されている。

「どうだ、交渉の方は?」

「釈放の許可を得るには最低でも一日かかると」

「分かりやすい時間稼ぎだ。伝えろ、処刑の時間は一分たりとも伸ばさん!」

「はい!」

「それと、これも付け加えておけ。官房審議官の娘の命は頂いたので結構だと」

 聞いた途端、優奈ははっとした顔となりリーダー格の男のほくそ笑んだ顔に恐怖する。

「ま、正確にはこれから頂くのだが。いずれにせよ警察は人質が存在する限り手を出す事はできない。迂闊にSATを投入すればどうなるか、官房審議官が分からんはずがない。仮に警察としての役目を全うする事を選んだとしよう・・・それはつまり、娘の命よりも国家の命運を第一と考える警察官としては立派だが、一人の父親として最低な男だって事になる」

 板挟みの状況に立たされた父親がどちらの判断を下すかは分からない。が、もしも娘の命を優先するあまり他の人たちを傷つけるような事は絶対にあって欲しくなかった。

 たとえ自分の命と引き換えにでも、この場にいる人質を助けたいという気持ちを抱きつつ、優奈は昇流が自分を助けてくれる事を(こいねが)う。

(昇流君・・・・・・助けて!)

 

 一方、昇流は優奈奪還のためにテロリストが徘徊するビルの中で最も安全と思われる通路としてダクトを選び、建物の中を移動していた。

「なんてこったよ・・・北海道にまでテロリストが現れるなんて。チクショー、やっぱり今年のクリスマスも碌な日にならなかったじゃねぇか・・・」

 プルルル・・・・・・

 移動中、不意に着信が入ってきた。誰かと思えば、朱雀王子茜という着信者の名前が表示される。

「ったくもう・・・」

 この非常事に何を考えているんだ・・・そう思いながらも後々の事を考え、昇流は仕方なく彼女からの応答に答える。

「あ、もしもし、長官さん?!」

『何回かけて来てんだよバカヤロウ!!テトリストの巣窟に電話なんかかけてくるんじゃねぇよボケが!!』

 珍しく正論を口にする昇流と、電話越しに伝わる彼の怒鳴り声に驚きながら、茜は少々気に食わない様子で返事をする。

「って、何で私が長官さんにお説教を喰らわないとならないんですか。私を叱っていいのはドラさんと写ノ神君だけですよ!まぁそれはともかくとして、もうじき私たちが突入します。SATは指揮系統の乱れで突入するに出来ない状況です。くれぐれも早まらないでくださいよ」

「いや、どうやら俺たちも突入はできそうにないな」

 不意に隠弩羅の口から聞かされた予想外の言葉。茜が驚いた様子で携帯から耳を放すと、隠弩羅は重い口を開き事態の旨を伝える。

「どうやら警備システムを利用されてな、容易にビルに近づけねぇ」

「え!じゃあ、私たちもここにいたら・・・」

「安心してよ。ついさっきなんだけど、長官に渡したプレゼントの箱にレーダーを攪乱する装置を取り付けておいたんだ」

 ドラがそう話したのを聞いた昇流は、受け取ったプレゼントの箱の裏にそれらしい装置が付いているのを確認した。

 茜と電話を代わり、ドラは携帯越しに昇流に伝える。

「三時間後に人質の処刑が始まります。長官はその首が繋がっている間に、連中の首を頂戴してきてください。それから、やきもきした自分の気持ちにも決着をつけてくるように」

「ドラ・・・・・・」

『だからと言って闇雲に立ち向かっても一人では勝ち目はありません。オイラたちが協力します』

 すると、携帯電話の画面にこのビルの様子が一目でわかる地図が表記された。昇流が現在いる場所を始め、テロリストたちの動きに至るまでが事細かく簡単なマークと連動している。

「けっ。ったく、余計なお節介だっつーの」

 嬉しい気持ちを素直に表現できない昇流の言葉に、ドラは電話越しに「家族なんだ。お節介焼くのは当然ですよ」と答えた。

 

 

同時刻 30階・メインコントロームルーム

 

(昇流君、無事なのかな・・・・・・)

 彼の助けを期待する半面、彼が無事である事を願っていた優奈はロープでくくりつけられた右腕に嵌めてあるブレスレットを一瞥する。

 このとき、彼女はブレスレットを貰った時の事を思い出していた。

 

 

