隠「ついに変態妖術師で本章の黒幕・カーウィンと鬼畜外道な兄貴が対峙する。前に一度しっぽを引っ張られて戦いを強制的に終わらされた訳だが・・・・・・キャリーサはどうするんだよ?」
ド「決まってるだろう。すこぶるどうでもいい!!」
キャ「ひどい!!ひどすぎますよ、私の扱い!!誰でもいいから慰めて下さい・・・///」
午後12時04分
星の智慧派教団本部 160階廊下
星の智慧派教団が誇る魔術軍団と
稀代の魔女キザイア・メイスンを退けた茜は、魔女の使い魔ジェンキンスの元となった動物たちを畜生界・鬼灯の里にて供養をしたのち、人質のキャリーサを救出すべく屋上を目指していると、
「茜っ―――!!」
彼女は目を見開き立ち止まる。後ろから聞こえる彼女にとって最も親しみ深い少年の声色。おもむろに振り返ると、写ノ神を始め、幹部魔術師との戦いに勝利したドラを除く男性メンバー全員が集まり彼女の元へと走って来た。
「写ノ神君!!みなさん!!」
「無事だったか!!ああ、お前手に傷が、着物もやぶけてんじゃねぇか・・・・・・」
と、一度は死にかけた自分の事よりも茜のことを気遣う写ノ神。茜は彼の優しさに触れ心から安堵すると、「これぐらい平気ですよ」と笑顔で答える。
「兄貴は・・・もう屋上に行っちまったようだ」
「俺たちもとっとと向かおう。じゃねぇと、キャリーサの奴がナイアルラトホテップになっちまう!!」
隠弩羅が危惧する最悪の結末。輝くトラペゾヘドロンに封印された邪神の力が無垢なる意思と呼ばれる器としてのキャリーサに乗り移ったとき、彼女は邪神としての力を手に入れ、世界を滅ぼす巨大な「悪」と化す。
そうなる前に何としても彼女を救い出し、この事件の黒幕たる妖術師ジョウゼフ・カーウィンを討ち倒す必要がある。一同はドラがいると思われる屋上を目指し疾走―――人質の救出を急いだ。
*
同時刻 星の智慧派教団本部 屋上
屋上で対峙する二人・・・厳密に言えば一人と一体の悪党。
星の智慧派教団に付け入り、邪神の力を手に入れようとした挙句、教祖であるヘルメスの体を奪ったジョウゼフ・カーウィン。それと向き合う狂気に支配されがちな魔猫こと、
口角を釣り上げドラがカーウィンへ刃を突き付ける一方、ヘルメスの姿をしたカーウィンもまたエストック状の剣を取り出す。
両者から放たれる目に見えるほど禍々しい殺意。それを剥き出しにしながら、両者は自分の間合いを守りつつ牽制。
キャリーサは自分では到底立ち入る事の許されない状況に息を飲み、恐怖のあまり目を逸らす。
そんな折、ドラはカーウィンを見ながらおもむろに口を開き―――
「めんどくさいという理由で戦いを放棄し、この魔猫の電源を抜いた奴はお前が初めてだよ。だけどそのことでオイラがどんな屈辱を味わったかなんて・・・・・・お前には想像もつかないだろう?」
「すべては邪神を復活させ、この世界を手に入れるためだ。絶対的な力を持つナイアルラトホテップの力・・・・・・私はその力をもってこの世界に新たな秩序を生み出す。そして私は、この世界に君臨する。世界を支配するのはこの私だ」
いかにも典型的な悪党の欲望だと思った。彼の話を聞いた直後、ドラは左手でチャームポイントだと思っているひげを真っ直ぐに直しつつ、率直な疑問を投げかける。
「世界を支配した後、どうするんだ?」
「何?」
質問を聞いた瞬間、カーウィンは訝しげな顔を浮かべる。
「分かってないんだな、そこんところ。いいか、本当に大変なのはその後なんだぞ。世界を支配した暁、お前の最大の欲望は満たされるだろう。だがその後はどうだ。どんな欲望を抱いたところで大概の事は満たされている、あるいは満たされない。満たされるものといえば摂食活動に必要な食欲とかそこらへん。あとはこの上もなく退屈な日々が待っている。それは本当にお前の望むすばらしい結末か?」
「何が言いたい・・・・・・」
いつの間にかドラのペースにはまっているように思えて仕方なかった。眉間に皺を寄せるカーウィンを尻目にかけ、ドラは不敵な笑みを作る。
「人間は欲望の生き物だ、確かにそうだ。だが世界を支配した人間の欲望は次にどんな欲を持つのだろう?大抵のことでは満足できない。次から次へと欲しがる人間だが、堅気の範疇ならたかが知れる。人は不完全なことを嫌悪し、完全な存在・・・つまりは神の力になり上がろうと努力する。だが同時に彼らは気付いていない。神になるということは、それ以上を目指せなくなることに。不完全ゆえに人間は退化することを恐れ、進化の道を歩むことができる。だが一度神の力を手に入れた瞬間、それ以上を目指せなくなる。残っている選択肢は退化なんだ。上を目指せないということはこの上も無く窮屈だ。そう思わないか?」
人間の真理を巧みに突いた人生論だった。ドラはカーウィンの心を大いに惑わし言葉を詰まらせることに成功する。
哲学的な話の末、刃の波紋に反映された自分を一瞥し、ドラ亜目の前のカーウィンに剣先を突き付ける。
「選ばせてやるよ。ここで死をもって肉体的な満足を得るか。オイラを倒し、邪神の力で世界を支配し、その後訪れる自らの死を迎えるまでの耐えがたい窮屈な毎日を享受するか。あ、宇宙を支配したいというならどうぞ御勝手に。それだけ巨大な欲望を満たしたところで待っているのは同じ結末さ。大きすぎる欲望が叶った時ほどその後の喪失感は測りしれないからね」
「ロボット風情が・・・・・・分った口をきくでない!!」
これ以上の屈辱は耐えられなかった。滅多な事で感情を爆発させない妖術師が声を荒らげた。
カーウィンはエストック状の剣先から魔力の衝撃波をドラに向け、勢いよく放つ。飛んでくる衝撃波をドラが斬り捨てようとした直後、
カキン―――
それを遮る影が現れる。その影は巨大なカマキリの刃を使ってカーウィンの魔力衝撃波を切り裂き、泰然自若とドラの前に立ち尽くす。
「おや?これはこれは・・・・・・やっぱりクライマックスになると不意に現れるね」
「君を倒すのは僕だってこと、忘れたわけじゃないだろうね。この前は魔術師相手に随分手をこまねいたけど、今度はそうはいかないから」
以前クロアチアで前触れも無く現れ、魔術師のイグネスを撃退した代償に深手を負ったはずの螻蛄壌が、傷を完治させ再びドラの前に現れた。
壌は不敵な笑みで目の前のカーウィンを見つめ、狂気を内包した瞳で彼を見、
「強い相手との戦いは僕の最大の欲望だ。サムライ・ドラを倒すための礎になってもらうか?」
「ほう・・・・・・」
壌がカーウィンに興味を示したように、カーウィンも壌に興味を抱いた。
