SUSANOWO麻雀紀行   作:Soul Pride

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割とグダグダです。勢いとその場のテンションと睡魔と格闘しながら書いているもので、どっか不備があるかもしれません。


29

 夜の対局が終わり、また日は昇る。

 東征大合同練習、二日目の日曜日。

 昨日と同じように、早朝からの練習に参加し、現在は食堂で朝食を摂っている。

 日曜日だというのに朝から食事を作ってくれたおばちゃんたちに感謝しながら箸を動かす。残す者など、誰もいない。いてはいけない。

 本日のメニューは、山盛りの五穀米と小松菜のおひたしに豆腐の味噌汁、ちりめんじゃこ入りの納豆がついたカロリーが抑えめの内容である。もっとも、量が量であるため、食べ盛りの高校生男子を満足させられるくらいはある。

 昨日と異なる点を挙げるとすれば、それは女子の三校の生徒が同じく早朝練習に参加して、彼らと肩を並べて同じ内容のメニューを食べているということだろう。

 このメニュー構成は女子側への配慮であるため、いつも食べているものに比べれば少々物足りなくも感じてしまうため、おかわりを頼む剛毅な者もいつもより多くいる。

 彼女たちのものは標準的な量ではあるが、男子たちが食べている量を見ていると食傷気味になる。見ているだけで気分が悪くなりそうだった。

 

「そういや、京太郎(キョウ)

「なんですか、蘇芳先輩」

 

 昨日は寝坊してこれなかった蘇芳も、今日は参加している。盆に乗った皿の中は残らず完食しており、京太郎の真向かいの席に座って爪楊枝をくわえていた。

 低血圧気味の朝が弱い彼であるが、今日は日もろくに昇っていない時間から命にホテルに踏み込まれ、起こされてここまで来た。

 

「お前、昨日の晩、女の子とヤッたんだろ」

「ブッ!?」

 

 朝食を平らげて、しめに飲もうとした緑茶を噴き出しそうになる。

 ヤルと言われれば、京太郎も高校生なわけで意味はわかる。男と女がヤルとなればナニしかない。

 何朝から下ネタをぶっこんでいるのかこのテクノボーはと、京太郎は蘇芳を睨むが逆に睨み返されて思わず逸らす。ガンの付け合いに本物のチンピラを相手に勝てるなど思ってはいけないと学ぶ。

 

「……誰が言ったんすか、ソレ」

信一(シン)

 

 京太郎の隣に座る信一も朝食を食べ終わり、我関せずとシレっと緑茶を飲んでいた。

 何ホラを吹いているんだと今度は信一を睨むが、本職の方すら怯えそうな睨みを返され、また目を逸らす。人間とは、学習しない生き物だと身に染みる。

 

「何嘘言ってるんですか!事情知ってるでしょ!?」

「連想してみろ。清一色(ホテル)対々和(オトコとオンナ)三暗刻(よなか)ドラ3(あいびき)……普通に役満(ヤッた)だろ。言っておくが、何をやったかどうかなんて俺は一切明言していない。女の子と逢引していたってくらいしか流してねえぞ」

 

 言い返せない。事実なのだから。状況を言ってしまえば、そう勘違いする。京太郎もそう考えてしまう。

 言い返せない。そういう風に誤解させることをやった自分が悪いのだと納得する。

 言い返せない──が、何も言いふらすことはないだろうと目線で抗議する。黙っているという選択肢もあったはずだ。

 

「ちなみに、この情報は拡散済みでございます。東征の部員らはもちろん、女子三校にも耳は届いてるんじゃね?」

「おーい!?」

 

 なんたる悪逆、なんたる非道。これが親友と認めた者へとする仕打ちなのか。

 ああ、意識してしまうと周りが自分のことで噂しているように聞こえる。男同士ならまだ笑って許せたかもしれない。だがこの場には全国区の名門校女子が集っている。須賀京太郎は合同練習だというのに女を食ってしまう最低の男だと、知られてしまった。

 事実無根。だというのに、流布された情報。流せるものなら血涙を流している。

 