7年前、5531年の3月末―――

 

 警察官である父・優三が辞令を受け東京に転勤する事となった。優奈も母親とともに小樽を離れ、東京に行かなければならない。

 引っ越しの日。クラスメイトだけでなく、他校からも見送りのために大勢が集まった。

「急な転校にも関わらず、こんなにたくさんの人に集まってもらえた事に感謝します」

「出来る事なら、卒業までみんなと一緒に学生生活を過ごしたかったのが心残りです。本当に今までありがとうございました」

 一家が見送りに来た人たちに頭を下げる。集まった多くの人が涙を流し彼女との別れを惜しんだ。

「優奈ちゃ~~~ん!!」「チクショー神さまは何て残酷なんだ!!」「東京に行ってもメールするからね!!」「いままでありがとう!!」

 見送りをされること自体はとても嬉しかったが、優奈にとって最も大切な男子がこの場に居ない。

(結局・・・・・・昇流君は来なかったな)

 思い人の昇流がいないという事実に、優奈の心は張り裂けそうだった。

 儚い思いだったと思いつつ、諦めて車に乗り込もうとした直後―――

「ちょっと待った――――――!!!」

 雄叫びが聞こえたと思えば、杯昇流(14)が自転車を猛スピードでこぎ、出発しようとする優奈の元にやった来た。

 急ブレーキをかけて自転車が前のめりに傾く中、昇流は乱れ切った息を整える間もなく優奈を見る。

「行くのは・・・ちょっと待ってくれよ!」

「昇流君!!」

 優奈は心底驚き、内心とても歓喜した。

 すると、目元に濃い隈を作っている昇流が自転車のかごに入っていた物を取り出し、優奈へと手渡した。

「これ・・・大したものじゃねぇけど、餞別。向こうの学校でも元気でな」

 昇流の手から渡された箱。優奈はバクバクと心臓を鳴らしながら、満面の笑みを浮かべ感謝した。

「・・・・・・ありがとう!」

 やがてクラスメイトとの最後の別れを済ませ車を発進させた後、優奈が箱の中を確認すると、白樺で作られた手製のブレスレットが納まっていた。

(昇流君、これを作る為にギリギリまで・・・・・・)

 だが箱に入っていたのはブレスレットだけではなかった。そのすぐ下にメモ書き程度の大きさの添え書きも入っており、中身を開くと昇流が書いた文字が載っていた。

『今のオレじゃ、お前の気持ちには答えられない。だからオレたちが大人になってそれでもお前がオレを思い続けてたら、そんときはオレも腹をくくるから』

 この文章を呼んだ直後、優奈は涙腺を崩壊させ、大粒の涙を手紙の文面に落とした。

 

 

(あれから7年経って、大人にはなったけど・・・・・・私は昇流君の返事も聞けないまま、ここで死んじゃうのかな)

 諦観の気持ちを抱く優奈。

 と、そのとき―――テロリストたちの間で動きが見られた。

「リーダー、西側のエレベーターが動いてます。最上階のここに向かっています」

「何だと?まさかSATが突入して来たのか、いやそんな筈はないか・・・・・・近くを巡回している仲間を向かわせろ。万が一の時に備えるんだ!」

「了解です」

 黒い彗星はSATの強行突入があるものと考え、迅速な動きを見せ対応する。

 巡回中の部下たちを西側のエレベーターへと向かわせ、いつでも迎え撃つ準備を怠らない。

 そうして相手を袋の鼠にし、確実に機銃掃射によって蜂の巣を狙おうとする中、エレベーターの扉がおもむろに開かれた。

 

 ―――ドカン!!

 