思わぬ助っ人が現れたことで、ドラは急に白けてしまったが、同時にラッキーだとも思った。戦う事が面倒だと思っている彼にとって思ってもいないチャンスだったのだ。憎むべき妖術師の相手を壌に譲り、ドラは壌から離れ刀を鞘に納める。
「兄貴っ―――!!」
そのとき。階段を上がってくる物音が聞こえ、振り返ったところに幸吉郎たち七人の
「おお、みんな。生きてたか」
無事に生き残って自分の元まで戻ってきた彼らを見て、ドラは内心安堵する。
「すまん出遅れたか!」
「いや大丈夫。ちょうどクライマックスってところだ」
そう言ってドラは幸吉郎たちを見ながら、カーウィンと対峙する壌を指差した。
「って!またあいつかよ!?」
「なんなんだよ・・・この前ふらっと現れたと思ったら、またさり気無く登場してんな!」
「ひょっとしてストーカーなんじゃねぇの?」
と、軽はずみな事を言った瞬間―――昇流の首筋スレスレを真空の斬撃がかすった。斬撃は適当な障害物にぶつかると、粉みじんに吹き飛ばす。
「ああ・・・・・・///」
「誰がストーカーだって?」
怒気の籠ったとりわけ低い声を発し、壌は後ろにいる昇流に向けて鋭い鎌の表面を太陽の光で反射させる。
この上もない恐怖を味わわされると、腰が引けた昇流は失禁寸前にポロポロと涙を流し謝罪する。
「す、すんません・・・・・・なんでもありません///」
大人げない態度だと思った。壌を一瞥し、幸吉郎が呆れ半分に「あいつも冗談利かねえな」とつぶやく。
「大丈夫か、キャリーサ!」
その間に、駱太郎と写ノ神、茜の三人で十字架に繋がれ拘束されていた無垢なる意思のキャリーサを救出する。
「みなさん、来てくれたんですね!」
「はい。それにしてもひどい目に遭ったものですね」
「つーか、ドラの奴は助けてくれなかったのか?」
率直な疑問をキャリーサに投げつけた写ノ神だが、鎖を解かれた直後に、キャリーサはしくしくと泣き始め―――負のオーラを放出する。
「ぐっす。ひどいんですよね・・・・・・私の事は三の次以下だって・・・・・・///」
「え?」
意味はよく分からなかったが、彼女の態度から察するに概ね理不尽な悪口を言われたのだろうと推測。ある意味かわいそうだと思い、三人は傷心する彼女を慰めることにした。
ピピピ・・・ピピピ・・・ピピピ・・・
「おっと・・・いけないいけない」
「なんだよ、どうした?」
唐突に鳴り響くタイマーのような音声。若干慌てた様子のドラがヒヨコ型のタイマーを手に握る中、昇流が苦い顔で尋ねる。
隠弩羅や龍樹が固唾を飲んで見守ると、ドラは懐から新鮮なバナナを一房取り出し、そのうちの一本をもぎ取り食べ始める。この瞬間、一同は度肝を抜かれ盛大に転倒する。
「こんなときでもバナナ食うのかよあんた!!」
「前の章でも言われたじゃろう、そういうところが無神経すぎると!!!」
「エネルギー補給は、30分間隔じゃないと」
「どっかの海○○事じゃあるまいし、やめろよ!!」
周りに何と言われようとドラは自分のスタイルを崩さない。エネルギー補給のために用意されたバナナを淡々と食べ続ける。
と、そうこうしている内に壌とカーウィン―――怪物と怪物による血で血を洗う争いが勃発する。
エストック状の剣を操るカーウィンと両手の鎌を巧みに操る壌。鋭利な武器と武器が激しくぶつかり合う度、火花が散る。
壌は距離を取り、二本の刃の間から複数の斬撃を作り出して、カーウィンへ放つ。飛んでくる複数の鎌をカーウィンは手持ちの剣で容易に弾く。が、間合いを詰めて来た壌が無表情に首を刈り取ろうとする。
咄嗟に攻撃を躱したカーウィンだが、ほんの一瞬焦りを抱き、冷や汗をかきそうになる。
(見事な剣閃・・・躱しても貫かれたが如き戦慄を奔らせる。この太刀筋、あのロボットに匹敵する・・・!)
戦って初めて気付く壌の底知れぬ力。一瞬でも気を抜けば即座に命を奪われるかもしれない・・・カーウィンは大いなる野望を成就するために死ぬわけにはいかなかった。
気をしっかりと持ち、彼は不敵な笑みを浮かべる壌と向き合い―――再びぶつかりあう。
カキン・・・カキン・・・
洒落にもならない戦いの様子を蚊帳の外で傍観する
グサ・・・グサ・・・
血吹雪を上げながらも戦いに興じる狂った二人に茜とキャリーサが目を逸らし、駱太郎はドラに制止を求め訴える。
「おい、ドラ!あれ止めなくていいのかよ!?」
「戦いに興じることしかできない哀れなバケモノに手を出して、痛い目を見るほどあほらしい事はないね。壌が変態妖術師野郎にやられるのなら、所詮はその程度の男だったまで」
「ですが、一応あの方も私たち家族の一員ですっ!!!」
と、茜は壌の事を指さしながら扱いづらい性格の彼も等しく
それを聞き、ドラは食べ終えたバナナの皮を懐にしまい、「やれやれ」と声を漏らす。
「やたらに家族とか絆とか、含蓄のある言葉を使うのはよくないな・・・・・・逆に陳腐なものに思えてきちゃって仕方ない」
壌は周りが狼狽える事に一切の興味も示さない。ただひらすらに目の前の敵と真剣に向き合う。カーウィンが繰り出す剣閃によってどれだけ体を斬られようと、彼は決して退くこと無くやられた分だけやり返す。
すっかり周りには二人の血が飛び散り、猟奇的なものとなる。両手の鎌でカーウィンの剣を押しつつ、壌は酷く冷たい闘気を発しながら口元を緩め―――
「なるほど。これはまた、僕が思った以上の大物だね。サムライ・ドラを倒すための礎になれとは言ったが、そう簡単にはいかせてくれないようだ」
「邪神の力を手に入れ、世界の秩序を塗り替えるまで・・・・・・私は滅びるわけにはいかない」
「生憎だけど、君は滅びるよ。この僕の手によって」
刹那。壌はがら空きのカーウィンの腹部を強く蹴り、彼を吹っ飛ばす。そうして隙を作り、壌は腰に帯びた箱を二つ取り出す。
吹き飛ばされながら右手から強力な波動を後ろ向きに放ち、それを逆噴射させることでカーウィンはバランスを保つ。そして均衡が生まれた瞬間、右手からも同じ力を前方にいる壌へと放つ。
ドーン・・・・・・
波動は壌へと着弾し、爆発。しかし直後―――煙から出て来た壌はカーウィン目掛けて右腕を突き立てる。
次の瞬間、大型のバッタ目昆虫であるリオックの頭部を模した右腕がカーウィンの左腕へと噛み付き―――食いちぎる。
「ぐおおお・・・・・・」
リオックにより奪われた左腕から大量の血が噴き出す。膝をつき、全身から発汗するカーウィンに壌は怜悧冷徹な眼差しを向ける。
「次は首を獲るね」
