サムライ・ドラ   作:重要大事

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ド「写ノ神さ、お前って意外とプレイボーイだったりする?」
写「はぁ!?お前何言ってんだよいきなり・・・俺がプレイボーイ?バカ言ってんじゃねぇよ、どこら辺を見てそう判断した?」
ド「だって茜ちゃんと二人きりになった時にあんな気取った台詞吐くんだもん。誰だって勘違いするって」
写「いいじゃねぇかよ夫婦なんだから、それくらいやったって!それで周りから死ねとか氏ねって言われても痛くもかゆくもねぇし!!俺は茜が大好きなんだよ!!文句がある奴は今すぐ出て来―――い!!!」


そこは地の獄・・・

法聖院 地下300m地点

 

 硫黄の化合物と思われるガスがあちこちから吹き出す洞穴内を突き進む鋼鉄の絆(アイアンハーツ)。辛うじて死の罠を回避したドラたちだが、茜の精神状態は極限まですり減っていた。

「ぐっす・・・こんな理不尽もう嫌です~~~///」

「虫ぐらいでワンワン嘆いてるんじゃねぇ!こっちはな、危うく頭蓋骨にこんな太い杭が刺さるかもしれなかったんだぞ!!」

「あのさ単細胞、茜が大の虫嫌いってこと忘れたんじゃねぇだろうな?いつもならもっと程度がひどいんだ。今日のなんか大分我慢した方だもんな?」

 と、虫に怯え泣きじゃくる弱々しい茜を写ノ神があからさまに庇った。駱太郎はその事が非常に面白くなく、不満たらたらに唾を吐き捨てる。

「けっ。おめぇだって危うく死にかけたじゃねぇかよ・・・」

「そうだそうだ、独身男の前で嫁を庇んじゃねぇ!」

「「「あんた(お主)が壁の仕掛けを作動させなきゃこんな事にならずに済んだんだ(のじゃ)!!」」」

 罠に落ちる原因を作った張本人・杯昇流に対しドラと幸吉郎、龍樹の三人は一斉に非難を声を荒らげた。昇流は何も言い返せず、ただ自分の罪から逃避するようにドラたちから目線を逸らし口笛を吹いて誤魔化した。

 

 それから間もなくだった―――前方より薄らと光る場所を発見した。そこが洞窟の出口だと判断するのは容易な事だった。

 出口に近づくにつれて、奥の方からカンカンという小槌を叩くような音が聞こえてきた。出口を抜けたドラたちがおもむろに崖下を覗き込むと、そこには彼らが想像した通りの光景が広がっていた。

 青磁の村を始め、各時代の様々な場所で拉致された陶芸家たちが同じ作業空間でそれぞれが別々の陶器を作っている。彼らが作業をしている間、法聖院の僧侶たちが監視員となって厳戒態勢で見張っている。

 そして、作品が出来上がると巨大な窯から取り出された―――鑑定士へと渡される。ここで鑑定士が良作と認めてくれれば罪に問われる事は無い。だが、万が一出来の悪い作品を作ってしまった時には、即座に作品を破壊され厳しい処罰を言い渡される。

「・・・なんだこのガラクタは!!貴様舐めているのか!!」

 ガシャン!!!

「申し訳ございません!!しかしどうかご理解していただきとうございます!!質のいい青磁というのは百個作ったとしても、わずか十数個というのが現実。それを大量生産すること事態馬鹿げた話であって・・・」

 鑑定士が声を荒らげ不出来な作品を破壊。弊衣破帽な格好でひどく痩せこけた様子の陶芸家の男は頭を地面にこすり付け、必死に許しを乞おうとするが―――

「黙れ黙れ黙れ!!貴様と議論している時間も惜しいわ!!お前のような役立たずのクズは、この底辺の更に底・・・“地の獄”で働いてもらう!!」

 宣告を受けると、陶芸家の男の周りにサングラスをかけたスーツ姿の監視員二名が現れた。困惑する男の両腕を担ぎ―――嫌がる彼を連れてどこかへ連れて行く。

「お、お許し下さい!!私はまだやれます!!ああああああああああああ―――」

 悲鳴を上げながら、男は扉の向こうへと消えいった。しかもそうした光景は立て続けに起こり、不出来な陶器を作ってしまった陶芸家は男女例外なくスーツ姿の男たちに連れて行かれ扉の向こう側へと消えて行った。

「くっそ―――・・・やりたい放題しやがって!!」

 声を押し殺し黙ってこの様子を見ていた駱太郎の堪忍袋の緒が切れる。業を煮やし、居ても経ってもいられなくなった彼は感情に任せ身を乗り出そうする。だがその瞬間―――ドラが引き止めた。

「相変わらず短慮だな!わざわざ敵に捕まえて下さいってアピールしてどうするの!?もっと考えてから動くんだ」

「どうやら地下施設は思ったよりも複雑そうだな。詳しく調べるか」

「なら、長官は龍樹さんと駱太郎と一緒に連れてかれた陶芸家たちの後を追ってください。俺と兄貴は別ルートを探して内部を深く探ります、黒幕がどこかに隠れてるかもしれませんので。写ノ神は茜と一緒に人質の解放と退路の確保だ。ただし、一筋縄でいくと思うな」

 それぞれで役割を分担し、ドラたちはいよいよ本格的な行動を開始する。

「おし。鋼鉄の絆(アイアンハーツ)・・・・・・行動開始!」

「「「「「「了解(おお)(はい)!!!」」」」」」

 

 

同時刻 地下1500m 応接室

 

 鋼鉄の絆(アイアンハーツ)が秘密の地下施設に潜入し動き始めようとしていた頃、表向きは法聖院の住職を装い、本質は世界中の時間から拉致してきた陶芸家たちを搾取する中国系時間犯罪者・王阿星(ワン・シン)が最も重要なビジネスパーソンと商談を行っていた。

 純白の白い制服に身を包んだ男―――コスタリカ・スコヴィルは、銀色のアタッシュケースを机に置く。阿星が中を確かめると、現金でおよそ1000万円と半端な数の200万円が納められている。これを見て、阿星はほくそ笑みコスタリカも口角をつり上げた。

「これはこれは・・・随分と気前がいいですな」

「いつもの額よりも2割ほど上乗せしといた」

「ということは、更なる生産を期待していると捕えてもよろしいですかな?」

「ふふ・・・君の作り上げたビジネスモデルは実にすばらしい。顧客を騙し金を得るのが詐欺師の本懐。だが君はそうではなく本物を売りつけることで顧客の信頼を得る。そうして得た信頼で更に需要が伸び、物が売れる」

 巧みな人間心理と一般的な顧客理論に基づき、消費者からの信頼を得ることで多額の利益を得ることに成功した王阿星。その成果とも言うべき点として、スコヴィルはこの部屋のいたるところに飾られた青磁を始めとする高級陶磁器を見る。

 すると、阿星は不敵な笑みを浮かべた後、「がらくたも同然ですよ」とつぶやき、己の野望を明らかにする。

「私が求めているのはこんな陳腐な陶芸品でも、それを売って得られるあぶく銭でもない。人の野望はもっと身の丈を越えるものでないと・・・・・・ここにはその為の材料がすべて揃ってある。何のためにあなた方にわざわざ高い投資をしてこの地下に基地を作ったのか知れない」

