俺ガイル~二次 雪ノ下父が贈賄容疑で逮捕!雪乃が独立する? BT付き   作:taka2992

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(A⇔B)09 情交と死。そして……。

 

 

 トントンと肩を指で叩かれた。それまで、俺は夢うつつの状態で、何か断片的な夢を見ていたような気がする。それも悪夢に近い。気持ち悪いストレスで、思わず歯軋りをしてしまような……。

 それは、この世界の終わりが刻一刻と近づく悔しさの歯ぎしりだったのだろうか。

 

 まぶたを指でこすって目を開けると、水色のワンピースを着た彼女が立っていた。

 

 

「寝ちゃってたの?」

 

「そうらしいな」

 

「時間がもったいじゃない」

 

「それは略奪したのか?」

 

「このワンピ? タンスを探して借用しちゃった」

 

「似合っているな」

 

「なかなかいいでしょ。紅茶入っているけど」

 

「ありがとう」

 

 俺はソファから起き上がって、テーブルにつき、ティーカップをとった。いい香りに包まれて啜ると、一気に目が覚めた。時間は午後11時過ぎ。残されたのはあと18時間くらいか。

 風呂場で緊張したり興奮したり焦ったり恥ずかしかったりした疲れのために寝てしまった。確かにもったいない。そう思うと抑えきれない感情が湧いてきた。

 

 無言で立ち上がり、隣りのイスに座る彼女の手をとる。何かを察したように、反対の手にあったティーカップがコトリと置かれた。

 俺は彼女を寝室に連れて行った。右手で、額から頬にかけて垂れている髪の毛を後ろへよけ、左手で腰を引き寄せて長いキスをした。

 

 ワンピースを脱がせて裸体を見せても、彼女は恥ずかしがっていなかった。俺も同じように、あまり恥ずかしくない。あの風呂場の戯れは正解だったのかもしれない。

 抱き合ったまま、細い体をベッドへ押し倒した。

 そのあとは無言のまま、ほとんど自動的にことが進んだ。二人とも真面目に行為に熱中した。

 仰向けの彼女をバンザイさせると、桜色の小さな乳首を吸った。そっと舌を動かすたびに全身の筋肉が反応する。これが面白くて、しばらく熱中した。目を閉じたその顔が、感覚を味わっているのがわかる。息がだんだんと荒くなってくる。俺は、さっきからまったく会話していないことに気づき、話しかけてみた。

 

「いい? 痛くない?」

 

「うん。気持ちいい」

 

「女はいいな。こういうところが体にたくさんあって」

 

「男もいいんじゃないの?」

 

「そうでもないんじゃないかな」

 

「下になってみて」

 

 俺が仰向けになると、彼女が馬乗りになった。体が下向きになると、その胸が重力で下がり、大きくなったように見えた。動くと意外に揺れる。

 

「見くびっててごめん。ちゃんと揺れるんだな」

 

「また、それ言うの?」

 

 彼女の両手が、また俺の頬をつまんで横に広げた。

 

「それ、地味に痛い。ごめん。謝る」

 

「仏の顔も三度まで。次がラストチャンスね」

 

 頬から離れた両手が俺の体を撫でる。そして、彼女の上半身が俺に覆いかぶさり、乳首を吸い始めた。舌先を微妙に動かすと、今まで知らなかった感覚が起こった。髪の毛がパラパラと落ちてきて、肌を刺激する。

 

 男女の行為をしながら、こうして触れ合っていると、最も深いところから癒やされていることに気がついた。俺の深いところで何かが融けている。

 それは、俺が18年近く生きるうちに固まってしまった、女性に対する偏見、あるいは人間に対する偏見かもしれなかった。

「どうせ女は~~だ」という稚拙な固定観念。未熟ゆえの勝手な思い込み。所詮、人間なんて理解しあえない、それは男女の仲になっても同じだ。

 そんな頑迷なガン細胞が、彼女と触れ合うことでどんどんと消滅していくのがはっきりとわかる。

 確かに彼女の心の中のすべてを知ることはできない。だが、こうして触れ合っていれば、やがて信頼できるほどにはわかりあえるはず。そんな確信が生まれた。

 今、二人がしている行為も共同作業だ。目に見えるもの全部さらけ出し、許しあい、信じようとする共同作業。それが愛し合うということかもしれない。実は、具体的な行為や、それによって生じる性的な感覚などはどうでもいいのではないか。

