サムライ・ドラ   作:重要大事

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ド「麻薬って奴は本当に厄介な代物だ。使ったら最後、そいつの人生を貪り尽くすんだからね。それでも麻薬による犯罪は後を絶たない。ストレス社会で生きる我々は何かしらの方法でたまりにたまったストレスを解消したいと思っているが、上司に『土下座しろ』とは言えないわけだから、タバコとか酒みたいな感覚で麻薬に手を出す奴が多い」
「その点オイラは健康体だ。ムカついたら誰彼かまわず殴るもん。まぁ、幸い長官って言うサンドバックがそばにあるから好きな時に好きなように殴れる。え? 上司にそんなことしていいかって・・・・・・あんなの上司だとは思ってないよ。仕事もしないで真っ昼間からゲーセンとかにいる奴を上司として扱えるわけがないからね!」



第3話「ブッ飛んだカーチェイス」

超空間 タイムエレベーター内部

 

 マイアミにおけるKKKの集会場で持ち運ばれた合成麻薬エクスタシーと、それを入手した犯罪者達は鋼鉄の絆(アイアンハーツ)の働きにより制圧・逮捕された。

 潜入捜査官として集会場に乗り込んだTBT長官、杯昇流は―――部下であるドラの銃撃の誤射を受け、尻の皮膚を射抜かれるという災難に見舞われた。

 現在、鋼鉄の絆(アイアンハーツ)のメンバーと共々、TBT捜査官が時間移動の際に用いるタイムマシン【タイムエレベーター】で元の時間軸に戻ろうとしている。

 積載力に余裕を持って作られたエレベーター内部は意外に広く、昇流は負傷した尻を天井に向けたまま用意された簡易ベッドの上でうつ伏せの状態を保つ。

「・・・俺はお前と違ってさ。生活ってもんがあるんだよ」

 未来へと向かって上昇するエレベーターの数値を見つつ、昇流がふと呟く。それは明らかなるドラへの苦情であり愚痴であった。

 聞いていたドラは、ムスっとした表情を浮かべている。周りはドラの反応に吹き出しそうになる。

「なぁドラ。スリル求めてるわけじゃねぇ。俺が言ってることわかるな?」

 溜息を吐き、「・・・毎度のこと同じセリフですね」と言い、ドラは不承不承に半ば投げやりな態度で自らの行動を省みる。

「ああ、そうですよ。チキショー、オイラがあんたの汚いケツを撃ったんです!」

「なんで逆ギレしてんですか!? おかしいでしょう!」

 太田の鋭く正当なツッコミがドラへ向けられる。

「でもオイラがあそこで撃たなきゃ長官はここにいないんですよ? 何でそう怒るか分からないですねぇー」

「誤解してるな。怒っちゃいない」

「うそ。メッチャ怒ってます」

「いいや怒ってねぇよ」

 

           ≒

 

 溜まりがちなストレス状態を少しでも緩和する為、杯昇流は自らの脚で心療カウンセラー講座を受講。セラピーを開始した事をドラ達に語った。

 

           ≡

 

数か月前―――

TBT本部 特別心療カウンセラー室

 

「あなたは怒っています。それでいいの」

 初老の女性カウンセラーが言うと、台の上で寝ころんで聞いていた昇流が口を開く。

「怒っていません。何度も“怒っています”って、言われなきゃね。それ、凄くうざいんだよ。まるで、バーベキューのときの蚊みたいでその・・・とにかく何だかイラついてくんだよね」

「いいですよ。ではこう言って・・・“私は怒っているそれでいい。その怒りを解消できる自分を愛している”。“ウ~サァ~!”」

「何言ってるか全然意味わかんねぇ。アホくさっ」

「いいえ。あなたにはよく分かっているはずです」

 女性カウンセラーのその言葉を当初でこそ信用していなかった昇流だが、ストレスの原因となっているドラからもたらされる理不尽な暴力が度重なり、溺れる者は藁をもつかむが如く―――自然と唱え、次第に心がけるようになっていった。

 

           ≒

 

現在―――

超空間 タイムエレベーター内部

 

「お前もセラピー受けろ」実体験を踏まえて昇流がドラに強く推し進める。

「そりゃいい案だぜ、長官!」

「長官さんの言う通りです。ドラさんも一度お受けになった方がいいですよ?」

 周りからも、サムライ・ドラのセラピーを強く勧める声が上がる中、ドラの口から意外な言葉が返ってくる。

「・・・それなら一度受けたことがあるよ」

「え? いつですか?」

 太田は(いぶか)しげな瞳でドラを見つめ、おもむろに尋ねる。

「何年か前に空港で捕まえた “妖怪万引きばばぁ”をタコ殴りにしたとき、大長官の勧めで受けさせられたんだよ」

 

           ≒

 

数か月前―――

TBT本部 特別心療カウンセラー室

 

 凄まじい経緯の元、ドラは上司からの勧めで嫌々カウンセリングに参加した。

「ウ~サァ~!」

 椅子に座り、昇流が教わった言葉を乾いた声色で唱える。

 足下を伺うと、満身創痍で見も心もボロボロに傷ついたカウンセラーの男が弱々しい声音で「ウ~サァ~・・・」と呟く。

「ねぇ・・・もうセラピーとかめんどいから帰ってもいい?」

「お・・・お願いします・・・・・・」

 人に媚びることを嫌い、気に入らない者は老若男女問わず理不尽な暴力を振るうことをモットーとしているドラは、癒しのスペシャリストの存在を真っ向から否定し、その身に特上の絶望を植え付けた。

 カウンセリングを拒んだドラの言葉に、カウンセラー自身も安堵した。

 

           ≒

 

現在―――

超空間 タイムエレベーター内部

 

「ウ~サァ~! ・・・って、こんな感じでしょ?」

「ドラ。セラピーってのは心の問題を解決しに行くもんなんだ。心の憂さを晴らす所じゃない」

「あはは・・・ど、ドラさんって見た目以上に理不尽なんですね・・・」

 度を過ぎたドラの理不尽振りを冷静な態度で言及する昇流と、一連の話を聞かされた太田は、恐怖のあまり顔を露骨に引き攣らせた。

 昇流はドラの本性を知ってしまった太田に視線を向ける。

「こいつが世間からなんて言われてるか知ってるか? “魔猫(まびょう)”だぞ、魔猫!」

「魔猫!?」

「そうだ! ()()()()()()()()()()()()()()だよ。大体、この容姿にみんながだまされる! この俺も含めてな!!」

「そりゃみんなの認識力がポンコツだからですよ。オイラの所為じゃない」

「と、見ての通りドラは飽く迄自分ではなく他人の所為にするのじゃよ」

「良くも悪くも兄貴は自分本位なんだ。まぁ俺達はそれもひっくるめて、兄貴に付き従ってるんだけどな」

 傍若無人。反儒教的な権化。いわゆるオレ様キャラとも異なる、極めて特異な存在―――サムライ・ドラの素性は知れば知るほど複雑で、あるいは奥が深いともいえるか。

 そんな恐怖と死が隣り合った無秩序な存在を慕い、彼に随伴する幸吉郎達の存在もまた太田にはこの上なく異質に思えた。

「はは・・・み、みなさんも物好きですよね・・・!」

「とにかくだ! 俺が受けたのは本気のセラピーだよ。ドラじゃないけど・・・生きるためには、自分を愛さなくっちゃ」

「グループセラピーで習ったんすか?」

 昇流のセラピー体験談に興味を持った写ノ神が細かく聞いてきた。

「確かにグループセラピーも1、2回やった」

 