「そう言うな。こちらとしても重宝させてもらっているさ。我々の地下シェルターの建造と君のところの製品を見返りに、こちらは君の言い値で取引をする。どうだ・・・・・・互の利は守られているだろ?」

「ビジネスライクと言う奴ですか。まぁそれもいいでしょう・・・・・・」

 納得したところで阿星は椅子から立ち上がり、中央に設置された巨大なモニター画面を通して、作業所で働く陶芸家たちを観察。不敵な笑みを浮かべ率直な疑問を口にする。

「しかし金と言うのは不思議なものだ。あんな実体があるようで無いものに、人はどうして気が狂った様に盲信し、それを得る為に自らの人生を費やすのか・・・・・・本当に神という存在は変わったことをしたがるものだ」

 

 

同時刻 法聖院 地下1200m

 

 鋼鉄の絆(アイアンハーツ)は各班に別れ行動を開始した。

 三遊亭駱太郎と龍樹常法、杯昇流の三名は扉の奥へと消えた陶芸家の足取りを追っていた。そんな折、偶然にも秘密の通路を発見し、彼らは暗中模索で法聖院の内部を探っていた。

 ガガガガガガ・・・・・・

「ん?」

 しばらく歩いていると、龍樹が奇妙な物音に気が付き足を止めた。そして音のする方へ歩を進めると、彼はあるものを発見し目を見開いた。

「これは・・・・・・駱太郎、長官。これを見るのじゃ!」

 重大な発見であったため、彼は直ぐに駱太郎と昇流を呼び立て、今自分が見ているものを彼らに見せた。次の瞬間、駱太郎と昇流は挙って言葉を失いかけた。

「なんだ・・・ありゃ!!」

「おいおいウソだと言ってくれねぇか・・・・・・!?」

 ガガガガガガガ・・・・・・

 三人の目に飛び込むもの―――異様な熱気と騒音、粉塵・悪臭・不衛生。亡者巣食う強制労働の施設がそこにはあった。

 ガガガガガガガ・・・・・・

 この工事は、阿星の出資者となっている巨大ファイナンス企業が独自に建造している核シェルターを兼ねた超豪勢な地下王国。この劣悪な環境下で働かされている者は皆、欠陥品と烙印を押された陶磁器を作ってしまった善良な陶芸家たち。

 ガガガガガガガ・・・・・・

 作業用ヘルメットを被り、粉塵で肺を傷めないためにマスクを着用している。そして、最新式の掘削機を操り、ひたすら地底を彫り続けている。

 ピッ―――!

「作業終了!各班ごとに整列!さっさと並べ!A班B班行進!」

 班長の指示に従い、捕われた陶芸家たちは作業を終え―――現場を離れていく。

 すべての作業員が現場からいなくなると、三人はおもむろに地へ降り、辺りを見渡した。

 未来の時間から持ち運ばれたブルドーザーやショベルカーなどの大型重機がちらほらと存在する中で、三人の視線を釘付けにしたのは超巨大な核シェルターだった。

「なぁ。ここで何させてると思う奴ら?」

「何かを作っている様じゃが、これはシェルターか・・・」

 そのとき、昇流は足元に落ちていた一枚の紙切れを拾い上げた。拾った紙を広げるや、途端に昇流の顔は苦虫を噛んだが如く険しくなった。

「・・・・・・ふざけやがって。まさかこんなものまであるとは!」

 昇流の手のひらに握られた緑色を基調とする「100」と書かれた紙幣。怪訝そうに、駱太郎と龍樹は目元を鉄仮面で覆った老人が肖像画として描かれている事が最大の特徴であるその紙幣を見る。

「何だよそれ?」

「日本円に見えるが・・・おもちゃのお札ではないか?」

「ペリカだよ。この地下社会だけで通じる貨幣単位さ。くそっ・・・ふざけやがって!!」

 直後、ペリカと称した紙幣を手の中で力強く握りつぶした。理由は定かではないないが、昇流はこの地下貨幣について熟知した口ぶりだった。

 長官はこの施設について何を知っているのか―――純粋な疑問を抱いた駱太郎と龍樹は不思議に思いながら彼の方を見、

「なぁ長官・・・あんたどうかしてるぞ」

何故(なにゆえ)この施設の内部事情にそんなに詳しいのじゃ?」

 尋ねられた昇流は、背中を向けた状態で「詳しいに決まってるだろ」と発し、さらにその口から驚くべきことを暴露した。

「・・・俺はな、ずっと前にここじゃないが同じ場所で働かされたことがある。このペリカについても嫌って言うほど知ってるさ!」

「本当かよそれ?!」

「ああ。それにしても、ただ陶芸家を拉致して寺の地下で陶磁器を作らせているだけの時間犯罪者ならまだかわいかった。だけど、この事件の裏に奴らが絡んでるとなると・・・・・・こりゃ相当に腹の立つ話だぜ!!」

「一体何の話じゃ。奴らとは誰の事である?!」

 珍しく昇流がバックに潜む存在に心覚えがある事が、駱太郎と龍樹にはたまらなく不安でもあり、悔しくもあった。

 と、三人が作業場のど真ん中で立ち尽くしだらだらと喋っていた、次の瞬間。

「おい、貴様ら!そこで何をしている!?」

 不意に声を掛けられたと思い周りを見渡せば、白いスーツやサングラスをかけた黒服の男たちが複数人現れた。

「やべぇじゃん!!」

「しまった見つかりおったぞ!」

「に、逃げるぞ!!」

 焦燥の三人は逃走を試み走り出した。

「侵入者だ!!絶対に逃がすな!!」

 逃げる三人を捕えようと白と黒の制服たちは応援を要請し圧倒的な数によって彼らを捕えようとする。

 何としてもここで捕まる訳にはいかない三人は、追っ手から逃れるため―――たまたま目に留まった作業用のトロッコに乗り込み、トンネルの彼方へと消えて行った。

 

 

法聖院 地下300m 陶芸作業場

 

