【凍結中】亡霊の軌跡   作:機甲の拳を突き上げる

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3話 クロスベル

「はっ!」

 

目を開く。そこには燦々と太陽の日差しが降り注ぎ、心地よい風が吹く。ミッチェルが体を起こし状況を確認する、辺りに敵の気配はないが、人の気配もなり。ガイやオアリオスに抱えていたティオの姿もなかった

 

「……いったい何が、どうなっている?」

 

メキシコ国境のフアレスで核発射を阻止したら、月の輝く夜の森をうろつき、カルト集団の基地を見つけ、レンとティオを見つけガイ達と出会い、戦車を破壊して脱出したらレンをレーヴェと名乗る青少年に奪われ、気を失って目を覚ますとまた見知らぬ地である

 

「……これは……どうするべきか……」

 

口から言葉が洩れるほど状況は不明であり、情報も圧倒的に不足し、見知らぬ地で二回も目覚めるという摩訶不思議な体験を味わっているのだから仕方ないとも言えた。溜息を洩らし、手に握っていたPx4をホルスターにしまい、行動を起こす。ここでじっとしていても事態が良い方向に動くはずがなく、自分から動き出すしかなかった

 

SCARを手にして森の中を歩くあいかわらずGPSはオフラインであり、HUDに表示された北へ足を進める。すると、森を抜けると道を見つけた。その道にミッチェルは手で触れる

 

「(明らかに人の手で造られた石造りの道だ。となると近くに町があるはずだ)」

 

人の手によって作られたものなら、その道をたどれば人里に辿り着くはずだと考え、当たりを見回す。すると見当通りに立札の道標があり、確認すると

 

「(クロスベル市まで12セルジュ?)」

 

文字は読めるのは幸運であったが、問題は単位であった。インチやメートル単位ではなく別の単位であり、聞いたことも見たこともない単位であった。フィートやマイルにヤードと言った単位は知っているがセルジュと言う単語は知らなかった

 

だが、ミッチェルは道標に従い歩いていく。どれだけ歩こうが、この先に町があることには違いなく、ならば歩けばいいと考え、道なりに進む

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「……なんで俺はこんな所にきたんだ?」

 

青いジャケットに童顔が特徴な青年、ロイド・バニングスは東クロスベル街道にいた。列車でクロスベルに着き、中央広場で知り合ったお爺さんとお婆さんと別れ、クロスベル警察に向かうはずだった

 

だが、虫の知らせか何かを感じたのか、行政区に足を向けずに東通りへと進んだ。そのまま東通りを進み、クロスベル市から出て東クロスベル街道にいたのだ。横に目を向けるとバス停の時刻表が目に入る

 

「う~ん、なぜか来なくちゃいけない気がしたんだけどな」

 

腕を組み、頭を傾げながら此処に来た理由を考えるが……てんで解らず仕舞いであった。しかたく踵を返そうとしたが、目の前に現れた人に目が奪われた

 

「随分と近かったな」

 

街道を歩きながら襲ってくる獣モドキを排除しながらクロスベル市が見えてきていた。随分とデカイ鳥にダチョウの卵のような物から頭を出したヘビには驚いたが、腰ほどの高さまである虫や明らかに生物と呼んでいいのか分からない軟体生物までいたのには驚かされた。弾丸が効くのか不安であったが問題なく排除できたのを確認できたのは嬉しい誤算であった

 

そんなトンデモ生物との遭遇に会いながらも町が目の前に見えてき、人の姿も見えてきた。あの立札からここまで1.2Km、10セルジュが大体1Kmであるなと単位を把握していると

 

目の前の青年がトンファーを構え警戒している。無理もない話である、迷彩柄の戦闘服に同じ迷彩柄のベストを着用し、重武装の装備をしているのだから

 

「こちらに敵意はない、武器を下してくれ」

 

SCRAのセレクターをセーフにして、手から離して手を上げて敵意のないことを示す。目の前の青年……ロイドも若干警戒心が緩むが手からトンファーを離さずにいた

 

「私はクロスベル警察に用がある」

 

ガイ達が言っていたクロスベル警察、ここがクロスベルであるのならあるはずだと思っていると

 

「クロスベル警察に?いったい何の用です?」

 

クロスベル警察と聞き、ロイドは驚く。こんな装備で警察に用事があるとは思ってもいなかったのだ

 

