サムライ・ドラ   作:重要大事

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駱「なぁハリーよ。おめぇまだケツが痛むのか?」
ハリー「そんな直ぐに痛みが引くと思ったのか・・・///ものすげぇジリジリする。昨日から下痢気味・・・血も混じってるし///」
茜「ハリーさんには申し訳ありませんけど、気持ち悪い話ですね」
ド「本当に気持ち悪いのはこれからだよ。何しろ、このエボリューション編の終盤でエイリアンはとんでもない進化を遂げるんだから。そして進化の果てに、エイリアンは生物とは言えない姿になるんだよ」


最適者生存の法則

午後12時39分

グレン・キャニオン 某デパートメントストア

 

「買い物は苦手なんだよ」

「感謝祭用の服を買わなきゃ」

「服ならある」

 グレン・キャニオンのとあるデパートはいつもの様に買い物客で賑わっている。壮年期の夫婦が服売り場で品定めをしていた。

「うん、この色よく似合うと思うけど」

「そうか。でもな・・・「何あれ?」

 目の前の窓ガラスを突き破って飛んできたのは、酸素に適用したばかりの鳥型エイリアン―――ウォール・モール・バード。何の脈絡も無く突然現れた目の前の大型生物に人々は恐怖し、一目散に逃げ出した。

 逃げたモール・バードを追っていたドラたちも問題のデパートへ到着。車を止めて外に出るや、悲鳴を上げる人々が次々と建物の中から飛び出すという光景を目撃した。

「あああ!」

「待て待て俺も!」

 大半が車を急発進させてデパートから避難する中、エイリアンバスターとなったドラたちはこのアクシデントを収拾する義務があった。

「きっとこの中だ」

「腕が鳴るな」

 デパートに入ると、彼らは真っ先に武器となるものを調達する。ガラスケースを叩き割ると、売り物のショットガンを取出しドラは全員に行き渡らせる。

「銃を撃ったことはあるのか?」

 弾丸を装填しながらウェインが何気なく周りに尋ねる。

「科学者をナメるなよ」

「銃の扱いには不慣れですが、これも仕事ですから」

「お嬢さんたち。空飛ぶ地球外生物がいるんだ。真面目にやろう」

「身なりが一番真面目じゃねぇドラには言われたくねぇよ」

 こうして戦闘準備が整うと、デパートのどこかに潜んでいるはずのモール・バードを対峙するため、行動を開始する。

 

 身の危険とは知らぬうちに降りかかる。今、婦人服売り場の試着室で万引き行為を働こうとする女性がそうだった。

「ふー!」

 目当ての服を次から次へと重ね着し、テンションを上げていると―――

 ガタガタ・・・

「試着中よ待って」

 ガタガタ・・・

「待ってってば」

 ガタガタ・・・

「待ってって言ってるでしょ、ビッチ!」

 ガタガタ・・・

「うっせーな。目ん玉掻き出してやろうか!」

 最後の服を上から被り、外にいる誰かに怒鳴り散らしてやろうと扉を開けた瞬間―――亀のような釣り目で自分を見つめていたのは誰でもない存在だった。

 ウォール・モール・バードは荒い鼻息をすると、目の前の万引き女性に睨みを利かし顔を近づけた。

「あああああああ!!」

 悲鳴を上げ、女性は試着室に逃げ込んだ。が、そんな事をしたところで意味など無い。モール・バードは二本の鉤爪で引っ張り出すと、そのままを女性を連れて飛び去った。

 

 デパートの中には逃げ遅れた者も多かった。

 モール・バードに怯えて周りが適当な場所に隠れる中、エイリアンバスターのドラたちはショットガン片手に標的の捜索に専念している。現在、服売り場を中心に彼らはなるべくバラバラにならない様一塊となって動いている。

「おいで~~~ピチピチピーチク小鳥ちゃーん!おいでっ!コココココココココココココココココ!!」

 人目を憚らず、ウェインは奇声を発し始めた。どうやらエイリアンを呼び寄せようとしているらしいのだが、ドラたちの目から見れば単なるアホにしか思えない。

「ココココ・・・ココ」

 しばらくやってみて、効果が無いことが分かるとウェインは急に恥ずかしくなってやめた。

「よーし、みんなで連想クイズをしよう。例えばオイラが空飛ぶ巨大なエイリアンだったらこの建物のどこに隠れると思う?」

「下着売場」

 真っ先にハリーが答える。一斉に周りからは呆れと冷たい眼差しが向けられる。

「そりゃお前だろ」

「いや、ハリーの意見に同感だ。俺も下着売場に一票!」

「ここはバカばっかりだな!」

 と、写ノ神が嘆いた直後だった。

 女性用下着売場の方から巨大なエイリアンこと、ウォール・モール・バードが飛んできた。しかも厄介な事に、万引きを働いた女性を鉤爪で掴んだまま飛翔している。

「あ~~~助けて~~~!」

 天井と床がすれすれの位置で飛びながらモール・バードは移動する。ドラたちは唖然としながらも、直ちにエイリアン殲滅のために動き出す。

 多くのギャラリーが集まる中央大ホールにて、モール・バードは連れ去った女性を恐怖のどん底に突き落とす。

「みんなは下。オイラと幸吉郎は上」

「よっし」

「いくぞ!」

 ドラは幸吉郎を伴い二階へと続くエスカレーターを登り、残りのメンバーはモール・バードの後を必死に追いかける。

「あ~~~!」

 女性は悲鳴を出しながら思った。何の因果で恐竜に連れ回されなければならないのかと・・・。心当たりがあるとすれば、万引きをした事への天罰だろう。

「見失ったらマズイゾ」

「わかってる!」

 ショットガン片手にモール・バードを追いかけるも、移動速度が思いのほか素早かったために、駱太郎たちは標的の姿を見失ってしまった。

「いないぞ!」

「何で6メートルの鳥を見失うんだ!?」

 二階に上がったドラと幸吉郎は、吹き抜きとなっている場所から下にいるハリーらに呼びかける。

「さぁな。俺らにもわからん」

「さぁてどうする?」

 モール・バードを早急に見つけないと捕まった女性の身が持たない。とは言え、一体どうすればモール・バードを広いデパートの中から見つけだせばいいのか―――途方に暮れていると、ウェインがイベント様に設置された特設ステージへと上がり、マイクの音量が入っている事を確かめてから、

「ココ・・・ココ・・・ココー・・・カワイトギートギートギートギーココココココココココココ!「ウェイン」

 見かねたハリーは、メンバーを代表してハッキリと言い放つ。

「今お前がやってるココーココーや、トケェイトケェイは無駄だ」

「そうだな。ごめん」

「さて、どうするドラ。引き上げるか」

「ここまで引き下がれるか」

「しかしじゃな、相手も相手じゃぞ」

 引き返すか否か、ドラたちが判断に迷っていたときだった。

「You are so beautiful , too me.(君は本当に美しい)」

 突然ウェインが気持ちよく歌い始めた。状況を読まない非常識な彼の行動に大勢の客から非難の声と冷たい目線が注がれる中、ドラは持っていたショットガンをウェインへと向け―――

「ハリーどいてろ、そいつを撃つ」

「やめろドラ。俺に()らせてくれ」

「いや、俺がやる」

「拙僧に撃たせろ」

「脳ミソ撃ち抜くのは俺だ」

「私、一度でいいから人を撃ち殺してみたかったんですよね」

 人はきっかけひとつで狂気に走る。折角ショットガンを持っているのに、使わないのはもったいなかったから、ドラたちは試し撃ちをするつもりでウェインに対して銃口を一斉に向けた。