           ≒

 

数か月前―――

TBT本部 特別心療カウンセラー室

 

「ウ~サァ!」

 昇流と同様に、現代社会に潜むストレスの原因に悩まされ、心労がたたった者達が一堂に会するのがグループセラピーである。

「みなさんも一緒に唱えてましょう。ウ~サァ~!」

「「「「ウ~サァ~!」」」」

 “自らを愛する”という意味合いが込められた合言葉を、昇流はおまじないの如く腹の底から叫び、それに他の者が続いて復唱する。

 “ウ~サァ~!”という言葉をコーラスの様に唱和する者達。

 当初あほくさいと思っていた昇流も、いつしかそれを当然の如く受け入れる事に抵抗を見せなくなった。

 

           ≒

 

現在―――

超空間 タイムエレベーター内部

 

「あれだろ? 野郎どもが、抱き合って、んでキスして、変なカルト宗教みたいな」

 と、想像力の乏しい駱太郎は酷く歪んだイメージを抱く。

 特殊先行部隊“鋼鉄の絆(アイアンハーツ)”を乗せたタイムエレベーターは、ほどなくして―――現時間軸、西暦5538年へと帰還した。

 

           *

 

西暦5538年 4月21日

アメリカ合衆国 フロリダ 某ナイトクラブ

 

 麻薬は強い幻覚作用をもたらし、過剰使用によって人間の生命を奪う事もしばしば。1840年のアヘン戦争を顧みたとき、麻薬は一国の歴史をも大きく狂わせてきた。

 人生を狂わせ、命を食らう麻薬を収益とする犯罪者達は、若者を中心に集まるナイトクラブや風俗店を拠点に麻薬を売買することが多い。

 ロシアンマフィアのナンバー1、アレクセイは麻薬王から購入したエクスタシーをナンバー2で補佐を務めるジョセフとともに客に売り捌いていた。

 クラブに集まった若者達は、「気分が良くなる」「体が軽くなってスーッとする」などという軽い気持ちでエクスタシーに手を染め、ダンスに興じながら、錠剤型のエクスタシーを舌に乗せ合う。

 クラブの様子をガラス張りの床を通して観察するアレクセイはリズムに乗りながらエクスタシーで儲けた金を一枚一枚数える。

「買いだ」

 今日もまた、麻薬王から購入したエクスタシーが飛ぶように売れる。数が足りなくなれば再び麻薬王から調達する。そうして麻薬王の勢力とともに、ロシアマフィアの勢力も拡大する。

 エクスタシーは、脳内のセロトニン等を過剰に放出させることにより、人間の精神に多幸感、他者との共有感などの変化をもたらすとされている。1985年まで主にアメリカにおいて心的外傷後ストレス障害 、PTSDの治療に用いられてきた。

 しかし、MDMAはレクリエーション・ドラッグとしての側面も持ち、濫用が社会問題化したことを受け米国司法省麻薬取締局はMDMA、エクスタシーを規制物質法におけるスケジュールI、すなわち濫用性が高く医療用途の見込みのない違法薬物に指定した。

 

           *

 

午後23時23分―――

北海道 札幌市 TBT附属病院

 

 現代に戻ってきた昇流は、北海道の首都―――札幌市のTBT附属病院に緊急搬送された。

「この人大ゲサに言ってるだけですよ、先生」

「俺の尻が大変な事になってんだよ。肉がごっそりふっ飛んだんだ!」

「いーえ。ほんの少しですよ」

 ベッドの上で受けた傷の痛みをやや誇張して表現する昇流だが、鋼鉄の絆(アイアンハーツ)のメンバーや担当医の反応はちょっと冷たかった。

「そういう過剰な怒りはこれからの長い付き合いに支障をきたす事になりますよ」

「もう長い事ないかもしれねぇ」

「そうっすか?」

 上司であるはずなのに、これまで彼らからそれらしい扱いを一切受けず、一度でも心配されたことの無かった昇流は半ば死んで楽になりたいという気持ちも抱く。

 だが、性根が臆病であるため死にたいと思った直後に“死にたくない”という気持ちが強くなり逆転する。結局昇流は死の恐怖から自分自身で終止符を打つことが出来ない普通の人間に他ならなかった。

「先生よー。この人セラピー受けてさ、頭がクルクルパーになっちまってさ!」

「駱太郎さん、長官さんはもとよりクルクルパーですよ」

(本当にこの人達ときたら・・・・・・)

 誰も心配などしていない。鋼鉄の絆(アイアンハーツ)のメンバーは、本当に大したことが無いとばかりに笑い合っている。配属されたばかりの太田は、昇流の状態を笑うに笑えず、心の中で駱太郎達の忌憚の無さを異常と捉える。

 そんな折、太田はこの場にある種犯罪者みたいな存在―――隊長サムライ・ドラが居ない事に気が付いた。

「そういえばドラさんは・・・?」

「兄貴なら席を外してるぞ」

 

 昇流が処置室に運ばれる一方、病院内で携帯電話を使える場所に移動したドラは、ある人物に対し電話をかけていた。

 プルルル・・・。プルルルッ・・・。ガチャ・・・。

『時野谷。ドラだ』

 電話の相手は、日頃から重宝している「居酒屋ときのや」の経営者―――時野谷久遠。ドラから電話を貰ったとき、彼はベッドの中でうとうとしかけていた。

「やぁドラさん・・・こんな遅い時間にどうしたんです・・・?」

 時野谷は、眠そうな声でドラの電話に答える。

「たった二袋かよ!? オイラに恥かせやがったな!」

「あー・・・待ってくださいドラさん。違います違います違います、待ってください待ってください待ってください・・・これはですね」

 寝ぼけていた時野谷を瞬時に覚醒させるドラの怒号。

 今回、ドラ達に情報提供をしたのは居酒屋を経営するとともに、密告屋としてTBTの捜査に協力している時野谷久遠その人だった。

「おい! どの神様にでもいいから祈っといた方がいいぞ! 二十四時間以内に残りのブツ見つけなきゃ、オイラがそっちに行く! そして、魔猫なりのえげつないお礼をするよ!」

 ブツッ・・・! ツー・・・。ツー・・・。

 一方的に電話を切られ、時野谷はベッドの上で重い溜息を漏らす。

「まいったな~~~・・・・・・ドラさん本気で怒ってたよ・・・・・・あの人が怒ったら、ほんとうに冗談じゃ済まないからな・・・」

 常連ゆえに、ドラの本性を熟知している時野谷は、魔猫がもたらす報復を想像し―――途端に鳥肌を立たせる。

 どんなに気心知れた関係でも、ちょっとしたきっかけひとつで簡単に破綻する。

 ドラとの関係は、正に時野谷にとって“諸刃の剣”でもあった。

 

           *

 

アメリカ合衆国 フロリダ 某ナイトクラブ

 