「……知り合いに会いに来た」

 

知り合って半日でもないが、名を交換したのだから知り合いだろうとミッチェルは思いなが言うと

 

「俺もクロスベル警察に行く所だったんです」

 

武器を下げ、ロイドが言うと、ミッチェルは渡り船だと考えた

 

「済まないが、道案内を頼めないか?この町は初めてで地理が分からない」

 

そう言うとロイドは頷き、付いてくる用に言う。町の中へと入り、ロイドに付いていくが……視線がすごかった。重武装をしてヘルメットまで付けているミッチェルに市民が驚きと不審の視線を向けてくるが、ミッチェル本人は気にする様子もなかった

 

「……流石にヘルメットだけでも外した方がいいんじゃないですか?」

 

その視線に耐えられなかったロイドがミッチェルに言うと、HUDの電源を落としてヘルメットを脱ぐこげ茶色の短髪に引き締まった顔が現れる。ヘルメットをしていた如何にもな感じが幾分か和らぐ

 

「一目じゃ猟兵(イェーガー)にしか見えないもんな……」

 

ロイドが呟くが、それはミッチェルの耳にしっかりと届いていた。イェーガー……どこかの軍隊かと思っていると、CSPDと書かれた建物の前に立つ。そこにはセルゲイが見せた手帳と同じ星のマークがあり、ここが警察署であると分かる

 

「ここがクロスベル警察署です」

 

ロイドが建物の紹介をしてくれると

 

「助かる。君はなぜここに?」

 

感謝を言い、ロイドがここに訪れた訳を聞く。一応情報収集と不自然に見せないためのだが

 

「今日はクロスベル警察への出頭日でして、ここの捜査官になるんです」

 

そんなこと関係なくロイドは素直に答える

 

「しかし、最初クロスベル警察に行きたいと聞いた時はカチコミでも仕掛けるのかと思いましたよ」

 

そう笑いながら言うロイド。ミッチェルから話しかけたことで少し親しくなれたと思っていた

 

「そんな馬鹿なことはしない。個人で武装した建物を制圧はできなくないが、時間と労力の消費が激しければ、メリットもない」

 

できないと言わないあたりにロイドは苦笑いを浮かべる。何故かミッチェルなら出来ても不思議ではないと思えたのもあった

 

その後少し雑談しながら警察署に入ると、受付嬢がミッチェルの姿に驚きながらもなんとか敵意のないことを伝える。ロイドが説明してくれた事に感謝しながらも、内部を見渡す。職業柄かどこが攻めやすく最も効果的にダメージを与えれるかを考えてしまう。するとロイドと受付嬢がどこか困った様子をしていた

 

「どうした?」

 

ミッチェルが尋ねると、どうも人事課に指定された部署が存在していなく、今日出頭するはずであるのに報告もされていないと言うのだ。警察組織にしては随分とずさんなのだと思っていると

 

「まさか……ミッチェルか?」

 

声をした方を向くと煙草を指で挟みながら驚いた顔をしたセルゲイがいた

 

「セルゲイか、いてよかった。少し話したいのだが構わないか?」

 

目的の人物がいて、これで少しでも情報が手に入るかと思ったが

 

「スマンが、それは後になる。フラン、こいつらは俺が引き取ろう」

 

セルゲイが受付嬢であるフランに言うと、フランは納得した表情になる

 

「あ、なるほど……警部が立ち上げた新部署だったんですね」

 

それにセルゲイが頷き、ロイドとミッチェルに付いてくるように言う。ロイドは素直に頷くが、ミッチェルが納得した様子ではなかった

 

「すまんな、俺も忙しければ他に事情を話せる奴もいない。すまないが、今は従ってくれ」

 

その様子を察したセルゲイが言うと、ミッチェルは溜息をつきながら納得する。そして、部屋の中へと入っていくと中には赤髪の男とプラチナブロンドの女性、それに

 

「(ん?)」

 

青い髪をした少女に見覚えがあった、少女の方もミッチェルを見て驚いている様子だった。セルゲイは二人を上座まで連れて行くと

 

「またせたな、こいつらが最後のメンバーだ」

 

セルゲイがロイドに自己紹介するよう言うと、ミッチェルが僅かにセルゲイの方を睨む、こんなこと聞いてないぞと言わんばかりに。セルゲイもミッチェルと目線を交わし、今は従ってくれと目でうったえかけていた。それにミッチェル目線を外し再び小さく溜息を洩らした