「みんなちょっと待ってよ。あいつに気持ちを伝えてるんだ」

 そう弁明をすると、再びウェインはマイク片手に「You are so beautiful , too me.」というフレーズを口ずさむ。

 途端、周りから「歌ってる場合じゃないでしょ」や「バカなんじゃないの?」という声が聞こえてきた。歌っている本人はともかく、そんな奴と一緒に行動を共にしているドラたちの方がよっぽど気恥ずかしい思いだった。

「ウェイン。やめてもらえませんか、僕はとても恥ずかしい///」

 ハリーの懇願も虚しく、ウェインの熱唱は続く。本人はこれでエイリアンと心を通わせようとしているつもりだが、こんな方法で心を通わせるなど出来る訳がない―――誰もがそう思っていたときだった。

 ギャー・・・・・・

 奥の方からモール・バードのものと思わしき鳴き声が聞こえてきた。一同は目を見開き、耳を研ぎ澄ませると、それが幻聴ではない事を確信する。

「通じた!」

「どんどん歌え、ファンキーな奴とか!」

 急に態度を改めると、周りはウェインに歌う事を推奨した。景気づいたウェインはこれまでよりも情熱を込め、自分の思いの丈をモール・バードへと届ける。

「You are anything.(君は僕のすべて)」

 するとどうだろう・・・・・・本当にウェインの歌に惹かれたようにモール・バードが人質の女性を伴い戻ってきた。

「よし来るぞ」

「女を頼む。鳥は俺と兄貴が!」

 ウェインが歌で惹きつけている間にドラと幸吉郎は狙い撃ちしやすい場所へと移動し、下の五人は人質救出の用意に取り掛かる。

「You are so beautiful , too me!」

 刹那、悲鳴を上げながら女性がウェインの方へと飛んできた。このタイミングを待っていた駱太郎とハリーは二人ががかりで女性を救出―――モール・バードから引き離す事に成功した。

 そして、二階のドラと幸吉郎は上空を旋回するため上昇してきた頃合いを見計らい、モール・バードを背中から撃ち抜く。

 ドン・・・ドン・・・ドン・・・

 凄まじい攻撃で、モール・バードは我を失い墜落した。

「やった!」

「いいぞ!ナイスショット!」

 モール・バードが倒された事で、隠れていた人々は拍手をしながら姿を現しドラたちを英雄扱いする。

「ごめんなさい。もう二度と万引きなんかしません!神様に誓いますから///」

 エイリアンに捕まった事がかなりの精神的ショックだったらしく、女性はひどく怯えた様子で自分の罪を反省した。

「ああ・・・よろしい」

「気をしっかり持てよな」

 少々可哀そうだとも思った。龍樹と写ノ神は泣いている女性を落ち着かせると、倒されたエイリアンの方へと向かう。

 インディアン模型の側に倒れたモール・バードの巨体を見下ろし、ドラたちはこれだけの獲物を仕留めた手応えを具に感じている。

「どこがいいみんな?白肉(ムネ)か?黒肉(モモ)か?」

「決まってるさ」

 間違っても食べようなんて気は起こさないで欲しかった。

 と、その直後に死んだはずのモール・バードが目を開け動き出そうとした。ドラたちは慌ててショットガンを構え、眼前の敵を徹底的に狙い撃つ。

 ドン・・・ドン・・・ドン・・・ドン・・・

 確実に息の根を仕留めたことを確認し、ようやく彼らは安堵の域を漏らす。

「死んだな」

「ああ」

 八人の同志はショットガンを持ち直すと、踵を返して貫録を醸し出す勇壮とした立ち振る舞いでデパートを後にした。

 

 

 グレン・キャニオン一帯に出現したエイリアンは世間を騒がせ、地元テレビ局や新聞各社は挙ってエイリアン騒ぎを格好のネタにして、センセーショナルに訴えかけた。

「今私が立っているのは、バレービスタコミュニティーのはずれですが、このすぐ下に巨大で奇妙な生き物が何十匹も死んでいるのです。現時点ではこの生き物の正体について公式発表は無く―――」

『触角が生えたこのくらいの生き物が出てきて、俺の股間を掴もうとしたから殴ってやったら・・・手を怪我しちまった』

「グレン・キャニオンにはとても強い不安が広がっています。そしてここアリゾナ州庁舎の前には、知事のコメントを待つ報道陣がいっぱい。奇怪極まりない謎の生物は一体どこから来たのでしょう?」

 

 

アリゾナ州 隕石落下現場・陸軍研究所特別施設

 

 今、一台のヘリコプターが降り立った。

 恰幅のいい身体つきをした現職のアリゾナ州知事ルイスは、此度のエイリアン騒動について最も有力な情報を知るであろうウッドマン将軍ら軍部とのコンタクトに臨もうとしていた。

「ルイス知事、こちらです」

 クライヤー尉官が厚く歓迎するも、ルイスの表情は至極険しい。というのも、ルイス自身はエイリアン騒動についてほとんどと言っていいほど情報を掴んでいない。むしろマスコミの方が詳しい情報を掴んでいる事が腹立たしいとさえ思っていた。

「私の愛するこの州にエイリアンがうろついている事をどうして私に報告しなかったんだね?」

 ご立腹のルイスを一瞥し、アリソンはドラの忠告を真面目に聞いておけばよかったと内心かなり後悔していた。

「州庁舎の前にいる400人ものハゲタカどもの方が私より詳しい情報を知っている。未来人だか何だか知らんが、お前たちのような役立たずは刑務所に入れてやるぞ!居心地のいい連邦刑務所だと思うな。恐怖の州刑務所だ!」

 未来人相手にも強気な姿勢を見せるルイスだが、本当の事を言えば気が小さく神経質な性分である事は誰にも悟られたくないと思っている。

 ウッドマンは柔らかい笑みを浮かべると、ピリピリと神経を張りつめるルイスを見ながら弁明する。

「お怒りはごもっともですが、サムライ・ドラ率いる鋼鉄の絆(アイアンハーツ)によって保安管理が破られたためでして」

「ちょっと待ってください。ウッドマン将軍」

「我々は非常に厳重な警備をしていたのですが」

「将軍!」

「知事は私に質問なさってるんだ、リード博士!」

 リードは一方的にドラたちを目の仇にするウッドマンの言い分が気に入らなかった。一方のウッドマンも意固地になって自分の主張を譲らず、リードと対立を深める。

「いい加減にやめろ!軍人の内輪もめなんか聞きたくない。現在の状況を教えろ」

 仲裁に入ったルイスが単刀直入に状況の説明を求めると、ウッドマンは厳しい顔を浮かべながら「由々しき事態です」と漏らし、フレミング大佐から衛星写真を受け取った。

「地上観測および衛星熱探査によれば―――かなり問題があります」

 一通り調査した結果を映し出した画像をルイスに渡したが、彼には何が何だか分からず、持っていた画像を無造作に放り投げる。

「こんなの見ても分からん。どんな問題なんだ?とにかく、誰かこの虫だかヘビだかを早く退治しろ!」

「一言言わせてください」

「君は?」

「アリソン・リード、どうも。カーラ、お願い」

 カーラがリモコンを操作すると、巨大なスクリーンが表示された。

 北アメリカ大陸を映し出した地図のうち、エイリアンが出現したグレン・キャニオンの多くが赤く塗りつぶされている。

「この画面の赤く塗られた地域がエイリアンの繁殖エリアです。早急に手を打たない限り三日でグレン・キャニオン全体に広がります」

「神よ。そんな無慈悲な」

「一週間でアリゾナ全域に広がり、続いて南西部を飲みこみ、二ヶ月でアメリカ全土はエイリアンに支配されます」

 ルイスは言葉も出なくなった。立ち上がって地図を見るが、僅か二ヶ月と言う期間で地球全土がエイリアンに駆逐されるという映画みたいな話を、とても信じたくは無かった。

「人類は絶滅します」

「悪い冗談だ!」

 バタン―――!