ちなみにカーウィンが放った波動は、壌が左腕に装備した甲虫類最強の防御力を持つカブトムシの籠手で防いだ。
戦いの様子を傍観していたドラは腕組みをしながら、嘆息を突き―――
「勝負ありだな」
「ですね。妖術師野郎には申し訳ねぇが、あいつは兄貴と唯一互角に渡り合った野郎だ」
「でも油断はできねぇだろう」
と、写ノ神が言った直後だ。絶体絶命の窮地に立たされたはずのカーウィンが何故か不敵な笑みを浮かべていた。
ドンッ―――
壌はその笑みが示す意味に興味を示さなかった。リオック化した右手によりカーウィンの頭部を無慈悲に食らい尽くす。
思わず目をそらしてしまう凄惨な光景。首が無くなった彼の体は力なく仰向けに倒れ、途端に動かなくなった。
こうして壌の勝利によって戦いに決着が付いたと思われた―――その瞬間、残ったカーウィンの体が突如液状化を始めた。
「!!?」
倒したはずの男の体が液状化するという事に驚きを隠せない壌。そんな彼を余所に、液体となったカーウィンはドラたちの方へと向かう。
やがて液体は急激に膨張を始め、ドラたち全員を覆い隠すほどにまで巨大化する。
「これは・・・!!」
「こいつ、首なしになっても生きてられるのか!?」
『私は・・・・・・死なない!』
液状化したカーウィンの執念から来る声を聞いた。どんな姿になろうとも、無貌の神であり邪神のナイアルラトホテップ復活に拘泥する。膨張した体を前に倒し、カーウィンはドラたちへとのしかかる。
「「「「「「「「「ぐああああああ」」」」」」」」」
先程までは液体だったはずが、途端に硬化し瓦礫の上に押しつぶされるほどの衝撃が襲った。カーウィンはドラたちの身動きを封じると、一部分を液状化させ、ドラと隠弩羅から奪われた本物の欠片を二つ、そして復活のキーマンであるキャリーサを強奪する。
直後、殺し切れなかったことへの後悔から壌が真っ先に飛んできた。鎌を構えカーウィンを切り裂こうとするや、液状化した彼は咄嗟に魔力の槍を生みだし、それを無造作に操り壌の体を貫いた。
「がぁ・・・・・・」
この一撃が決め手となり、壌は一時戦闘不能となる。こうして邪魔者が排除されると、液状化したカーウィンはドラたちの元を離れる。
「はっ!」
カーウィンの呪縛から逃れると、ドラは彼の手にある二つの多面体の欠片と捕まったキャリーサを見て焦燥を露わにする。そして滅びた肉体を捨て霊魂の姿となったカーウィンは、ヘルメスが持っていた金属箱に欠片を設置しようとする。
「時―――至れり」
「よせえええええええええええ!!!」
ドラの叫びも虚しく、カーウィンは悲願である邪神を復活させるため、金属の箱に二つの黒い多面体の欠片を設置した。
二つに割れた欠片は合わさりあった途端に一つの多面体となり、その瞬間-――中で渦巻く怪しげな光を外へと解放。かたわらに控えているキャリーサの体に向けて、邪悪なる神の力は注ぎ込まれた。
「そんな・・・・・・」
「遅かったか!」
「キャリーサ!!」
「あああああああああああああああああああああああ!!!!!」
悲痛な叫び声を上げるキャリーサ。邪神の力が注ぎ込まれると、彼女の体から漆黒に染まった強大な魔力が溢れ、それは天まで伸びる柱となった。
魔力は天候を支配した。燦々と照りつける太陽が急に禍々しい紅色に染まったと思えば、月が太陽の光を遮り、この世に暗黒をもたらす。
常軌を逸した事態にドラたちは額に汗を浮かばせ、天上へと舞い上がるキャリーサを凝視。彼女から人間としての精気が失われ、徐々に虚無が支配する。その身体に赤み帯びた不気味な黒いオーラを纏い、邪神としての力を覚醒させる。
「死にゆく呻き花のよう・・・・・・」
無機質な声色を発するキャリーサの身体から、無数の黒い手のようなものが生える。黒い手は地面を突き抜け、教団の中でドラたちから生き延びた神父たちの命を奪い貪った。
命という命を奪い、彼女は声色から雰囲気も含めて徐々に男性に近いものへと変えていく。
「開ケ根ノ刻・・・・・・根ノヤシロ・・・・・・・・・―――」
直後、大地震に見舞われたが如く―――ビルを支える地盤が大きく揺れ始め、ドラたちは立っている事が困難となる。
「なんだ?!」
「おおおおお!!!!」
次の瞬間、ビルの倒壊とともに巨大な木の杭が地面より無数に生え、花の根のように地上へと広がった。
ドラたちがそれに巻き込まれる中、木の杭の中央部に位置したキャリーサは黒い球体に包まれると蕾の如く形を変化させる。
やがて花弁が開くように触手が外に開放されると、おどろおどろしい姿で邪気を発する無貌の神が雄叫びを上げた。
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」
「まさか・・・・・・!!」
サングラス越しに目を見開く隠弩羅が最も恐れていた事態が、目の前で起こった。禁じられた魔道具「輝くトラペゾヘドロン」の力により邪神ナイアルラトホテップが、数千年の時を経て―――現代に蘇ったのだ。
長身痩躯で赤みを帯びた黒い肌をした目や口などが見られないおぞましい人間の姿としてドラたちの前に現れた邪神は、どこからか声を発し―――
「ワレ目覚メ戻レリ。合切ヲ恐シ額ヲ沈メヨ」
人の言葉を独特のイントネーションで発する邪神。無数に伸びる黒い手からエネルギーを供給し、邪神は世界に向けて戦慄の言葉を贈り届ける。
「
邪神が声を発するたびに大地が、水が、風が泣き―――花が、波が、空が怒る。人々は邪神の力によって荒ぶる自然の力に翻弄され、この世の終わりと思える異常事態に恐怖する。
「「ああああああああ!!!」」
「「「うわああああああああ!!!」」」
木の根が広がるとともに、あの黒い手も街へと侵食を開始した。逃げ遅れた者から順に黒い手により命を奪われ、屍と化す。
倒壊した教団のビルに生えた棘の花が急速に拡大し―――街を、世界を呑みこもうとする。そんなおぞましい光景と現れた邪神の力に棘の花へと避難したドラたちは見つめ、息を飲む。
「あれが・・・無貌の神で邪神・・・・・・」
「ナイアル・・・ラトホテップ、なのか?!」
「何という禍々しさ。何という畏怖。かつて、これほどまでの邪気を感じたことは無いぞ!」「キャリーサさんが邪神になってしまうなんて・・・・・・!」
「どうするんだよ兄貴!あれ復活しちゃったらもうどうする事も出来ねぇじゃんか!」
「元はといえばお前が最初から上手くやってればこんな事にはならなかったんだ!!」
と、義兄弟で口論している場合ではなかった。邪神は恐怖に慄き絶望する人々に力を誇示しながら、天を仰ぐ。