 

目線を少女の方に向け、少し疑問を感じていた。抱えていた少女と似ているとは思うが、あんなに背も大きくなかったし、もっと幼かったはずだと思っていた。少女もミッチェルの方をチラチラと見ていると

 

「ミッチェル、自己紹介をしろ」

 

セルゲイに言われる。ロイドが場所を譲ると、その場にミッチェルが立つ

 

「……スコット・ミッチェルだ。よろしく頼む」

 

名前もセルゲイが呼んでたのもあり、ゴーストと名乗っても直ぐに本名がバレると判断して名を名乗った

 

「中々クールだな。俺はランディ、ランディ・オルランドだ。趣味はナンパ、ギャンブル、グラビア雑誌の鑑賞って所だ。後でお前さんらには俺の秘蔵コレクションから取っておきのを貸してやるよ」

 

赤髪の男はランディと名乗った。ミッチェルはその様子から軟派で軽い性格そうだが、部下に同じような奴がおり、そいつは戦場では頼りになったと覚えている。信用できるかどうかは実戦の場で判断できると考えた

 

そんな事を考えているが、ロイドはグラビア雑誌を貸してやると聞いて慌てていた

 

「……コホン。初めまして、エリィ・マクダエルです。あなたと同じクロスベル市出身です。よろしくお願いしますね」

 

女性はエリィと名乗る。物腰と言い方からいいとこのお嬢様みたいだなと感じるミッチェル。役に立つのか少々不安である所だなと観察していると

 

「あ、あぁ……」

 

見とれているのかロイドがタジタジしていた

 

「どうも、ティオ・プラトー。レマン自治州から来ました。……よろしく」

 

少女が名乗り頭を下げる。その名にはミッチェルは聞き覚えがあり、見た目と名前が同じなのは偶然ではないのではと思っていると

 

「えっと、セルゲイ課長……?『特務支援課』というのは一体どういう所なんですか?その……自分を含めて、随分と若い顔触れのような」

 

この部署は特務支援課と言うのかと思いながらも、ミッチェルはこの場にいるメンバーは全員かなり若いと思ってはいた。エリィもロイドも二十歳を超えてそうではなく、唯一ランディが一番年上みたく見えた

 

「ま、色々あってな。ちなみに全員、お前と同じく期待のルーキーばっかりだ。クク、気楽でいいだろ?」

 

セルゲイが笑いながら言う。全員が新人なのかと自分を含められていることに内心で溜息を吐く

 

「ま、口やかましい先輩がいないってのは有難いねぇ」

 

ランディが嬉しそうに言う。確かに自由に動きやすく、フットワークが軽そうっだとミッチェルも思い、試験的な部署なのかと考えていた

 

すると、セルゲイから着信音が響く。ポケットから携帯らしき物を取り出すと

 

「こちらセルゲイ……おお、ご苦労さん。……あぁ、了解だ。それじゃあ、後始末の方は任せてくれ」

 

誰かと会話しており、それが終わると通信を切った。後始末と言うことから雑用でもさせられるのかと思っていると

 

「よし、喜べルーキー共。この『特務支援課』がどんな仕事をするのか……これから素敵な場所でじっくりと体験させてやろう」

 

口元のニヤリとさせながらセルゲイが言い、後を付いて来るように言った

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

警察署から出て、中央広場を通り抜け、駅前通りまで来るとセルゲイが道を曲がる

 

「駅前通りの外れ……一体、何があるのかしら」

 

エリィはセルゲイが進んでいく方向を言う、こんな外れに行く用事などあまり思いつかない様子だった

 

「後始末と言っていたが……まさか資材を片付けろとか言うんじゃないだろうな」

 

グッタリとした表情でランディが言う。備品の後片付けをしろと言われるんなら確かにゲンナリとなる仕事ではあった。そのままセルゲイの後に付いていくと……そこにはドアがあった

 

「ここから先は、クロスベル市の地下に広がる『ジオフロント区画』になる。今から、この中を潜ってもらう」

 

ドアの先の説明を聞いたと思ったら、いきなり区画に潜れとセルゲイが言い、ロイド達は驚く。セルゲイに説明するよう求めたら

 

「お前たちの総合能力、およびに実戦テストのためだ。ジオフロント内部はそれほど手強くはないが、魔獣の類が俳諧している。それを相当しながら一番奥まで行ってもらおう」

 