 扉が開らいた音が聞こえたと思えば、エイリアン退治を終えたばかりのドラたち鋼鉄の絆(アイアンハーツ)と、ハリーとウェインを含めた八人が現れた。

 ウッドマンとアリソンらが目を見開き驚く様子を見ながら、ハリーは破顔一笑し、

「来てやったぞ。嬉しいか?」

「ああ実に嬉しいね。憲兵を呼んでこいつらを逮捕させろ」

「俺たちはさっき鳥形エイリアンを撃ち落としてあんたらの尻拭いをしてきた・・・能無しに軍隊に代わってな!」

 既に激しい対立が両者の間に生じていた。ドラはルイス知事を見つけると、おもむろに手を差し握手を求めた。

「知事、オイラはサムライ・ドラ。TBT特殊先行部隊“鋼鉄の絆(アイアンハーツ)”の隊長。特定過去歪曲犯罪特別取締班現場責任者の肩書を持っている。で、彼らが鋼鉄の絆(アイアンハーツ)の一員」

「「「「「どうも(よろしくお願いします)」」」」」

「で、こっちの黒人はオイラの職場の同僚で・・・」

「生物科学研究室のハリー・ブロック。バレーボールチームの監督をしてる」

「ウェイン・グレイ。高校で化学を勉強しました」

 一人だけ自己紹介に違和感を感じた気がするが、取り立てて問題とする事でもなかった。

「つまり、君たちが今回の第一発見者なんだな」

「「「「「「「そう言う事(そうじゃ)(そうです)」」」」」」」

「そう。そしてこのような混乱を引き起こした張本人だ」

「「「「「「「うーまたかよ(ですか)!」」」」」」」

「立ち入り禁止エリアに忍び込み保安管理の妨げになったんです」

「そしてその結果、地球外生物が封鎖区域の外に逃げ出した!」

「ウソ八百だ!」

「違う!そっちが警告を無視して!」

「いいやお前たちの事を告訴してやる!」

「こんな事態になっておきながら自分たちだけ責任逃れするんですか!?」

「卑怯者!それが大人の対応だっていうなら俺はゼッテー認めねぇぞ!!」

「あなたたち、いい加減にしてよ!」

 ドラたちを敵視する軍部と、ウッドマンの身勝手極まりない言葉に怒りを覚える鋼鉄の絆(アイアンハーツ)、両者の言い争いを止めようとするリード―――現場は混沌と化していく。

「いいからみんな黙るんだ!」

 蚊帳の外に置かれていたルイスの一喝が、事態を瞬く間に収拾する。言い争っていた両者はあっという間に黙り込んだ。

「この州をエイリアンには絶対渡さない。君たちは専門家だろ?私は今すぐ答えを知りたい。どうやってこの問題を解決する?」

 

 一刻を争う事態で争っている場合ではなくなった。ウッドマンは気持ちを切り替えると、直ちにエイリアン殲滅作戦の指揮を執り、アリゾナの衛星写真を広げながら全員に作戦内容を説明する。

「これが今日の午後の時点でエイリアンに汚染された地域ですが・・・まず初めにここから半径8キロ以内の住民を避難させます」

「避難だと?1万人もいるんだぞ」

「住民の安全を確保してから、この地域を焼き払ってエイリアンを殺します」

「何で焼くの?」

 懸念を抱いたリードが腕組みをしながら尋ねると、ウッドマンは不敵な笑みを浮かべ―――

「ナパームです。大量のナパームを使う」

 

『ナパーム弾』

 

 主燃焼材のナフサにナパーム剤と呼ばれる増粘剤を添加してゼリー状にしたものを充填した油脂焼夷弾。アメリカ軍が開発したもので、きわめて高温(900 - 1,300度)で燃焼し、広範囲を焼尽・破壊する。

 