「者者ヨ・・・世ニ宴シ勤メヲ果タセェェ!!」
ドーン・・・・・・
黒い手が変化した怪物状の左腕から放たれる衝撃波。空を翔るそれは計り知れない威力を誇り、ドラたちにまでその余波が及んだ。全員がその衝撃の影響で足場を崩され、別の棘へと叩きつけられる。
「ぐ・・・・・・」
「たまげた・・・力だぜ・・・!」
「変態妖術師の比じゃねぇ!!」
「無貌の黒き手より吸われし淀みが邪神の新たな血肉となり、この世を滅びで覆いやる。これにて万人等しく闇る淵にもがきし
カーウィンはずっと、この結末を待ちわびていた。
あまりに無駄なものばかりが生み出され、無駄なものによって世界は混沌と化した。彼は非力な人間が支配権を握るこの世を洗い流そうと秘かに思案―――そこで古代エジプトにて、彼は妖術師としての力を振るい、当時の王を唆して邪神を使うことを画策した。
そして今、彼は念願だった邪神を今一度この世に復活させることが出来た。この力を使い世界を洗い流し、改めて自分が世界の秩序となろう―――そう強く思っていた。
だが、そんな彼に向って邪神の黒い手が伸びる。霊体となった彼を無数の手が握りしめ、彼の命を吸収する。
「あああ・・・やだ・・・食べないで・・・おいしくありませんよ!!ああ、でもそこは!!最後に食べて!!!あああああああああああああああああああ!!!」
死の間際、新たに目覚めたマゾヒズムに駆られた言葉が何とも言えない狂気だった。
カーウィンの命を奪っても尚、邪神はさらなる力を高め、この世のすべてを滅ぼそうとするのだが・・・
「・・・やめ、やがれ」
か細い声で邪神に発するのは、隠弩羅。ボロボロの体をふらつかせながら、彼はおもむろに邪神へと歩き出す。
「てめぇの蛮行を許すわけにはいかねぇのさ・・・!これじゃ、本当に世界が・・・俺が愛する家族とプリキュアが生まれたこの世界が滅んじまうだろう!!」
そう言って、隠弩羅は奥歯を鳴らし邪神を睨み付ける。顔がないため感情がわかりにくい邪神だが、隠弩羅の言葉に興味がないことは何となく分かった。ドラは義弟の言葉を聞いて曖昧だった意識を取り戻し―――はっ、としたように彼を見た。
隠弩羅は邪神に根源的恐怖を抱きながら、震える手で八卦棒の持ち手を握りしめ、
「人の夢を・・・世界の希望を・・・!てめぇなんかに!消させてたまるかッ!」
「隠弩羅ッ!!止せ!!」
ドラの制止を振り切り、隠弩羅は勢いよく地面を蹴って単身邪神に迫った。邪神は右手を怪物の頭部へと変え、その口腔内から波動を放ち、無言のまま隠弩羅を攻撃する。
「ぐぉああああ!!」
強力な波動が炎を巻き起こし爆発。隠弩羅は圧倒的火力に翻弄され邪神に近寄る事も許されない。
「卑シキ猿トソノ造物品ヨ・・・脆キ魂(たま)ト為リテ悠久眺ムル価値モナシ!」
邪神の攻撃に隠弩羅は弾き飛ばされ、岩に激突した。力なく倒れ、その手から八卦棒がこぼれ落ちていった。
邪神は非情にも彼に攻撃を加えようとした。その直後に、接近する影に気がついた。
「
ドラが隠弩羅に意識が向けられていた隙に邪神の間合いに入り込んでおり、真の姿となった愛刀を携え頭上から斬りかかった。
だが、敢えなくそれは受け止められ、弾かれる。それと同時に、幸吉郎が低い位置から邪神に迫り刺突を繰り出す。
「てりゃあっ!」
ドラを弾いた邪神の手は頭上にあり、普通ならばそのがら空きの胴体を狙えたが、邪神と言う名は伊達ではない、すばやく手を返し幸吉郎の刀を受けると返す手で彼も弾き飛ばした。
「はっと!」
「よっとぉ!」
邪神の後方で、反対側の頭上から茜が無数の苦無を飛ばし、写ノ神がそれに追走するように地面を蹴る。
振り返り様に邪神は茜の苦無を弾き、すかさず跳躍して迫った写ノ神の斬撃も受けて弾いた。
「「せりゃああっ!」」
「おらっ!」
「ふん・・・」
そして、駱太郎と龍樹が離れたところから拳と法力による衝撃波を放つ。それに便乗して、昇流が弾丸を放ち、壌が真空の斬撃を披露する。
「無用ドモガァァッ・・・!」
振り返った邪神は、全身から邪気を放出。彼らの攻撃力を遥かに凌ぐその力で、
「フハハハハハハハハハハハハ」
邪神は高らかに笑う。周りの花はその数を急速に増やしていく。
「くそ・・・っ」
ドラはぎり、と歯を鳴らした。直後、目の前の邪神が凶刃を振り上げた。
「灰儘ニ帰スルガ良イワァァァ~ッ!!」
もうおしまいだ。邪神の凶刃が、勢いよく振り下ろされた―――まさにそのとき。
邪神目掛けて飛んできた光輪が手首と体を縛り付け、動きを抑える。
「隠弩羅!!」
ドラは目を見開き驚愕する。この窮地を救ってくれたのは、義弟であり魔術師の隠弩羅。彼は全身からオイルを噴き上げ険しい顔を浮かべながら、意地になって魔術を使用し邪神の力を封じようとする。
「賢シイワァア!!!」
怒る邪神が放つ衝撃波。着弾と同時に爆炎が隠弩羅を襲う。だが、彼はどれだけの痛みを受けようと、絶対にその場から退こうとはしない。
「何やってんだよ、隠弩羅!!下がってろ!!」
義弟のとった行動に居ても経ってもいられなかったドラは、先ほどまで動かす事も難しかった体を瞬時に起き上がらせ、盾になるが如く隠弩羅の前に出る。
「下がれ隠弩羅!!お前はこれ以上苦しむな!!」
と、義兄が庇おうとした直後に飛んでくる邪神の攻撃。隠弩羅はドラの元を離れると、最後の力を振り絞りありたっけの魔力を乗せた八卦棒に乗せて波動を放つ。
「どりゃあああああああああああ!!!」
「無駄ト知レェエエ!!!!!」
光輪による拘束を打ち破り、邪神は炎滾る凶刃による一刀で隠弩羅を攻撃。たちまち、隠弩羅は炎の刃に斬り裂かれる。
「ぐあああああああああああああああ!!!!」
「隠弩羅ァアアア!!!」
ドラは腹の底から声を発し叫ぶ。隠弩羅はこのとき、兄の態度を見て朦朧とする意識の中、ようやく気付く。
(今の今まで気づかなかったが・・・・・・兄貴は俺を・・・・・・俺が兄貴を思うのと同じように見ていたってことかよ・・・・・・この世にこれ以上大切な兄弟はいねぇって・・・・・・チクショウ、笑い話なのに笑う力も残ってねぇ・・・・・・・・・・・・・・・)
とうとう力が抜けた隠弩羅はその場に叩きつけられ、動かなくなる。
「隠弩羅―――!!」
ワンテンポ遅れて隠弩羅の元へ駆け寄り、ドラは傍らにしゃがみこむと、動かない義弟とその肩を掴み叫ぶ。
「隠弩羅ッ!お前が死ぬことは許さないッ!隠弩羅ァァァア!」
いくら怒鳴っても、隠弩羅の身体はピクリともしない。ドラは顔を歪め、ただの重い体と化した彼の半身を抱き上げ、それを強く抱き締め、突っ伏した。