「……京太郎」

「は、治也先輩は嘘だって、わかってくれますよね!」

 

 信一の反対側の隣で、治也は慈しみに満ちた目線で京太郎を見る。サングラスで目は見えないが。

 朝食の量だけでは足りないと、食後の甘味……こし餡の串団子を食べている。皿に乗った串の本数は二十本はゆうに超えている。

 一年年上なだけの精神年齢中学生並みの彼らでは話にならない。ここはやはり、プロであり社会に触れた大人でなければと、京太郎は期待を寄せた。

 

「避妊はちゃんとしろよ」

「一瞬でもアナタを信じた俺が馬鹿だった……!」

 

 ああそうだったな、この人は人を弄るのが大好きでしたねと、思い出させられる。嘘だとわかっていても、それが弄る材料であるなら利用するに決まっている。

 信一と蘇芳に比べれば大人かと思えば、それほど大差ないと気付かされる。そうでなければこの問題児どもはつるむものか。

 孤立無援。救援なし。須賀京太郎はここで社会的に死ぬ……!

 

「さすが、彼女持ちの言葉は重いな」

「半端ないっす、治也(ハル)さん」

「うえっ!?」

 

 突然明かされた衝撃の事実。

 彼女持ち──誰が?治也が。

 

「うそぉ……」

「どういう目で見ていたのか、手に取るようにわかるぞ京太郎。この老け顔に何で彼女かと思ったか」

「いやぁ、だって、ねぇ……」

 

 納得できない、というより信じられない。

 この野朗共は方向性こそ違えども我が強過ぎる。治也とて例外ではなく、その強烈な個性は、とても彼女が持てるとは思えない。

 その彼女とやらは、一体どんな聖人だというのか激しく気になる。

 

「……彼女云々モテる云々を言うなら、お前はどうなんだ京太郎」

 

 カウンターとばかりに、京太郎に話を振る治也。心なしか、色黒の顔がほんの少しだけ赤い。彼女の話となると、さすがの彼でも照れるらしい。

 

「俺っすか?モテたら良かったんですけどねー、マジで」

「お前、清澄じゃハーレムだろうが。誰狙ってんだ?」

「マジか。嫉妬で殺せるぞオイ」

「お前も似たようなもんじゃねえか蘇芳。男子部員全員追い出したクセによ」

「勝手に出てったんだ。追い出したわけじゃない」

「で、京太郎。どうなんだ」

 

 興味津々の彼ら。治也ですら聞き耳を立てている。嘘は決して通用しない。

 周りを見渡せば、伝言ゲーム形式で情報が広がっていっている。下手なことを漏らしてしまえばろくでも無い内容が広がっていくだろう。

 ほぼ男子高と同じ環境にある東征大学付属震洋高校スポーツ学科麻雀部。女子との出逢いなど、ほぼ皆無。青春の殆どを麻雀に費やす彼らでも、気になって仕方ないのだ。

 色恋は女子の専売特許というわけではない。男子も十分に興味がある。もっとも、どうしても下心が先行してしまうのはいただけないものだが。

 

「べ、別に誰を狙ってるとかは……」

「染谷ちゃん」

「無いな、次」

「うえぇっ!?」

 

 能海治也は心を読める。重ねて言うが、心が読める。

 嘘を暴くなど朝飯前で、好きな人を当てるなど十八番の作業だ。

 そして清澄生である信一は麻雀部の面々の顔と名前を知っている。聞き出すための知識を持っているのだ。

 それが組み合わされば、どうなるか……。

 

「竹井ちゃん」

「色気はあるが気にはなってないか。次」

「え、ええー、何なんですかこれ……」

「タコスチビ」

「論外」

 

 ──人力オンリーの嘘発見器の完成である。

 信一が名前を挙げれば、反射的に京太郎がその人物の名前の顔が浮かび、どう思っているのかを治也が読み取る。

 精度高し、ほぼ外さない超高性能。二人の天才が組み合わさった時、明かせない心の中などあり得ない。

 まずいと判断した京太郎は、行動は早かった。

 本気で麻雀をやるときのように、何も読ませない。心を深淵の底へと置くように、暗黒の霧の中へと紛れ込ませる。

 今の京太郎の居る場所は命の一歩後ろ。完全とはいかなくとも、治也を相手に心を読みにくくすることくらいは出来る。

 