 多くの陶芸家たちが囚われの身にある様を目の当たりにしながら、写ノ神と茜は彼らを救い出すため作戦を立案する。

 敵に気付かれないよう細心の注意を払い少しずつ人質の近くへと近づき、ギリギリの場所で踏みとどまると、息を潜め小声で話し合う。

「さてと、どうやって助けるのがいい」

「ざっと数えても100人ちょっとはいます。これだけの人数を逃がすとなると、流石に・・・」

「何とか脱出ルートを作らないとな。落ち着け考えろ・・・考えるんだ・・・・・・」

 慌てず、冷静に作戦を考える写ノ神。茜が悩む彼を見守る中、写ノ神の頭に妙案が浮かんだ。

「そうだ!茜、畜生祭典で妖怪をたくさん呼び出すんだ!監視の注意を一気に惹きつける!!」

「成程!わかりました、直ちに実行に移させていただきます!」

 屈託のない笑みで答えると、茜は畜生祭典を発動―――畜生曼荼羅より任意の畜生を呼び出そうとする。

「行きますよ・・・・・・畜生祭典・妖の陣『葛籠(つづら)落とし』!!」

 刹那、曼荼羅より召喚されたのは紅色の巨大な葛籠。朱雀王子家の家紋が刻まれたその葛籠を手に取ると、二人は作業場目掛けて投げ落とす。

「「せーの!!」」

 葛籠は岩肌を転がり作業場へと落下。直後、落ちて来た奇妙な葛籠を不審に思った監視員がおもむろに近づく。

「なんだこれ・・・・・・」

 監視員の僧侶が訝しげに葛籠を錫杖で突いた瞬間、葛籠の中に封じられていた恐怖が一気に解き放たれた。

「「「ああああああああああああ!!!!」」」

 中から出て来たのは茜が選り選った凶悪妖怪の数々で、監視員は魑魅魍魎に怯え挙って悲鳴を上げる。

 放たれた妖怪たちは葛籠から飛び出し、監視員たちに襲い掛かった。

「ぎゃ~~~骸骨!!!」

「やめてくれ―――!!!」

 がしゃどくろやちょうちん小僧など、有名な古典妖怪から鬼灯の里でしか見られない奇妙奇天烈な妖怪が大いに暴れ、作業場は騒然と化した。

 この隙を突いて、写ノ神と茜は捕われた陶芸家たちを逃がそうとする。

「さぁ、今のうちに!」

「助かりました!!」

「みんな、こっちから逃げるんだ!!」

 捕われた陶芸家たちを安全な脱出ルートまで誘導する写ノ神。その間に、茜は更に妖怪を追加してより一層混沌とした状況を作り出す。

「「「あぎゃああああああああああああああ!!!!!!」」」

「まぁ、何て品の無い悲鳴でしょう・・・。そんな怖がらなくてもいいじゃないですか?」

「いやそりゃ無理だろうぜ」

 ちょうちん小僧ならまだ耐えうる自信がある。しかしこれががしゃどくろに始まる凶悪妖怪ともなれば、真面な精神状態を保つことはほぼ不可能であると思われる。何よりも感受性の低い大人ほど、魑魅魍魎を畏れる傾向があるのだから。

 

 

同時刻 法聖院 地下1800m

 

 各所でメンバーが動きを見せ始めた頃、ドラと幸吉郎は法聖院地下施設の最深部へと到達―――そこで地下シェルター以上に重大なものを発見した。

 何かの製造工場と思われる施設が眼前に広がる。人気が無い事を確かめ工場内の様子を換気扇の隙間から観察すると、自動機械が作動しベルトコンベアから流れてくる圧力釜のような容器にチューブを差し込んでは抜くを繰り返している。

「兄貴・・・・・・あれは一体?」

「地雷だ」

「地雷!?」

 身の毛が凍りつく言葉だった。地雷と言えば、一度地中に仕掛ければその上に接触した人や動物、車両を木っ端みじんに吹き飛ばす殺戮兵器だ。

「国際法に触れるから、正規の軍需産業じゃ大っぴらには作れない。だけど相変わらず需要は高いから、裏で作ればいくらでも金になるんだ」

 実にきな臭い現場をこの目で確かめると、ドラは銀色の特殊道具ケースから周りの景色に溶け込ませ姿を隠す事が出来る「保護色マント」を取り出し、幸吉郎へと渡す。

「ほら、正真正銘の“透明マント”だ。これで姿を隠せ」

「はい。あ、言わないんですね・・・」

「何がだよ?」

「いや、ほら!よく道具を取り出す時に例のロボットは・・・!」

 これ以上の言葉は御法度だった。ついうっかり口を滑らせようとした幸吉郎の喉元に、鋭い刃が突き立てられた。思わず冷や汗をかく幸吉郎が横目で見ると、ドラがいつになく殺気の籠った瞳を浮かべ形相を作り出していた。

「わかってるはずだろ・・・長官みたいなこと言ったらただじゃおかないからな!!」

「すみません・・・・・・失言でした///」

 要らぬことをついつい言ってしまいがちな幸吉郎。ドラに厳しく咎められた後、ドラから渡された保護色マントで姿を隠し、工場の内部をより詳しく調査する。

 

 法聖院地下の武器製造工場で作られていたのは地雷だけではなかった。サリンなどの大量殺戮を目的とする化学兵器や、一般的な銃器なども豊富に作られていた。中でもとりわけドラの興味を引いたのは―――

「見ろ幸吉郎。ありゃ間違いない・・・カラシニコフを作ってやがる!」

「か、カラシニコフ?」

 思わず舌を咬みそうな名前だった。ドラが指さす方角にはベルトコンベアがあり、銃身長425mm、口径7.62mmのアサルトライフルが流れていた。

「カラシニコフは、1947年にソ連で設計された自動小銃だ。設計自体は古いが、極めて強力で現在も世界中で大量に流通してる・・・」

 と、そのとき。ドラは脳裏に電流が走った。

「そうか、分かったぞ!」

「分かったって・・・何がですか?」

「時間犯罪者の本当の目的だよ。奴らは高級陶磁器を作ってそれを未来で販売する。それで得られた収入をここにある武器を製造するために投資してるんだ」

「は!まさか・・・・・・」

 ここで幸吉郎も敵の狙いが分かり、目を大きく見開く驚愕の表情を浮かべた。

「お前も分っただろ。この世で一番儲かるのは武器だからね。そうやって武器製造と密売によって利益を得るビジネス・・・・・・世間は武器商人を下種な生き物と見下し、侮蔑を込めてこう呼ぶ・・・・・・“死の商人”とね」

「つまり、陶磁器を作っているのはあくまで武器製造の為の資金を稼ぐためであり、本当の目的を悟らせないためのカモフラージュに過ぎないって事ですか?」

「だとしてもやり方が汚いな。こりゃ龍樹さんが憤るのも納得かも」

 ドラたちが数えても、この工場では百近い殺戮兵器が大量に作られており、これだけのものを作ることができる阿星の資金力も相当なものだった。

「兄貴、どうしますか?」

「んなもん決まってる。一応が警察官もどきだからね・・・・・・それっぽい仕事をしないと」

 言うと、特殊道具ケースを再び取り出した。そしてドラがチョイスしたのは、この工場を破壊するための破壊兵器のひとつ、ロケット砲と手榴弾。幸吉郎はドラと顔を見合わせ悪意を孕んだ笑みを浮かべる。

「中の施設はきっちり破壊させてもらおうか!!」

「了解です!!ここの施設、何もかも無茶苦茶にしましょう!!」

 

 

同時刻 地下900m地点 トロッコ用線路

 

 ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・

 駱太郎と龍樹、昇流を乗せたトロッコは縦横無尽にレールの上を動き続ける。さながら遊園地のジェットコースターに乗っている感覚だが、あまり楽観的な考えをしている状況ではなかった。後方から白と黒の制服の男たちが同じトロッコに乗って追いかけてきている。

