王様をぎゃふん! と言わせたい   作:ハイキューw

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第79話 青葉城西戦⑲

 

―――ジャンプフローターサーブ、教えてもらえませんか?

 

 

 

 

コートに入ろうとしている山口の姿を見た瞬間、嶋田の中で記憶が蘇ってきた。

 

 

 

 

―――これから先も1年で俺だけ試合に出られないのは嫌だから……。

 

 

 

 

それは、丁度 嶋田マートで品出しをしていた時の記憶。

 

常連おばちゃんに、嶋田マートのユニフォームであるエプロンのズレを指摘されたので、バッチリ決め直した後、これまたおばちゃんに指摘された大安売りの剥がれかけてたセロハンテープを張り直し………等々 仕事をしていた時の記憶。

 

 

色々と余計な事まで思い返してしまうが、それ程まで、前後のそんな細かな事まで思い返せる程、鮮明に記憶が蘇ってきた。

 

 

 

 

そして、それと同時進行で 烏養達と【居酒屋 おすわり】 で一杯ひっかけてる時の記憶も蘇った。

酒飲んで酔っ払っていて、それこそ記憶が選手達に負けない勢いで飛びそうな感じなのに思い出せた。

 

 

『おう! 嶋田。山口から聞いたぞ』

『おっ? そうか』

『まーな。サーブ練ん時もやってる。火神の方ちらちら見ながら、あーでもないこーでもない、って感じだ』

『手本が傍に居るってのに、なーんで、オレんトコに来たのかねぇ~』

 

 

ほろ酔いの中、烏養とビールを飲み 山口について話を始めていた。

勿論、その中には滝ノ上も居るが 店員に注文の真っ最中で話には混ざってきてない。

 

 

『火神なぁ……。アイツは、影山と同種ってヤツだな。オレの目から見ても十分過ぎる程規格外。サーブで手本にする以外にも、山口が火神に対して思ってる事は……、多分、影山に対する菅原の感覚に一番近いかもな』

『火神はWS(ウイングスパイカー)で、忠はMB(ミドルブロッカー)だろ? ポジ争いしてる訳でもねーのに意識してるって?』

『いや、その辺は同じ1年なのに レギュラー出れてないのが悔しい、ってトコだろうよ。確かに菅原は3年だし、そっちの方が色々と葛藤はあるって思うけど、個人個人の想いの高さ、強さってのは、優劣なんざつく訳ねぇ。試合に出てぇって思ってるヤツは皆持ってるもんだ』

『ん~~、まっ、そうだろうな。いやぁ、同級にあんなのが居りゃ、そりゃそーなっても不思議じゃねーよなー。サイズだけみりゃ 似た様なものだし』

 

ぐいっ、と一気にビールを飲み干す嶋田。

空になったので、とりあえずジョッキを一度テーブルに置き、改めて山口のサーブについて考えてみる。

 

 

『確かに、手本となるヤツが居るのは良い事だが、ジャンフロ(それ)を確実に自分の武器にする、ってんなら ただ模倣するだけじゃ駄目だと思う。……ま、真似だけで やっちゃう器用な選手も中には居るとは思うけど、忠は そんなタイプじゃないとも思うからな。だから 自分なりに、カスタマイズする必要性は絶対に出てくる筈だ。……凄いヤツの真似るだけじゃぁ この先絶対に壁が出てくるってもんだし、劣等感、つーか、火神(アイツ)の弱小版、って忠自身が、無意識にでも思っちまったら正直アウトだ。絶対プレイに影響する、ってな。大事な場面であればあるほど』

『くぅ……、そりゃ耳が痛い話だぜ。それ思ってても あんだけ熱心に視線を向けて、サーブ練取り組んでる山口見てると、流石にそこまでストレートに言うのはなぁ。練習は嘘をつかねー! って言いたいが 精神(メンタル)面言われりゃぁなぁ……』

 

 

烏養も返杯しつつ、自身のジョッキを空にする。

強いサーバーが増えるのは大歓迎だ。確実に烏野の武器、飛び道具が増えるのだから。加えて、山口のレベル自体も決して低くはない。ほぼ180㎝あるし、力はまだまだ微弱でも、それはこれからメシを食べて力をつけて行けば良い、と烏養は考えていた。

 

ただ、精神(メンタル)は別。

 

精神(メンタル)身体(フィジカル)は、別々じゃない。通じている。バレーと同じで、繋がっている。

強い身体にこそ、強い精神がついてくると言うモノだ。

相互成していく関係性で、片方が足を引っ張るなんてのは実に馬鹿げている事ではある、が これもまた難しい。

同じチームとはいえ、レギュラーを争うライバル関係と言って良い存在。そのライバルの壁が高ければ高い程………、どうしても難しくなってくる。

 

 

