203号と書かれたドアに先ほど渡された鍵を射し込み、回す。ロックが解除された音を聞き、ドアノブを回して部屋の中へと入っていく
部屋の中は、机とベッドとクローゼットに棚がおいてあり、一人部屋では十分すぎる広さだった。机の上にSCARとZeus T2を置き、バックパックをベッドに置く。ベッドの上に座る。何日ぶりのまともな休息であるかとふと思う、メキシコから帰還して直ぐに大統領命令でメキシコへと再び向い反乱軍との戦闘であった。かれこれ15日ほど戦い漬の日々であった
別の世界に飛ばされ、時間まで飛ばされて、休む所か食事すら取らずに戦い続けていた。食事と考えた時に空腹を感じ、バックパックからレーションを取り出した。メインディッシュを水のヒーターに入れて、温かくなるのを待ち、他のも取り出しておく。粉末ジュースやデザートは後に回し、クラッカーの袋を開ける。ピーナッツバターを塗って食べるが……お世辞でも美味いとは言えない味であった。そんなものに慣れてしまったミッチェルはもくもくと食べきる
ハイドレーションの水で喉を潤わせると、ビーフジャーキーを齧りながらメインディッシュを待つ。数分後、温め終わったメインディッシュを食べるが、これも不味いがマシな方だと思いながらビーフステーキとメキシコ風ピラフを食べきる。大分腹が満たされ、不味いキャラメルバーを齧りながらこれからどうするかを考える。とりあえずはティオと話すべきかと考え、キャラメルバーを水で流し込み、部屋からでた
二階から三階へと登り、階段近くのドアをノックすると
「……どなたですか?」
その部屋はエリィの部屋のようで、部屋の中から声が返ってくる
「すまない、ミッチェルだ。ティオの部屋をしっているか?」
ティオの部屋がどこなのかを尋ねると
「ティオちゃんなら隣の部屋ですよ」
部屋がどこなのかをエリィに教えてもらい、礼を言って隣の302号室のドアをノックする。だが、中から返事がなく、部屋からは人の気配がしないことに気付き、別の場所にいるのだと思った
上に向かうと、そこは屋上であり、中央広場を一望できた。屋上にもティオの姿は無く、かわりに黒猫の姿があった。黒猫の頭を一撫でして、気持ちよさそう鳴くのを聞いて後にした
一階へと降りていくと、部屋の隅で何やら作業をしているティオの姿があった
「ティオ」
名を呼びながら、ティオの方へと歩く。その声に驚いたようにティオは振り向いた
「……その反応からすると、私のことは覚えているみたいだな」
思えば警察本部や肩を並べて戦った時からティオの視線を感じていた
「私のこと……覚えていたのですか?」
自分のことを覚えていたことに驚くような表情をする
「なぜ覚えていないと思った?」
顔を合わせて共にいた時間は少なかったものの、名を教え合い、あのような特殊な場所から保護して脱出したのだから印象は強いだろうとミッチェルは思っていると
「……助けられた時に貴方に抱えて貰っていたことは、ぼんやりと覚えていて、名前を聞いて気を失った私が次に目覚めた後に貴方の姿がありませんでした」
ミッチェルが気を失って飛ばされた時にティオも一緒に気を失っていたみただった
「病院のベッドで目を覚ました私はガイさんに貴方が何処かと聞いたら、自分の国へと帰ったと聞きました」
まさか突然目の前から消えたとは言えるはずがなく、しかたのない嘘であるとミッチェルは思った
「どこの国かも知らなくて、助けてくれたことや、守ってくれたことにお礼が言いたくて……」
俯きながらティオが言っていると、顔を上げてミッチェルの顔を見る
「いろんなことを考えてましたが……貴方にまた会えて嬉しかったです」
つい先程までの無愛想な顔ではなく、年相応の笑みを浮かべていた
「あの時に救えたのは私だけの力だけではない、彼等がいたからこその結果だ。だが、私も君の元気な姿を見れて嬉しく思っている」
薬物投与による人体実験をされた可能性が高いティオが、こうやって年相応の笑みを浮かべ、肩を並べて戦えるほど元気な姿を見れたのはミッチェルにとって安心した出来事であった
「はい、今は貴方と肩を並べれます」
もう守られるだけの自分では無いと言うティオは少し得意気にしながら言う
「所で、何をしていたんだ?」
作業をしていた所にはモニターやキーボードらしき物が置かれていた
「端末のチェックをしていました」
そういい、端末の作業を再びし始める。何の端末か聞くと
「ZCFのカペルシステムを財団で改良した汎用端末です」
コードを機材同士に繋いで、チェックをするティオが説明していく
「警察本部から導力ネットワークを通じて情報を受け取ることが可能です」