 ギギギギギ・・・ガガガガ・・・

 何度も脱線しそうになるトロッコのバランスを保ちつつ、後方からの機銃掃射の嵐を退けるのは至難の業。

 ダダダダダ・・・

 狭いトロッコでは大人三人の体を小さく縮こまらせる事は窮屈極まりない。銃撃を受けながら、似た者同士三人組みを乗せた小さなトロッコはレールが敷かれる限り、ひたすら前に進み続けた。

「こういう時ってさ!」

「「何だよ(じゃ)?」」

 不意に昇流が大きな声でつぶやいた。

「いやな。ネプリーグとか見てるとさ、100万かけたボーナスクイズってあるだろ!!あれをする感覚でやると少しは気がまぎれるじゃねぇかって」

「馬鹿者が!!この状況で何を言い出すとかと思えば・・・・・・ドラの悪い癖が移ったのか貴様!!緊張感を持て緊張感を!!」

 と、龍樹が叱咤した直後―――前方に二つに分かれた分岐点が見えた。この絶妙とも思えるタイミングを駱太郎は見逃さなかった。

「さぁみんなも考えてくれ!!俺たちが進むべき道はどっち?A:右。B:左・・・俺たちの運命はおめぇらの選択に託されたぞ!!!今すぐリモコンのDボタンを押して投票してくれ!!」

「お主もか!遊んでないでさっさと選べ!!大体みんなって誰の事じゃ!?Dボタンなどどこにあるんじゃぁあ!!」

 トンネル内で、龍樹の叫びが酷く空しく反響する。結局、三人を乗せたトロッコは左の分岐点に進入―――トロッコは左の道をとことん進み続けた。

 先程よりも入り組んだ険しい道に加え、狭いトンネルが待ち構える。上下に激しく蛇行するトロッコに乗っていると、駱太郎の顔が青ざめたて行き、強い吐き気を催した。

「き・・・気持ち悪っ!!」

「待て吐くな!!吐くなら後ろに吐け!!」

 慌てて昇流がそう言うと、駱太郎は口元を押えながら後ろへと振り返る。

 刹那、ゴールデンタイムでは流せないゆえにキラキラした輝きでカモフラージュした土砂物を勢いよく吐き捨てる。煌めく土砂物は後方のトロッコに乗った制服の男たちの顔面を直撃―――その余りの臭さと気持ち悪さに忽ち悲鳴を上げる。

 ガシャン・・・

「「あああああああああああああ!!!」」

 たまらずトロッコは脱線。中に乗っていた男たちは線路の脇へと転落する。

 パン!パン!パン!

 敵の数はまだまだ多い。その後も容赦なく凶弾が飛んでくる。

 トロッコが急カーブへと差しかかろうとしていた。咄嗟に駱太郎がブレーキを掛けようとすると、龍樹が彼の手を押える。

「ブレーキを掛けてどうする!?」

「もうダメ・・・俺死にそう///」

「いつもの空元気を出せ!!とにかくブレーキを掛けるな、全速力で逃げるんじゃ!!」

 脱線する事も覚悟の上の危険なトロッコアドベンチャー。ブレーキも掛けずにスピードを上げ続けるトロッコはカーブに差しかかる度に脱輪仕掛け、車体が大きく傾くが何とか持ち堪える。

 三人は幾度も心臓が止まりかけるが、なかなか安堵する事はできない。敵も敵で非常にしぶとく、また執拗に彼らの後を追いかけてくるのだ。

「龍樹さん!マジでカーブにだけは用心しろ、脱線して吹っ飛ぶからな!」

「長官どうする気じゃ!?」

 車輪から火花が上がるトロッコの上で、昇流はトロッコに積まれていた枕木を手に取り、それを線路の上へ無造作に投げ捨てた。

 枕木が障害となり、後方から走ってくる敵のトロッコの速度が著しく低下するのを確かめ、昇流は前方に存在する土砂が大量に盛られた鉄製の器が簡素な木の上で固定されたアーチに目を付ける。

「しめた!」

 頃合いを見計らい器と木を固定してある留め金部分を、昇流はスコップの先端で刺激する。その瞬間、敵のトロッコが渡るタイミングで留め金が外れ、大量の土砂が降り注ぐ。

「「ああああああ!!」」

 多量の土が零れ落ち前が見えなくなった。そして、枕木がつっかえ棒の役割を果たし、敵のトロッコは前方に向かって勢いよく反転―――敵は無造作に放り出された。

「「やったー!」」

「へへーん、どんなもんだ!よーし・・・ブレーキを掛けろ。速度を落とせ!」

「おっしゃ!」

 昇流によって九死に一生を得た駱太郎はブレーキレバーを引いた。が、その直後に錆びついたレバーが真っ二つに折れた。

「だあああ!!!やべぇよ、ブレーキ折れちまった!!」

「何たる不覚!!!」

「どうするんだよ俺ら!?」

 一難去ってまた一難。飽きることなく三人は望まぬスリルを味わい続ける。

 ブレーキが壊れたトロッコは更に加速を続けた。そしてとうとう前方に見えて来たのは開通されていない通路―――複数の岩の塊が行く手を遮る。

「チクショウ!!」

 もうやぶれかぶれになった駱太郎は身を乗り出すと、自らがブレーキの代わりとなって猛スピードで走り続けるトロッコを止めようとした。前輪に両脚を掛け、摩擦を加えて車輪の回転数を落とそうとする。

「おおおおおおおおおおおおお!!!」

 ギギギギギ・・・・・・

 足の裏から伝わる猛烈な熱気。火で炙られ焼ける感覚にもめげず駱太郎は必死でトロッコを止めようとした。

 そんな彼の願いが通じたのか、車輪の回転速度は急速に落ち始め、岩場との距離僅か数センチという場所でトロッコは緊急停車した。

「た・・・助かった~」

「よくやったぞ駱太郎!」

「へへへ、見たかこれが火事場のクソ力っちゅうもんよ・・・!」

 安堵の笑みを浮かべた、次の瞬間。

 ボッ・・・・・・!

「うぎゃあああああ!!!あちいいい!!!!誰か水!!水をくれ―――!!!」

 駱太郎の靴の底が発火―――文字通り燃える感覚に襲われた。折角ヒーローになれたというのに、何だか可愛そうな男だ。龍樹と昇流は内心そう思った。

 

 

同時刻 地下1500m 応接室

 

「君は“金持ち”とは何だと思う?」

 最高級ステーキ肉を食べながら、コスタリカが阿星にそんな話を振って来た。唐突なまでの質問に困惑した顔を浮かべる阿星。コスタリカはほくそ笑むと、ぶ厚いステーキ肉にフォークを突き刺した。

「うちの会長から昔聞いた話さ。金持ちとしての最低条件・・・必須条件を聞いている」

 言いながら、突き刺した肉汁豊富なステーキ肉を持ち上げ、それを豪快に口の中へと納める。

「なんだと思うそれは?」

 阿星は自分なりに金持ちとしての必要条件を考え、おもむろに口を開き―――

「・・・1億くらいか?」

「ん?」

「預金が1億くらい持っている・・・とか?」

 聞いた瞬間、コスタリカは思わず笑い出した。

「ははは、違う違うそうじゃない。そう言う話ではないんだ。1億が10億だろうが時には虚しいものだ。そんなものでは守れんのだよ・・・・・・わが命を」

 強烈な存在感を主張する目力に阿星は身震いする。コスタリカは口元の油を拭うと、金持ちという存在について雄弁に語り出す。

「今の状況は上の政治家共に生殺与奪を握られている状態だ。奴らが交渉を誤ればあっさり、我が頭上に核が炸裂するだろう。その事態に対応できずして何が金持ちだ?守らねばならん!我ら特権者はそう言う事態になっても快適にリッチに暮らしていかねばならない。それを成し遂げてこそ富豪・・・金持ちと言うものだ。そうは思わんか?」