幸吉郎たちは悲痛なドラの様子に顔を歪める。誰一人、二人の姿を直視できなかった。邪神は、この様子を嘲笑うかのように高笑いを上げている。
「フハハハハハハハハハハハハハハ」
と、そのときだった。邪神の足元に砕け散った、隠弩羅の八卦棒の破片が淡い光を放ち―――円状に彼を囲うように発光する。
「!?」
邪神へと流れ込んでいた赤黒い光が途絶える。途端、邪神の力は衰え、上体を崩した。
「なに?」
邪神の様子のおかしさに、写ノ神は周りを見渡し、龍樹はそんな彼に視線を向ける。
「そうか!あれが・・・邪神の根っ子かなんだ!!」
周りをよく見た写ノ神は、自分たちがいる根本部分に、黒い帯状のものがなにかを吸いとっている事に気がついた。写ノ神の言葉に龍樹もそちらを見やる。
「あの無数の黒い手が邪神の根となっておると?!」
二人の言葉に同じように周りを見ていた幸吉郎ははっとした様子を見せる。
「邪神はまだ復活を遂げきっていない。今のうちにあれを断てば―――」
その言葉に、駱太郎に茜、壌、隠弩羅を抱きしめていたドラも決意を固め、愛刀を握って顎を引いた。
今、この場で邪神を倒さねば、自分たちの未来(あす)はない。
「長官!あんたを死なせる訳にはいかない。生きて帰って、ちゃんと払うもん払ってもらいますからね!」
「了解だけど・・・お前のそういうところ、最早執念としかいいようがねえよ」
昇流はドラの呼び掛けにどこかおとぼけたように答えると、背後に目をやり、その場を離れる。
ドラは傷む体を引きずり起こし、大切な義弟の志を引き継ぎ、邪神の元へと歩を進める。そんな彼に続いて幸吉郎、駱太郎、龍樹、写ノ神、茜、壌が続いた。
「今しかない・・・!みんな、地獄に堕ちる覚悟はできたかな・・・!」
ドラは周りにそう言いながら、赤く光る邪神のフィールドへ足を踏み入れる。直後、幸吉郎から順に答えが返ってきた。
「兄貴、俺たちは誰一人地獄に堕ちるつもりはありません。どうかご容赦を」
「おうとも!地獄に堕ちるのはあいつだけだ!!」
「諸行無常の響きあり。猛きものも遂には滅びゆくがこの世の定め」
「茜よ。俺たちはたとえ死んでも、また来世で会えるかな?」
「何を言っているんですか。私は現世も来世も、あなたの側にいることを強く所望しています」
「不本意だけど、世界が壊れると誰とも戦えなくなるからね。協力してあげるよ」
この場に集まった七人は、命を捨てる覚悟だった。全員の足並みが揃うと、歩いていたのが走りに変わり、彼らは邪神の下へと突進する。
「ヌアアァアァアアアアアアアアアッ!!!」
蹲っていた体を振り上げ、邪神は咆哮する。それと同時に、覆っていた結界が破られ、光る八卦棒の欠片が粉々に砕け散る。
消えかけていた邪気が、勢いよく溢れ出した瞬間―――
「てやああっ!」
写ノ神と壌が勢いよく地面を蹴り、邪神目掛けて飛んでくる。
「
「
空中から斬撃。さらに地上から幸吉郎、駱太郎、龍樹、茜による渾身の一撃の元の同時攻撃が繰り出される。
「
「
「
「
五人の同時攻撃。命をもかけたその技に、結界を破ったばかりであるとはいえ、さすがの邪神も受け止めきれずにバランスを崩す。
「うおおおおおおおおおおおお!!!!」
爆風の中、上空からがら空きの邪神の元へドラが飛び込む。
ドラは空中で愛刀ドラ佐ェ門を構えた。上段に刀を握りしめ、刀身に全身全霊の力を込める。
「正真正銘の魂魄弾を受けてみろおおおおお!!!」
大上段に移り、勢いよく刀を振り下ろすと同時に渾身の技を放った。
棘の頂上、爆光の中に一筋の雷にも似た光が落ちて、一度消えてから凄まじい七色の爆光が噴き上がった。
「ズムゥオアアアァアグゥオァウッ!」
邪神の断絶魔が響く。爆光の中邪神の体は激しく歪み、発せられる邪気は黒い靄となって散りさった。そして、器とされたキャリーサの体が放り出される。
邪神は脱力し、背中から倒れると、地に僅かに亀裂が入る。
「やったか・・・・・・?!」
ドラが静かにつぶやく。だが・・・
「余ハ滅セヌ・・・・・・」
邪神は息を吹き返し立ち上がる。命を懸けた渾身の一撃を放ち、既に余力など残っていなかったドラたちはこの光景に絶句し、絶望する。万事休す・・・・・・と、思ったときだった。
「!?」
邪神の近くで、地面を擦る音がした。邪神は驚愕したように音のした方へ見ると、向かいに、ゆらりと立っているのは、キャリーサだった。
「キャリーサ・・・」
「どうして・・・」
ショックを受けた表情のドラたちは目を見開き、彼女のとった行動に唖然とする。
キャリーサは、今までの様に何かに恐怖するということはなく、ただ薄ら笑みを浮かべ、目の前の邪神を慈しむように見た。
「私と、一緒にねむりましょう・・・」
そう言うと、キャリーサは止めていた足を踏み出し、邪気の中へと入っていった。その体は淡く、紺碧の色に光っているようにも見えた。
邪神はどこか混乱しているようにキャリーサを見る。
「
邪神は怒鳴るように叫ぶが、キャリーサは臆することなく、優しく邪神を抱き止めた。ふわり、と彼女の髪が邪神に触れる。
「私が・・・ずっとそばにいてあげるから・・・・・・」
笑みを浮かべたまま、優しい声色でそう言った。直後、邪神と彼女の足元が歪み、暗い地の底へと二人は沈み始めた。
「ブワォアルオオ~ッ!!ズボハァァッ~ッ!!」
バキバキと音をたてて二人のまわりの地面も崩壊し始める。
悲鳴のような声をあげ、沈んでいく間もがき続けた邪神だったが、キャリーサが発する光が心を浄化し、次第にその声色は恍惚としたものへと変わっていく。
「コ・・・心地・・・ヨキカナ・・・」
脱力したようにそうつぶやいたとき、邪神はキャリーサとともに沈んだ。直後、棘が地盤を無くしたかのように勢いよく崩壊する。
「「「「「「うわあああああああああ!!!!」」」」」」
びしびしと亀裂が入り、倒れていた七人と隠弩羅も勢いよく宙へと放り出され、落下した。
このまま奈落の底へと落ちて行くのか―――心の中でドラがそう思っていると、不意に飛行機が飛ぶときに発するジェット音が聞こえ、耳を疑う。
「え!!」
「お前ら――――――!!!」
とっくに避難したはずの昇流がミスターGから託されたブラックバードを操縦し、ドラたちの救助へ戻ってきた。
これによって、ドラたち全員は救出され―――難を逃れた。
◇
午後2時14分
ロサンゼルス 星の智慧派教団本部痕
すべての戦いに終止符が打たれた。地面の上に寝転ぶドラたちは傷だらけになりながら、晴れ晴れとする天を仰ぎ見る。
