【凍結中】亡霊の軌跡   作:機甲の拳を突き上げる

8 / 20
7話 始動

朝日が昇りかけの時間、ミッチェルは目を覚まし起き上がる。寝間着からトレーニング用の服に着替えると、その場で腕立て伏せを始める。元の世界からの続けているトレーニングだ

 

腕立て伏せや腹筋とブートキャンプでこなしたトレーニングをしていく。戦闘がある以上、体を鍛えることを疎かにすることなど論外であり、慢心は自分だけでなく仲間をも死にもたらす要因であると考えていた

 

一通りのトレーニングを終えると、太陽の光がミッチェルの部屋を照らし、時間を確認しシャワーを浴びた

 

汗を流して、昨日買ったカーゴパンツにオリーブ色のポロシャツの上に同色のジャケットを羽織る。戦闘準備を整えて、買った拳銃を簡易点検し、問題がないのを確認してホルスターに入れてキャップとサングラスを手に部屋を出た

 

階段を下りるとエリィとロイドが既におり、エリィは朝食の準備を進めていた。昨日の内に寮での食事、掃除、洗濯の当番を決めていた。通常の寮と違い、ここでは全てを自分たちでしないといけなかったのだ

 

「あ、おはよ……」

 

階段を下りてくる音が聞こえて、ロイドが朝の挨拶をしようとしたが、その姿に言葉が詰まる。完全な戦闘準備を整えたミッチェルの姿に昨日よりマシだが、それでも威圧的だと思っていた。サングラスを掛けているせいで余計にだ

 

「おはよう、今日はどう動くか決めているのか?」

 

サングラスを外して襟元に引っ掛けて、挨拶を返す。ロイドが内心で苦笑いしながら先にセルゲイから説明があると言う。椅子に座って今後のことについて話していると

 

「おはようございます」

 

ティオが下りてきた。二人が挨拶を返し、ミッチェルの姿に別段驚くことなく、ミッチェルの隣に座った。若干近い気もするが、気のせいである

 

三人で話していると、調理場からエリィが料理を並べるのを手伝ってくれと言う。ロイドとミッチェルが手伝い、テーブルに料理を並べていると

 

「お、美味そうだな」

 

ランディが降りてきていた並べられた料理を楽しみにしつつ

 

「お!スコット~お前いいセンスしてるじゃねぇか!」

 

ミッチェルに肩を回して服装を褒める。どうやらランディには好評のようだった。サングラスを取り、ポーズを決めるランディだが、ティオのジト目と辛辣な感想に項垂れた

 

準備を終えたエリィと欠伸をしながら下りてきたセルゲイが席に付いて、朝食を食べる。空母での食堂や戦場での食事と違い、別の温かみのある食事に心休まる気持ちになりながら味を噛みしめた

 

食事が終わり、食後のコーヒーや紅茶を飲みながらセルゲイがロイドに説明をするように言う。ロイドは持っている捜査手帳が警察官の証となり、その手帳には戦術オーブメント等のマニュアルがついて、その手帳に捜査任務や支援要請の調査記録を書き込むというのだ

 

捜査手帳の説明が終わると、角に設置された端末の説明に移る。見慣れないそれに少し興味が湧くミッチェルはティオの説明の元でロイドが操作するディスプレイを覗いていた

 

ログオンを常時している状態でいるとティオが説明し、デスクトップと思われる画面にはプログラムコードらしき文字が書かれ、その下にアイコンの表示があった。見る限りでは、ディスプレイとキーボードのみでマウスが無いのでかなり初期型のパソコンに近いものだとミッチェルは思った

 

「正規の捜査任務以外の各方面からの依頼が届けられる。市民の観光客の頼み事からクロスベル市からの協力要請など様々な依頼が考えられる。それは必ずしもやる必要はないが……放っておくと遊撃士片づけられる内容ではある」

 

セルゲイが回りくどく遊撃士に負けたくなければ全部の要請をこなして見せろと言う。それにロイドは内心で熱意に燃える。端末を操作し支援要請が既に来ており、内容は警察本部への出頭であった

 

支援要請の内容を手帳に書き込むと、使い方が感覚的に分かってきたとロイドは言う

 

「ロイド……お前は街案内でもしてやれ」

 