 ウッドマンは強引にも、ナパーム弾によるエイリアンの殲滅作戦を提唱した。その際にグレン・キャニオンの多くが焼土と化す事も厭わずに。

「どうせなら核爆弾でも使ったらいい」

 何気なくドラがそう呟いた。ウッドマンの横で話を聞いていたフレミング大佐は「そっちにします?」と、ウッドマンに耳打ちをする。

「私の州で水爆を落とす事なんか許さない。ナパームだの何だのと少し乱暴すぎるんじゃないのか?」

「確かに、爆発物に対して未知の生命体がどう反応するか分からない」

「それに軽はずみな事をしたために時空間に歪みを作ったりしてみろ。全部お前らの所為だからな」

 先ほど言われっぱなしだった事もあり、鋼鉄の絆(アイアンハーツ)はルイス知事の不安に便乗してウッドマンに重みのある言葉で責め立てた。

「知事。ここは軍に任せていただきたい。保障します」

 が、ウッドマンは既にこの作戦を遂行するつもりでいたから今更何を言われても作戦を変えるつもりなど毛頭ない。

「将軍」

 会議の途中、恐る恐るクライヤー尉官が現れウッドマンに話しかけて来た。

「お話し中ですが、見て頂きたいものが」

「何だ?何があったんだ?」

 ただならない事が起きたのではないか、そう直感したドラたちもウッドマンの後に続いてクライヤー尉官を追いかける。

「何?これがどうしたんだ?」

 監視カメラからの映像をチェックするパソコンを指さしながら、ウッドマンが問い質す。

「エイリアンが4番カメラを壊したんです」

 クライヤーが端的に答えパソコン画面を指さすと、1から4番と設置された監視カメラのうち、4番カメラの映像だけが途切れて砂嵐となっている。

「こっちに映ってるのは?」

 隣にあるパソコンを見ながらルイスがおもむろに尋ねた。

 ドラたちはそこに映し出された映像を見て絶句した。青い毛を全身に持つゴリラのような生物が地下洞窟に出現していた。

「大変だ。霊長類にまで進化している!!」

「ああ・・・テレビに出るような顔じゃないな」

 恐るべき進化の速度。霊長類まで進化を終えたエイリアンは、鬼のような形相をカメラに向けると、持っていた棍棒のような物で目の前のカメラを破壊した。

 次々とカメラが破壊され、1から4番までのカメラが砂嵐となる。まさかと思いカーラが後ろに振り返ると、別のパソコンに送られていたカメラの映像も途切れた。

「6番、7番も消えました」

「全部壊されたようです!」

「事態は深刻だぞ」

 ガタ・・・・・・

 突然そんな音が聞こえてきた。ドラは人間よりも遥か彼方の音まで聞き取る事が出来る耳で迫りくる危険な音を聞き取った。

「エレベーターが動いてる・・・」

「下には誰もいないはずだ」

「エイリアンたちよ」

「あのエテ公どもか?」

「応援を呼べ!」

 ジリリリリリ・・・・・・

「応援を呼べ!」

「応援の用意だ!ここにエイリアンを入れるな!」

 ブルー・モンキーの襲撃を許す訳にはいかなかった。軍部は不測の事態に対処しようと、エレベーターの前に施設に居るだけの憲兵をかき集める。

「エレベーターから来る!」

「エレベーターを固めろ!」

「ピストルを!私の後ろに隠れて下さい!」

「放してくれ!エイリアンを見たい!」

 エイリアンが危険な存在だと分かっていながら、この目で見たいとルイスは騒ぎ立てSPたちを困らせる。

「銃撃の用意」

 この場にいる者すべてに緊張が走る。憲兵がエレベーターの前で機関銃を持って構える中、エレベーターが地下の方から上がって来た。

 おもむろに扉が開かれると―――中は空っぽ。ブルー・モンキーの姿はどこにもない。

「何もいません」

 全員は言葉を失った。

 だが、直後に施設内の配電設備に異常が発生―――停電となった。何かの予兆だと思い全員が警戒心を抱いた次の瞬間、

「ガアアアアアアアアアアアア!!!!」

「あああああ!」

 洞窟へと続く穴を塞いだ巨大な鉄のカバーを突き破って、ブルー・モンキーが出現。そのうちの一体がクライヤー尉官の方へと飛んできた。

「うわあああ!!」

「「「だあああああ!!!」」」

 次々と現れるブルー・モンキーに怯え、悲鳴を上げる。理性の欠片も無い本能のみで生きるブルー・モンキーはルイスに狙いをつけ、襲い掛かった。

「知事が!知事が!」

「うぎゃあああ!助けて、助けて!!!」

 クライヤーの願いも虚しく、ブルー・モンキーは泣き叫ぶ彼を持ち上げ、元来た洞窟の穴へと彼を突き落とした。

「どけ!やめてくれ!!」

 このままではルイスもクライヤーと同じ末路を辿ってしまう。ドラは彼を助けるためにブルー・モンキーへと近づき、自慢の鉄拳を炸裂する。

「モンキー・パンチ!!!」

 鉄拳はブルー・モンキーの顔面に食い込み、元々が厳つい顔を余計に厳つい姿へと変え、敵を吹っ飛ばした。

「うおおおおお!!!やめてくれ―――!!!」

 不意を突かれた龍樹が、ブルー・モンキーに顔を鷲掴みにされてしまった。必死に抵抗をするも、老人の力では野蛮な猿の暴挙を止められない。

「「龍樹さん!」」

「爺さん、待ってろ。今助けるぞ!!万砕拳―――」

 ドン・・・・・・!

 駱太郎が攻撃を繰り出そうとした瞬間、ショットガンの弾丸が飛んで来、ブルー・モンキーの頭へと貫通した。

「ぐぁっ!」

 何とか解放された龍樹が後ろを振り返ると、茜が消炎を上げるショットガン片手に体を奮わせている。

「へへへ・・・・・・う・・・撃てましたね・・・///」

 

「ひえええええええ!!!!やめろ、やめてくれ―――!!!」

「撃たないで!お願いだから!」

「撃つんじゃない!仲間に当たる」

 ブルー・モンキーはもう一匹いた。ハリーが運悪く捕まってしまい、暴行を受けている。何とか助けようとするも、下手に手を出せばハリーに銃弾が当たりかねない。

 と、そのときだった。意を決してウェインはクライヤーが落とした拳銃を拾い、ハリーがブルー・モンキーから離れた瞬間を見計らって、引き金を引いた。

 ドン・・・ドン・・・ドン・・・

 おっかなびっくりにウェインは銃を放つ。三発の銃弾が心臓付近に当たると、ブルー・モンキーは悲鳴を上げながら横に倒れる。そうして、完全に動かなくなった。

 クライヤー尉官という尊い命が犠牲となりながらも、すべてのブルー・モンキーは退治された。

「お見事。返してくれ」

 フレミング大佐は一般人でありながらこの不測の事態に対処したウェインの腕前を評価しつつ、彼から銃を回収する。

 そして、実際にブルー・モンキーに襲われ酷い目にあったルイスは考えを改め、エイリアンの殲滅に手段を辞さない意向を示した。

「将軍。必要ならばどんな手段を講じても構わない。大量の爆薬を使って大地を焼き尽くし、不毛の土地にしてもいい。あのおぞましい化け物どもを撃滅するんだ!」

「感謝します。攻撃は明日の正午です!」

「よろしい」

 踵を返したルイスは、今のいままで側に居なかったSPたちを見ながら「どこにいた!?情けない奴らだ!」と叱咤し施設を後にする。

「調査は終了だ。君たちにもう用はない」

 強い口調でドラたちを邪魔者扱いし、ウッドマンは露骨に彼らを追い出そうとする。

「おい、お送りしろ」

 全く以て不愉快な話だったが、初めからドラたちはウッドマンの指揮に従うつもりなど無かった。いつか必ず見返してやる、そう強く決意して外へと向かい歩き出す。

 アリソンがドラたちの事を気に掛ける様子が気に入らなかったのか、ウッドマンが冷たい態度で「仕事に戻れ」と促したところ、

「最低の男!」

 この言葉を最後に彼女はウッドマンを見限った。様子を見ていたフレミングはウッドマンへとそっと近づき、

「女性が怒りを露わにするときは大抵の場合自分の気持ち・・・」

「黙れ。黙ってろ」

 

「わかったよ、出て行くよ。案内はいらない!」

「ムカつく!」

「エイリアンに食われちまえばいいんだ!!」

「助けてやったのにお礼の一言もねぇのか」

「それが軍隊って奴なんだ!ああ―――ぶち殺してぇええ!!!」

 全員、相当にウッドマンに対する不満と怒りが溜まっていた。車へと戻り現地基地へ帰ろうとした時だった。

「ねぇ、待って」

 聞き覚えのある声が話しかけて来たと思えば、荷物をまとめた様子のアリソンがドラたちに近づいてきた。これにはドラたちも意外そうな顔を浮かべる。

「もう一人乗れる?」

 状況を瞬時に察したドラは、口元をつり上げ「勿論」と答える。

「お役所勤めなんてやってられないわね。稼ぐにはやっぱり民間!」

 そんな事を言いながら、アリソンはドラたちの車に荷物を積み込んでいく。

「本気なのか?」

「ええそうよ。聞いて・・・今さらだけどあなたたちの調査データとサンプルは持ち出して来たから」

 軍部がTBTの研究室から持ち出したドラたちのサンプルデータが入ったトランクを掲げるアリソンは、これまでの事を反省し協力する姿勢を見せた。

「生き残れたらお手柄は、あなた方のもの。あなたの言う事をもっと素直に聞いておけばよかったわ・・・・・・」

「・・・・・・素直じゃない奴だ」

「お互い様でしょ」

 互いの蟠りが一先ずのところ解消され、ドラはアリソンと和解した。そして彼女を仲間として引き入れた。

「よーし、チンカスウッドマンに一泡吹かせてやる!!」

 意気込み強く、ドラはアリソンを車に搭乗させて施設を出発。エイリアン殲滅のために軍部とは違うアプローチを試みるため、行動を起こすのだった。

 

 

午後8時22分

アリゾナ州 特殊先行部隊“鋼鉄の絆”現地基地

 

「君を発見したとき、あの洞窟で君は一人で怯えていたっけ。オイラとみんなの前で。あの頃は楽しかったよ。君の事を知りたい」

 シャーレに向かって話しかけるドラの姿は極めてシュール、というか痛い姿だった。周りがかなり困惑する中―――ドラは柔らかい笑みを浮かべ、シャーレの中に存在するエイリアンのサンプルである単細胞生物に言葉をかけ続けた。

「オイラを信用して話してくれないか、君の秘密を。どうやったら君の事を殺せるの?」

「おい。気を確かに」

「そいつ何なんだよ?」

 事情を知らないでいたウェインがおもむろに尋ねる。

「最初に隕石から採取したものだ」

「それは進化しないのね」

「なんでかな?多分、冷蔵庫に入れておいたからか。外気に触れない様にしてあったからかもしれないけど、オイラには理由は全く分からないし・・・」

 そう言いながらハリーの方を見てみると、彼はタバコを吸って一服している。

「タバコいつから?」

 健康志向が強く、バレーボールのコーチであるハリーがタバコを吸うはずがないと思っていたから、ドラはそれなりに驚き理由を尋ねる。

「健全に生きるのはやめたよ」

 と、半ば投げやりになった感じでタバコの火を点けたマッチを放り投げた。残り火が点いたマッチはドラが先ほどまで話しかけていたシャーレの中へとカップイン。途端、単細胞生物が急激な成長を見せ、瞬く間に太い根となって壁に張りついた。