 コスタリカがワイングラスを手に取った瞬間、阿星は気付いたように「だからシェルターなのか・・・?」と問うた。

「ああそうとも。本来なら国が配備すべきものだが、我々が望むのは普通のシェルターじゃない。我々が世界中に建設しているのは・・・・・・巨大シェルター都市『地下王国』。そこにはスーパー、病院、ゴルフ場、カジノ、何でもある!我が“財団X”に忠誠を尽くす者、会長が特別に認めた者のみがそこで安心して暮らし、生き伸びることができる。もっとも、この時代に核が降るなどと言う事は万に一つもないのだが、都合よくも武器製造基地と言うものがある。金のなる木とは正にココの事」

 それを聞いた瞬間、阿星は内心ほくそ笑んだ。

「まぁそのうち誰もが気付くだろう、この言葉が正に真だったという事を。その時を境に預金も国債もゴミクズ同前。巨大シェルター都市及び強大な力を持つ者こそが最高の強者となる!!これもまた至極当然な話・・・」

 

 ドドーン・・・・・・

 

 突然の地響き。強い揺れが部屋全体を襲い、応接室に飾られた高級陶磁器の一部が床に落ちて砕け散る。阿星とコスタリカはソファーから立ち上がり、不測の事態に焦りを抱く。

「何事だ!?」

 直ちに通信で連絡を入れると、雑音混じりに阿星の部下が応答。

『武器製造工場で爆発が!!・・・うわああああ!!!』

 悲鳴を最後に音声が途切れた。阿星とコスタリカは目を見開き言葉を失いかけた。

「どういう事だこれは・・・」

「そうか、例のタヌキロボットたちが・・・・・・こうしちゃおられん!!」

 

 

法聖院 地下1800m 武器製造工場

 

 ドカーン・・・!ドドーン・・・!

 工場のあちこちから爆発音が鳴り響く。その原因は、ドラと幸吉郎が辺り構わず工場内でロケット砲を撃ち込み、手榴弾を使っているためだ。

 ドカーン・・・!ドドーン・・・!

「兄貴!!早くしないと客が来ますよ!」

「証拠だ!証拠が要るんだ!!」

 幸吉路がロケット砲で工場内を破壊する間、ドラは犯罪の証拠となるものを片っ端から集める。

 と、ちょうどそのとき―――阿星とコスタリカが部下を引き連れ火の海と化している工場へと現れ、目の前の光景に唖然とした。

「おおお!!」

「おのれ奴らめ・・・・・・直ちに殺せ!!」

 コスタリカの部下たちは純白に染まった制服を脱ぎ捨てると、黒い忍び装束となった。そして、火の海の中へと飛び込みドラと幸吉郎へ襲い掛かった。

「来ましたよ兄貴!!」

「仕事が早いのはお互い様か。まったく、こっちは証拠かき集めるだけでも大変だって言うのにさ」

 文句を言いながら、ドラは忍者のなりをした敵の攻撃を刀で受け止め、返り討ちにする。

 幸吉郎も腰の刀を引き抜いて、手裏剣や苦無を多用する敵を圧倒的な剣技によって、一網打尽にしていく。

「幸吉郎!一旦この場を離れよう!」

 いつまでも炎の中にいる訳にはいかない。ドラは幸吉郎を連れて工場を脱出―――敵の追撃を逃れて仲間たちとの合流を図った。

 そうして上手く逃げて地下1000メートル付近まで戻ってきた、その時だ。

「うおおおおおおお!!!」

 如意棒のような鋼鉄製の棍棒を携えた阿星が頭上から襲い掛かってきた。

 ドラは咄嗟に刀で攻撃を受け止めた。だが直後、阿星の武器に違和感を覚えて後ろに一歩後退した瞬間、棍棒が三節棍へと変形―――ドラは紙一重でその一撃を避けたが、衣服の一部が刃で切った痕を作った。

「・・・・・・“高周波ブレード”か?」

 眉間に皺を寄せた状態でおもむろにドラがつぶやく。聞いた途端、阿星は驚きと感心を同時に抱く。

「ほう。意外に鋭い奴だ・・・・・・」

「高周波ブレードは56世紀になって開発された近接戦闘用の殺人技術だ。やっぱりお前がこの地の獄を支配する長だったか」

「折角のビジネス機会を奪われる訳にはいかないのでな。何としてもここで潰させてもらう」

 言って、三節棍を元の棍棒へと戻し阿星が改めてドラに攻撃を仕掛けるため前に出ようとした瞬間。

 ―――パンッ。

 彼方より一発の銃弾が飛んできた。瞬時に棍棒で銃弾の軌道をずらした阿星がドラの後ろから歩いてくる人影を注視すると―――消炎を上げる銃を携えた昇流を先頭に、駱太郎と龍樹、写ノ神と茜が現れる。

「何がビジネスの機会じゃ・・・・・・数少ない年寄りの浪漫をぶち壊しおった分際で!!」

 龍樹は険しい表情を浮かべると、おもむろに一歩前に飛び出し思いの丈をぶつけた。この言い分に対して阿星はほくそ笑み、口角をつり上げてから答える。

「浪漫か。そんな実体のない空虚なものを信じている時点ではっきりしている。貴様は典型的な負け組だ」

「なんだって!?」

「龍樹さんの浪漫を踏みにじるだけでなく、人の命を搾り取り奴隷の様に扱っている方が何を言いますか!?」

「貴様のような人間を仏教では有財餓鬼(うざいがき)と言うが、なにゆえそこまで金に執着する?金こそ空虚なものではないのか!?」

 龍樹が強い語気で問い質す。だが話を聞いていたコスタリカは自分の価値観とは正反対な事を言ってくる彼の言葉が酷くおかしくて仕方なかった。

「ふふふ・・・お前らにどこまで想像が届くかわからぬが想像してみろ、エリートと言われている連中の人生を。小学中学と塾通いをし、成績は常にトップクラス。有名中学・有名進学校・一流大学と受験戦争に勝って、やっと一流企業に入っても待っているのは出世競争。ギャンブルにも酒にも女にも溺れず仕事第一と考え、ゲスな上司にへつらい取り引き先にはおべっか、遅れずサボらずミスもせず、毎日律儀に定時に会社に通い、残業をしひどいスケジュールの出張もこなし、時期が来れば単身赴任・・・夏休みは数日・・・そんな生活を10余り続けて気が付けばもう若くない30台半ば・・・40、そういう年になってやっと蓄えられる預金高が・・・1千 2千万という金なんだ」