「・・・・・・生きてる、らしいな」
幸吉郎がつぶやくと、ぐう~っと、駱太郎の腹が鳴り生きている事を実感する。
「腹・・・・・・減ってるしな」
「盛者必衰の
「だけど、そのためにキャリーサが・・・・・・」
「なんだかほろ苦いです・・・・・・隠弩羅さんの事も含めて」
「・・・・・・・・・」
此度の戦いで失ったものは大きかった。キャリーサは邪神とともに冥府へと堕ちた。そして、隠弩羅も・・・・・・
すると、ドラはゆっくりと起き上がり、動かぬと機械と化した隠弩羅へ近づいた。
周りがその光景を直視できない中、ドラは無表情に隠弩羅の股間辺りを見つめ、持っていた刀の鞘の先で叩きつけてみた。
「ふにゃああああああああああああああ!!!」
途端、絶叫とともに隠弩羅が覚醒。幸吉郎たちは揃いも揃ろって目を見開き驚愕する。
「ててててててて!!!なんちゅう禁忌じゃ―――!!!」
「えええええ!!!生きてんのかよ!?」
「心配して損した!!」
そんな周りからの声を聞き、ドラは堪えていた感情を爆発させ、笑い狂った。
「でーへへへへへへ!!!君たちもまだまだ甘ちゃんだね。魔猫の弟、隠弩羅がこの程度の理不尽で死んでたまるか。どうせ殺されるなら、オイラが殺さないといけないよな。それがお前とオイラとの縁・・・・・・絆だとしたらね」
何とも歪んだ繋がりではあるが、隠弩羅も満更悪くないと言わんばかりの表情だった。ゆっくりと立ち上がった隠弩羅は、ドラに握手を求める。
「へっ。誰からも殺されるのは御免こうむるが、もしも殺していいなら、あんたに限るぜ。もっとも、殺すなら痛みがない方法で頼む」
という義弟の懇願に、ドラは不敵な笑みを浮かべ握手を交わす。
「徹底的に嬲り殺してやるよ」
常人には理解しがたい奇妙な魔猫兄弟の絆。その絆の形に呆れつつも、二人はこれでいいのかもしないと、幸吉郎たちは思った。
すると、寝ていた壌が立ち上がり、傷の癒えぬまま歩き出す。
「おい壌・・・」
「どちらへ?」
「馴れ合うのは趣味じゃない」
彼はとことん必要以上の馴れ合いを拒む姿勢を貫いた。
壌はドラたちの前から姿を消した。ドラは唯我独尊でありながら自分の信念を貫く彼を温かく見送ると、幸吉郎たちに帰りを促す。
「さ、こっちも帰ろう。有給も使い切っちゃったし、また仕事しないと明日の食い扶持がもたないからね」
「あ~あ・・・・・・世界の危機を救っても結局仕事しないといけないのか」
愚痴をこぼしながらも、彼は邪神も邪教集団もいない、平和な日本へ向けて帰路を取った。
星の智慧派教団篇
完
参照・参考文献
編著:東雅夫 『ヴィジュアル版クトゥルー神話FILE』 (学研パブリッシング・2011)
ドラさん語録~サムライ・ドラが残した語録集~
その33:上を目指せないということはこの上も無く窮屈だ。
人間誰しも目標と言うものがひとつでもあればいい。目標があるとモチベーションが上がる。不完全な人間は進化し続けることができるが、神とは即ち進化の段階を終えた絶対的な存在・・・ドラの言葉はそんな皮肉が込められている。(第29話)
その34: やたらに家族とか絆とか、含蓄のある言葉を使うのはよくないな・・・・・・逆に陳腐なものに思えてきちゃって仕方ない
価値観の違いにもよるけど、ドラが言う事も一理ある。震災の時に見られた事だが、「絆」って言葉を陳腐に使うと横並びのの強要にも感じてしまう。(第29話)
登場人物
キャリーサ・フランチャスコ
声:石川由依
輝くトラペゾヘドロンの欠片を探しクロアチアを旅していたドラ達が出会った謎の女性。名前以外の事を何も覚えておらず、星の智慧派教団との戦いに巻き込まれ、成り行きでドラ達に同行する。旅の途中でカーウィンに連れ去られてしまい、彼の野望のために利用される。
その正体は、かつて倒されたナイアルラトホテップの邪悪なる意志が、封印される寸前に残した無垢なる意志。正義も悪も関係ない純粋な力のみの存在で、世界を滅ぼす事も可能。一度は輝くトラペゾヘドロンの力でナイアルラトホテップとして覚醒、破壊の限りを尽くす。しかしドラ達の決死の奮闘で邪神の体から解放され、最後はナイアルラトホテップを包み込み、邪神を慈しむように冥府へと落ちた。
ジョウゼフ・カーウィン
声:安元洋貴
身長179cm 体重74kg血液型・生年月日・出身不明
一人称は「私」。星の智慧派教団に与する邪悪な妖術師。ゴシックファッションに身を包む。ヘルメスからは「カーウィン殿」、ドラからは「変態妖術師」と呼ばれている。
かつて古代エジプトでネフレン王を背後から操り、魔導具「輝くトラペゾヘドロン」の力を使って邪神ナイアルラトホテップと手を組み世界を混沌と化そうと企てた。その後、1662年にセイレム村に生まれた男の子に転生し『ジョウゼフ・カーウィン』として以降、何千年と生き続けたてきた。
冷静沈着・冷徹な性格で目的のためならば何人でも容赦しない(隠弩羅からは「なんつー凍えきった魂!底なしの闇!本当に人間か!?」と言われた)。妖術師としての力は本物で、体を液状化させたり、あらゆる事象を魔術で歪めるだけでなく、エストック状の剣を使った近接戦闘も得意としている。また、地図に片手を近づけることで目標の人物の行動を完全に予測することができるほか、相手の頭の中を読んだりことも可能。
真の狙いは、輝くトラペゾヘドロンとナイアルラトホテップの邪悪なる意志から生まれた「無垢なる意志」を手に入れて、その力で世界を手中に収めようと企んだが、復活した直後のナイアルラトホテップの黒い手によって命を奪われるという呆気ない最期を遂げた。その際、Mに目覚め、黒い手に足掻きながら「ああ、でもそこは!!最後に食べて!!!」と口走る。
ヘルメス
声:金尾哲夫
身長172cm 体重69kg B型8月3日生まれ アメリカ出身
邪教集団「星の智慧派教団」を束ねる教祖。カーウィンとイグネスら幹部たちからは「教祖(様)」と呼ばれている。
一人称は「私/わたくし」。莫大な財力に物を言わせ世界中に支部を持っている。日本で活動する際は札幌すすきのにある占い館の主人であり、語尾に「はい」がつく喋り方や、「びゃーははは!!!」という独特な笑い方をする。
一見飄々としているように思えるが、本性は非常に打算的で腹黒く、「利するものは徹底的に利する」をモットーとしている。ゆえに部下の死も野望を叶えるための必要悪であると考えている。常に自分のペースを崩さず、周囲を思惑通りに動かす手腕に長けているが、コスプレパブのトイレ(便座の後ろでは上半裸の中年男性を模した天使像が両手を広げている)を借りた際には絶叫して隙を生んでしまって気絶しそうになっている。