その説明に目の前の物がパソコンであり、角にある大きなのはサーバーか処理機能みたいな物でインターネットに繋ぐものであるとミッチェルは思った。どうもネットワ-クに繋ぐためにパソコンの準備をしているのだと
「なるほど、これは全国的に普及している物なのか?」
インターネットが使えるのなら、調べ物が楽になると思っていたが
「いえ、これは試験的にクロスベル市の要所でしか設置されていません。財団の方でも普及の為に研究中とのことです」
まだ試験段階であると聞き、調べものには使えないことに少々残念がる
「分かった。私は戻るが、ティオも早く戻るんだぞ。夜更かしでの作業はよくない」
睡眠を十分に取らないと思考能力が低下し、正常な判断ができないのもあるが、ティオの場合は年齢的にも十分な睡眠を取らないと成長に害がでると思ってだ
「……子供扱いしないで欲しいのですが」
ジト目でミッチェルを見ると、ミッチェルは口元に笑みを浮かべながらティオの頭を撫でる
「睡眠不足は作業効率の低下に繋がる。それはティオも分かっているはずだ」
頭を撫でられながら言われて、少々顔を赤らめながらも
「……分かりました。明日の準備だけにしときます」
それを聞くと、撫でていた手を離し
「おやすみ」
お休みの挨拶をいうと
「おやすみなさい」
返事が返ってき、ミッチェルは階段を上がる。二階に上がると三階からロイドが下りてきていた
「スコット。ちょうどよかった、少し話をいいかな?」
どうやらロイドは話し合いを所望のようで、ミッチェルは頷き、裏口から外に出て手摺りにもたれ掛る
「スコットはもうどうするか決めたのか?」
決める、と言うのはこの『特務支援課』に残るか去るかのどちらかであった
「私は残る、どの道ここ以外に行く所はないからな」
その言葉にロイドは「そうか……」といい、少し俯く。その様子から悩んでいるのが分かる
「……この部署のメリットはなんだか分かるか?」
ミッチェルの唐突な問いかけにロイドは顔を上げ、首を傾げる
「メリット……市民からの信用を得ることかな?」
セルゲイが言っていたように、この特務支援課は遊撃士協会から市民の人気を掻っ攫う部署ではある。だが
「それも1つだな。だが、それだけじゃない、この特務支援課には他の部署に無い強みがある」
更に首を傾げて考えるロイドだが、答えにたどり着きそうになかった
「う~ん、分からないな。答えはなんなんだ?」
ギブアップして答えを聞こうとするが
「それは自分で探し出すべきだ。教えてもらってばかりでは真相にたどり着けない、捜査官と言うのはそういうものではないのか?」
ミッチェルの言い分にロイドは言葉が詰まる。捜査官とは隠された真実を探し、それを暴くのが仕事であり、それは捜査官資格をとったロイドも理解していた
「……あえてヒントを出すなら、頭の中をからっぽにして、もう一度この部署の出来た意味を考えてみることだ」
それはヒントじゃないと思うな……とロイドが呟くのを聞いて、ミッチェルはビルの中に入ろうとすると
「そういえば、スコットが前にいたのは何処なんだ?」
ミッチェルの戦い方は素人どころか訓練されただけの動きでなく、明らかに実戦慣れをした動きと判断力であったから気になっていた
「……前は軍人だった、それだけだ」
まさか別の世界で特殊部隊をしていたなんて口が裂けても言えるはずがなく、ロイドは言い辛いことがあるのだと思い、それ以上は追及しなかった
「とにかく、一晩あるのだから思う存分悩んでみろ」
そう締めくくり、ミッチェルは自分の部屋へと戻っていった
翌日の朝、昨夜に集まった一階の執務室に全員が集まっていた
「さて……返事を聞かせてもらおうか」
椅子に座ったセルゲイが集まったロイド達の結論を聞く
「俺は問題なし、このまま厄介になりますよ」
ランディは昨日と同じ調子で残ると言う。セルゲイに警察本部に引っ張られた経緯もあり、辞退する気など微塵もなかった
「私もこのまま、こちらでお世話になります。セルゲイ課長、改めてよろしくお願いしますね」
エリィも残ると言う。上層部がこの部署が安全な雑用係だと思っているが、そうでは無いとセルゲイが再び問うが、それを承知の上だと返事をした
「ティオは……言うまでもないか」
ティオに至っては残ることを確信している言い方であり、それにティオは頷く
「そういう約束ですから。それより、今日の午後に導力ケーブルの配線工事があるそうです」
端末のセッティングはティオに一任され、セルゲイはミッチェルの方を向き
「お前も問題ないだろ。戦術オーブメントが届くにはもう少し掛かるが、我慢してくれ」