「うわあああ!」

「ななな・・・・・・なんじゃこりゃああ!!」

 茫然自失となる。この場に集まった者たちはエイリアンの急激な進化に驚く余り、口をあんぐりと開けた。

「火に反応して急激に成長した・・・」

 アリソンが口走った瞬間、ドラはエイリアンの秘密に気が付いた。

「火だ・・・・・・宇宙で眠っていた生命体が地球に落下してきて目覚めた!火や熱が、触媒なんだ!」

「たかがマッチの火であんなに反応するって事は、もしナパームを使ったら?」

 わざわざ幸吉郎が言わなくても、皆は直ぐに最悪の事態を想定し苦い顔を浮かべた。

「軍隊ってのはバカだよ!」

「あのバカ将軍さんに連絡しましょう!」

 

 

同時刻 隕石落下現場・陸軍研究所特別施設

 

 エイリアンの重大な謎を突き止めたドラたちとは対照的に、何もかもが強引で浅はかなバカ将軍のレッテルを張られたウッドマンは明日の総攻撃に備えて大量のナパーム弾を基地中に集め、設置を急がせる。

「ナパームがこんなにたくさん・・・」

「当たり前だ。化け物どもを地獄に送るんだからな。洞窟の中に隠れている奴らも炎に追われて慌てて地表に出てくるだろう」

 などと呟いていると、アリソンの同僚のカーラが彼女からの言伝を伝えようと現れた。

「緊急連絡です。リード博士からですが、今回の作戦について重要な情報だと」

「そうかね。残念だが私は忙しい」

 ウッドマンは独りよがりだった。折角の忠告も無視して、自分のやり方を貫くつもりでいた。この態度にはカーナも呆れを通り越して怒りさえ込み上げる。

「まだ何か?」

「いいえ」

 今更ながら、カーナは彼の下に残ったことを激しく後悔した。

 

 

午後8時45分

アリゾナ州 特殊先行部隊“鋼鉄の絆”現地基地

 

 アリソンが戻る間、ドラたちはマッチの火によって成長を遂げたエイリアンの根に向かって輪ゴムをぶつけ暇をつぶし合う。

 しばらくしてアリソンが戻って来たが、彼女の表情から判断するに吉報を期待する事はできなかった。

「無視されたわ。信じられる。あいつ電話にも出ないのよ」

「姉ちゃんが悪口を言ったから」

「私だけじゃないでしょ」

 軍部にこれ以上何かを期待する事は無理だった。ドラたちは自分たちの力だけでエイリアンを殲滅させなければならくなった。

「みなさん、根を詰めてはいけませんよ。これを飲んでリラックスしましょうか」

 気を落ち着かせようと、茜が全員分のコーヒーと紅茶を持ってきた。

「サンキュー茜。俺は紅茶で」

「俺にもくれ。タバコはやめだ」

「どういうつもりだアバズレ?」

「気を落ち着けるための差し入れです。リラックスをすれば研究もはかどるはずですが?」

 茜は一人一人にコーヒーと紅茶を配って行き、ドラもそれを飲みながらアリソンが着ている元素周期表が印字されたTシャツを何となく見つめる。

「茜ちゃん。コーヒー差し入れてくれたのは嬉しいんだけど・・・」

「アリソン、動かないで」

 ドラはその場から動こうとするアリソンに制止を求めると、彼女の肩を掴みエイリアンを倒す唯一の方法を思いつく。

「これだ!」

「兄貴、何してるんですか?」

「セレニウム。これが答えだ。アリソンのTシャツの元素周期表を見ていてひらめいた。説明するから脱いでくれないか?」

「「ぜひ!」」

 ハリーと駱太郎の声がシンクロする。

「いやよ脱ぐなんて」

「ああわかった。人間は炭素で構成された生物だ」

「もっと引っ張ってくれドラ!」

「人間にとっての毒素である砒素は原子番号33の第15族元素。エイリアンは窒素系生物だ。同じように下に下りて曲がると、そこにあるのは?」

 周期表を手でなぞりながらドラが誘導すると、アリソンは口角をつり上げ「セレン!」と口にする。

「そうだ。原子番号34のカルコゲン元素。これがエイリアンを殺す毒かもしれない」

「成長も早いから毒もすぐに効く」

「よし。セレンか・・・量は?」

 ハリーが尋ねると、ドラは頭の中で計算し、大よその量を想定する。

「2000リットルもあれば足りるだろう、どうだ」

「2000リットルか?」

「ああ」

「初歩的な質問だけど、夜中にどうやって手に入れる?」

 ウェインの問いかけにドラは口を詰まらせた。第一、セレンという馴染みのない化学物質が身近なところで手に入れることさえ分からなかった。

「楽勝じゃねぇか。調達する!」

 誰もが絶望しかけた時に強い語気でそう言ってきたのは駱太郎だった。どういう訳か彼には確信があるらしく微塵も不安を感じさせない。その事にドラたちが不思議がる中、駱太郎は真顔で言い放つ。

「フケ取りだよ」

「フケ取りシャンプーか?」

「シャンプーの主成分が硫化セレンなんだぜ。知らなかったか?」

「ああ・・・」

「な、何でそんなこと知ってるんだ?」

 普段は短慮な筋肉バカだと思っている駱太郎がフケ取りに使われている成分が硫化セレンだと言った事に驚愕しながら、写ノ神はあんぐりと口を開け尋ねる。

「気づかないか、輝く俺のサラサラヘアー!」

 どうやら駱太郎はフケ取りシャンプーを常用していたらしく、その主成分に硫化セレンが使われている事も知識として知っていたのだ。

 この中で、一番期待していなかった男からもたらされた貴重な情報はドラたちに一縷の望みを見出してくれた。

「いいだろう。それが一番いいアイディアだ!やってみよう、行くぞ!」

「行動開始!」

「「「「「おお(ええ)!」」」」」

「街中から集めるぞシャンプー!」

「俺は消防車だ!」

「行け!!」

 一斉にシャンプー集めと消防車調達に向かう同志たち。ドラは駱太郎を引き止めると、彼の肩をがっしりと掴み、

「R君!レンジャー訓練は無しにしよう!」

 と、満面の笑みで答えた。

「おっしゃあああああああ!!!」

 

時間軸2001年 10月21日

特殊先行部隊“鋼鉄の絆”現地基地

 

 決戦の朝を迎えた。はしご車を借りて来たウェインと、街中からシャンプーを調達してきた幸吉郎たちは消防服に身を包むと、タンクの中にシャンプー2000リットル分を投入する。

「よーし、満タンだ―――!!」

「戦闘用意!」

 地元の大学生たちが大勢集まっている。というのも、彼らにもシャンプー集めに協力をしてもらったのだ。

 歓声に包まれる中、ドラたちはエイリアンとの決戦のため消防車に乗り込んだ。

「やったるぞ!!」

「エイリアンにシャンプーだ!!」

 こうして、九人のエイリアンバスターを乗せた消防車がゆっくりと走り出した。消防車はこのままエイリアンが出現した場所にほど近い炭鉱を目指す。ナパーム攻撃が始まる前に、決着をつけたかった。