 プルルル・・・。プルルルッ・・・。ガチャ・・・。

「もしもし?」

『運び屋がTBTに叩かれた』

 アレクセイの元に掛かってきた一本の電話。

 それは、エクスタシーの売人であり、麻薬王からの緊急の連絡だった。

「ああ、ミスタータピア。私もどうなっているかわからない。お互いにとって困ったことになったようだ。事前にちゃんと調べて」

「あれ見ろ、おい! 倒れてる奴がいる!」

 電話の途中、補佐を務めるジョセフが指を鳴らし、アレクセイを呼び止める。

 下の階を覗くと、一人の若者が発作を起こし酷く苦しんだ様子で仰向けになって倒れている。

「すまないが切るぞ。どっかのガキがうちのクラブで死にかけててね」

 そう言って、麻薬王との電話を途中で切電。アレクセイは今回の騒動にさほど動揺することなくきっぱりと言い放つ。

「エクスタシーのやりすぎだよ・・・」

 フロア内では女性客や彼の知り合いを中心に動揺が広がる。

 若気の至りか、男性客はエクスタシーを一度に大量に服用した結果、心拍数の急激な上昇のために意識を失い、こん睡状態に陥った。

「外に放り出せ、ジョセフ!」

「ああ。通りに捨ててくる」

 面倒事は避けて通りたいマフィアは、マフィアらしい対処法を取る。

 エクスタシーの過剰服用者が出るたび、彼らはクラブ内から引っ張り出し、車に乗せて人目の付かないところに彼ら中毒者を捨てる。

「捨てろ」

 いつものようにエクスタシーの犠牲者になった若者を病院に送り届けることなく、路上へ無造作に放り捨てる。

 外は冷たい雨が降り注ぎ、若者は胸部を激しく動かしていたが、次第に心臓の鼓動が止まり―――やがて体が冷たくなると同時に絶命した。

 

           ◇

 

4月23日―――

北海道 小樽市 杯邸

 

 過去での任務から二日が経過した。

 尻の皮下脂肪を負傷した昇流は、小樽市某所に建てられた豪邸の一角―――手入れの行き届いた庭園に丸型のフレームプールを設置し、フロートマットの上で寝そべり、穏やかな休日のひとときを寛ぐ。

 今日は、昇流の母・杯真夜(さかずきまや)の計らいで―――鋼鉄の絆(アイアンハーツ)のメンバーが集まり、バーベキューを行う予定となっていた。

 茜は、男達よりも早く杯邸を訪れ、真夜と一緒に料理の準備に追われていた。

「真夜さんは本当にお美しいですよね。とてもその二の腕で長官さんを育てたとは思えないくらい!」

「ありがとうね、茜ちゃん。でもあなただって本当によくがんばってるわ。未来で暮らし始めてまだ一年も経たないって言うのに仕事覚えも早いし。昇流にあなたの爪の垢を煎じて飲ませたいくらい♪」

「お袋、俺は死んでもその毒舌女の爪の垢なんか飲まねーからな!」

 プールの上で話を聞いていた昇流はきっぱりと口にする。それを聞き、茜と真夜はクスクスと笑う。

「この前みたいに現場に出ることは結構あるの?」

「最近は内勤の方が多いですね。いつも長官さんの間違い書類の修正作業ばかりさせられて♪」

「うるせーんだよ、イチイチ! 俺だってな、これでも年々進歩してんだぞ! ただその進歩のスピードが人より遅いってだけで」

「要するに、進化に乗り遅れている証拠ですよね?」

「断じて、ち・が・う!!」

「痛いところを突かれて感情的になるところ、実に長官さんらしくて良いですよ」

「お、お前なぁ」

 年下の美少女からさり気無く浴びせられる罵詈雑言(ばりぞうごん)の数々に、怒り心頭の昇流はフローマットから降りると、プールから上がろうとする。昇流の額の血管は怒りで浮き上がっていた。

「お袋! ドライバー持ってきてくれ! 台のネジが緩んでる」

「気にしないで。怪我してイラついてるの」

「大丈夫なんですか?」

「傷は平気なんだけど・・・でも、あっちの方がダメになって」

 小声で話す真夜の言葉に、茜は「まぁ~。」と、頬を薄紅色に染める。

「お袋ッ!」

「なーに?」

「神経を損傷しただけだよ!」

 他言無用な話をしてしまう母親の悪い癖に辟易し、更には男としてのプライドを傷つけられたと感じた昇流は意地になって言い返す。

「大したことはねぇ! すぐにデキるようになるんだ、見てろよ!」

 台の上から降りると、昇流は中庭から家の中へ入り二人の前からいなくなる。

「母親に向かって何言ってるのかしら、あの子?」

「言う相手を間違えてますね、完全に」

 

 数十分後―――。

 山中幸吉郎、三遊亭駱太郎、太田基明を同乗したサムライ・ドラの愛車、ホンダ・フィットハイブリッドが杯邸に到着する。その後ろから写ノ神が運転する車も到着した。

 ちなみに、ドラは物理的に身体上の不利、即ち足が短くペダルが届かないという都合から障害者用の車を使っている。

「はい到着ッ」

「す・・・すごい!! これが杯長官の邸宅ですか・・・・・・?!」

 後部座席の扉を開け、ラフな格好の太田は小樽市内で一番大きな住居を一望し、その規模に驚いている。

「北海道の土地は都心と違って安いからね。家を建てるには申し分ないけど、その代り冬場の雪かきは大変だよ」

「あの・・・本当に僕までいいんですかね?」

「いいってことよ。今日は好きなだけ食って飲んでっていいんだぜ!」

「よくあるんだよ。こうやって長官の家に誘われることが」

「長官の家族に感謝するがよいぞー」

(あくまで、長官への感謝ではないのか・・・・・・)

 誰一人として、昇流に感謝の気持ちを表すとは言わなかった。何となく予想はついていた太田だが、改めて思うと、悲しくなる。

 

 ピンポ―――ン!

 

 玄関の呼び鈴が鳴り、昇流が扉を開ける。

 目の前に立っているのは日頃から忌み嫌っている魔猫。仕事でもプライベートでも一貫して黒い着物に白の羽織、腰に日本刀を携えたファッションスタイルを崩さないドラは、浮き輪の様なものを取り出し、昇流に見せる。

「これはドーナツ。医療器具ですよ。妊婦が使うものですけど、長官に買ってきてあげました。ケツっぺた片方を入れて怪我した方を浮かせば・・・楽でしょ?」

「はっ。うれしいね」

 皮肉交じりの笑みを浮かべる昇流を見、ドーナツ枕を手渡したドラは些か疑問を抱く。

「あのですね長官・・・今日といい夕べといいなんか、ずーっとおかしな目つきしてましたね」

「神の啓示を受けたんだ。わかるか? で悟った・・・お前は謎の存在だ」

「その通り。よく分かりましたね」

「神が俺を試すために遣わした。でもなぁ俺はくじけねぇぞ、絶対に! ウ~サァ~!」

「神様も試す人を間違いましたねこりゃ」

 呪文のように“ウ~サァ~!”と唱える昇流に呆れ返るやいな、ドラは自宅の中で料理を運んでいる真夜の姿を発見する。

「やぁ、真夜さん! 元気そうですね」

 言うと、昇流をぞんざいに押しのけずけずけと家の中へ上がっていく。

「おい、このドラ猫! まだ上がっていいとは一言も言ってねぇだろ!」

「この家の両親から公認されてること、忘れたんですか?」

「俺が許さなねぇーつってんだ!」

 ドラを追いかけようとした次の瞬間―――廊下に転がっていたバスケットボールに、昇流は勢いよく蹴躓いた。

「いってェェェ~!!」

 顔面の方から転び、鼻を強く打った。ドラはその背中をカーペットのつもりで足を乗せ、家の中を移動する。

 立て続けにひどい仕打ちを受け、昇流は起き上がると台所へ向かい、冷蔵庫に張ってあるストレスチェックリストに目を移す。

「ウ~サァ~! 耐えるんだ俺っ・・・」

 