セルゲイに道案内しろと言われてロイドが首を傾げると

 

「これから自分たちが守る街がどういった場所なのか、一通りその目で確かめてこい」

 

それに納得した表情をしたロイドに武器商会と『オーバルストア』だけは行くよう言われる

 

「俺は大抵そこの部屋にいるが、昼寝やら雑誌を読むので忙しい。あまりアテにしないで、なるべく自分達で解決しろ」

 

そういうと、セルゲイは執務室へと入っていった。その言動にロイドは苦笑いしながらも今後の予定をどうするか決めたロイド達は行動に移る

 

最初に訪れた武器商会へと入ると、カウンターで肘をついて寝ていた店長のジロンドがロイド達の方に目線を向ける。どうも若い連中ばかりだと思い

 

「悪いが冷かしなら帰って……」

 

言いかけて、昨日で見慣れた姿の人物を見つけ

 

「おぉ、あんたか。銃のカスタムはできてるぞ。お前がいると言うことは、こいつらがセルゲイの所のか」

 

ジロンドがロイド達の姿を一人ずつ確認していくかの用にみて、捜査手帳が許可書の代わりになるといい、店内へと戻っていく。帰ってくると、その手には銃を持っていた

 

「あんたの希望通り、銃身を出来るだけ短くしてマズルブレーキも取り替えた。木製のフレームをファイバー製に代え、グリップには滑り止めの加工を施してある」

 

渡された銃をミッチェルは手に取り、触り具合や取り回しなどを確認していく。射撃場での試射をおこない、トリガー部分や命中精度を確認していくが、問題は無かった。的の頭部のみに穴が開いている光景を見て、後ろで見ていたロイド達は改めてミッチェルの技量の高さを再確認した

 

「問題ない、いい性能だ」

 

レイルが無いからスコープが取り付け不可で遠距離では不向きであるが、中距離での援護や射撃でその実力が発揮でき、銃身が短くなったことで室内での取り回しも従来の物より使いやすくなった

 

ロイド達がジロンドと武器や防具の説明を受けている最中に、昨日の内に2点スリングから自前で3点スリングに加工していたものを取り付け、長さと強度を確認していく。ジロンドの説明では、この世界には2点スリングが主流で殆どのスリングが2点であった

 

武器と防具の購入を終えたロイド達にミッチェルが気づくと、ティオの武器が新しくなっているのに気づく。セルゲイに渡された経費が1000ミラで全員分の武器と防具を購入するにはミラが足りなかった

 

武器商会から出て、まずは中央広場から周っていく。レストランや百貨店にオーバルストアを確認していく。百貨店のオーナーがエリィと知り合いであったり、オーバルストアの技術者がロイドと幼馴染であったりと、偶然が重なる出来事があった

 

中央広場から東通り向かい、パン屋でロイドが友人と再会して料理を教わり、レシピを書いていく手帳をもらったり、アパルメントで知り合いの人に挨拶して世話を焼かせてくれと頼まれたりと愉快な出来事が多くてミッチェルは苦笑いをしている

 

住宅街に入って、大きな家が並ぶ中でエリィがぎこちなかったりしたが、特に何もなく歓楽街へと移動していく

 

「……これは凄いな」

 

その光景にミッチェルは感想を漏らす。そこには劇場や高級ホテルにカジノなど、観光名所として有名であると知っていたが、その大きさと規模にラスベガスを思い浮かべていた

 

ラスベガスと言えば、レインボーに所属していたビショップの事を思い出す。メキシコへの大統領救出へ行く前にあったラスベガスでのテロ、それの鎮圧に向かっていたレインボー所属のビショップとは訓練時代からの友人であり、今は元気にやっているかと思っていると

 

「どうだ、凄いだろ!特にここのカジノでは稼がせてもらってな~今から一勝負するか?」

 

思い老けていたミッチェルにカジノを親指で指して笑みを浮かべながら行かないかと誘うランディ。それにエリィが頭を抱えながら注意する光景にミッチェルは口元に薄く笑みを浮かべ

 

「今度着いて行ってやるから、今は我慢しろ」

 

それにランディは嬉しそうにしながら、話が分かるとミッチェルに言い、ロイドにも誘う。その光景をジト目で見ていたティオは

 

「余り賭け事はよろしくないかと」

 