 心はなかなか落ち着かないものだが、引き返すことは絶対に考えていない。額に汗を浮かべるドラたちの視界に、軍隊の行進が見えてきた。

「兵隊たちが集まってる」

 全員は彼らを横切ると体を装い敬礼をした。

「ここから500メートルの南に古い炭鉱の入口がある。我が小隊はそこから突入する!」

「小隊だ?ハリー、ベトナム戦争のつもりか?」

「おい、折角なり切ってんだ。お前も付き合えよ」

 ノリの悪いドラに愚痴をこぼす中、消防車は一般道を抜けて砂漠地帯に踏み入れるとハリーが言っていた場所を目指し前進する。

 ドラたちが独自の動きを見せる間も、軍部はナパーム作戦のための準備を急ピッチで進めている。

 だがドラたちには関係の無い話だ。自分たちが信じたシャンプー作戦でエイリアンを殲滅するのだ、と意気込んで目的の炭鉱入口に到着した。

「よーし、ここだ!止めろー!」

 エンジンが完全に止まると、一斉にドラたちは消防車から降りる。

「あいった!」

「大丈夫かお主?」

「平気!全然平気!」

 こんな時でもアリソンの鈍臭さは生きていた。ある種緊迫した気持ちを緩和させてくれた彼女に感謝して、ドラたちは洞窟を目指す。

「本当に洞窟に繋がってるのか?」

「どっかに繋がってる。地質学はアバウトなのよ」

というハリーの言葉に周りはやや動揺する。炭鉱の入口を見つけると、彼らは暗い洞窟内へゆっくりと前進を開始した。

「どこだ?出ておいでかわいいエイリアン。さぁ出て来い」

 懐中電灯で辺りを照らしながら進んでいると、不意にハリーが立ち止まる。何事かと思うと、手袋を外しハリーは周りの岩に手を触れた。

「温かいぞ」

 そう言って、今度は直接舌を使った岩を舐める。

「強い酸だ」

 ウェインが試しに真似をしようとすると、見かねたドラが「ハリー。科学者の真似なんかしてる暇はない」と言い放った。

「れっきとした科学者だ!」

「爆破開始は正午よ。急いで」

 

 

午前11時07分

アリゾナ州 アメリカ軍仮設テント

 

 ヘリコプターが飛び交い、戦車が配備され、何百人と言う数の兵士たちが集まっているこの場所は隕石落下現場から2000メートルほど離れた場所に建てられた仮設テント。ナパーム作戦の総指揮を執るウッドマンは最終チェックを行っていた。

「よろしい。攻撃準備は?」

「万全です」

「よし!予定を早めよう」

 爆破開始は当初正午と予定していたが、準備が思いのほか早く終わったので作戦を早めることにした。

 そんな時、一台の車が現れた。乗っていたのはルイス知事だ。

「なんだ・・・何しにきやがった?」

 露骨に不満をこぼしながらウッドマンは軍帽を被ってルイスを迎え入れた。

「ルイス知事!」

「まだ何も燃えてないな?爆弾はどこだ?」

「間もなくです。いらっしゃるとは知りませんでした」

「失敗は許されんぞ軍曹」

「将軍です」

「ヘマするなよ。イスを温めてくれたのか」

 テントに入ると、ルイスは軍人の座っていた椅子を取り上げて図々しくもそこに座った。

「悪い。私に双眼鏡とココア」

 特に何もしていないくせに生意気な奴だ―――ウッドマンは心の中でそう呟き、ルイスへの不満を募らせていく。

 

 

午前11時30分

隕石落下現場 1000メートル付近

 

「ホースを貸せ。上に戻れ。オイラが合図をしたらセレンを送り出せ」

「了解」

 エイリアンが潜伏している洞窟へと続く穴を見つけだしたドラは、ウェインからホースを貰うと穴の中へと入って行った。彼の後に続いて幸吉郎たちも恐る恐る穴の中へと入っていく。

 中の様子はこの前来た時よりも大人しくなっていたが、相変わらず不気味な気配を醸し出している。

「いいかい。隕石の周囲全体にセレンを撒く。そしたら急いで外に逃げるよ」

 そのときだ。昨日に引き続いて凶悪なブルー・モンキーが姿を現した。

「お、おいブルー・モンキー!ブルー・モンキー!」

 縄張りに入って来たドラたちを排除しようと、ブルー・モンキーの群れが集まり始めた。

「ウェイン、今だ栓を開けろ!」

 無線でドラが合図を送ると、地上に戻ったウェインはタンクに詰め込んだ全セレンを噴き出せるようにレバーをオフにする。

 

 ―――ドカーン!!!

 

「うわああああ!」

 突然の大爆発。ナパーム弾によるエイリアンの殲滅作戦が今まさに始まったのだ。

 ―――ドカーン!!!

 地下洞窟一帯に広がる爆発と、それに伴う火炎。

「ナパーム攻撃だ!」

「ああ!!予定が早まったのよ!」

 何も知らないウッドマンは研究施設がナパームの大火力によって吹っ飛ぶ様に興奮しながらコーヒーを飲み、エイリアンの死滅を疑わなかった。

 ドカーン!!!ドカーン!!!

 ウッドマンの余計なパフォーマンスがエイリアンの成長を急激に促した。周りにある植物と言う植物がナパームの熱によって次々と巨大化し、手当たり次第にあるものすべてを摂り込み始めた。

「ヤバい!ヤバい!バイバイバイ!!」

「ウェイン、急げ!」

 彼らの目の前で爆発は起こり続け、巨大な植物の根が奇怪な虫とブルー・モンキーを糧として摂り込んでいく。

「おおお、早く逃げろ―――!!」

「シャンプー作戦中止!!」

 こんな状況ではシャンプー作戦も意味を為さない。全員が撤退を始めると、エイリアンも彼らの後を追いかけて根を伸ばす。

「急げ!!走らねぇと追いつかれるぞ!」

「だっはー!」

「急げ!いけいけ!」

 ドカーン!!!ドーン・・・

 テントの方では、ルイスはウッドマンと共に大火力によるナパーム弾の爆発ショーを楽しんでいた。

「なかなか盛大なキャンプファイアーだな。ウィンナーでも焼くか!」

「直ぐにお持ちします」

「攻撃は成功です!」

「よくやった!」

 そう思い込んでいた折、強い地響きが起こった。

 ドドドドドドドドド・・・・・・・・・

「うわあ・・・落ち着けウェイン!慌てるな!」

「何だあれは?」

 ナパーム攻撃が収まったと思えば、地中から超絶的に巨大な木の根が出現し、地元警察は怖くなって一斉に逃げ出した。

「あああああああ!!」

「どうしたんだ!」

「来る!来るよ!」

「何がよ!」

「逃げろ!」

 地下洞窟から逃げ来たドラたちは危険を回避するためにその場を離れる。

「オッタマゲロンパだ!」

「将軍!」

「何だ?」

 人々はこの世の絶望を体現した恐怖の大魔王の姿をその目で見た。

「急げ!」

「出せ!」

「行け!イケー!」

「行くよ!」

 消防車を発進させたドラたちの後ろから現れたのは、グレン・キャニオンの街を丸ごとひとつ飲み込むほどの大きさにまで成長した規格外なスライム状のお化け―――それ自体は極めて単純な構造を持つ単細胞生物だ。

 ドラたちはあり得ないくらいの大きさとなったエイリアンの姿に言葉を失くすのは勿論、頭が痛くなった。

「撤退しろ。撤退だ!」

 兵士たちは機銃掃射で対抗しようとするが、そんな攻撃は始めから意味がない。圧倒的な巨体を誇るエイリアンは逃げ惑う兵士たちを無慈悲に押しつぶして進行を続ける。人類はこれほどまでの非力を味わったことがなかった。