 語気強く金についての持論を語るコスタリカ。ドラは彼の言い分に共感しているのか、時折頷いている。

「わかるか!好む好まざるとに関わらず、人は金を得る為に人生の多くの時間をその為に使っている。言い換えれば、自分の存在・・・命を削っている。存在そのものを金に変えているんだ。サラリーマンだろうが役人だろうが、貴様らTBTだろうがみんな命懸けで金を得ている。これが何を意味してるか・・・・・・そう。金は命よりも重いという事だ!!」

「ふざけんな!!何が金は命よりも重いだ!こんな紙切れで人を奴隷扱いしやがったくせによ!!」

 声を荒立てた昇流は上着のポケットの中に入れていた100ペリカ紙幣を取り出し、くしゃくしゃに握りつぶしたそれを地面に叩きつけるように投げ捨てた。ドラはおもむろに溜息をつくと、昇流の方を見ながら哀れむ様につぶやく。

「世間一般の道・・・つまり命を薄めて手に入れる場合はそれだけの辛苦を味わなければなりません。金を手に入れるとはそう言う事なんです・・・大体あんたはあいつらに文句を言える立場じゃないって分かってるんですか?必死に勉強したわけでもなく、懸命に働いてるわけでもない・・・何も築かず・・・何も耐えず・・・何も乗り越えず・・・ダラダラと毎日を過ごし・・・あんたみたいに継続した努力をできぬ奴は、本来大金なんて夢のまた夢なんですよ!!」

「お前どっちの味方だよ!!?俺への風当たりが馬鹿に冷たいのはお前の所為じゃねぇか!!」

「違う!あんた自身の怠惰の所為だ、それ以外にないんだ!!」

 時間犯罪者の言い分に激しく肩入れし、味方であるはずの昇流をいつの間にか叱咤し始めるドラの言動は突拍子がなく、その悉くが自分の都合に合わせている。

 内輪で口論となるドラたちを見て阿星とコスタリカは目を見合わせる。やがて阿星が口を開きドラに話を持ちかける。

「どうやら話が分かる相手がいたようだ。どうだろうか、ここはひとつ取引といこうじゃないか。君たちがここまで辿り着いた事は称賛に値する。そこでだ、君たちには10億円出そう。それで我々を見逃してはもらえないか?」

「10億って・・・!?」

「兄貴、ダメですよ!そんな甘い言葉に乗っちゃ!?」

 悪魔の囁き。幸吉郎たちが一抹の不安を抱く。というのも、ドラは自分たちとは違って明確な損得で動く存在。だからこそ10億円という大金で懐柔を図る阿星の言葉は危険なのだ。

「・・・・・つまらないね」

「え?」

 呆れた物言いでつぶやいた。阿星がその言葉に耳を疑っていると、ドラは溜息をついてから静かに阿星を見据え、

「まったくクソおもしろくも無い。本当にバカみたいだ」

「なんだって・・・」

「つくづく哀れな男だ。どうやらオイラはお前を買いかぶっていた様だ、阿星。大詰めで弱い奴ほど信用できないが・・・つまりそれは管理はできても勝負ができないチキン野郎って事だ。平常時の仕事は無難にこなしても、緊急時にはクソの役にも立たないって事だ。ピンチは凌げずチャンスは逃す。とても人の上に立つ器じゃないな・・・そう言う点じゃお前は長官以下だ。うちの長官は緊急時ほどアホみたいに役に立つ男だ」

 尋常ならぬ冷や汗が流れる出る。この圧倒的、いや絶対的とも思える魔猫の存在感に誰もが息を飲む。

「阿星、剥げたな・・・お前の化けの皮。二流だよ、所詮お前は指示待ち人間さ」

 声こそ荒立てぬものの、急所を突くネチネチとしたドラの罵倒が続く。そんな中、急速にこの場の空気が凍りついていく。

 10億と言う目のくらむような大金でドラは動じないどころか、懐柔を図った阿星の精神を逆に追い詰め、己の存在感を確立する。

 魔猫―――常人の心では計り知れない魔性の生き物。人間の心の隙に入り込み、抉り、達観論で相手を制する、それこそがサムライ・ドラというロボットが持つ恐ろしさなのだと誰もが本能的に理解する。

「・・・・・・私が二流・・・・・・そう言ったのか、貴様?」

「ああ、そうだよ。何度でも言ってやるよ二流詐欺師。お前は金もさることながら、自分の命を大事にし過ぎてる。そんな奴にこのオイラは斃せない。命は丁寧に扱い過ぎるとよくない、もっと粗末に扱うべきだ。何しろ命を大事にすればするほど淀み、腐っていく。お前は正にそれだよ。命を大切にし過ぎるあまりチャンスが巡って来てもそれを掴めず、ずるずると腐り落ちる。そう・・・お前がクズとかゴミとか劣等だと見下し、搾取してきた連中にしたように、自分もまた命を搾取しなければいけない。じゃなきゃ、お前は二流どころか雑魚にすらなれない!」

 この瞬間、阿星の中で張りつめていた神経がプツリと切れた。

「雑魚・・・・・・雑魚・・・・・・誰が雑魚だと?」

「阿星・・・!」

 咄嗟のコスタリカの制止も虚しく、阿星は拳を強く握りしめ、湧き上がる怒りを抑え切れないでいた。

「俺は・・・・・・俺はその言葉が一番嫌いだ・・・・・・雑魚は果たしてどちらか、白黒つけてやろう。貴様が俺を雑魚と見下した事を、必ずこの場で後悔させてやる!!」

 言った直後、胸からぶら下げていた鬼灯型のペンダントを引き千切る。それは、コスタリカから粗品として託された人体に不可思議な影響をもたらす結晶体―――「悪魔の果実」と呼ばれるもの。阿星は躊躇なく体の中へと取り込んだ。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

 雄叫びを上げながら、常軌を逸した異形の存在へとその姿を変貌させる。そして、阿星は人の身を捨て―――怪物と化した。

「ふははははははは!!!!!!素晴らしい!!!!!!素晴らしいぞ!!!!!!これが私の力かぁあああああああああああああ!!!!!!」

 怪物と呼ぶには語弊があった。生物らしさからはほど遠い、ゴテゴテとした黒い金属の光沢を全身に纏い、肩や肘、腕にはチェーンソウやアサルトライフルなど殺傷性の高い重火器を武装している。

「なんだよこいつぁは!?」

「イカレちまってるぞこいつ!」

 この異様な姿をした傍から見ればロボットのような存在にドラたちは後ずさりし、息を飲んだ。

「阿星!こんなところでそれを使う気か!?こんな三下どもにその力を見せるべきなのか!」

「黙れぇええええ!!!!」

 本来の声色を極限にまで低音にした重厚な声で荒らげると、阿星はビジネスパートナーであるコスタリカの体を力一杯弾き飛ばした。

「ぐおおお・・・」

 岩場に激突して吐血。そうして動けなくなったコスタリカに狙いを定め、右腕に装備したガトリングガンで機銃掃射。

 ダダダダダダダダ・・・・・・

「貴様に指図される筋合いはない!!!クズがぁ!!!」

 ダダダダダダダダ・・・・・・

 全身を蜂の巣にされ、跡形も無く体を粉々に吹き飛ばされたコスタリカ。残ったのは岩場に吹き飛んだ彼の真っ赤な血―――スコヴィルと言う言葉が意味するところの唐辛子の辛みの程度が如実に現れていた様な気がする。