そう注意を促すが

 

「なに、仲間との仲を深めるにもこう言う付き合いは必要さ」

 

そう言うと、ティオは溜息を付いて程々にと言う。今はこの仲間達と共に過ごす時間を大事にしようとミッチェルは思った

 

カジノの次に劇場を見て、その大きさは傍のホテル並みであった。最高の劇団と名高い『アルカンシェル』が運営する劇場で、その地名は大陸に響き渡っているとのことだ

 

何気なしにロイド達は入口に近づくと、ドアが開き中へと入っていく。その中も豪華であり、この劇場がいかに人気かと物語っていた

 

「もう、リーシャったら。あたしは全然構わないわよ?好きなだけ泊まっていけばいいのに」

 

目の前の階段の上に金髪の美しい女性と

 

「い、いえいえっ、そんな……私の方なら大丈夫です。適当な安いアパルメントを探しますから」

 

共にいた紫髪の女性も、金髪の女性に負けないぐらい美しかった

 

「おい、あれって……イリア・プラティエじゃねぇか!?」

 

その姿にランディが驚いた声をあげる。何をそんなに驚いているのかと思っていると

 

「おや、あなた方は……」

 

カウンターにいた支配人らしき男性が近づいてきた

 

「申し訳ありません、劇団アルカンシェルの公演は夕方6時からですので……」

 

入ってきていたロイド達に今は公演時間外なのでお引き取りを願った。ロイド達も偶然入ったのですぐに謝った後に、劇場を後にした

 

「ふぅ……失敗、失敗。開いていたから、つい入っちゃったよ」

 

ロイドが誤って入ってしまったが、問題にならずに済んでホッとしていた。ティオが先ほどの女性が誰なのかを尋ねると、ランディが嬉々として語り始めると

 

「あっ、すいません」

 

先ほど話していた紫髪の女性が頭を下げて、通り抜けていく。その女性にランディやエリィが綺麗で劇団の人間ではないかと話している。だがミッチェルは別の事に気になっていた

 

「(いまの女性……軸がまったくブレていない)」

 

歩き去って行った女性が歩いているに体の中心が全くブレていなかった、これは相当鍛えているか、武術に精通した人間にしかできない芸当である。だが、彼女は劇団員であり、練習の一環で歩く練習をしているのだとミッチェルは思った

 

歓楽街を後にして裏通りへと入っていく。そこは日の光があまり入り込まないのか、日中にも関わらず薄暗く、ネオンの光が輝いていた。バーや如何わしそうな店の客引きなどがおり、それを無視しながら進んでいくと……不自然な脇道があった

 

その脇道の先には建物が建っており、黒服の男が玄関に立っていた。明らかに堅気の雰囲気ではないのが分かるが、近づいていくと

 

「……おいガキ共、この先に何か用事か?ここから先は私有地だ、入ってくるんじゃねぇ」

 

黒服がロイド達にガラ悪そうに警告をだす。来た道を戻り、あの建物はマフィアか何かの関係したものではないかと話していたが、後にする

 

中央広場を通り、次は行政区に着く。警察本部に市庁舎、図書館と国が運営する建物が並んでいた。図書館は昨日ミッチェルがお世話になった場所であり、警察本部も後に回して先に市庁舎へと入っていく

 

入って目の前に受付があり、左右には上へと続く階段がある。すると、目の前の受付で先程通りすぎた紫髪の女性がいた。受付と話し終えたのか、いくつかのパンフレットを手に市庁舎からでていく

 

建物の内部を見回ると港湾区に向かい、一通り見回る。国際銀行であるIBCを見に来たが、どうやら今は閉まっているらしく、この場を後にして東通りへと向かった

 

「東方風の露店街……私はあまり来た事がないわね」

 

東通りは東方風の建物が並び、露店で人々が賑わっていた。露店から活気のある声を聞きながら進むと、ある紋章が描かれた建物があった

 

「遊撃士協会……」

 

その紋章は遊撃士の証であり、それが自分たちのライバルとなるか仕事仲間となるかは分からなかった。ロイド達は建物の中へと入っていった

 

その建物の中には様々なことが書かれた用紙が張られており、目の前のカウンターには派手な服をきた男性がいた

 

「依頼ならそこの紙に……って、あら?あなた達は」

 