「あの化け物は一体何だ?」

 写ノ神は想像を遥かに超える目の前の敵を凝視し尋ねる。

「ナパーム攻撃に反応して進化が急激に進んだんだ」

「あれが進化?」

「適者生存って奴。単純な生物の方が生命力が強い」

「あれ見ろよ!変てこになってる」

「痙攣でも起こしてるみたいです!」

 駱太郎と茜が捕える限り、超巨大エイリアンの体は痙攣を起こしているように見えたらしい。

「違う。あれは痙攣なんかじゃない・・・・・・分裂しようとしている」

ドラが正しい答えを口にすると、エイリアンは体を二つに裂いて分裂を始めようとする。

「大変、有糸分裂ね」

「待てよ。あれが増えるってことか?」

「そう。どんどん」

「それがまた進化して、地球征服するまで増殖するわけ」

「後から来たくせに生意気だ」

 だが遅かれ早かれ、本当にこのままでは地球はエイリアンに蹂躙される事は必至。何とかしてこの状況を打開する方法は無いのか―――そう思ったとき、ウェインはおもむろに口を開き、

「ところで、シャンプー作戦はもう諦めたのか?」

 たった一つの光明がこの手にある事をドラたちは知っていた。だからこそ、ここで諦めてエイリアンの餌になる事は割に合わないと思った。

「運転するわ」

 アリソンがそう言うと、ドラは口角をつり上げ全員に呼びかける。

「シャンプー作戦、延長戦だ!!」

 

 

同時刻 アメリカ軍仮設テント

 

「大統領専用機にだって電話ぐらいあるだろ、前に見たもん!」

 ルイスは直ちにアメリカ大統領にこの事を報せようとするが、そのコンタクトに戸惑っていた。

「一時間も待ってられるか!」

 そう言った直後、ルイスはエイリアンに向かって行く一台の消防車の姿を捕えた。

「おい・・・あの消防車はあれ何してるんだ?」

 ウッドマンが双眼鏡で覗くと、逃げ惑う兵士たちを掻き分けて進む消防車にはドラたちが搭乗しており、怖い者知らずとも捕えられる彼らは巨大エイリアンの懐を目指す。

 そして懐に入り込んでみれば、遠目以上に巨大な体を持つエイリアンに目を見開いた。ハリーは目の前から飛び込む光景に恐怖と驚愕の感情を込めてママと呟いた。

「信じられっかよ!」

「どこを攻撃すればいいんだ?」

「あれだ!」

 ドラは攻撃できそうな場所を指さした。全員が顔を上げて見てみると、肛門に似た器官が存在しており、恐らくそれがエイリアンが呼吸している唯一無二の場所であった。

 直後、エイリアンの肛門から強烈な異臭が突風となって足元のドラたちに噴きかかる。

「ほおおおおおお!!」

「何という・・・悪臭・・・///」

「おおお!!クセーな!」

「アリソン、アリソン、車を止めろ。ここで止めろ!」

 車を止めると、「行くぞ!」といってドラはバスケットに乗り込んだ。

「ハシゴ伸ばせ!ホースを出せ!」

「おいおい、どうすんだ?」

「ハシゴで上る!」

「俺にやらせろ。こいつには恨みがある」

 言うと、ハリーはホースを持ってドラと一緒にバスケットへ乗り込む。幸吉郎たちが見守る中、梯子はゆっくりとエイリアンの肛門目掛けて伸びて行く。

「ゴーゴーゴー!」

「急げ二人とも!」

 家族の応援を受けながら肛門を目指すドラとハリー。そんな中、アリソンはまもなく有糸分裂を終えようとしているエイリアンの様子を気に掛ける。

「ねぇ、もうすぐ分裂するわ!急いで!」

 ようやく、梯子がエイリアンの肛門数十センチ付近まで到達。ここからはウェインの操作で梯子を適切な場所に移動させていく。

「左!」

「左っ!」

「ちょっと待って。こいつは練習したこと無いんだ」

 今更そんな事を言うなよと思いながら、ここまで来た以上やるべきことはひとつだ。何としてもエイリアンの肛門からセレンを流し込まなければならない。

「ストップ、止めろ!」

 ハリーの頭が比較的粘膜の薄いエイリアンの肛門に接触した。恐る恐るハリーが顔を上げれば、強烈な異臭と共にエイリアンが大量の空気を出したり吸い込んだりしている。

「どうなってる?」

「化け物はどんどん膨らんでいきます!」

「あの連中は何をするつもりなんだ?」

 ウッドマン、フレミングら軍部は挙って双眼鏡を覗きながらドラたちの為そうとしている事を見つめ考える。

 そして、ルイスはおもむろに双眼鏡から目を放し―――真顔を浮かべドラたちがしようとしている事を理解した。

「私の見たところあれは・・・特大の浣腸」

 

「チャンスは一回だ。頼むぞ」

「借りを返すぞっ―――!!!」

 刹那。ハリーはエイリアンの肛門にシャンプー浣腸を流し入れた。

 街中から調達してきた2000リットル分のシャンプー液がエイリアンの肛門から流し込まれると、エイリアンは悲鳴にも似た声を上げ苦しみ出した。

「外すな!!」

「わかってるつーの!」

「効いてますよ兄貴!!」

 ドラの睨んだ通り、エイリアンの弱点はセレンだった。

 だが、喜んだのも束の間。苦しむエイリアンは肛門から大量の空気を吸収しようとして、粘膜に接触していたハリーも一緒に吸い込み始めた。

「ヤバい!!」

「ハリー!」

「うおおおお!」

「どうしたんだ!?」

「助けて助けて!!」

 シャンプー塗れになりながら、ハリーは肛門からエイリアンの体内へ引きずり込まれていく。

「ハリーを返せ!!括約筋(かつやくきん)のお化け!!」

「ドラさん大変です、破裂しそうですよ!」

「ハリー、暴れるな!」

「こん中クサいんだよ!」

「引っ張るぞ!」

「助けて、助けてドラ!」

 シャンプー液で全身を汚しながらドラはエイリアンに取り込まれそうになるハリーを引っ張り出した。

「大丈夫だ!」

「手を放すなドラ!」

「もう少しだ、よーし!」

 何とかハリーを救出したと思えば、いよいよエイリアンがセレンの毒によって爆発しようとしている。

「逃げなきゃマズイ。爆発するぞ!」

「俺が何を見たかお前に分かるか?」

「逃げるから急いでくれ!」

「みんな!俺があんなところに入ったのは秘密だぞ!」

 急激に体を膨張させ、いつ爆発してもおかしくない状況―――ドラはハリーを担いだまま梯子を降りる。

「ああ・・・逃げよう!」

 ルイスたちも巻き添えを食らう可能性が出て来た。慌ててテントから離れる彼らと、最も危険な場所にいるドラたち。

「よし、出せー!」

「イケー!」

「急げー」

 アリソンはアクセルを名一杯踏むと、膨張するエイリアンの僅かな隙間から消防車を脱出させ辛うじて難を逃れた。

 全員が恐る恐る振り返った瞬間―――これでもかこれでもかと膨張したエイリアンは限界を迎え、豪快に破裂した。

 

 ―――ドンッ!!!