 刹那、誰一人居ないエレベーターの中にポツンと置かれた爆弾が起動し、テロリストたちはまんまと仕掛けられた罠に嵌った。

「おいどうした、何があった!?」

「どうやら、エレベーターに爆弾が仕掛けられていた様です!」

「まさかあれが陽動だったのか!?」

 動揺を見せ始めたそのとき、最上階のこの部屋を目指して階段を上ってくる足音が聞こえた。

 ダン。ダン。ダン。

「「「ぐあああああ」」」

 ダン。ダン。ダン。

「「「だあああああ」」」

 階段を上がりながら、昇流は手持ちの拳銃でテロリストたちを何食わぬ顔で斃し、驚愕する黒い彗星と人質たちを見ながら、

「ベリークルシミマシタ~」

「昇流君!!」

 SATが突入できずに手をこまねいている中、昇流はたった一人でテロリストが徘徊する巣窟に突入し、瞬く間に彼らを制圧。動ける人質は一斉に逃げ始めた。

「まさか、本当にたった一人でテロリストどもを・・・!」

「いくら何でも無茶だ!ていうか無謀だ!」

「日頃から鍛えている長官でも、相手は戦闘のプロだ!勝ち目などない!」

「分かってないんだな~」

「何がだよ!?」

「相手が戦闘のプロだろうが関係ない。今の長官はたったひとつ守ると誓った者を救う為にあらゆる制約を解き放ち自らを鬼と化した存在――――――修羅だよ」

 外で待機していたドラは、一人でテロリストを制圧しようとする昇流の潜在能力を信じていた。幼少の頃から昇流を見続け来たからこそ知っていた―――杯昇流の箍が外れると、どんな強敵も屈服させるだけの力を解き放つことが出来る、と。

 事実、メインコントロール室に突入した昇流はその後も一人で傭兵・軍隊崩れの強者たちを容易く斃し、気が付くと残っていたのは黒い彗星を率いるリーダーだけとなっていた。

 目の前の光景に言葉を失うリーダーは、メインの人質である優奈に銃口を突き付け牽制を測る。

「悪い事しちまったな。お前の大事な部隊、俺が全部ぶっ潰しちまった」

 昇流は、顔色ひとつ崩さずハードボイルドに拳銃の銃口を敵の眉間へと向け続ける。

「貴様・・・・・・SATの隊員ではないな?一体、何者だ!?」

「何者でもねぇよ。俺はただそいつと、ケーキバイキングに来ただけだ」

「昇流君、どうして来たの!?どうして私を置いて一人で逃げなかったの!?私の事なんかほっといて逃げれば良かったのに・・・・・・なんでこんな馬鹿な事してるの!?理解できないよ・・・・・・///」

 助けに来てくれた事は正直嬉しかった。だが昇流が自分を守るためにテロリストと戦い、命を落とすかもしれないという状況を想定すれば自然と涙が溢れてくる。

「だからこの前会った時に俺言ったよな。俺自身そんな大層な男じゃねぇよって。男ってのは女が思うほど年食っても賢くなりゃしねぇんだ。バカはバカのまんまだ・・・いくつになっても一番大事な女の前じゃ碌に目も見れねぇ。口も利けねぇ。初心なガキになっちまうものなのさ」

 己の愚かさを開けっぴろげに語りながら昇流は目の前の一番大切な女性を見据え、一息突いてからそれでも、と口にする。

「それでも、俺は自分と同じくらい俺を本気で好きになってくれた女をどこの馬の骨とも知れねぇ野郎の手に渡すほどのバカじゃねぇ」

「昇流君・・・・・・」

「ごちゃごちゃ戯言を言いおって・・・。そんなに恋人同士死にたいならあの世でゆっくりイチャついていろ!!」

 痺れを切らし、リーダーが引き金が引こうとした次の瞬間。

 ダン!

 昇流の速撃ちが炸裂し、犯人の銃を吹っ飛ばす。

「ぐああああ!!」

 一瞬の隙を作った犯人から素早く優奈を解放し、昇流は手を痛める犯人の顔面目掛けて渾身の拳を叩きこむ。

「どりゃあああああああ!!!」

「のおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

 

午後5時過ぎ

東京ドームホテル 玄関ホール前

 