「ほら、ワン公! とってこーい!」

 バーベキューを食べにやってきた一行は、広々とした庭先で各々の時間を過ごす。

 そのうち、駱太郎は活発な柴犬と戯れ、フリスビーを投げる。

「あれって、杯長官の飼ってる犬ですか?」

「いや。よくわかんねーけど、この家に頻繁に出没するただの野良犬みてーだぜ」

「なんで飼い犬みたいに飼いならしてるんですか?!」

 愛犬の如く、駱太郎が野良犬を扱う様が何ともシュールだった。太田は、これ見よがしにフリスビーを咥える野良犬に微妙な眼差しを向ける。

「犬はバウバウうるさいのが玉に瑕だけど、一旦懐くと扱いやすいもんだよ」

 言いながら、ドラが太田へと近づいてきた。

 太田は引き攣った顔を浮かべ、「じゃあ・・・ネコは?」と、恐る恐る尋ねる。

「愚問だね。ネコは餌さえありつければ誰にだって媚びるよ。もっとも、オイラは誰にも媚びない魔猫だけど・・・」

 黒い笑みを浮かべたドラに、太田は顔を硬直させた。

 ふと周りを見渡してみた。すると、桃色に色づく甘い空気が流れ込んできた。

 その空気を放出している者の正体は―――ハンモックの上でじゃれ合う、もといイチャつく写ノ神と茜の二人だった。

「写ノ神君・・・こんなところでラブラブしてたら、ドラさんに怒られますよ~♡」

「心配すんなよ。あいつだって俺らの仲知らない訳じゃねぇだろ。つーか、公式に認めてくれたのはほかならぬアイツだぜ」

「そうですよね~♡ じゃあ、めいいっぱいラブラブしちゃいましょうか♪」

 元々気の合う二人だが、こうして時々理性のリミッターが外れ、人目を憚ることなく仲の良さを周囲に猛アピールすることがある。

「なにあれ・・・・・・どいうこと?」

「見たまんまだよ」

 当初、ジト目で凝視していた太田も、次第に嫉妬心から来る怒りの感情が沸々と湧き上がってきた。

「すんません・・・・・・何だか猛烈に誰かを殴りたい気分なんですけど・・・!!」

 ドラは太田の気持ちを察すると、懐からブラックチョコレートを取り出し、ひと口食べてから「長官なら家の中にいるから殴っておいで」と催促する。

「うおおおおおおおおおおおおぉぉぉおおおぉお!!」

 どうしようもなく抑えがたい怒りと憂さを晴らす為、太田は家の中へ疾駆した。

「やっぱり独身男の目から見ると不快なものなんですね。バカップル共のイチャツキぷりは」

「その怒りを鎮めるために殴られる長官は、もはや“憂さ晴らしウサギ”と変わらんのう~」

 状況を窺っていた幸吉郎と龍樹が秘かに呟いた。

 

「ウ~サァ~!」

「それ本当に効くの? なんだかバカっぽく聞こえるわね」

 相変わらず呪文代わりにその言葉を唱える昇流を見、台所に立っていた真夜は母親とし息子を気遣った。

「俺も最初はそう思ったよ。でも、これをやり続けねぇと効果が持続しねぇのも確かみたいなんだ」

「親子そろって同じことしてるなんて、笑っちゃうわよねー」

「え? ま、まさか・・・親父もやってるのかこれ!?」

「あの人も相当神経質な性格だからね。ちょっと体が変になると、『いけない! ここのツボを押さないと死んでしまう!』って、言うのよ。人間そう簡単に死なないのにねー」

 と、そのとき―――台所に太田が現れ、昇流を見つけるなり彼に向って鉄拳を放り込む。

「うらあああああああああああぁぁあ!」

「ぐああああああああああぁぁあ!」

 更に、殴るだけでは飽き足らず、上司であることなど最早気に留めていない様子で、自らの怒りをぶつけるサンドバック代わりに首を絞めつける。

「一人もんには目の毒なんだったつーの!! ああぁぁ、やってられっかよコンニャロー!!」

「やめてぇぇ―――! 俺が死んじまうよぉぉ―――!」

 理由も無くいきなり現れた部下に殴られ、その上首を絞めつけられるという仕打ちが昇流の傷ついた心身をすり減らす。

 やがて、わけもわからないまま昇流はノックダウン。気の済んだ太田は何事もなくキッチンを出て行った。

「あらあら。元気があっていいわね。昇流、部下に殴られるようになったって事は親しみを覚えたことの証よ!」

 母親らしからぬ異常な反応。ゆえに昇流は、「そんな親しみの形はいらねぇ・・・」と率直な感想を返した。

 

「「「「「「「いっただきまぁ―――す!!」」」」」」」

 バーベキューの準備がすべて整い、ドラ達は中庭に集まり、豪勢な料理をむさぼり食う。食器ごと食い尽くす勢い。―――でも、ちゃんと味わいながら楽しい一時を過ごした。

「うめぇ!! 真夜さん、また腕上げたっすね!」

「昔から料理は得意だからね。今日はババロアも作ってみたの、良かったら食べてね」

「それじゃあ、遠慮なくいただきまーす!」

 誰もが飲んで食べて、はしゃぎ立てる。

 だが、こんなにも楽しい時間を過ごしていながら、太田の心の中はもやもやした気持ちでいっぱいだった。

「あの・・・」

 不意にそう言うと、幸吉郎が彼の心情を悟ったらしく、不機嫌そうな顔で「・・・んだよ?」と返す。

「本当にこんなのんびりしてていいんでしょうか? この前だって、大人数で出動した割には大した成果は上げられませんでしたし」

 前回の任務―――ドラ達は誤った密告を信用した結果、派手な出動に相応しいだけの成果を得られなかった。

「ドラさん! やっぱり僕達間違ってますよ! こんなところでのんびり寛いでる場合じゃありません! 一刻も早く、密輸グループの壊滅に力を注ぐべきです!!」

「今は休暇中だよ。休みの時まで仕事の話持ちこむなよ、腹立つな。大体、密輸グループの動向がこっちで分かんないのに、どう動けって言うんだ? もうちょっと考えてものを言いな。闇雲に動いても無駄にエネルギー消費するだけだよ」