実はカーウィンをも使い捨ての駒としか見ておらず、ナイアルラトホテップ復活の暁にはその力を独り占めするつもりであった(涯忌達との会話にも自分を獲物が届くのを待つ王侯貴族と称している)。心に「鍵をかける」ことができ、カーウィンの思考を完全にかき利用していた。物語後半でカーウィンに用済みを言い渡し魔術で心臓を貫き殺害を図り、輝くトラペゾヘドロンの欠片を渡すよう要求するが駆けつけたドラの介入で失敗、さらには一瞬の隙を見せた事でカーウィンに体を乗っ取られるという最期を迎えた。
名前の由来は、ギリシア神話に登場するオリュンポス十二神の一人「ヘルメス(Hermes)」。
イグネス
声:中村悠一
身長179cm 体重74kg A型 1月9日生まれ イギリス出身
邪教集団「星の智慧派教団」所属の魔術師。教団の教祖であるヘルメスの下で第一補佐官を務める。四大元素「火」を司る。
“炎”のイグネス。一人称は「私」。普段は深く被ったフードで見えないが、髪は赤いメッシュを入れており「灰焼きにする」が口癖。ヘルメスからの信頼も厚く多くの神父たちを従えている。隠弩羅から奪われた輝くトラペゾヘドロンの欠片を求めて執拗にドラ達を追跡する。
使い魔「炎の精(ファイアーヴァンパイア)」の力を使役し、炎に関する魔術を得意とする。接近戦では首からぶら下げた十字架を巨大化させ炎を灯し剣の様に扱う。
同じ魔術師でありながらアダマ達の事は格下の様に見ており、涯忌とは犬猿の仲。硬い性格に見えるが、クロアチアでは神父達とトラックの荷台でダンスを踊り「こんな風にやってみろ!!」と冗談を言うなどひょうきんな面も見受けられる。
物語の中盤突如現れた壌と戦う。当初は優勢に見えたが最終的には壌の放ったグンタイアリの群れに圧倒され、大量のアリが口から侵入しそれによって窒息するという惨い最期を迎えた。
名前の由来、ラテン語で炎を意味する「イグニス(Ignis)」。モデルは、『とある魔術の禁書目録』に登場するステイル=マグヌス。
魔術一覧
炎の精「火悪戯(ひあそび)」
十字の先端から放たれた炎から意思を持った妖精を生みだし、それぞれが手持ちの杖から火球を飛ばす。
炎の精「炎城(えんじょう)」
炎の壁を発生させ、対象を囲む。
炎の精「紅の雨(くれないのあめ)」
上空に打ち上げた炎を滞留させた後、炎を雨粒の如く頭上から降らせる。普通の雨と違って強い熱を帯びており受け流す事が困難。
炎の精「炎膜(えんまく)」
自分の体に薄い炎の膜を張って防御力を高める。作中では「紅の雨」による自分への被害を防ぐのに使用。
点火陣(てんかじん)
炎を地面に送り込み、標的を追尾しながら爆炎を上げる。
発炎刀(はつえんとう)
十字架に纏った炎で敵を殴りつけると同時に火傷を負わせる。殺傷力が極めて高い。
涯忌(がいき)
声:井上和彦
身長181cm 体重77kg A型 5月21日生まれ 中国出身
邪教集団「星の智慧派教団」所属の魔術師。四大元素「風」を司る。
“風”の涯忌。一人称は「俺」。イグネス同様に髪は緑色のメッシュを入れている。教団の中ではイグネスに次ぐ立場であり、実はイグネスの後釜になることを狙っている。瞳孔が開きやすい体質で、太陽の光を極端に嫌っている。そのため光攻撃にも弱い。
使い魔「アガシオン」の力を使役し、戦闘ではイチョウ型の握り懐剣を利用した風の術式を用い、対人戦では手持ちの剣で敵を嬲り殺す。
ドラの自宅を襲撃した時からドラとは何かと因縁があり、クロアチアではスルジ山で交戦するもドラの力に圧倒され敗北する。その後、彼との再戦を望んでいたが叶わず、教団本部では幸吉郎と激闘を繰り広げる。非常にプライドが高く、魔術師でない一般人を見下す傾向がある。しかしながらプライドの高さを突いた幸吉郎の挑発に乗ってしまい、牙狼撃を受け止めたところに絶技・穿牙の直撃を受け、上半身を吹き飛ばされて死亡した。
名前の由来は、空気を意味する日本語の「外気」。
魔術一覧
アガシオン「凩(こがらし)」
両足より風を纏った半円形の衝撃波が放つ。太い木の幹を折る程の威力を持つ。
アガシオン「突風(とっぷう)」
触れた物すべてを切り裂く風の塊を撃ち出す。
アガシオン「局地風(きょくちかぜ)」
激しく渦を巻く旋風を発生させ、周囲の物を切り刻む。
アガシオン「ダウンバースト」
上空より下降気流を降り注ぎその圧倒的な力でもってなぎ倒す。
アガシオン「離岸風(りがんふう)」
周囲に強い風を巻き起こし、攻撃の勢いや狙いを狂わせる。
アガシオン「ガストフロント」
体を高速で回転させその勢いから生まれる強烈な風を放出する。
アダマ
声:寺島拓篤
身長190cm 体重88kg O型 10月1日生まれ オーストリア出身
邪教集団「星の智慧派教団」所属の魔術師。四大元素「土」を司る。
“土”のアダマ。一人称は「俺」。筋骨隆々とした大柄な体格で強面の風貌をしている。神父服は半袖タイプを着用。ヘルメスには頭が上がらず、因縁のあるイグネスやカーウィンとは激しく対立している。体当たりで壁を破壊するほどの力を持っている。徹底した菜食主義者であり、本部での調理場で戦ってた最中、駱太郎に食べるよう薦められた鳥の丸焼きを弔っている。
使い魔「カリカンジャロス」の加護の下、戦闘の際には後述のゴーレムを生成して操る他、土でできたパンチグローブや装甲を装備し、怪力を活かした戦術を得意とする。
クロアチアで一度駱太郎と交戦するが、決着は付けられなかった。その後、教団本部で再び駱太郎と対峙する。自らをゴーレム化させて有利に持ち込んだが、最後は黒御簾万砕拳を発動させた駱太郎の壊条拳によって跡形もなく砕け散った。
名前の由来は、ヘブライ語で土を意味する言葉が由来となった『アダムとイブ』の「アダム(Adam)」に母音「a」を加えたもの。
魔術一覧
ゴーレム生成
空気に文字を描くことが出来る特殊な羽ペンでその場にある土石や金属から身長約4mの巨人を形成・使役する。さらに、文字を直接取り込むことで自らをゴーレムの姿にする事が可能。
ローム
体の表面に薄い泥土を纏うことで防御力を高める。
混凝土(コンクリート)
土の精カリカンジャロスにより強化した拳で打ち抜く超重量パンチ。
土壌圧穿(どじょうおせん)
土属性対人魔術。八体の泥人形を生みだし、それによる「混凝土」の連打を与える。
ゴーレムボール