どうも仕事的には区画にいる害獣駆除のようだが、実際の腕前を試すとセルゲイは言う。ロイド達は納得しているようだったが、ミッチェルは別のことが気掛かりだった

 

「(あの獣モドキや軟体生物は魔獣と言うのか?ジャングルの奥地でなく、こんな町に近い位置で……それに)」

 

ここに来るまで町の様子を見ていたが、人工衛星が通過しないような片田舎のようには見えず、車や人の通りの多さから大都市と言っても過言ではなかった。にも関わらずHUDを起動させてもGPSはオフラインであり、ここは本当に地球上に存在する場所なのかすら疑い始めていた

 

「……だが特務支援課に所属するメンバーは話が別だ」

 

ミッチェルが考え込んでいる間に話が進んでいたみたいで、セルゲイの話に耳を傾ける

 

「詳しい説明は後だ。まずコイツを受け取れ」

 

ロイドはセルゲイから携帯端末のようなものを受け取る

 

「これは……新型の戦術オーブメント?」

 

その携帯端末にエリィが反応する

 

「へぇ……随分と洒落たデザインだな」

 

ランディが言うようにスタイリッシュを感じさせるデザインであり、カバーにはクロスベル警察の紋章が装飾されている

 

「第5世代戦術オーブメント、通称『ENIGUMA(エニグマ)』……ようやく実戦配備ですか」

 

その携帯端末が何なのかをティオが説明する。だが、ミッチェルはその説明を聞いても、どういう代物なのか分からず、名前のエニグマもドイツの昔の暗号装置ぐらいしか思い浮かばなかった

 

「あぁ、財団の方から先日届いたばかりの新品だ。お前達の適正に合わせて既に調整もされている。だが……」

 

セルゲイがミッチェルの方を向くと

 

「お前の分は手違いで、まだ発送されていない。すまんが、届くまでは我慢してくれ」

 

それにロイド達は驚くも、ミッチェルは自分の存在がイレギュラーなのだと気付いていた。なにせ、出会ったときにセルゲイが驚いた様子をみれば分かるものであった

 

「問題ない、戦闘には支障はない」

 

実際、得体のしれない物を使うくらいなら、使い慣れた銃の方が信頼性が高いとミッチェルが思っていた

 

「そうか。使い方は……ティオ、お前がレクチャーしてやれ」

 

セルゲイはエニグマの使い方をティオに一任すると

 

「……面倒くさいですけど了解です。新型用の結晶回路(クオーツ)はありますか?」

 

それに面倒くさそうに頷くと、セルゲイから宝石のような物を受け取った

 

「それと、肝心のこいつだ」

 

ロイドはドアの鍵を受けとった。そのカギの名札にはジオフロントAと書かれている

 

「それじゃあ、一通り魔獣を掃討したら本部に戻ってこい。細かい話は、その後にしてやろう……おっと、こいつも渡しておくぞ」

 

さらに二冊の手帳を受け取った。セルゲイは来た道を戻ろうとして、ロイドが声を掛けると

 

「あぁ、それとロイド。とりあえずお前、リーダーな」

 

振り返ったと思ったら突然リーダーに任命され、ロイドは呆けた顔をした

 

「今の所、捜査官の正式な資格をもっているのは、お前だけなんだよ。それじゃ任せたぞ」

 

踵を返し、去ろうとしてミッチェルの隣を通り過ぎようとすると

 

「(話はこの後に全部答えてやる。今は頼む)」

 

ボソッと小さな声で言うと、去っていく。セルゲイの去っていく背中を僅かに見ながら、言われた仕事を片付けるべきだと判断。どんな状況だろう『何事にも全力を尽くす』の信条は変わらない

 

「押し付けられちまったなぁ」

 

ランディが笑いながらいい

 

「ふふ、でも捜査官の資格を持っている人がいて心強いです。よろしくお願いしますね、ロイドさん」

 

エリィはロイドの事を信用している様子だった

 

「あ……いや、呼び捨てでいいよ。見たところ歳も近いみたいだし」

 

同い年だと思っていたロイドは、敬語は必要ないと言う

 

「そう?私は18だけど……」

 

自分も同じだとロイドとエリィは笑いあう

 

「俺は21だが、堅苦しいからタメ口でいいぜ。よろしくな、ロイド、エリィ」

 