「そんな・・・・・・」

「メチャクチャだ・・・・・・」

 あまりに凄惨な光景に口を押える鋼鉄の絆(アイアンハーツ)。怒り狂り、理性的で無くなった阿星の言動は最早手が付けらないほど凶悪―――ドラの額からも冷や汗が噴き出すほどである。

「お前の言う通りだ、ドラえもんもどき!受けてやるさ・・・・・・お前の言う通り、自分の命を懸けてこの生か死のギャンブルを!!!」

 言うと、チェーンソウを装備した左腕を振り上げ、比較するまでも無く小さな存在を見据え―――

「死ねええ!!!」

「避けろみんな!!」

 ドラは直ちに回避命令を出す。刹那、切れ味抜群のチェーンソウが勢いよく振り下ろされた。

 地面を激しく抉り掘る圧倒的威力。もしもあの場で避けていなければひとたまりも無かっただろう。全員が肝を冷やす思いをする中、阿星は攻撃の手を休めることなく両肩に装備したミサイル弾を発射した。

「この!!」

「ぶっ壊れろ!!」

 ミサイル攻撃から逃れ、写ノ神と駱太郎を皮切りに反撃を開始。魂札(ソウルカード)から生み出される灼熱の業火と、駱太郎の拳から放たれる閃光の稲妻が混じり合い―――阿星へと飛んで行く。

 だが、阿星は二人の攻撃を左手のチェーンソウで容易に弾き飛ばす。そして直ぐさま反撃の機銃掃射。

 ダダダダダダダダ・・・・・・

「諸行無常印・壱之型『止包(しほう)』!!」

「朱雀美扇流『若紫(わかむらさき)』!!」

 極上の殺傷能力を持つ銃弾の雨を避けながら龍樹と茜は機を窺い、僅かな隙を見つけるや敵の動きを止めようと技を発動。地面から出現した巨大な包帯と木の蔓が複雑に絡みつき、阿星の巨体を拘束した。

「「「うおおおおおおおおおお!!!」」」」

 この絶好の機会をドラ、幸吉郎、昇流の三人が見逃すはずもない。仲間たちが作ってくれた千載一遇のチャンスを生かすため、同時攻撃を仕掛ける。

「クズがぁあああ!!!いきがるのも大概にしろおおおお!!!」

 だが、到来したチャンスは直ぐに潰える。龍樹と茜が仕掛けた二重の拘束を打ち破った阿星は、上半身を高速回転―――腹部に搭載されたマシンガンで機銃掃射する。

「「「「「「「ぐあああああああ!!!」」」」」」」

 直撃こそは避けれたが、全員が壁に叩きつけられ吐血。ドラを除く六人が昏倒するという絶望的な状況に陥った。

「こ・・・このやろう・・・・・・」

 ドラは意識の無い仲間たちを横目に、軋む体を起き上がらせ険しい顔で敵を睨み付ける。

「ふふふはははははは!!!気持ちいい、気持ちいいな!思えば勝ち組の人生など、金を手に入れるとか勉強ができる以前に、生まれ出でた瞬間から決まっていたのだろう。そして、その勝者こそがこの俺!!俺は勝つべくして勝つ!!負ける要因など一つもない!!」

 阿星は今までの人生で味わった事の無い愉悦感に浸り、狂喜乱舞。有頂天になって甲高い笑い声を地下中に響き渡らせる。

 

「ふふふふ・・・・・・ははははははははははは。ははははははははは。でぇーはははははははははは!!!」

 その直後に聞こえた、嘲笑。気の狂った様に―――ドラは突然阿星を嘲笑う。

「な・・・・・・貴様っ!!この圧倒的状況でまだ俺を見下す気か!?それとも、余りの絶望に気が動転したか。そうか・・・笑うしかできないんだ。でなければ、自分の気がおかしくなってしまうからな。は、当然だ。何しろこの状況でお前が俺に勝てる見込みなど万に一つも・・・「気が狂ってるからこそだよ」

 軋む体を無理矢理に奮い立たせ、ドラは二本の脚で力強く立ち上がる。

「常軌を逸してこそ悪魔は殺せる。お前を殺すのはここに居る誰でもない・・・・・・悪魔を食らうのは同じカテゴリー以外に考えられない」

「バカめ。俺を殺す?そんな事できるはずがない。クズ如きには俺と差し違えることが精一杯!そこからどう足掻いても生き残る術など有りはしない!!」

「ガタガタ御託を言っている時かっ!勝てば正しくなるんだ・・・すべて!たとえどんな不運、不幸、不ヅキに見舞われようとオイラは捩じ伏せるさ!最悪の運命、境遇、ありとあらゆる障害・・・不平、不正、すべてを捩じ伏せオイラは勝つ!当然だっ、オイラはその為に生きているんだ!!!」

 語気鋭く宣言すると、ドラは阿星を強い言葉によってたじろかせる。そして彼は絶望的とも思える状況を180度ひっくり返す、最後の手段を強行する。

(かたき)を斬れ、ドラ佐ェ門!!!」

 言霊を唱えることで、ドラの持つ刀が神々しく光り始めた。真の姿を露わにしたドラの力の象徴―――ドラ佐ェ門の切っ先が阿星に突き付けられた。

(なんだ・・・・・・こいつから感じる異様なものは?)

 悪魔の果実を取り込んで、絶大な力を手に入れた阿星はドラと彼の持つ刀から感じる異様な威圧感に肝を冷やす。

(クズが・・・何をするかは知らんが、この俺がやられるはずがない!勝者は常に、俺だ!!)

「天は人の上に人を造らず、人の下にも人を造らず・・・・・・」

 不意にドラが口にするその言葉。阿星は何のことか分からず、呆けてしまう。

「この御託の意味は要するに人間の浮沈はチャンス次第ってことだ・・・・・・・・・・・・バカでもクズでもチャンスを生かせば勝者になれる。そしてそのチャンスは案外身近に落ちている」

 等と言いながら、ドラは右脚を前に出し体勢をやや前屈みにする。

「目を凝らせ・・・・・・・・!諦めなければ蘇生さえ可能・・・・つまり!!」

 ドラは力強く前に踏み出した。飛び出した勢いを殺すことなく、地面を強く蹴って跳躍―――阿星の正面から斬りかかる。

「一度死んだ魂さえ、生き返る・・・・・・!」

「死人が生き返る事などあり得ぬわ!!!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 全身全霊―――この斬撃にすべての想いと力を注ぎこみ、ドラは阿星の体に一刀を放つ。

 それは実に壮絶な撃ち合いとなったが、決着は長くなる事は無かった。烈しく火花を散らしながら阿星の体にドラ佐ェ門の刃が深く、深くへと入り込む。

(ば、バカな・・・!俺がこんなクズに・・・・・・負けるなんて・・・・・・!!?)