 しかし、最後になってそんなことを知ることになるとは……。もっと前から知りたかった。こうして雪ノ下雪乃と、いや、もうそんな固有名なんてどうでもよかった。

 ここには俺と彼女しかいない。一人の男と一人の女しかいない。近くにはもう一組のコピーがいるが、同じことだ。その彼女と愛し合っていることが奇跡のように思えた。

 

 思惟の底から現実へよみがえると、彼女の顔が俺の真上にあって、その目が覗き込んでいた。

 

「こんなときに、何か考え事をしていたようね。悪いクセね」

 

「ちょっと考えてしまった。俺にはお前しかいないことを。お前を愛していることを。自分でも信じられないくらいに」

 

「どういうことか教えてくれない?」

 

 彼女が俺の横に寝直し、その体をこちらに向ける。その体を抱き寄せて、自分の中のどこか深いところで何かが融けていることや、さきほど考えたことを話した。

 

「そうかもしれないわね。こういうことしていると気持ちよかったりするけど、それは本質的なことじゃないかもしれない。私もそれに賛成」

 

「俺たちはわかり合っているんじゃないのか。少なくともその近くにまではいるような気がする」

 

「きっとそうよ。私もあなたのことをこんなに愛しているもの。でも今は最後までして」

 

 そう促されて、俺は彼女に上に乗った。左手を背中の下に入れて、右手を頭の下にまわして抱いた。足が開かれ、手に導かれるままに彼女の中に入ろうとする。しかし……。

 

 目の前の顔に苦痛の表情が浮かんだ。普通の顔じゃない。俺はためらった。

 

「大丈夫か……」

 

「ゆっくり、お願い……」

 

 慎重にしているつもりだが、少し力を入れると、苦悶の表情で口角が鋭くなる。その体に力が入ってくねり、無意識に上に逃げようとする。しばらくすると、ベッドの縁に頭がつくほど移動していた。それでも彼女はのけぞりながら耐えようとしている。

 

「少し動かないでいて」

 

 そういうので、俺は止まった。両手が俺の胴体を掴んでいる。

 

「痛いなら止めよう。無理するな」

 

「大丈夫よ。少し待って」

 

「大丈夫な顔をしてないぞ」

 

 半分くらいは入ったような気がする。確かに締め付けを感じるが、こっちは痛くない。このまま最後まで行けそうだが、それは苦痛だろう。しばらくそのままでいたが、苦痛の表情を見るのは耐えられない。体を下げると、彼女の体の力もすっと抜けた。

 

「ごめんなさい。やっぱり女は慣れないとダメみたいね」

 

「いいさ、そんなことは。さっきお前が言ってたように、もっと前からしておけば……」

 

 彼女の頭を撫でながらそういうと、その体が起きた。そして、顔を俺の下半身の方へ近づける。それを手にとると口に含んだ。

 

「どう? 気持ちいい?」

 

「すごくいい」

 

 そのリズミカルな動きのたびに、俺のテンションが上がっていった。彼女が懸命にその行為をしているのがわかる。その光景には強烈なものがあった。今まで見てきた彼女の姿の中でも、一番刺激的だった。

 やがて感覚がだんだんと蓄積されていき……。あっという間に体がふるえて果てた。

 

 彼女が俺のほうに戻ってきて寄り添った。

 

「お前がそんなことするとは」

 

「しなかったほうが良かった?」

 

 俺は答えずに上半身を起こした。彼女に覆いかぶさって、体を下にずらしていった。下半身に到達したとき、あわてたような声がした。

 

「やめて! それだけは。恥ずかしい……」

 

 俺は足の間に顔をうずめた。大腿がかたくなに閉じている。それを顔で押し広げようとするが、すごい力で抵抗している。それでも顎を間に入れようとすると、諦めたようにだんだんと大腿が開いてきた。

 舌先で一番敏感な部分を探る。ある程度の構造は知っていたつもりだが、見えないのでなかなか難しい。しかし、そのポイントがわかった。そこを舌と唇で刺激すると、体が痙攣し始めた。