「しかし、何かしらのアクションは必要です!」

「血気盛んだな・・・アクションは洋画だけでおなかいっぱいだよ」

「いやそういうことじゃなくて・・・!」

 対照的な二つの感情がぶつかり合う。

 正義感が強く、曲がったことが大嫌いな太田と―――正義感の欠片もなく、常に無秩序で何を考えているのか予想がつかないドラ。まるでかみ合わない。

「まぁ落ち着いて太田君。ドラの言う事も一理あるわよ。闇雲に動くなんてダメ。幼稚園児でももっと考えるわ」

「太田さんは少し市民プールの水に浸かって、熱暴走寸前の情熱を冷やしてください」

「プールならここにもあんだろ?」

 言うと、昇流は庭に設置してある自慢のプールを指さす。ちょうどプールには、例の野良犬が犬かきで泳いでいた。

 誰もがプールを一瞥し、そして苦笑いを浮かべる。

「ありゃ厳密にはプールじゃねぇ。ありゃそう・・・ブルーのビニールでこしらえたバカデケー水たまりだぜ」

 駱太郎の容赦ないコメントが、昇流の心に突き刺さる。

「長官、またくっだらない買い物して・・・給料どれだけ無駄使いすれば気が済むんですか?大体、どうせ買うならもっといいプールにすれば良かったんじゃ・・・」

「このプールは15万3000円もしたんだぞ!?」

「ならば、いいプールはいくらなんじゃ?」

 という龍樹の疑問に、昇流は答えられず、口笛を吹いて誤魔化す。

「結論からすれば、やっぱしょぼいっすね!」

「うちにも立派なプールはあるにはあるけど、最近は掃除する暇も無くてね・・・」

 言いながら、ビニールプールとは別に家の横に作られたプールを見る。プールは長い間使っておらず、掃除をしていないため、土埃や落ち葉ですっかり汚れている。

「お前らがどう思おうが、俺が自分で稼いだ金を何に使っても文句は言わせねぇ」

「文句じゃないですよ。ただ、長官が掃除すりゃいいだけ話なのに、わざわざプールを買ってくるっていうバカな発想しかできないんだなぁ~って・・・言いたいだけですから」

「るっせー! おい、ドラ! しょぼいプールの脇に来い!」

 堪忍袋の緒が切れた昇流は、ドラをプールの脇に呼びつけ、沸々と湧いて出る感情をありのままにぶつける。

「なんで家に来るたんびに引っ掻き回そうとするんだ、あぇ!?」

「何のことですか?」

「ここは俺の家だぞ! そして、あれは俺のお袋で家族なんだ!」

「だから何だって言うんです?」

「数少ない安らぎの場だっつってんだ!」

「クスリでもやったんですか? 傷の薬でどうかしてるんですよ。何ですか、訳もわからず怒鳴り吠えて、犬よりやかましい人ですね」

「ああ~~~!! もう良いよ、忘れろ。おいワン公、とってこい!」

 ドラと話せば話すほど、昇流のストレスはたまる一方だった。

 身を大事にするため、昇流は話を途中で切り上げるとプールから上がったばかりの野良犬に持っていたボールを投げつけた。

 野良犬は夢中でボールを追いかける。その際、ビニールプールを固定している鎖に足が絡まり、犬が走ることによってそれが緩み―――

 

 ドォ―――ン!!

 

「うわああああああああああああああああああああああぁぁぁあああ!」

 たちまちプールのフレームが壊れ、水が勢いよく溢れ出し、昇流を押し流した。

「さ、杯長官?!」

 一同は水に流され、その上を必死で泳ぐ昇流の元へと駆け寄った。

「あっは! こいつはおかしいな!!」

「笑わせてくれるのうー!」

「本当に救いようないおバカさんですね、長官さんは♪」

 プルルルル・・・。プルルル・・・。

 そのとき、腹を抱え、「でーっははははははは!!」と癇に障るような笑い方をしていたドラの携帯に着信が入った。

「はい、こちらドラ」

「15万3000円が・・・! 15万3000円が・・・!」

「今度は確かなネタなんだろうな?」

 電話を切り、ドラはこの場に集まったメンバー全員に号令を掛ける。

「休暇中のところ悪いけどみんな! すごくめんどくさいけど、ハイチ系のタイムストリートギャングが、どっかを襲撃するって話だ!」

「「「「「「「どっかってどこぉぉぉぉ!!」」」」」」」

           *

 

時間軸2004年―――

アメリカ合衆国 フロリダ州マイアミ

 

 麻薬王“キング”が保有するエクスタシーの製造工場はアムステルダムにあり、マイアミはそこから運び出された麻薬を受け取る中継ポイントとなっていた。

 ドラ達が時野谷からの情報を得る数時間前―――麻薬王とそれに結び付いたロシアンマフィアの動向を掴み、秘かに動いていた者達がいた。

 

 一台のトラックがゆっくりと後退を始めると、外で見ていた男が大型トラックの中へ入り、精密機器で埋め尽くされたモニター室に置いてあるインカムを取る。

「状況はどうだ? 知らせろ」

『監視カメラの映像が出た』

「こちら105。連中が中に入る」

『視界よし』

「よく見える」

 四方に散らばった別働隊からの報告を受けながら、複数の監視カメラから届く映像を覗き込む。

 彼らが監視しているトラックは、人気のない粗末な外観の民家へと近づいていく。

「中に入った」

 家の中には、麻薬王と取引をしているロシアンマフィアのナンバー1とナンバー2、アレクセイとジョセフがおり、トラックが近づいてくると、おもむろに歩み寄る。

「どうも」

 仲介業者のフリをしている男が軽い挨拶をし、トラックの扉を開ける。

 缶コーヒーの箱で埋め尽くされたトラックの中から―――純白のスーツを着こなすスレンダーな黒人の女性が現れる。

 

【挿絵表示】

 

NY(ニューヨーク)の連中から君を推薦された。ロシアの仲間が世話になったらしいな」

 言うと、アレクセイは不敵な笑みを浮かべる黒人女性を見ながら、「年はいくつだ?」と尋ねる。

「いい歳よ。さぁ、急いで済ませた方がいいわ」

 彼女は、TBTアメリカ支部の一分隊・麻薬局所属の潜入捜査官―――シド・レーガン。麻薬王の動向を5か月に渡って入念に調査し、その足取りを掴むことに成功。仲介業者を装い、囮捜査官として麻薬王と密接な関係を結ぶ時間犯罪者との接触を試みた。

「おお、いい機械じゃないか。こいつをツッコんでくれ、このマシンの性能を見たい」

 トラックの中は機密構造になっており、そこには高性能な紙幣計算機(マネーカウンター)が供えられていた。アレクセイは用意した札束をシドに手渡し、計算を頼む。

「イヤらしく聞こえたか? 君自身の性能も見たいな、ベイビー」

 

「ふははははは!」

 インカム越しにアレクセイの話を聞いていたシドの仲間の男はツボにはまったらしく思わず大笑い。当のシドは眉ひとつ動かさない。

『今のは冗談だ。私は根っから上品な人間でね』

 計算が順調に進む様子を見ながら、アレクセイはシドに「バレエ好きかな?」と、唐突に尋ねる。

「私のいとこが三人、ボリショイ劇場で踊ってる。()()()()ホップもいいが」

 シドは眉を若干動かしたが、特に返事もなく仕事に集中する。

 やがて、計算が終わり―――カウンターに表示された金額は4900ドルだった。

『渡したのは5000ドルだ』

『4900しかない』

 ジョセフは計算機が表示した数字にいちゃもんをつける。監視していた麻薬捜査官に緊張が走る。

「5000渡した」

「4900よ」

「5000だ!」

「ちょろまかすつもりなら、ほかの所へ頼むのね」

「―――OK」

 代金をケチろうとしたジョセフの考えを見透かし、毅然とした対応を取ったシドを気に入り、アレクセイは残りの額を手渡し、計算を完了する。

 