「……チッ、隠れた。心を隠すの上手くなったな、京太郎」

 

 心を読むありとあらゆる要素……心音、脈拍、呼吸、体温などなどエトセトラ──それらが途端に安定し、揺るがなくなった。

 弘世命の自然体。機械の如く、心を持たない麻雀マシーンへと化す。その領域へと、京太郎は立つ。

 こうなってしまえば、治也も心を読めない。

 最強のポーカーフェイス。スムーズに移行できるようになった京太郎を、彼らは恐ろしく思う。

 読めなくはないが、ここでムキになるほど熱くなれない。

 ちょっとしたイタズラだ。冗談もここまでにしようと、治也も信一もこれ以上は止めた。

 

「あっぶねー。プライバシーもクソもないじゃないですか……」

 

 恐ろしいにも程がある。治也の前では秘密やプライバシーなど幻想に過ぎない。

 心の中という金庫を楽々開錠してしまう彼は、心を閉ざさない限りその内を読み取ってしまう。

 麻雀だけでなく、こうして日常生活にも応用が利く特技。いや、特技というより超能力そのものと言ってしまっても過言ではない力だ。

 

「わりーな、悪乗りが過ぎた」

「本当ですよ、まったく。俺だって怒るときは怒るんですから」

 

 信一と治也の悪乗りに少し怒る。誰にだって、踏み込まれたくない一線というものがあるのだ。

 それは親友である彼らであっても同じだ。

 

「京太郎、あっち」

「はい?」

 

 治也が指差した方向に京太郎は向いた。

 その方向には、白糸台の女子たちが……さらに言うのなら、大星淡が京太郎の方を見ていた。

 京太郎と目が合ったと気付いた彼女は、慌てて目を逸らした。

 

「かなり、脈ありだ。喜べ初心な色男(ロメオ)、ジュリエットを一人落としたぞ」

熱視線(レーザービーム)でお前の背中が焼け焦げるくらいだ。半端ねえっす、京太郎さん」

 

 囃し立てる治也と信一。この二人には、淡が京太郎に小さくない好意を抱いていることを見破った。

 昨日の練習の段階では、興味以上のものはなかった。知らない麻雀を知りたい、京太郎への関心はそれだけであった。

 だが、今は昨日のモノとは明らかに違う。あの目は違う。視線の熱の入り方が全然違うものであった。

 大星淡は、須賀京太郎に惚れている。彼女自身が自覚しているかは別にして、これはもう確定と言っていいほどだ。

 

「いやいや、そんなことあり得ませんって」

 

 ないない、と京太郎は否定した。

 淡とまともに話したのはあの晩だけ。たった一局打っただけ。そんな短時間で、それだけで人というものが惚れるわけがない。

 しかも京太郎は彼女に好印象を残すようなことをしていないと思っている。むしろ、悪印象が強いのではないかと思うくらいだ。

 

「……理屈じゃ、ないんだよ。こればっかりはな」

 

 恋を知る者として。愛する者を持つ者として。重々しく、感慨深く、治也は呟いた。

 その呟きは誰にも聞こえはしなかったが……治也がとても格好よく見えたように京太郎はそう映った。

 強敵と本気で麻雀を打ったり、悪友や親友とバカをやるだけではない、彼の姿。

 まるで浬のような大人が放つような大人のフェロモン……男の色気が、治也から漂った気がした。

 

「けど、なんか俺ばっかり弄られて癪だなー」

「気になるか?蘇芳と信一の女性遍歴」

 

 食堂のどこかから、ガタリと椅子から立ち上がって反応した音が鳴る。

 具体的には、姫松と千里山の方から。

 

「おう、コラ。さらっと自分を除外すんな彼女持ち」

「つか俺は彼女はいないし、いたことも無いぞ治也(ハル)