男性はマニュアル通りに対応しようとしたら、その面子に少し驚き、その後に笑みを浮かべる

 

「貴方たちがクロスベル警察にできた新部署の子達ね」

 

それにロイド達は驚いた。まさかつい先日できたばかりの部署をしっているとは思っていなかった

 

「なんで知ってるのかって顔してるわね。クロスベルタイムズもだけど、そういう話が早いのも家の特徴よ」

 

頬に手を当てて笑みを浮かべながら言う受付のミシェル。情報収集の速さは遊撃士協会の得意技だと言うのだ、ロイドが自分達の評価を尋ねると

 

「あたしは大歓迎だわ。家は腕のいい連中ばっかだけど、人数が少ないからね。小さな仕事を任せれるのはありがたいわ……まぁ、使い物になるのならだけど」

 

最後の言葉にロイド達は真剣な表情になる

 

「市民からの人気取りの為にできた新人ばかりの部署……そんな所に果して代わりが勤まるのかしらねぇ?」

 

遊撃士の真似事は結構だが、実力不足で使い物にならないのでは?と、言っているのだ

 

「……警察にできて遊撃士にできないことがあるがな」

 

するとミッチェルがそう言い、それにロイド達やミシェルがミッチェルの方を向く

 

「遊撃士は基本依頼をこなして報酬を得る。人が襲われたりしている現行犯なら逮捕できる……だが、現行犯でなければ?」

 

そこまで言うとロイド達も何を意味しているのか理解し

 

「……痛いとこ突いてくるわね」

 

ミシェルは苦い表情をする。煌びやかな街である分、その影は深いものである。そこに巣食う者達を現行犯で逮捕するのは難しい。しかし、令状があれば逮捕もでき、捜査の一環と言い強硬調査を行えるのはクロスベル警察のみであった

 

「実力不足は訓練や実戦をこなし補えばいい。だが、警察が持っている権利を駆使できるのは遊撃士にできない強みだ」

 

言い切ると、ロイド達はやる気を感じ

 

「……なるほど、素人ばかりじゃないって訳ね」

 

ミシェルもロイド達が新人の集まりでなく、少なくとも自分の足元を見られる人材であると認識する。サプライズがあるから、また後で来るようにとミシェルが言い遊撃士協会を後にした

 

東通りから鉄橋を渡ると、辺りが一遍した

 

「……随分と寂れた場所だな。本当にクロスベル市か?」

 

ランディが疑うように言うが、先ほどまでの煌びやかで賑わいのあった場所が180度変化したように寂れていた。ここは旧市街と言い、都市開発から残された場所だと言う。見回ってみるが、裏通りとは別方向の怪しい店があり、その一つの前でミッチェルが足を止める

 

「すまない、ここに用事があるのだが構わないか?」

 

その店はギヨーム工房と書かれていた。ロイド達は頷き、店の中に入ると中は鉄筋が剥き出しで無骨感が溢れていた

 

「お客さんか?すいませんね、今はパーツを切らしていて……ってお前さんか」

 

入ってきた方向を向いたギヨームは客の一人の顔を見ると作業を一旦止め、棚から商品らしき物を取り出す

 

「そら、まさかレイルシステムを持っているとは思わなかったぜ」

 

カウンターに置かれたのは紛れもなくレイルシステムのレイルであり、数は3枚だった

 

「レイルシステム?」

 

ロイドが不思議そうに聞くと

 

「あぁ、帝国のラインフォルトや共和国のヴェルヌといった銃器メーカーが研究中の品物さ。俺も初めて見たし、作ってくれと頼まれるとは思ってなかったぜ」

 

そう笑いながらギヨームが言うと

 

「この銃に取り付け出来るか?場所は……」

 

背負っていたM14をカウンターに置き、レイルの取り付け場所を指定するとギヨームは頷き、作業にはいる。10分程で仕上がり、取り付けられたレイルの箇所を確認して背負っていたリュックからあるものを取り出した

 

ミッチェルがカウンターで作業を始めて、ロイド達やギヨームが不思議に思っていると、下部レイルにグリップを側面にはフラッシュライトを取り付ける。両方ともミッチェルの世界の物であり、ライトのスイッチをグリップに取り付け、ライトの調子を確認して問題なかった

 