 昇流によってテロリスト集団・黒い彗星は壊滅。一人の死者も出すことなく人質104名が解放され、主犯格と構成員全員が警察に逮捕されていく。

「マジで一人でやっちまいやがったぜ」

「長官って以外と強えーんだな」

「つーか、SATの出番奪っちまったな。大長官、明日警察長官からかなり言われるだろうな」

「拙僧らの所為ではない!長官が一人で暴走したんじゃ!」

 今回蚊帳の外に置かれていた鋼鉄の絆(アイアンハーツ)は、底知れぬ力を秘めていた昇流への認識を改めると共に、彼が救い出した優奈の様子を見守った。

「怖い目に遭わせちまったな。悪かった、俺が絡むクリスマスは決まって悪いことが起きちまって」

 玄関に植えられた樹の近くにいた昇流は、委縮している彼女に申し訳なさそうな顔を浮かべ首を垂れる。

「うんうん。そんなの根も葉もない事だよ」

「また、今年も最悪のクリスマスになっちまったな・・・」

 と、昇流は悲観して言うが、優奈の考えは彼とは全く逆のものだった。

「そうでもないかな。というか、最高のクリスマスだったよ!」

「え?」

「だって、こうして昇流君とデートが出来たし、あの時の約束も果たしてもらったから」

「あの時の?」

「これだよ」

 優奈はブレスレットに同封していた黄色く変色してしまった当時の手紙を見せてくれた。昇流は、自分で自分で書いた言葉を忘れていたらしく、若干恥ずかしそうに頬を掻きながらも穏やかな顔を浮かべた。

 そして、改めて彼女のために用意したクリスマスプレゼントを手渡し、開けるように促した。

「きっと、他の連中には何の価値も無いものかもしれぇけど」

「うんうん。私はそんな事全然思ってないから」

 包装紙を丁寧に外し、小さな箱の中身を確かめた。

 そこには大人になった自分たちを模ったかわいらしい人形が収まっており、優奈は昇流がいつまでも自分の知っている彼であった事が嬉しく、心から安堵した。

「昇流君っ!」

 次の瞬間。優奈は昇流の頬にそっと触れる様にキスをした。この歴史的光景を目の当たりにしていたドラたちは目を見開き、絶句した。

「今日から恋人同士だから」

 耳元で囁いた後、昇流から離れかわいげに髪を揺らし振り返り際、彼女は「ね!」と言って人差し指を突き立てた。

 昇流は彼女からのクリスマスプレゼントに対して、照れもしなければ頬も赤らめない。ただ穏やかな顔でほくそ笑む。

 直後、二人の祝福を祝う様に粉雪が降り始めた。昇流はおもむろに空を仰ぎ見ながら、降ってくる雪の冷たさに心地よさを感じていた。

 ―――俺はクリスマスが大嫌いだ。だが、今年のクリスマスだけは・・・・・・。

 と、思った矢先。駱太郎と隠弩羅が凄まじい形相を浮かべながら彼に猛烈に迫り、

「「このサノバビッチ!!」」

 ドンッ!!!

「ぐっへ―――!!!」

 ―――やっぱりいつもと変わらなかった!!!

 

 

 

 

 

 

ドラさん語録~サムライ・ドラが残した語録集~

 

その42:愛って奴はこの世で一番奇妙な病原菌ですよね。中にはこの病原菌に罹りたくても罹れない人って奴がざらにいるようですけど、少なくとも罹ってしまった人の方が幸せに思えます。

 

皆さんは誰かを本気で愛した事、好きになった事はありますか?私はまだありませんが、きっと誰かを本気で好きになれたら人間的に成長できるのかも。(第38話)

 

 

 

 

 

 

登場人物

栄井優奈(さかいゆうな)

声:原田ひとみ

身長156cm 体重50kg 5517年12月21日生まれ。

21歳。昇流の中学校時代の同級生。警察庁長官官房審議官の父を持つ。ふんわりとしたブラウンのロングヘアーを持つ癒し系美女で、小柄ながらEカップの巨乳を持つトランジスターグラマー。右腕に昇流からもらった手製のブレスレットを付けている。

誰に対しても分け隔てなく接する優しい性格で、中学時代は男女問わず学校中の人気者だった。しかし彼女本人は昇流に好意を抱いており、クラスメイトの中でただ一人自分の魅力に見向きもしなかった昇流にやきもきした感情を抱いていた。やがて、中学2年の終わりに東京へ引っ越す事になったとき、餞別としてブレスレットをもらってからは彼への恋心を自覚し、以降ブレスレットを片時も放さず一途に彼を思い続けていた。

昇流とは対照的に学業は優秀。お茶の水女子大学の法学部に在籍しており、就職活動の為に北海道へ足を運んだ際、偶然昇流と再会を果たした。




次回予告

ド「突然だけど、次回からは少し視点を変えてオイラたちのドタバタした日常をもう少し掘り下げてみたいと思う!あんまりシリアスな事件とかは成る丈抜きにして、単純にクスッと笑える程度の内容をお送りします」
「構成員一人一人を掘り下げたものからチーム単位でスポットを当てたものと幅広くいっちゃうからね。という訳で次回から、ギャクコメディー編がスタートするぞ!!」

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