笑みを浮かべながら言うランディ。どうも頼れる兄貴みたいなタイプであるなとミッチェルの中ではランディの評価が上がる

 

「えっと……それで、君の方は?」

 

ロイドがティオの方を向きながら聞くと

 

「14ですが、なにか問題が?」

 

平然と答える。これには全員が驚く。ロイドがエリィやランディにツッコミを入れている間にミッチェルは別の事を考えていた

 

「(助けた時が大体6,7歳であったとして……約7年の歳月が過ぎていることになるぞ)」

 

もしティオがあの時に助けた本人ならば、約7年の歳月が流れていることになる。ロイドがツッコミをしている間に手鏡で顔を確かめるも、18歳当時の顔であった。訳が分からないと思っていると

 

「私はこの新武装の実戦テストのため、財団から出向しました」

 

ティオが何かを説明しているが、ミッチェルはそれを聞き流し、考えにふけていた

 

「はぁ……それで、あなたは?」

 

ツッコミを終えたロイドがミッチェルに尋ねる。他のメンバーも注目していると

 

「さん……いや、18だ」

 

歳が一回り以上若返っているが、そんな実感はなく、間違えそうになる。その年齢にロイド達は驚いていた

 

「てっきり年上だと思っていたわ……」

 

それに同意しながら驚くロイドとエリィ

 

「それもそうだが……その恰好だな」

 

ランディも苦笑いしてミッチェルの服装を指摘する。完全に戦闘態勢を整えている姿であり、足に拳銃、腰にナイフ、手にはアサルトライフル、背にはミサイルランチャーときていた。明らかに18の青年がする格好でなければ、その顔つきもどこか威厳があったのだ

 

「それなりに事情があるだけだ、気にするな」

 

そう言うと、ロイド達は無理やり納得する

 

「私の武器はこの魔導杖(オーバルスタッフ)ですが、皆さんは?」

 

するとロイドがトンファーを取出し、エリィは拳銃を取り出す。その拳銃は美しい装飾が施されており、観賞用か競技用かと思わせる

 

「競技用に特別にカスタムしてもらったものよ。旧式だけど、狙いの正確さは期待してくれてもいいと思う」

 

次にランディが取り出したのは長物の武器であり、中世のハルバートに似ていた

 

「こいつは、スタンハルバードだ。ちょいと重くて扱いにくいが、一撃の威力は中々のもんだぜ」

 

説明が終わり、ミッチェルの方を向くが説明は不要そうであったが

 

「私はこれだ。射撃にも多少の自信はある、援護は期待してくれていい」

 

SCARを見せると、ロイド達は物珍しそうにみる

 

「こんな形の導力銃は初めて見るわ」

 

エリィがSCARをじっくり見ていると

 

「……これは火薬式の銃だ」

 

ミッチェルの説明にロイド達は一瞬の空白のあと、驚きの声をあげる

 

「か、火薬式の銃!?よくそんな骨董品をもっているな」

 

ロイドの言葉で、この世界では火薬式は骨董品なのかとミッチェルは思っていると

 

「……それは本当か?」

 

ランディが真剣な表情をして尋ねてくる。ミッチェルはポーチからマガジンを取出し、ランディに投げ渡す。それを受け取ったランディは銃弾が詰められたマガジンを見て

 

「……こいつは驚いた、本物だ」

 

さっきの真剣な表情でなく、先ほどまで軽い表情になる。マガジンを返してもらい、ポーチに直すと

 

「心配しなくても、誤射はしない。それは実戦で証明する」

 

ロイド達を見ながら力強く言う。それにロイドは少し考えた後、頷く。ミッチェルがアメリカ第7特殊部隊の人間であると知っていれば素直に頷けていたかもしれない

 

「しかし、魔獣との戦闘になったらバランスよく戦えそうだ」

 

笑みを浮かべながらロイドは言う。前衛が二人に後衛が二人、ロイド達は知らないが、ミッチェルは前衛もこなせてバランスが良いよ言えた

 

「魔獣の種類によっては魔法(アーツ)の方が有利の場合がある。みんな、気を引き締めて行こう」

 

突然命令されたにも関わらずにリーダーをこなせるロイドを見て、ミッチェルはリーダーを素質があるなと感じ、サポートに回ることを決めた

 

そしてロイド達、特務支援課はジオフロントへと潜っていく

 


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