 

「やったー!」

「「やったぞ!」」

「「「「「エイリアンに勝った(勝ちました)―――!!」」」」」

 人類史上最大にて最強の敵にドラたちは勝利した。それも、シャンプーという武器になるはずのない物を使って、彼らは栄光の勝利を手に入れたのだ。

 

「さぁ将軍リラックスして。すぐにきれいになりますよ」

 ウッドマンは不幸にも爆発したエイリアンの体液を被ってしまった。強烈な異臭を放つ将軍に水を掛けながら、フレミングは日頃彼に見下されている分、彼を見下した。

 やがて、報道陣の前でルイス知事は堂々と報告する。

「ここに報告します。この町を襲った凶暴なエイリアンは一匹残らず退治しました。シャンプーに含まれるセレンが弱点だったのです。さぁご紹介いたしましょう!我々を救ってくれた未来人たち。このアリゾナの英雄です、どうぞ!」

 一般市民・軍人問わず大勢の人々から拍手喝さいを受け、英雄として祀り上げられるドラたちはこそばゆい気持ちを抱きつつも悪い気はしなかった。

「それでは、未来人とともに戦ってくれた我がアリゾナが生んだ誇り高き英雄ウェイン・グレイ君を表彰します。今日をもって君に消防士の資格を与えます」

 ルイスはウェインに勲章を掛けてやると、小声で「署長に話しといた」と呟いた。

「ああ・・・感謝します!」

 この時をどれだけ待ちわびたことだったか―――ウェインはエイリアンを退治しただけでなく、念願の消防士になる事が出来たのだ。

 ドラたちはこの時代の人々に感謝されつつも、歴史に不要な影響を与えない様に長居はせず早々に未来へと引き上げた。

 

 

 それから間もなくだった。アリソンが疾病学研究所を依願退職して、TBTに再就職を果たした。

 さらに、シャンプー作戦でエイリアンを退治したドラたちの話を聞きつけたテレビ局のスタッフが彼らに新しい仕事を持ち込んだ。

 

 

西暦5538年 10月30日

小樽市 杯家

 

『わぁお。エイリアンと戦うのはホントに大変です』

『髪の毛を清潔に保つのもまた大変です!』

『しかしこれがあればもう何も心配はいりません!』

 テレビ画面の中に映る鋼鉄の絆(アイアンハーツ)の六人とハリー。彼らは視聴者に向かって、持っていたフケ取りシャンプーを前に差し出し、強い語気で言い放つ。

『『『『『『『一家に一本“フケ取りシャンプー”!』』』』』』』

 新しいフケ取りシャンプーのコマーシャルにドラたちが大抜擢されていた。このコマーシャルを見た昇流は、近くにいた真夜に尋ねる。

「お袋。俺わかんねぇんだけどさ・・・」

「あら、何かしら?」

「シャンプーじゃどうあってもエイリアン殺せねぇと思うけど・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

登場人物

ハリー・ブロック

声:楠大典

身長177cm 体重70kg 5507年2月6日生まれ。

31歳。第四分隊生物科学捜査班所員。ハールヴェイトの同僚で、彼とは対照的に細身な体の黒人男性。フランクな性格で病的に嘘をつくのが得意。落ち着きのなさや卑猥な言動が目立ち、周りを呆れさせている。地元クラブの女子バレー部の監督をしており、本人曰く女子更衣室に入るのは当たり前で、シャワーも一緒に浴びているという。いい加減でふざけた態度ばかりが目立つ一方、科学者としての知識と経験は本物。タバコは吸わない方だが、エボリューション篇で一度だけ吸ったことがある。

ドラ達と共に隕石の調査に同行し、10個の塩基対を持つ未知の地球外生物と接触した。その後ウッドマンの介入で調査が頓挫し、研究サンプルとデータを奪われた事に腹を立て、ドラ達と協力して現地にある陸軍基地へと侵入する。2週間ぶりに現地を訪れた際、ドラゴン・フライが内に侵入。それを取り除くために潤滑油なしで肛門から鉗子を入れられた。

ウェインが合流した後、街に出没した大量のエイリアンがどこから発生しているのを突き止める。アリソンが仲間に加わってから「健全に生きるのはやめた」という理由でタバコを吸ったが、その際に投げ捨てたマッチの火が最初に採取したサンプルの成長を急激に促し、これ以降禁煙を固く誓った。最終決戦ではふけ取りシャンプーの主成分である硫化セレンを巨大な姿に成長したエイリアンの肛門の中へと噴射させ、敵を撃滅した。

アリソン・リード

声:唐沢潤

27歳。アメリカ疾病管理センターの調査担当官。美人だが鈍くさいところがあり、何もないところで平気で躓いてしまう。ドラ曰く「人間味の無い高慢チキな氷の女王」で、マシンガントークが得意技。ウッドマンと違い、純粋に過去と未来に生きる人のためにエイリアンの解明に当たろうとしていた。

当初、ウッドマン将軍ら陸軍研究所のスタッフとして現地に赴きエイリアンの調査に当たっていたが、ドラとの接触とウッドマンの強引すぎるやり方に反発して彼の元を去りドラ達の仲間に加わった。たまたま来ていた元素周期表が印刷されたTシャツがエイリアン打倒のヒントを与えた。最終決戦ではウェインが用意した消防車を運転した。事件解決後、TBTに再就職した。

ウェイン・グレイ

声:鉄野正豊

19歳。グレン・キャニオンで暮らす消防士志望の青年で隕石の第一発見者。てっとり早く社会に出て稼ぎたいという理由から大学には行っていない。ルイス知事には高校で化学を習った事を話している。

隕石が飛来した夜に、消防士試験の練習をしていたが飛来した。事情聴取が長引いた所為で寝不足となってしまい試験には落ちてしまう。その後、暇を持て余してカントリークラブでバイトをしていると、地下空洞を通って脱走したエイリアンを発見する。更にその2週間後には常連客の男・バリーを殺したワニ型エイリアンの死体を捕獲し、ドラ達に見せる事で彼らの仲間になった。

その後デパートを襲撃した鳥形エイリアンを歌でおびき寄せる事に成功をさせるだけでなく、陸軍基地に出現したブルーモンキーをクライヤーの銃で倒すなど地味に活躍。最終決戦ではシャンプー作戦の為に消防車を借りて来、エイリアン撃退後は功績を讃えたルイス知事の斡旋で消防士になることが出来た。

ラッセル・ウッドマン

声:菅生隆之

アメリカ陸軍研究所の将軍。アリソンらと共に56世紀からやってきた。高慢な性格で、露骨にドラ達や黒人のハリーを見下している。劇中のフレミング大佐の言葉から推測すれば女心にも疎い。ドラの育ての親である武志誠とは仕事上付き合いがあったらしく、当時彼が所属していた生物学研究所で14万人もの人間が新型ワクチン投与の末の死を遂げた事をドラに話した際、誠とその作品であるドラをも侮蔑した。

誠が軍との連絡を絶って以降もその動きずっと監視をしていたらしく、未知のエイリアンを発見したドラ達の動きもドラのパソコンをハッキングする事で突き止めた。グレン・キャニオンにエイリアンが拡散した事を受け、大量のナパーム弾を使用する。しかしエイリアンが火や熱などで成長する事を知らないばかりか、ドラ達の忠告も無視して攻撃を行った結果更なる事態悪化を招いてしまう。事件解決後は、エイリアンの体液で汚れフレミング大佐に洗い流されるという惨めなものだった。

フレミング大佐

声:清水明彦

ウッドマン将軍の副官。忠実に仕事をこなす一方、将軍の言動を客観的な立場で諌めようとするもことごとく無視される。ブルーモンキーをクライヤーの落とした銃で撃退したウェインの腕前を評価している。

クライヤー尉官

声:飛田展男

ウッドマン将軍の部下。眼鏡をかけたひ弱な男。ブルーモンキーが襲撃して来た際に攻撃を受け、あっさりと倒された。

ルイス知事

声:玄田哲章

アリゾナ州の知事。恰幅の良い体つきだが神経質な性格。グレン・キャニオンにエイリアンが出現した事を受けてウッドマン将軍らに対策を要求する。ナパーム攻撃には当初反対だったが、ブルーモンキーに襲われたことを受けて考えを一変させる。シャンプー作戦によってエイリアンが倒された後、彼らの功績を讃えウェインを消防士に任命した。




次回予告

壌「人の命は儚いものだ。指先一つで簡単に壊れてしまうほどに・・・」
「次の話は異色の展開。この僕が普段どこで何をしているかを特別に見せてあげるよ」
「次回、『螻蛄紀行録 蜉蝣の一期』。もしも見なかったときはどうなるか、分かってる?蟲の息にして上げるよ」

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