昨夜に話した通り、ここで世話になることの了解を得てたので問題はなかった。件のオーブメントも支給されるとのことで、新しい武器に少し期待していた
「……ロイド・バニングス。警察学校のカリキュラムを座学・訓練共に優秀な成績で修了。そのまま捜査官試験に挑戦し、見事これに合格した。正直、ウチには不釣り合いなくらい真っ当すぎる人材だ」
セルゲイがロイドの経歴を述べるが、聞く限りにエリートコースをまっしぐらで、あることは間違いないぐらいであるとミッチェル達は思っていた
「お前なら、どこ課に行ってもそれなりにやって行けるだろう。ウチが手放したら引き取りたいって話も幾つか来てるしな。迷う余地はないんじゃねーか?」
意地悪そうにセルゲイが言う。エリートであるロイドならドノバンのいる捜査二課や捜査一課というエリート集団の元でも十分に活躍できるだろうと言うのだ。だが
「……いえ、色々考えた上で決めました。セルゲイ課長、これからも宜しくお願いします」
ロイドは特務支援課に残ることを決意する。その表情には昨日までの迷いは一切なく、覚悟を決めた顔をしていた。その表情にエリィやランディ達も笑みを浮かべる
「なんだ、つまらんなぁ。もう少し悩みまくるのを期待していたんだがよ~……」
どこか残念そうに言うセルゲイにロイドが苦笑いすると
「昨日、電話で話していたが、彼女からエールでも貰ったか?」
口元に笑みを浮かべながらミッチェルが言うと、ロイドが驚いた表情をし、ランディがロイドの肩に手を回して説明を要求していた。その光景に呆れながらも笑みを浮かべるエリィとジト目のティオ
「まぁいい、今日一日は全員休暇という形にしてやる。地獄のように忙しくなる前の最後の休暇だと思っておけ。スコットはこの後少し残れ」
一日休暇を言い渡され、ミッチェルが残るように言われて終わりかと思ったら
「おっと忘れていた」
セルゲイは何かを思い出したかのような表情をすると
「改めて……ロイド・バニングス。エリィ・マクダエル。ランディ・オルランド。ティオ・プラトー。スコット・ミッチェル」
全員の名前を呼び、呼ばれた者は返事を上げていく
「本日09:00をもって、以上5名の配属を承認した。ようこそ、特務支援課へ」
着任完了の報告をして、その場を締めた
―――――――――――――――――――――――――――――
時刻は昼前、武器屋の店長はカウンターで肘をついて目を瞑っていると、店に誰かが入ってきたベルが鳴った。その方をみると、明らかに一般人でない雰囲気の人間がいた
オリーブ色のジャッケットを羽織り、下はTANのカーゴパンツを穿いていた。薄い灰色のベースボールキャップを被り、サングラスを付けて、トレッキングシューズを履いて、足には拳銃を装備していた
明らかに
「……許可書は?」
政府で定められた許可書がなければ販売できない。それを問うと、ジャケットのポケットから折りたたまれた紙を渡され、中身を見て驚いていた
「まさか……セルゲイの所のか」
その許可書にはクロスベル警察の刻印とセルゲイの名が書かれていた。サングラスとキャップを外すと、そこにはミッチェルの姿があった
残されたミッチェルはセルゲイから、そこそこの金を受け取り、服と装備を整えるように言われた。この世界では火薬式の銃は骨董品で使っている人間なんざ極僅かで、警察の人間なら導力式でないとダメだといわれたのだ
更に、服装も迷彩服では駄目だということで、先に服装を揃えていた。足の拳銃は護身用である
「チェストリグかアーマー、それと銃を見せてくれ」
服装に金を使ったのもあり、残りの予算は1500ミラで買わなければ無かった。店長に銃は後ろを見ろと言われ、壁に掛けられている銃を品定めしていく。ラインフォルト、ヴェルヌ、ZCFと書かれたプレートの下に銃が並べてあり、メーカー毎に分けていた。元の世界で見た銃も多くあるが、どれも割高であった……が、一つの銃に目が止まる
そこにはメーカーが書かれたプレートが無かったが、その銃には見覚えがある。その銃を手に取り、ボルトハンドルを引き、ロータリーボルトが右方向に半回転しながら引き込まれるのを確認する。次に安全装置を確認してリアサイトの左側にあるエレベーションダイヤルを回す
「ほぅ……その銃に目がいくとは、中々のセンスだな」
その手にボディーアーマーやチェストリグを手にして、ミッチェルが手に持っている銃にニヤリとする
「そいつはスプリングフィールドのモデル・14、銃の芸術家と言われたスプリングフィールドの作品さ。個人の作品で通ぐらいしかしらなく、扱いにクセがあって人気がないのがもったいないぐらいさ」