 事務所へ向かい、中で会計作業に勤しむ部下に問い質す。

「今いくらある?」

「300万ドル」

「おーい、金が散らばってる。片付けとけ。300万ドルを少々両替してもらいたい。いいな」

 シドが事務所内を見渡すと―――会計作業に追われる男の他、麻薬王から購入したエクスタシーを袋から取り出し、小さな袋に細かく分ける女性が一人。

「NYの仲間とは何度仕事をした?」

「何度も」

「私への態度で今後の仕事に影響が出るぞ」

「そっちがあたしを呼んだんでしょ? このお金を高額紙幣に両替して誰かに届ける。それが遅れると相手が怒る。困るのはあなたの方よ」

 たとえ相手がマフィアだと分かっていても、臆するどころか、毅然とした態度を貫くシド。

 アレクセイは、強気な彼女を気に入り―――300万ドルを高額紙幣に両替する為、手続き作業を一任する。

 大量の札束が用意される。次々と一塊にされ、箱に詰められる。

「10ドル札から100ドル札で両替した5万。だれかさんへの100万はこの五つのケースに入ってる。わかったかしら、これで?」

「数字は苦手だ」

 計算作業が苦手なアレクセイは理解が及ばず、困った顔を浮かべる。

「300万を高額紙幣に両替して、あなたには綺麗なお金を200万返し、手数料として30万頂いて、これはあなたの取引相手に届けます」

 シドは麻薬王との取引額である100万ドルが詰められた五つのアタッシュケースの蓋を閉じ、鍵を掛ける。

「アレクセイ」

 不意にジョセフが呼び止め、アレクセイは怪訝そうに「なんだ?」と問う。

「支払う金額が多すぎる。リスクを背負(しょ)うのはこっちだ。密輸屋にそんなに払うことはない。だろ?」

 彼は麻薬王の組織を「麻薬の運び屋」程度に考えていた。そのため、支払い手続きが終わった後から、彼らへの支払代金が高いことをアレクセイに話した。

「ああ、将軍に電話しよう。再交渉だ。お互いビジネスマンだからな。電話かけろ」

「・・・自分でやるんだ」

 言うと、ジョセフは受話器をアレクセイに手渡した。

 

『金の受け渡しに移動するぞ』

 缶コーヒーの絵柄がデザインされたトラックが、アレクセイからの支払金額である100万ドルを持って、取引所から移動を始める。

 その様子を見ていた、黒のドレッドヘアーが特徴的なハイチ系タイムストリートギャングは木の棒でコンコンと叩き、「出発だ」と呟く。

「おい、トラックが出ていく。尾行するぞ」

『見失うんじゃねえぞ』

「あのトラックを追え」

 仲間と連絡を取り合い、タイムストリートギャングは車へ乗り込み、トラックの尾行を開始する。

 彼らを束ねるギャングのリーダー格、金色のドレッドヘアーの男―――ブロンディ・ドレッドは待機していた仲間を集め、一斉に動き出す。

「一斉に車に乗った。このネタは本物だ」

 事前に時野谷からの密告で、彼らの動きを察知していた鋼鉄の絆(アイアンハーツ)メンバーは、各所に展開。うち、ドラと幸吉郎、太田の三人はギャング達の動きに目を光らせていた。

「誰を襲うつもりなんでしょうか?」

 双眼鏡を覗きながら、太田は二人に尋ねる。

「さぁーね。そりゃ、追いかけてみればわかる」

「んじゃ。こっちも動くとしますか」

 運転席の幸吉郎は車の鍵をかけ、彼らに悟られない様に車を発進させた。

 

 しばらく移動した後、シドとその仲間はトラックから乗用車に乗り換え、渡されたエクスタシーの代金を詰めたアタッシュケース五つを運ぶ。

 積荷が終わると、乗用車は取引相手―――麻薬王の元を目指して発進する。

「ファルコン1。シドが見えるか?」

 基地局からの連絡を受け、仲間の捜査官は立体駐車場に入った彼女が乗った車を双眼鏡で確認し、「準備よし」と返答。

「見つからないようにしろよ。あれはゾーヤ・ポンドって言う海賊みたいな連中だ」

 同じように、ドラ達が乗った車も駐車場の前に来ており、ドラは運転席の幸吉郎に細心の注意を促す。

 ゾーヤ・ポンドのリーダー格、ブロンディは車から降りると立体駐車場に入ったシドの車を仰ぎ見る。

「10時の方向に黒の四駆」

「頼むぜ、ベイビー」

 建設中の高層ビルの一角で、双眼鏡を覗き込んでいた麻薬王の側近でナンバー2、カルロスは無線で連絡を取る。

「ロベルト、そっちに行くぞ」

 無線から連絡を受け、ナンバー3の男―――ロベルトはシドの車が前を横切ってから「今、通った」と返事を返す。

「こちらファルコン1。車がやってきた。すぐ後ろにオレンジ色の中型車が来る。乗ってるのは・・・色黒の男三人!」

「モニターに映っていない。確認しろ」

「不審な三人組の男が現れた」

 捜査官からの報告を受け、基地局の男達は想定外の出来事にやや焦り顔。

 程なく、シドを乗せた車は屋上の駐車場で停車。ドラ達は駐車場の真下で待機し、ゾーヤ・ポンドの動きを静観。

 ゾーヤ・ポンドのギャング達も屋上に到着。車から降り、シドの乗った車へ移動する。

「三人が車を降りて移動している。マズイぞ、銃を持ってる! くそ! ヤバい!」基地局捜査官が本気の尚早を露にした、次の瞬間。

 

 パンッ―――ギャングの一人が銃を発砲。捜査官の耳を撃ち抜いた。

「な、なんなの!?」

 突然の銃声音に驚愕するシド。

 基地局でフォローをしていた男達は「襲撃だ!」、「チキショー!」などと言って、インカムを無造作に放り投げる。

 襲撃を受け、ギャングはシドの隣に座っていた男を車から引っ張り出し乗り込もうとするが、シドがすかさず銃を発砲。ギャングを撃ち斃す。

「クソ! 止めろ!!」

 急いで車を発進させようとするシドと、仲間のギャング二人が車にしがみつく形で乗り込む。

「捜査官が撃たれた!」

「ロベルト、追いかけろ! 早く!」

「分かってる! すぐ!」

 タイムストリートギャングという事象を想定していなかった麻薬局及び麻薬王の手下達はこの非常事態に周章狼狽する。

「おまえはここにいろ、いいな!」

「何てことだ!」

 慌ただしく動き出す二つの組織。

 シドは車を乱暴に操り、下降しながらギャング達を跳ね除けようとし、仲間のギャングは車に乗り込み追跡を始める。

 ダダダダダダダッ!! ダダダダダダッ!!