「は~なるほど、そうやって使う物なのか」

 

レイルシステムの使用例を見たギヨームは納得したように頷き、ミッチェルはカウンターに金を置いて店をでた。粗方のクロスベル市を見回ったのでロイド達は警察本部へと向かう

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

警察本部では受付にいた新たな受付嬢のレベッカから大まかな説明を受けて、一度ビルにへと戻った。端末を確認すると、任務報告の欄と他の支援要請があった。先に任務報告をすると受付嬢のフランが確認を行い、任務完了となる

 

次に新たな支援要請を見ると落し物の捜索や住戸の確認などの中に手配魔獣討伐があった。ロイドは、前回はアリオスに手柄を全部もっていかれてしまったが、今回は自分達でこの手配魔獣を討伐しようと言うのだこれには全員が賛成でリベンジマッチといく考えだ

 

ミッチェルがZeus T2を持っていくか悩んだが、この世界の武器で何処まで試せるかを考えたのと、ロイドから元々の装備を使わないようしてくれと言われたのだ。余りにも強力すぎて訓練にならないと言うのだ

 

先に他の支援要請をこなしていくが、カバンに穴が開いていて共和国行の乗車チケットを落とした依頼人に大丈夫なのかと思いながらも不在住戸の確認も終え、ジオフロントへと潜っていく

 

「ロイド!突っ込め!」

 

道中の魔獣との戦闘で腕慣らしとまではいかないが、実戦をこなしていく。隊列や戦闘での動きを確認しながら進んでいき、子供が襲われかけていた場所まで辿り着く。減った体力の回復やアーツの残量の回復し戦闘準備を整えていく

 

戦闘準備を整えて、ドアを潜る。広間には大型の丸く太ったコウモリらしき魔獣と、その周り小型の魔獣が多数いる

 

「よし、もう一度作戦を確認するぞ。私がスタン・グレネードを投げ込み魔獣の動きを封じる。その間にエリィとティオと私は周りの掃除、ロイドとランディが目標を叩き注意を向けさせろ。周りが掃討し次第2人の援護だ。分かったな?」

 

階段の所で身を伏せながら最終確認を行い、ロイド達は頷く。腰のポーチからスタン・グレネードを取出し、ピンを抜き、すぐさま魔獣の方へと投げる。破裂音が響いて魔獣の悲鳴が木霊する

 

「GO!GO!GO!」

 

ミッチェルが突撃するよう声を上げて突っ込む。目標の大型を含む殆どの魔獣が音と光に混乱しており、巨体に隠れていた魔獣がミッチェル達へと突っ込んでくるが

 

「ワンダウン!……ツーダウン!」

 

銃を構えていたミッチェルが即座に撃ち抜く。動きが止まっている小型を排除していき

 

「そこっ!」

 

エリィも小型を排除していく

 

「エニグマ駆動……」

 

ティオをアーツの準備をして、狙いを小型に合わせる

 

「そりゃっ!」

 

ランディの掛け声と共にスタンハルバートを振り下ろす、それに続きロイドもトンファーで目標にダメージを与えていく

 

目標と小型が正常に戻る頃には大半の小型を殲滅済みであった。残る小型も3体で順調にことが進んでいた……だが

 

「うわっ!」

 

ロイドが大型の攻撃を食らい、吹き飛ばされる

 

「ロイド!」

 

吹き飛ばされたロイドの方を向くランディだが、大型の攻撃が自分に向いたのを見て

 

「チッ!」

 

舌打ちしながら間一髪の所で避ける。ロイドも直に起き上がり、大型へと突っ込む。その様子をみていたミッチェルが予想以上に大型が強く、早急に2人の援護を行うべきだと判断する

 

「エリィとティオは2人の援護だ!」

 

残す小型もエリィが仕留めて残り2体、小型を自分が片づけてエリィ達を支援に向かわせた。2体同時に襲い掛かってくる小型を慌てることなく1体に四発撃ち込んで排除、傍まで近寄ってきたもう1体はストックで殴る。殴られて地面に落ちた小型を力の限り踏みつけて排除した

 

大型の方を見るとロイド達が苦戦していた。ロイドとランディが攻撃を食らわせ続けているが、その巨体から見て分かるように相当タフネスのようであった。ミッチェルも新しい弾倉を装填し、援護に向かう。巨体めがけて銃撃を浴びせるが、どうもダメージは低いようだが確実にダメージは蓄積していた。ミッチェルは腰のポーチからあるものを取出し