『でもまぁ、何だかんだ言ったが、今はとりあえず形だけ、っていうなら良いと思うぞ』

『って、んだよそれ』

『だってそうじゃん。忠が練習しだしたのも、オレのトコに来たのも、つい最近だし、そんな短期間で 理想に、完成に限りなく近いヤツのサーブ見て、自分自身に気後れするとか、劣等感とか、どんだけだよ。自惚れるにゃ早過ぎって話だ。〇年はええ! ってヤツだ』

『そりゃぁ……、だろうな』

 

 

嶋田はカラカラと笑いながら言った。

 

火神と比べるとどうしても見遅れするかもしれないが、火神が凄いと言う事はもう既に身に染みている筈だ。追いつきたい目標にしたとして、たった数週間で追いつける様な距離じゃない事くらい、山口は重々承知だろう。

 

そんな早くに追いつける! と思われた火神にとっても失礼な話。

 

 

『せいぜいマグレ当たりが有れば、って賭けだ! んでも、オッズはそんな高くねぇぞ。なんせ、見本が傍に居るからな! かっかっかっか!』

『いや、そこは【このオレが教えてるからな】くらい言えって』

 

 

新たに沢山注文した酒やらツマミやらを広げ、その後も暫く語り合う。

 

 

思い出せば出す程……、逆に嶋田の方が心臓高鳴っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、黒い方が代わった。今ってすっごい大事なトコなんじゃないの?」

「うーん、ほら、あの10番のコ。すっごく跳んで、すっごく早いけど、あんまりサーブは上手く無いから、ってことじゃない?」

 

女性陣達の中々に日向に対する評価が辛口な事に、思わず顔を顰める滝ノ上だったが、ここは解説お兄さんポジションになってるので、聞かれる前に答える。

 

 

「あれは【ピンチサーバー】って言ってね。ピンチになって流れを変えたい時とか、逆に勝ってる側が更に点差をつけたいときとかに投入される選手の事だよ。今回は殆ど五分だから、どうにかサーブでもう1点取りたい、って事なんだろうけど………」

 

 

滝ノ上が言う様に 場面はピンチ―――と言うよりは拮抗していると言っていい状態。

だから、どうにかサーブで更に一歩前に出たい、故のピンチサーバーだ。

女性陣達の辛口評価の通り、日向のサーブはまだまだ武器とは程遠いモノだから、山口を入れた、と言う考えもあるだろう。

 

 

「えーっ!? じゃ、あの細っこい子、あの及川君や11番君のようなサーブ打つの!?」

「恐っ! 見かけによらない!!」

 

ビックリ仰天してる2人。

遠目から見ても十分解る。山口は身長こそは180㎝に限りなく近いが、如何せん体幹がまだまだ発展途上だ。及川や11番……火神と比べたら、どうしても見劣りする。

 

「(強いサーブっていやぁ 影山も居るのに、火神だけ しれっと及川(サーブ)関係の話に織り交ぜてきたなぁ…… この子達)はは。違う違う。ジャンプサーブだけが強力なサーブじゃないのよ。ほら、その11番のコ…… 火神も打ってたと思うよ? 強いサーブに見えない方」

「え? ……あ! そう言えばそんなサーブあったかも……」

「確かに。ソレで点取ってた!」

 

火神のサービスエース。

ジャンプフローターサーブの事を思いだして、手をぽんっ、と叩く。

 

「そっ、考えてる通り。あの13番君の武器は、11番君が打ってたサーブと同種。無回転で打つジャンプフローター。一見ユルそうに見えても、ヤバイ! っていうのは、強豪校 及川率いる青葉城西を何度も苦しめてるから、説明はしなくて良いかな?」

「「はーい!」」

 

女子たちに教えてる女子高の先生的なポジション良い……と、ジーンとしてる滝ノ上だが、嶋田は頭を抱える。

 

 

「繋心 何考えてんだアホぉぉぉぉ!! こんなデュースの場面で忠出すとか!? 幾らオッズは高くねーつったけど、場面によりけりだろーがー! こんな、ほっとんど100パーのヤツが緊張する場面で出すとか、繋心(お前)が オッズを限りなく上げてんじゃねぇかよぉぉぉ!」

「―――オッズの高いヤバイ賭けだったとしても、それでも欲しいってことなんだろ。……先に前に出られてる青城に追いつく為に。……いっちゃ悪いが、チビちゃんサーブじゃ、殆どチャンスボールだ。加えて攻撃力はスゲーけど、守備面がどうしても劣ってる。後衛に下がっちまったアイツのままにするなら―――……やっぱ ココしかねぇよ」

 

 

頭を抱えて唸ってる嶋田とは実に対照的に、滝ノ上は冷静に分析をしていた。

女性陣が言っていた事も半ば的を得ていたのである。……日向のサーブ・レシーブより、山口のサーブ・レシーブの方が良い、と。

 

 

「無回転が打てればラッキーだ。無回転じゃなくても、正直未知のサーバーなのは間違いない。幾らか相手のプレッシャーになるだろう。……疲れてきてへとへとの頭ん中が、更に考える事が増えるっていう追い打ち付きでな」