 腹筋が硬直と弛緩を繰り返し、胸が盛り上がって仰け反る。同時に、嗚咽を漏らすような声で大きく喘ぎ始めた。顔を上げてみると、恥ずかしいのか両手で顔を覆っていた。

 舌先に入れる力を強くしていった。すると、腰が浮き始めて上下に微動を繰り返し、腹筋の痙攣が止まった。腹筋の筋が見えるほど力が入ったままになった。

 それと同時に、へそから胸にかけての仰け反りが一段と高くなった。俺の頭を二つの大腿がすごい力で締めつける。

 やがて「ん~っ」という細長い声と共に、全身の力が抜け、仰け反っていた胸が下に降りた。

 彼女は乱れた髪の中で「はぁはぁ」と荒い息を続け、しばらく放心状態だった。その間、腹筋が数秒の間隔を置いて痙攣していた。

 

 二人とも汗をかいていた。体が熱い。言葉もなく抱き合って、そのまま目を閉じた。体が冷えるとまずいので、掛け布団を上に引いた。そのまま二人とも眠ってしまった。近づいてくる時間の深刻さにふるえながら。

 

 

 

  ★    ★    ★

 

 

 

 目が覚めると、窓の外からは雪を通した暗い光が入ってきていた。隣には誰もいない。一人だった。時計を見ると昼前。かなり眠った。残りはあと6時間といったところか。

 ジャージを着てリビングに起きていくと、コーヒーの匂いがした。普通の家庭の普通の昼だった。

 

「起きたのね。ずいぶん寝ていたようだけど」

 

 青いワンピース姿の彼女がアイランドキッチンの奥にいた。何か作っている。

 

「眠りすぎた。あんなフカフカのベッドで寝たのは久しぶりだったから」

 

「私も一時間くらい前に起きたばっかり」

 

 テーブルの上にはピザトーストとサラダが出された。一緒に食べ始めるが、心なしか雰囲気が暗い。

 

「残り時間が少なくなったな」

 

「そうね。あと6時間くらい?」

 

「どうするか決めたのか?」

 

「ええ。あなたも決めているんでしょ?」

 

「たぶん。だが、それを言うのは最後にしよう」

 

 彼女はうなずいた。言わなくてもわかっていた。お互いにこれだけ結びついた今となっては、それは絶対的な確信だった。

 

 食事が終わると、俺たちは寝室で時間を惜しむようにまた裸になった。起きて、顔を見たとたんにそうしたくなった。それほどの激情が渦巻いていた。

 感情と欲動の流れのままにもつれ合い、赤くなって擦り切れるほとに肌を重ねた。

 交じり合う。まさにそんな感じだった。二つの体に分かれているほうが異常だとでもいうように、一つになりたがった。

 一つになる。そう。昨日とは違って今回は、俺たちは一つになれたのだ。

 

「来て。大丈夫かもしれない」

 

 

 そういうので、昨日のように彼女の中に入ろうとした。少し、苦痛の表情があったが、ゆっくりと進むと、最後まで行けた。締め付けられている感じはある。だが、それほど苦痛はないようだ。俺はしばらくそのまま動かなかった。いや、動くとすぐに……。

 

「大丈夫か」

 

「ええ。昨日よりは。慣れたんだと思う。ゆっくり動いてみて」

 

 体を前と後ろに少しずつ動かした。その摩擦がもよおす感覚が体中に走った。彼女の表情は……。大丈夫だ。目を閉じてはいるが。

 だんだんと体を大きく動かした。しばらくすると、彼女の顔がその感覚を味わうような表情に変わっていった。

 安心すると同時に、俺は夢中になっていた。彼女の背中に両手を回して、しがみつくように首すじを吸った。

 目の前で、その顔が恍惚としてきて、上半身がのけ反り始めた。息が荒くなり、嗚咽のような声も漏れる。彼女の感覚が俺にもすさまじい勢いで乗り移ってくる。

 動きながら、俺はなんだかわからなくなってきた。激しく体を走り回る熱と感覚が閾値を超えた。こんな狂おしさを経験したのは初めてだった。

 俺は、全身全霊でこの女を愛している。そう思った刹那。彼女の中に放出した。

 しばらくそのまま、二人とも動けなかった。荒い息が治まってきたのは数十分後だった。

 