 銃撃戦が始まった。シドが乗った車に容赦ない銃弾が浴びせられる。

 シドはこの状況を打開しようと、壊された車の扉ごと、駐車場の外にギャングを吹き飛ばす。

「だああああああああぁ!! なんか来たぁ―――!!」

 空から降ってくるゾーヤ・ポンドのギャングを捕え、近くにいたドラ達は慌てて回避。ギャングの男は勢いよくゴミ捨て場の上に落下する。

「何なんですかこれは!?」

「俺らが知るか!!」

 と、そのとき―――シドを乗せた車が駐車場を飛び出し、市内へと向かった。

「げっ! 兄貴、ありゃアメリカ支部の麻薬局捜査官です!」

「はぁ!? 何だって麻薬局がこんなところにいんだよ・・・追うぞ、乗れ!」

 ドラ達も想定外の出来事に遭遇しつつ、車に乗り込むや、ゾーヤ・ポンドの車を追う形でシドの車を追跡する。

 

 黒の四駆は車で溢れ返る市内の交通を引っ掻き回す。

 ゾーヤ・ポンドの車は執拗に輸送車を追い、その後を幸吉郎が運転する車が追いかける。

「幸吉郎、歩道だ! 歩道!」

 ドラの指示に従い、幸吉郎は交通法規を無視して歩道を爆走。

「どけ! どけ! どけ!」

 次々と人が横にずれ、ドラ達に進路を譲る・・・もとい奪われる。

「幸吉郎さん!! ちゃんと車道を走って!!」

「んな悠長なことしてられっか!!」

「人轢いたらどうするんですか!?」

「常識の中で生きるな! 人間そう簡単に轢かれたりなんかしねぇんだよ!」

 基本、二十数年間に渡り常識の中で生きてきた太田にとって、幸吉郎のやり方は黙認できるものではなかった。

 しかし、幸吉郎は犯人追跡と言う名目で平気で交通法規を犯し、周りの迷惑を省みない―――ある種彼らがギャングの様に思えてならない。

 ダダダダダダダッ!! ダダダダダダッ!!

 激しい銃撃戦。囮捜査官シドは必死で逃げ回る。

「こちらドラ! カナル通りに応援要請! すぐだ!」

 別所で展開しているメンバーに連絡を取り、ドラは携帯を切る。

「太田、撃つ用意しとけ」

「え?」

「間の抜けた声で何が“え?”だよ!? 兄貴が撃つ用意しろつってんだから、それに従え!! 考えてる間に殺されるぞお前」

「は、はい!!」

 脅される感じではあるが、太田は懐から拳銃を取り出し、弾が入っている事を確認。

 そして、幸吉郎が運転する車がゾーヤ・ポンドのギャングの車に接近―――すかさず、太田は窓の外からTBTと書かれた手帳を提示。

「TBTだ! 止まれ! 止まれ!」

「バッチかよ! 銃持ってるんだから撃てよ!」

 一喝したドラは太田に代わって銃を発砲。タイヤを射抜かれた車は制御不能となり、縦列駐車された車の大群に激突、木っ端微塵となる。

 ダダダダダダダッ!! ダダダダダダッ!!

 より過激に、より危険な状況が演出される。

「同業者助けるのも、楽じゃないよな」

 囮捜査官を乗せた黒の四駆を追いかけながら、ドラは後部座席から機関銃を取り出す。

 

「どいて!! どいて!!」

 頭が錯乱状態に陥っているシドは、目の前の通行人を掻き分け、逃げる事だけに専念する。お陰で視界が極端に狭まり、簡単に対向車と激突。次々と他の車が巻き込まれ―――混沌とした状況が作り出される。

「なんだか、俺(アッタマ)に来たなー!」

 言うと―――幸吉郎はアクセルを全開。車という車で溢れ、一つの鉢の中ですりまぜたように混沌とした交差点へと突進する。

「銃だ! 銃だ! 銃だ!」

 突っ込む幸吉郎達の車を見据え、ギャング達が一斉に機関銃を構える。太田はそれに酷く動揺する中、「つかまれ」と、幸吉郎は呟く。

 ハンドルを勢いよく回転させ、車の位置を反転させると、機関銃を構えたドラがゾーヤ・ポンドのギャングに発砲。片っ端から撃ち抜いた。

 ダダダダダダダッ!! ダダダダダダッ!!

「ここでバッチ見せろ!」

「ひいいい!!」

 やることなすことすべて無茶苦茶。

 日本の警察のようなスマートでクールなイメージとは程遠いドラのゴリ押し感半端ないやり方は、太田には刺激が強すぎた。

 やがて、駱太郎達を乗せた応援のパトカーが現場に到着した。

「うおおおおおおおぉおお」

 パトカーから降りるや、駱太郎は前方へと走って行き、銃弾の雨を恐れることなく徒手空拳でギャングを倒す。

「助太刀するぜ、単細胞!」

 言うと、写ノ神は腰元のケースから一枚のカードを取り出す。そして、ぶつぶつと呪文のような言葉を唱え、カードを天に掲げる。

 次の瞬間―――空から火の粉が勢いよく降り注ぎ、ギャング達を襲撃する。

「拙僧達も参るぞ」

「了解です!」

 さらに、龍樹は錫杖片手にギャング達の元へと駆け寄り―――

「キエエエエエエエェ!!」

 奇声を発した途端、錫杖を地面に突く。すると突如現れた複数の直方体の箱に彼らを閉じ込める。そして、箱と一緒にギャングの姿が消失する。

「ごめんなさいね。これも仕事のうちなので」

 言うと、茜は着物の袖から複数の苦無(くない)を取出し、機関銃を乱射するゾーヤ・ポンドのギャング目掛けて苦無を投げつける。

「「「ぐああああああ!」」」

 腕や肩、脚に突き刺さった苦無がギャング達の顔を歪め、戦闘不能に持ちこむ。

「でーっははははははは!!」

 車から降りたドラは、元々の武器である刀を使ってギャング達を斬り伏せる。情け容赦なく斬り屠られていく彼らを見ながら、幸吉郎と一緒に物陰に隠れていた太田は心の叫びを出す。

「メチャクチャっすよこれ!」

「大丈夫か、ルーキー?」

 

「どいて!! どいて!!」

 混戦状態の中、シドは何とか車を発進させ、先に進もうとする。

「応援を全部集めろ!」

 麻薬局の捜査官も戦いに参戦。無秩序な状況が作り出され、誰が味方で敵なのか、その分別がつかなくなる。

「逃げるぞ!!」

「早く金奪え!」

 切羽詰ったギャング達がシドの車の後部座席から乗り込もうとする。

「うわああ!」

 気づいたシドは咄嗟に機関銃を手に取り、ギャングの一人に向けて発砲。

 ダダダダダダダッ!! ダダダダダダッ!!