 

「フラグアウッ!」

 

大型へとフラグ・グレネードを投げる。それに気づいたランディとロイドは大型から飛びのき、大型の近くに落ちて爆発する。大型は悲鳴を上げて怯む、どうやらグレネードでは有効打を与えられたようで、怯んだ内にロイドとランディとミッチェルが突っ込んで

 

「それっ!」

 

ティオのアーツが大型に追い打ちを与える。すると小さな羽をめい一杯動かして宙へと浮く、何をするのかと警戒すると羽の動きが止まり落ちてくる。その衝撃波が近くにいた3人を襲う、吹き飛ばされた3人は起き上がるが、ダメージが大きかったロイドが膝を付く

 

「ロイド!」

 

エニグマを起動させて回復の準備をしていたエリィがロイドを回復させる。傷が治り、ロイドが礼を言って立ち上がる。大型も相当追いつめているのか息が激しかった

 

「スコット、あいつの動きを少しでも止められないか?」

 

ランディが大型の動きを止めてくれと言ってくる。何やら考えているようで、ミッチェルは鞘からゼロダークを抜く。スタンできるこのナイフは出力を最大にすれば大型だってスタンすることができるとジロンドが言っていた

 

「ロイド!注意をそらせ!」

 

そういい大型の側面へと回る。回復して防御能力が高いロイドが正面から大型の注意を惹く。側面から突っ込み、ナイフを逆手に持ち飛び掛かる。実際どれほどの威力かを図るのに丁度いいとも考え、その切っ先を突き刺すと……大型は悲鳴を上げる

 

ナイフを抜いて、飛び退き、大型の方を見ると……体が痙攣していているのかビクンッビクンッさせて動けなくなっていた。相当威力があることを知ったが、ランディは大型が動けなくなったのを見て、力を溜める

 

「こいつはどうだい?はああああっ!……クリムゾンゲイル!!」

 

力を溜めたランディが一回転してスタンハルバートを振り抜く。そこから炎の衝撃波が大型を襲う、無防備な大型にクリーンヒットし、悲鳴を上げる暇もなくその体は塵となった

 

「うっしゃぁ、いい感じだぜ!」

 

止めを刺したランディがスタンハルバートを器用に回して担ぐ。強敵を倒したことにエリィやロイド、珍しくティオですら笑みを浮かべて喜んでいた。ミッチェルもここまで苦戦するとは思っていなかったが、強敵を倒した充実感を感じていた

 

「いや~スコットがいてくれなかったら危なかったぜ」

 

その場に座り込んでランディが笑いながら言う

 

「そうね、援護や指示に作戦。彼がいてくれなかったら、もっと苦戦していたかもしれないわ」

 

エリィも同意見で、オールマイティにこなせるミッチェルを褒めるが

 

「いや、私だけでは倒せなかったさ。攻撃能力の高いティオとランディ、サポートに回れるエリィ、壁として守りに徹するロイド。誰か一人でも欠けていたら勝てなかっただろう」

 

この場にいる全員がいてこそ勝てたと言うと、皆が嬉しそうに笑いあう

 

「それじゃあ報告に戻ろうか。その後に今回の戦闘での反省会をしよう」

 

ロイドが言うと、座り込んでいたランディが立ち上がりエリィやティオも頷きジオフロントを後にした

 

外に出ると、地下に籠っていたせいか、空気が新鮮な気がした。するとロイドのエニグマからベルが鳴る

 

「はい、ロイド・バニングスです……課長……えぇ!……分かりました、すぐに向かいます!」

 

通信の相手はセルゲイのようだったが、どうも穏やかな雰囲気ではなかった

 

「市民から旧市街で不良同士が喧嘩をしているらしい、今からそれの仲裁に向かう」

 

一難去ってまた一難である。全員気合を入れなおし、旧市街へと向かった

 




レイルシステムですが、この世界じゃ未開発の技術にしようかと思ったのですが、だす銃全てにレイルシステム後付はメンド……ゲフンゲフン結構技術力高いですし、研究段階中としました

感想・質問等をお待ちしております

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。