そう説明をするが、その銃は確かにM14であった。ベトナム戦争で使用され、その重さと木製のストックでジャングルの気候に適用できず、M16へと代替わりした。しかし、イラク戦争やアフガン紛争では市街地戦での狙撃戦で注目され、返り咲きをした経緯をもつ銃である
刻印もあり、別の世界の銃なのに同じ銃があることに内心苦笑いしながら
「試射はできるか?」
尋ねると、裏の試射場に通され、奥のほうには人型の的があった。渡されたマガジンを装填し、ボルトハンドルを引き、的に狙いを定めて撃った。破裂するような銃声はしないものの、銃声自体は響き、反動も強いが制御できるレベルであった。マガジン一つ分撃ち尽くし、的には頭部がポッカリと穴が開いていた
「たしたもんだ。セルゲイも、よくこれほどの腕前の奴を見つけたもんだ」
セミオートで数発撃った後にフルオートで撃っており、反動も火薬式に比べてマイルドであり、全弾頭部に命中していた
扱いやすさや威力、値段から見てこの銃にすることに決めた
「この銃のカスタムを頼めるか?」
この銃の特徴である、銃身の長さ。これをどうにかしたいとミッチェルは考えていた
「できるが、その分金を取るぞ。大体……この位か」
表示された値段では、拳銃を含めて安価なチェストリグとソフトアーマーが買えない値段であった
「……拳銃とチェストリグにソフトアーマーを買うから、合計で1500ミラにしてくれ」
交渉に及ぶも
「駄目だ、こっちだって商売でやっているんだ。1500なら負けてもチェストリグと拳銃ぐらいだな」
そう言われるのら仕方ないと思い、ソフトアーマーを諦めることにした
「これの銃身を短くしてくれ、ハイダーには多孔式のマズルブレーキにしてくれ。あとは……」
店主との相談でトリガー部分のカスタムや、銃の整備方法に、グリップに滑り止めの加工を依頼した
「高威力で整備がし易く、信頼性の高いのはないか?」
拳銃の話に戻り、店主にお勧めを訪ねると
「だったらこいつだ。ラインフォルト製の銃で、帝国軍も前まで採用していた物だ。高威力故の命中精度と発射レートに難があるが、その威力は人どころか魔獣だって止めれるストッピングパワーだ」
その銃はマクベリー1911・タイプ2と言う名であり、見た目はコルトガバメントに酷使していた。だが、導力式を象徴する丸い半球がその存在感を表していた
試射を行い、使いこなせると判断して購入を決意。チェストリグと共にスリングとグローブ、ニーパッド、ホルスターを購入し
「マガジンは一ついくらだ?」
問題はマガジンが何個買えるかだ。手元に金は少ないが、魔獣を倒して宝石らしき物を売ればマガジンも買えるだろうと思っていると
「マガジン?……あぁ、カートリッジのことか。古い言い方だから分からなかったぞ。カートリッジは基本無料だ、チャージさえすれば使い回しが効くからな」
導力式は火薬式の銃弾とは違い、エネルギー弾なのだ。昔はチャージにも金が掛かったが、今では効率が良くなったのもあり、市からの援助もあり無料であった。
「そういえば、ナイフはどうする?」
どうも買ったら付いてくる銃剣を見せられるが、腰のパネルにカランビットがあり、どうしようか迷っていると
「……相手を一撃で気絶させるナイフはないか?」
スタンロッド的な物があればいいなと思い聞くと
「あるぞ」
店主が店内の奥の方へ行って、戻ってくると、オペレーションツールナイフに似た物を持ってきた
「コイツはゼロダークっていうナイフで切れ味も抜群なんだが、導力で電流を流して相手を一撃でスタンできるぞ。こいつをオマケにやるよ」
手渡されたナイフを持っていいのかと尋ねると、サービスだから今後はご贔屓にと言われた
チェストリグに入りきる数と拳銃の予備弾薬を貰った。今つけてあるCQBホルスターを外して、新しく買ったレッグホルスターを巻いて銃を装備する。この場で装備を整えると店長に金を渡して店をでた
「ふぅ……」
予算の範囲内で装備の買い物が済んで、一息つく。この後は旧市街のある場所に行って、図書館で勉強をしなければならなかった。行く途中で軽いものを買っていくか悩みながら足を旧市街へと進めた
さて今回は自分が好きな銃であるM14とM1911A2を出しましたが、これは皆さんにも募集したいと思います。詳しくは活動報告で
ロケットとかは此方で決めさせてもらいます。スナイパーライフルは使用するか悩んでいる所なんで、今は省かせてもらいます
チェストリグはLBT1961Aの酷使した物と持ってくださればOKです。何か質問等があれば感想でお願いします。