ゴーレムと化した自らの体を球形にし高速回転して相手に突っ込む。
シャテル
声:國立幸
身長169cm 体重65kg AB型 3月30日生まれ イタリア出身
邪教集団「星の智慧派教団」所属の魔術師。四大元素「水」を司る。
“水”のアダマ。一人称は「僕」。一見あどけなさの残る少年。教団の魔術師の中では最年少であり、我の強いイグネス達と違い無感情で無機質であり大人しい性格。一方で慇懃無礼な毒舌家でもあり、アダマ達を苛立たせている。受け答えも酷く淡白としており周りにギャップを与えている。性格上の問題で人を殺すことにも一切の呵責は無い。そのため、昇流からは「一番性質の悪いタイプ」と言われる。
使い魔「ケルピー」の加護の下、水を自在に操る事ができる。さらに自身の体が普通の人間よりも水分量が多く、体を液状化させることで銃弾によるダメージを無効化し、爆発による影響を受けない。
クロアチアではドラと龍樹の前に現れ奇襲を仕掛けるも、二人を取り逃がす。その後、教団本部では再び龍樹と昇流と交戦。水流魔術を使って有利な状況を作り出すが、昇流が放った液体窒素入りの特殊弾と龍樹の相続無常の効果によって動きを封じられ、過冷却状態にされてしまう。それまで表立った感情を表さなかったシャテルだが、最後は意味深な笑みを浮かべながら凍結した体を崩壊させていった。
名前の由来は、万物の根源を水と考えた、古代ギリシアの哲学者「タレス(Thales)」のアナグラム。
魔術一覧
一衣帯水(いちいたいすい)
水の槍を作り出して敵を攻撃する。威力はシャテルの任意で自由に決めることが出来る。
行雲流水(こううんりゅうすい)
魔術による特大の水泡弾を作り出す。
治山治水(ちさんちすい)
津波を発生させ、障害物を洗い流す。
水風船(みずふうせん)
無数の水泡を飛ばし、泡が破裂すると同時に衝撃波を発生させる。
水清無魚(すいせいむぎょ)
水の龍を生み出す。高い攻撃力を持つが、法力を帯びた龍樹の数珠の力には屈してしまう。
万水千山(まんすいせんざん)
シャテルの最大魔力で作り出す大瀑布。発動の直前に昇流が銃弾を発射し過冷却を促したため正確な威力は不明。
ブランシュ
声:平田広明
邪教集団「星の智慧派教団」所属の魔術師。
自称”白魔術師”。純白の法衣服に身を包んだ男。無類の女好きであり、白で統一した自分の部屋には魔術によって作り出した美女を何人もはべらせ放蕩の限りを尽くしている。
彼の魔術は有機物から無機物に至るものに至るまで”滅び”をもたらす力であり、その力を秘めた波動を放つことで生命力を奪い石化、白色化させる。魔術に加え世界中のあらゆる格闘技を身に付けている。
教団本部では写ノ神と隠弩羅と戦い、滅びの波動によって写ノ神を石化させ、その後隠弩羅を全く寄せ付けないほどの実力を見せつける。しかし、何らかの力に覚せいし滅びの力を受け付けなくなった写ノ神には敵わず、最後は虹色の波動をその身に受け消滅した。
魔術一覧
滅びの波動
白い光線を波動にして飛ばす。触れたものはそこに命があるとみなして等しく生命力を奪い、瞬時に白色に変化させ石や粉にする。
滅びの針
滅びの波動を針状にして無数に飛ばす。
キザイア・メイスン
声:堀絢子
邪教集団「星の智慧派教団」所属の魔術師で魔女。
肩まで伸びた白髪に頬がこけた顔を持つ。カーウィン同様に何千年という長い月日を生きながらえて来た17世紀の魔女であり、性格は残忍非道。「真実の中に愛は無い」と豪語するほど愛に飢えており、打算的で自分の得にならない事は真っ向から否定する。茜と違って使い魔の命をも道具のひとつしか考えておらず、役に立たないとその都度鞭で叩くなど虐待に近い行動をとる。趣味は使い魔であるジェンキンスの世話と、人間の血肉から作った地獄釜と呼ばれる料理。
教団本部では茜と交戦。ジェンキンスの圧倒的な力で有利な状況に追い込んだかに見えたが、畜生扇を使った茜の特殊な戦術によって次第に追い込まれ、使い魔のジェンキンスを封じられる。この事に激怒し茜に向かって行ったが、その行動を逆に利用され畜生扇に命を盗まれ死に対する恐怖に絶叫しながら灰と化した。
使い魔・魔術一覧
ブラウン・ジェンキンス
キザイアの使い魔。彼女はこのジェンキンスを操り、敵と戦う。普段はキザイアの肩に乗っている大型の鼠のような生き物だが、発動と同時に獰猛で巨大な姿に変化する。
アルコーン
ジェンキンスの掌より、紅色に染まった破壊光線を放つ。
アントン・ラヴェイ
声:日野聡
邪教集団「星の智慧派教団」に与するイギリス「悪魔教会」所属の魔術師。
カーウィンやキザイアとは違うが、アメリカ合衆国における同教会の司祭長を務め現代まで生き延びる長寿。その容姿は老齢を感じさせない若々しいもので、見た目は20代後半。悪魔と言う言葉を忌み嫌い、悪魔とみなした者は誰であっても容赦はしないという信条を持っている。ヘルメスの予言によって「悪魔」が現れることを予見され、悪魔を自らの手で葬る事を条件に彼の仲間になった。そして、教団本部に現れた悪魔としてのドラと対峙する。
自分や他人の影を自在に操る魔術を得意とし、カーウィン程ではないが空間を歪ませることも可能。その能力でドラと仲間を分断し一対一の交戦に持ち込んだ。当初は影や空間を歪ませる力で有利に立つが、一瞬の隙を突いてドラに右目を射抜かれ、形勢が逆転。ドラに斬り倒されると、最後は全身に火をつけられ、焼き打ちにされながらもドラへの憎悪を増長させ、その復讐を誓った。
魔術一覧
影牢(かげろう)
影で作った牢で敵を閉じ込める。ドラはこれを刀で簡単に破壊していたことから、強度はそれほど高くないと思われる。
影兵(かげへい)
影から生み出す無数の兵隊。
ミスターG
声:千葉繁
隠弩羅の縁者である老ガンマンで、事あるごとに拳銃やショットガンを乱射する発砲狂。養豚場を併設したバーを経営するのみならず、武器や乗り物(SR-71)を調達したり、闇医師としての能力もあったりと、手際が良く、更に店の地下には世界最小の弾道ミサイルを完備している。智慧派教団の神父に撃たれた写ノ神の銃創から弾丸の摘出を行い、更にはドラ達をかくまり手助けした。
次回予告
ド「今度はオイラと麻薬捜査官のシドが初めて出会ったときの物語。謎の入手経路で密輸される覚せい剤を追い求め、オイラたちはタッグを組んだ」
シ「次回、『サムライ・ドラXX 麻薬取締捜査官シド・レーガン』。別に好きでタッグを組んだわけじゃないんだけど・・・」
ド「なんか言ったか?」
シ「いいえ、何も言ってないけど♪」