「ぐあああああ!!」

 頭部を射抜かれ、ギャングは即座に絶命し、車から無造作に落下する。車はその隙に急発進する。

「イケイケ!」

 逃げた車を追おうとギャング達も忙しなく移動を開始。近くにあったキャリアカーを強奪―――黒の四駆を追跡する。

「R君! みんなと、この場の足止め、任せてもいいかい!?」

「おう! 任せろ!!」

 駱太郎から許諾を得ると、ドラは幸吉郎と太田を連れ、車に乗り込み―――発進する。

「飛ばせ幸吉郎! もっとスピード上げろ!」

「了解!!」

 小型で小回りが利く車の馬力を全開にし首都高を爆走する。

 ブロンディらギャング達が奪ったキャリアカーは立ち塞がる障害物を強引に破壊し、周りの車を押しのけ、ひたすら前進を続ける。

「ぶっ殺してやる!」

 シドの車目掛けて、銃を乱射するギャング。

 ドラ達を乗せた車はキャリアカーの後ろを走行。それに追いつこうとしている。

「どけどけ!」

 巧みな運転テクニックで前方を走る車を追い抜き、追い越し―――時速300キロと言う速度で幸吉郎は車を追いかける。

「見失わないでください!」

「俺は副隊長だぞ! 兄貴の前で、んなヘマはしねぇ!!」

 キャリアカーが前の車を押しのけ、その車がドラ達の車へと流れ込む。

「ぶつかるぅぅ―――!!」

「しゃらくせええ!!」

 絶叫マシンより怖い命懸けのカーチェイスに悲鳴を上げる太田。幸吉郎はそれを皮一枚のところで回避する。

 キャリアカーに追いつくと、荷台に乗り込んでいたブロンディが銃を乱射。幸吉郎が運転する車のヘッドライトを破壊した。

「ああ! チキショー、あの野郎撃ち殺してやる! どうすんだよ、俺のヘッドライト!」

「いやこれ幸吉郎さんのじゃないですよね!?」

 借り物であっても、運転している幸吉郎からすれば自分の一部に等しかった。

「撃ち返してください兄貴! 撃ち返して! 撃って撃って!」

「おっしゃー!!」

 目には目を。機関銃には機関銃。

 助手席のドラは窓の外に顔を出すと、機関銃でキャリアカーへと乱射。ギャングとの熾烈な銃撃戦を繰り広げる。

「お前も手伝え!!」

「あ、はい!」

 後部座席の太田も窓から顔を出し、加勢に加わろうとしたのだが-――先にギャング達が銃を発砲してきたことに臆してしまう。

「うわああ!!」

「おおおっ!?」

 勢い余って首を引っ込めた際、太田はドラの頭に手を乗せ、それに驚いたドラが手元の機関銃を車内で乱射。

 ダダダダダダダッ!! ダダダダダダッ!!

「「「だああああああぁぁああ」」」

 助手席のダッシュボードは見事に無数の穴が開けられ、幸吉郎は顔面蒼白。

「ルーキー!! てめぇコノヤロウ!!」

「何やってんだよ太田! このバカチンが!」

「ご、ごめんなさい!」

「ごめんで済むなら後で面倒な書類の手続きなんかしないんだよ!」

「しっかり注意しろって言うんだ! 正義感じゃ飯は食えねぇ、まずはちゃんと仕事しろッ」

 しばらくして、ブロンディ達は荷台に積まれた、車の鎖を切り離し出した。

「落とすぞ!!」

 チェーンが外れた車が荷台から降ろされ、前方から壊れた車が向かってくる。

 警察車両が予想外の奇襲に悪戦苦闘し、次々と激突する。

「あいつらホント切れてる!」

「何てことしやがる!」

 所構わず車が落ち、その度に射線上の車が理由も無く巻き込まれていく様が、否が応でも飛び込んでくる。

「まじビョーキですよ、これ!」

「ああ、もっとひどくなるぞ!」

 ひっくり返った廃車をチェーンで引きずりながら、機関銃でエンジン部分を撃ち抜き、わざと爆発させる。

「危ないよく見ろ!」

 ドラの警告を聞き、険しい顔を浮かべながら幸吉郎は、燃え盛る炎の車を横切った。

「もうふざけたことさせねぇ!」

「まだやる気だ・・・ああああああああ!!」

 直後、荷台の上部から車が真っ逆さまに落ちて来た。激しく道路を転がるそれを回避したと思えば、太田は目を見開き唖然とする。

「今の見ました!?」

「車落としたの見えねぇ訳ねぇだろ!!」

「振り落とされるぞ! シートベルトしっかりつけてろ!」

 ギャング達が荷台から降ろす車が一塊の様になって転がり、その都度幸吉郎がギリギリのところで見極め、高速で躱していく。

「あああああああぁぁあ! うおおおおおおおおぉぉお!」

「うるせーな!! 黙って俺に運転させてくれねぇのかよ!!」

「だって・・・こんな目の前で・・・車が!!」

「少しは静かにしろ! 幸吉郎はさ、車避けるのに集中してんだからさ!」

 そうは言うものの、この上もない恐怖に失禁寸前の太田は、間髪入れずに目の前から転がってくる車を見るや、叫ばずにはいられなくなる。

「リラックスしてろ!」

「できませぇぇ―――ん!!」

 次の瞬間、高速で転倒してきた廃車がドラ達の乗る車の上部を飛び越える。これには、三人も鳥肌を立たせ驚く。

「ひいいいい!! 車が上を飛んでった!!」

「俺、ケツの穴が縮んじまいましたよ!」

「危うくぶつかるところだった!」

 この前代未聞のカーチェイスがもたらした影響はこれだけではなかった。

 偶然にも、キャリアカーは前方の車を押しのけた際、その車が積んでいたボートの鎖を破壊した。

 チェーンから外されたボートは後方の車と衝突、進路を変更して、真っ直ぐドラ達の元へと向かってくる。

「ボートだ!」

「こんな展開誰が予測したよ!?」

 

 ドカ―――ン!!

 

 ボートは目の前の警察車両と激突し、爆破。

 アクション映画さながらの過激な爆破シーンがドラ達の目の前に映し出される。

「ひええええ・・・・・・!!」

「俺達知らねぇ・・・」

「い、行くよ」

 誰も、こんな事態になるとは想定していなかった。

 良心の呵責に苦しみながら、ドラ達はシドの車を追って、早々に現場を離れて行った。

 

 

 

 

 

 

ドラさん語録~サムライ・ドラが残した語録集~

 

その4:そりゃみんなの認識力がポンコツだからですよ。オイラの所為じゃない

 

タイムエレベーター内で、ドラの放った銃弾を尻に食らった昇流の言い分に対しドラが返した言葉。魔猫という言葉からも分かる通り、責任転嫁はお手の物。見た目に騙されないためには、本質を見極める優れた認識力を磨く必要がありそうだ・・・。(第3話)

 

その5:ごめんで済むなら面倒な書類の手続きなんかしないんだよ!

 

ゾーヤ・ポンドとのカーチェイス中、誤って車のダッシュボードを撃ってしまったドラが太田を諌める際、言い放った言葉。世の中謝ることは礼儀のひとつだが、何よりも事務的な書類の手続きが少々面倒だ。できることなら謝罪の際、あとあと書類による手続きがないものが望ましい。(第3話)




次回予告

太「僕達エライことしちゃいましたよ!! あんなカーチェイスやるなんて聞いてませんでしたけど!!」
ド「しょうがないだろ、人生思うようにはいかないんだよ。大体、麻薬局(シド達)が動いているなんて連絡来てないぞ。狂わされたのはこっちだって同じだ。まぁいい・・・次はもっと穏便に行こうじゃないか」
「次回、『どっきりビデオ』。おい、なんだこのドラ○もんのサブタイトルは!? おい、これちょっとまずいんじゃないのか! おぉ―――い!!」

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