「どうだ、京太郎。俺のことを喋っても惚気にしかならんぞ。つまらんだろう、それは」

「自分のことを喋りたがらない本音は?」

「恥ずかしいからだ」

 

 恥ずかしいからと理由を明かすことの方が恥ずかしいのではないかと京太郎は思うのだが。表情に変化の乏しい治也は、真顔でさらりと正直に話す。

 いや、顔色が赤い。恥ずかしいというのは本当らしい。

 

「じゃ、信一先輩から」

「ハッ、悲しいことながら俺も彼女は居たことない。自慢にもならんが」

 

 無いモノをどう明かせと信一は胸を張る。自分に恥ずべきものはないと、堂々とした構えだ。

 意外だと、京太郎は思う。危ないことをしている不良だから、女遊びの一つや二つ、彼女の二人や三人はいたのではないかと思っていたからだ。

 しかし、治也は小さく口元を釣り上げる。

 

「──コイツ、地元に許嫁を侍らせてる」

 

 治也の明かした情報に、信一は噴き出した。

 ……その反応は図星、つまりは事実だということなのだろう。

 

「おま、テメェ治也!どっから……」

 

 否定せず、情報の出所を問う信一。ああ、本当に地元に許嫁がいるのだろう。

 許婚。許嫁。いいなずけ。将来結婚をすると決めた婚約のようなもの。意味は京太郎も知っている。

 つまりは、将来を誓った相手が信一にはいる。地元に。

 

「マジで!?」

「え、俺でも知らねーんだけど。情報元(ソース)どこだよ」

 

 驚く京太郎と蘇芳。付き合いが一番長い蘇芳でさえ、そんなことは知らなかった。

 信一の地元は長野ではなく、鹿児島。中学時代はそこの代表としてインターミドルに出場していた。

 まさか、そこに彼の許嫁がいるなど、思いもしなかった。

 

「ちょい、ちょい待った治也。そこまでにしようぜ、なぁ」

 

 彼らしくもなく、わかりやすくうろたえている。

 信一のこんな姿、そうそう見れたものではない。それこそ、親友の彼らであっても。

 このネタこそ、信一の鬼門。徹底的にいじり倒せる話題である。

 

「詳しく」

「詳しく」

 

 気にならないわけがない。猛烈に気になってしょうがない。それこそ、練習に身が入らないくらいに。

 いつの間にか、食堂が静まり返っていた。箸を動かす音、飲み物を啜る音、話し声……その全てが消え去っている。東征大の部員はおろか、女子たちでさえも耳を澄ませてその先の情報を待っている。

 打ち合わせもなく、完全に同調するこの連帯感。信一以外の全員が、一つになっているという実感がある。

 ちょっとした話し声でさえ、この食堂にいる皆の耳に届きそうなほどに。

 静寂が支配する、この空間。重苦しく、誰もが息を呑んでいる。

 信一はいつになく、追い詰められてる。冷や汗をかき、苦々しい表情を浮かべて……。

 

「巡業でな。鹿児島に来る機会があったからこいつの地元に来たのだが……偶然、こいつの親類に会ってな。その時に教えてもらった」

「ぜってー偶然じゃねえだろうが」

 

 情報元を治也は明かす。彼の親戚から直接聞いたのなら、確かな情報筋であろう。

 京太郎に向けた本職顔負けのガンを治也に向けるが、まるで堪えた様子はない。柳のように涼しく受け流している。

 

「どんな人なんですか、その許嫁の人って!」

「可愛い子だったよ、そこの馬鹿にはもったいないくらいは。俺の(モノ)には及ばないが」

「名前は?」

「そうだなぁ……」

 

 チラリと、治也は信一の方に視線を向けた。

 目は見えないが……見えないなりに、彼のことが良く視えた。

 これ以上やったら泣いてしまう。泣かせるのもまた一興であるが、泣いたら抑え(●●)がききそうにない。

 泣いた上で怒らせたら……タガが外れて大惨事になりかねない。

 下手しなくとも……全戦力が解放される。

 