 その後も、熱しては冷め、熱しては冷めの繰り返し。狂ったような情交が続いた。彼女が上に乗り、髪を乱しながら嬌声を上げる姿を目に焼き付けた。

 本当に俺たちは狂っていたのかもしれない。だが、いくら俺たちが若くても体力の限界が来る。落ち着いたときには午後5時ごろだった。

 

 疲れて眠ってしまいそうだった。だが、永遠に眠りにつくためにやらなければならないことがある。

 言葉もなく、俺たちはベッドから降りて、服をつけ始めた。俺にはボロボロの制服とジャージしかない。洋服箪笥を開けて、新しそうなズボンとシャツを着た。ちょうど体型が合っていた。ついでにネクタイもつけて、鏡を覗くと少しはマシないでたちに見える。

 

 

「ちゃんと働けそうね。これで終わりというのももったいないわね」

 

 ワンピースを着た彼女が俺の姿を見て感想を言った。リビングから運んできたティーカップを一つ、俺にくれる。

 ベッドに並んで座ると、俺の曲がったネクタイを正してくれた。

 

「今までありがとう。俺はお前を本気で愛していたことが今日わかった。こんな偽りの世界だったが、お前と出会って俺は幸せだった」

 

「私もよ。またどこかで会いましょう。信じていればきっと会えるような気がする。私をここまで普通にしてくれてありがとう。愛してくれてありがとう」

 

「俺もだ。お前に出会わなかったらどうなっていたことか。感謝している。その恩返しも今度絶対にする」

 

「私、泣きそうよ。でも泣いたら負けを認めることになる。私たちの心は、この宇宙のどこかで、必ず生まれ変わる。それを信じましょう。この世界が終わっても、他には無数の世界があるのよ。きっと、そこで、そこで……」

 

 我慢していたようだが、彼女の目尻からは涙があふれ始めた。それを俺はシャツの袖で拭いた。

 

「笑ってくれ。最後はお前のあの笑顔が見たい」

 

 彼女がこちらに向き、笑顔を見せた。

 

 俺も涙がひとすじ流れた。だが、これ以上は絶対に流さない。泣いてしまったら、永遠の別れを認めてしまう事になる。この女とはまたどこかで必ず出会うのだから。

 

「左胸にする? それとも頭?」

 

「そうね。頭の方が楽だと思う」

 

「5・4・3・2・1・ゼロの、ゼロのタイミングな」

 

「わかった」

 

 ベッドの上に乗って、向かい合った。お互いの左手をタオルで結びつけた。時計を見ると時間が迫っている。

 俺たちは右手で銃を取った。お互いの頭に銃口をつけた。

 カウントダウンを始めようとしたとき、声が聞こえた。だが、そんなことはどうでもよかった。

 

「やっぱりあなたたちはそうするのですか。もう一組の人たちもそうするみたいですね」

 

「余計な口出しするなよ。ふうせんかずら。ニセモノが本物になる瞬間をよく見ておけ」

 

「わかりました。わたしもあなたたちが本物になることを祈っています」

 

 邪魔者の声はそれだけ聞こえて消えた。

 

「いいか?」

 

「はい」

 

 きよらかな顔がそこにあった。何の悔いも韜晦もない。目が閉じられると、あの純粋無垢で無邪気な寝顔になった。

 

「いくぞ」

 

 5・4・3・2・1・…………。

 

 一瞬、火が見えたような気がした。すさまじい衝撃が全身を走ったあと、すべてが終わった。暗い闇の中で握った彼女の手の感覚が最後だった。

 

 

 

 






こんにちは、小町です。なんか明るい気分になれなくなっちゃいました……。
とうとう、この世界も終わってしまいました。私、小町も消えてしまうようです。寂しいです。でも、私もどこかに生まれ変わることを信じることにします。
 最後の一日、二人はすさまじい生きざまを見せてくれました。こんな結末を迎えるとは思いませんでしたが、ふうせんかずらに徹底的に抗う気概がすごかったですね。
 このあと、最終回のようです。いったいどうなるんでしょうか。別世界での話になりますんで、私にも予想がつきません。小町があとがきを担当するのも今回で最後です。どうもありがとうございました。
 それでは、みなさん、ごきげんよう!


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