「本当の勝者って奴はな、恥をかこうが泥を啜ろうが、自分の足で死ぬ最後の瞬間まで立っていられた奴――――――絶対的な勝利者は常に、強かに生き延びる奴だって事にいい加減に気づきやがれ!!!」

「のおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 この瞬間―――目映い光とともにドラの斬撃が阿星の体を斬り裂き、暗い地底に光を照らした。

 

 

9月29日

中国河南省 青磁の村

 

 事件後―――法聖院に捕われていたすべての陶芸家を解放し、ドラたちは再び青磁の村へと戻ってきた。

「お父さん!!お母さん!!」

「おお、息子よ!!また会えて良かった!!」

 長い事顔を合わせていなかった様に、法聖院から解放された父母たちは愛する我が子と厚く抱擁を交わし、その再会に歓喜した。

「何はともあれ良かったですね」

「法聖院も、地下の施設も全部ぶっ壊した。首魁以外のメンバーも一分隊が残らず連行してくれたし」

「この時代以外から連れて来られた陶芸家たちも元の時代に帰したことだし・・・事件はこれにて解決だな!」

「それにしても、あの白服連中は一体何者なんだったんだ?」

「ま。おいおいわかると思いますよ。いずれせよ、オイラたちの知り得ない事なんて世の中ごまんとあるんですからね」

 謎が残った今回の事件。彼らが財団Xと名乗った者たちの素性を知ることになるのは、もう少し後になるが、一先ずのところは気にせず現代へと帰還する事にした。

 

 

西暦5538年 9月30日

TBT本部 特殊先行部隊“鋼鉄の絆”オフィス

 

「ぬおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 事件解決から三日後の朝。悲劇は突然に起こった。

 龍樹の叫びがオフィス中に響き渡る理由―――彼が大事にしていた北宋の青磁が無残にも破壊され粉々となっていた。それも彼が出勤した直後の事だった。

「誰じゃあああ!!!拙僧の宝物を割りおったのは!?」

 一度は10億円の根が付いた国宝品が何故割れてしまったのか・・・嘆き悲しむ龍樹だったが、不意に後ろから視線を感じ振り返る。

「ドキ!」

 扉の向こうから龍樹の様子を覗き込む人影。鋭い剣幕で龍樹が入室を強要すると、TBT大長官の杯彦斎が頭を掻きながら歩いてくる。

「いやぁ・・・・・・おはよう諸君」

「まさかこれ、親爺がやっちまったのか?」

「何じゃと!」

「いや~・・・その・・・私も一目見てみたくなったものでな・・・・・・その時にうっかり手を滑らせてしまって・・・・・・本当に済まない!この埋め合わせは必ずするから!!」

 誠意を尽くそうと頭を床に擦りつけ彦斎は龍樹に土下座。だが、龍樹の怒りがその程度の誠意を示したところで収まる訳も無し―――彼の怒りは頂点に達した。

「それがお主の誠意の形か大長官・・・・・・だが生憎とそんなもので、本当の誠意が伝わると思っているのか!!!」

 激昂。爆発した怒りは抑え処も無くただただ放出され、龍樹は逃げる彦斎の頭をひたすら錫杖で叩きながら、執拗に追い回す。

「拙僧の浪漫の結晶を返せ―――!!!」

「ひいいい!!!金ならいくらでも払うから許してくれ!!!」

「だったら今すぐ10億円を用意せんか!!!それだけの価値があったのじゃぞ、あれには!!!」

 形ある物いつか壊れると知れず、人はその儚さに心を奪われ虜となる―――そんな風に述懐していながらも、やはり譲れない事は大いにある。ドラたちは怒髪天を衝いて怒り狂う龍樹と彼を説得しようとする彦斎のやり取りを見て思った。

「大長官のあの口ぶり・・・結局世の中金って事なんですかね?」

「ん~~~・・・何だかよくあるオチになってしまったのが残念だな」

 

 

 

 

 

 

ドラさん語録~サムライ・ドラが残した語録集~

 

その38:命は丁寧に扱い過ぎるとよくない、もっと粗末に扱うべきだ。何しろ命を大事にすればするほど淀み、腐っていく。

我が身をかわいがり過ぎると碌な事にならない。ここぞという時は命を捨てる覚悟で望まないといけない・・・。(第33話)

 

その39:本当の勝者って奴はな、恥をかこうが泥を啜ろうが、自分の足で死ぬ最後の瞬間まで立っていられた奴――――――絶対的な勝利者は常に、強かに生き延びる奴だって事にいい加減に気づきやがれ!!!

 

ドラの人生観を如実に表しているこの言葉。それは過酷な環境で常に生き延びてきた彼だらこそ、重みがある。(第33話)

 

 

 

 

 

 

登場人物

王阿星(ワン・シン)

声:内田直哉

34歳。一人称は「俺」。青磁などの高級陶芸品を現代へ持ち帰り、ネットオークションを通じて高値で売りさばく中国系の時間犯罪者。オークション上では「石神商会」というハンドルネームを名乗っていた。黄山に建立された寺院・法聖院を根城に、青磁の村を始め各時代から陶芸家を拉致・監禁して地下深くで陶磁器を作らせていた。さらに、陶磁器を売って得た資金を元手に武器商人となり、更に財を成そうと企んでいた。

ドラ達が法聖院の地下施設に乗り込んで来た際、当初はその実力を評価して金による懐柔を持ちかけるが、それを聞いたドラに「二流の詐欺師」等と揶揄された事に腹を立て、コスタリカから粗品として貰った「悪魔の果実」の力を使い、異形の姿となってドラ達を皆殺しにしようと銃撃を浴びせたが、ドラ佐ェ門の力を解き放ったドラの渾身の一撃によって体を真っ二つに斬り裂かれ倒された。

コスタリカ・スコヴィル

声:堀内賢雄

38歳。一人称は「俺」。純白の白い制服に身を包む男。莫大な資産と鉄壁の運用管理術を誇る巨大資本・財団Xから出向してきたエージェントで、阿星のビジネスパートナー。阿星が作った武器を購入する見返りとして、法聖院の地下深く秘かに財団X幹部(例外的だが外部の人間も含む)のための超豪勢な地下核シェルターを建造させていた。ドラ達が武器製造工場を破壊した事で状況が一遍。悪魔の果実の力を得て異形の怪物となった阿星を止めようとするも、彼の怒りに触れ返り討ちに遭った末、機銃掃射によって体を粉々にされるという凄惨な最期を遂げた。

名前の由来は、唐辛子の辛さを量る単位である「スコヴィル値」。




次回予告

ド「謎の隕石が宇宙から飛来。西暦2001年のアリゾナ州に降り立った」
幸「俺たちは歴史上見られなかった謎の隕石を調査する為に現地へ向かった。そして隕石から採取した単細胞生物に秘められた驚異の秘密とは・・・」
駱「次回、『未知なる物への挑戦』。あぁ?単細胞生物はお前じゃねぇのかって・・・・・・ざけんな、俺は単細胞生物じゃなくてただの単細胞だ!!」
写「何の反論だよそれ。単細胞ってのはオメェみたいな短慮なバカって意味だよ!」

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