「……とまあ、なんだ。これ以上はかわいそうだからな」

 

 そこかしこから『えー』と、落胆の声が上がる。

 重要なのはここからじゃないのかと惜しむ声。

 明かしたいのは山々であるが、ここが大災害の中心地にでもなったら洒落にならない。ただでさえ静岡は地震が多い場所であるというのに。

 

「じゃあ今度は蘇芳先輩をお願いします」

 

 タイプの違う、信一や治也とは違って才能の疎い京太郎もまた、信一から嫌な予感が走る。この話題は、触れてはいけないモノだ。

 

治也(ハル)京太郎(キョウ)、俺はいないぞマジで。こいつみたいに許嫁とか居た覚えは一切ない」

 

 堂々と蘇芳は胸を張る。

 花より団子。色恋より麻雀。恋愛ロマンスよりアクション映画が大好きな性格だ。四人の中で最も精神年齢が低い。

 恋だの愛だの、良くわからない。可愛いものは好きだ。エロは嫌いではないが、所詮はエロ本やAVの知識しかない。実際に、現実の女性に積極的に触れたいとは思わないのだ。

 

「幼馴染の姉妹」

洋榎(ヒロ)絹恵(キヌ)?馴染みも深いし可愛いし綺麗だとは思うけどよ」

「千里山の病弱っ子」

「怜?そりゃ、保護欲は湧くが」

「自分のモノにしたいとは?」

「思わんぞ」

 

 ゴン、と頭をテーブルに頭をぶつけるような音が。具体的には姫松と千里山のところから。

 ショックで崩れ落ちて姉妹で慰め合ったり、親友に宥められる光景を京太郎は見た。

 こうして振られるのは、初めてではない。好意をぶつけ、そして振られたことなど、幾度も幾度もあった。

 しかし、蘇芳に女として見られていない。恋愛対象どころか女として見られていないことに、深く深く傷ついている。

 

「「「蘇芳のバカァー!!」」」

 

 そう言って、彼女たちは食堂から出てっていく。

 何で彼女たちが怒っているのか、それすらも蘇芳はわかっていない。

 

「見たか、京太郎。何て鬼畜野郎なんだ」

「ええ。残酷過ぎますって本当……何て鬼畜野郎なんだ」

 

 復活を果たした信一は、ここぞとばかりに蘇芳を攻めたてる。

 それに京太郎も同調する。いくらなんでも、それはないだろうと非難の目で彼を見ている。

 

「鬼畜野郎言うなお前ら。俺のどこが鬼畜だっていうんだ」

 

 素直に実直に、自分の内のことを言っただけ。蘇芳の中には、一片の悪気も存在しなかった。……だからこそ非常に性質が悪い。

 何もわからず。そして何も知らない。友情にこそ厚い蘇芳ではあるが、異性からの愛には非常に鈍い。

 純真過ぎる心を持つ故に。童心を忘れないが故に。

 

「蘇芳。あの子たちに御免なさいを言ってきなさい」

「蘇芳先輩。そうした方がいいですよ」

「蘇芳。そうした方がお前のためだ」

 

 諭すように、彼にそう忠告する。

 余りにも子供過ぎる親友に、せめてもの出来るアドバイスだった。

 

「俺何も悪くねえぞ。何で謝んなきゃいけねぇんだ」

「「「いいから、行け」」」

 

 わからなくてもいいから、謝ってこい。そうするまで帰ってくるなとプレッシャーを放つ。

 

「………………はーい」

 

 納得はしていないようだが渋々席から立ち、彼女たちの方へと追っていく。

 

「……とまあ、このように。蘇芳はあんな感じだ」

「なんていうか、子供過ぎでしょ……。あの人たちも大変な人に惚れてるなぁ……」

「俺の知る限りは、あと五人はいたかな」

「……今度卓囲んだら飛ばしてもいいですか、蘇芳(アレ)

「…………頑張れ、京太郎」

 

 負けたくない理由が、また一つ増えた。

 そんな、朝の風景。




本編で言及されたので、SUSANOWO日和1と完全に分岐しますね。

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