「だけどなぁ……、忠ってぱっと見、強心臓!! ってヤツじゃないと思うし。 どっちかっつーと、真逆なタイプで……。こんな時に任されでもしたら、マグレより厳しい気が……」

 

 

山口のサーブの師匠、嶋田。

彼も結構辛口評価だったのである。

 

確かに、それは間違いではない。

公式戦初出場が、この第3セット目のデュースの場面。

点差が無い状態だから、点差がある状態と比べたらマシかもしれないが、自身のサーブのせいで流れが変わる……と言う可能性を少しでも考えたら、一気に重圧(プレッシャー)となって背にのしかかってくる筈だ。

 

「いーや、その辺も大丈夫っぽい」

「へ?」

 

滝ノ上は、にっ! と口端を吊り上げて三日月の形にして笑った。

嶋田は、頭を抱えていたので、最初から最後までしっかりと山口の事を見てなかったので判って無い様だ。

 

火神(かがみん)、やっぱ すっげー頼りになる~! 超心強い! ってヤツだ」

「???」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

山口の登場で、僅かではあるが動揺、そしてそれを上回る警戒心を見せる青葉城西。

 

「ふぅ、ふぅ。………この場面(デュース)で烏野にピンサー?」

「ッん。……サーブが得意なのか……、ブレイク取る為にはサーブで崩すのが定石ですし、それとも空気変える為ですかね? あ、いや 烏野の10番は後衛ではあまり脅威を感じられませんし。リベロと交代出来ないこのタイミングだからこそ、代えたのかも……」

「……考えすぎても仕方ねぇ。手を出してくるまで何が出てくんのか解んねぇんだからよ。……頭ん中に入れるのは流れは渡さんって事だけだ。誰が出ようと問題なく切る」

「……ハイ!」

 

深く考えすぎて考えすぎて、身体が動かなくなってしまう事だってある。

この極限の場面。確実に体力が尽きつつある終盤戦。余計な情報を増やされる事に対する不快感はどうしても拭えないが、ただ1つ考える事だけに徹すれば良い、と言うのが岩泉の考えだ。

 

誰が出てこようが関係ない。

サーブを上げ、そして点を獲り返す。

 

そう―――それだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コートの外へと出てきて、山口から渡される10番のカードを手に持つ。

 

「山口っ! ナイッサッ!! でも、オレも負けねーかんな……!」

「(……一瞬でも下げられるのが嫌なんだな)……ああ。でも、オレも日向に負けたくない。負けたくないから……」

 

 

山口は、そういうと 青葉城西の方を見た。

全員疲れている。肩で息をしている。膝に手をついている者も居る。

でも、それでも身に纏う闘志の様なモノは全く衰えていない事は山口にもヒシヒシと伝わってくる。

 

だが、初出場、極めて大事な場面。―――正直、烏養から呼ばれた時は 凄く震えていた身体。まだ残滓が残っているが、それでも、今考えるべき事は定まっている。

日向は、山口の視線、表情から何となく次言う事を察したのだろう。

 

悔しそうな顔は鳴りをひそめ、示し合わせる様に山口と声を揃えた。

 

 

「「目の前の試合に勝つ!」」

 

 

カードを受け取ったと同時に、空いた方の手で ぱちんっ、とタッチを交わす日向と山口。

 

 

それを見ていた烏養は、コートに出ていく山口に ただ一言添えた。

 

「思いっきり行ってこい!」

「は、はい!」

 

ちらっ、と振り返る先には、烏養だけじゃない。火神も見ている。

【ナイッサー!】と声を上げて口添えをし、握り拳を見せてエールを紡いでくれた。

 

山口は、火神を見て 軽く頷いた。

 

そしてコートの方へと視線を戻す。

日向はもうベンチへと戻っていったから、後は踏み出すだけだ。

 

まだ、山口には僅かに震えは残っていた。

 

 

「(――この線の向こうは、違う世界なんだろうな。こんなに近いのに、まだ正確に解らない(・・・・))」

 

 

コートの中と外。

世界が全く違う事は あの青葉城西の雰囲気で、そして 後一歩踏み出せばコートの中だと言う距離なのに 見えない壁の様なモノを感じている時点でよく理解しているつもりだ。

 

ここから先、更に一歩踏み出し、そして コートの中に踏み入ってこそ、それを直に体感する事になるだろう。

 

 

山口は大きく一歩踏み込み、そしてコートの中に片足を入れた。

仲間たちの熱気、そして相手の熱気。

まるでこっち側は気迫が違う。空気も違う。ピリ付く、とはこの事をいうのだろう、と山口は感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、遡る事数分前。

 

 

「山口!」

「………はひっ!?!?」

 

 

烏養に呼ばれ、ピンチサーバーとして 日向と交代する旨を伝えられた。

このデュースの中で、見ている側も、気が滅入りそうな時に 抜擢された。

 

試合に出たい、と常々思っていた。

常波戦の時も、伊達工業戦の時も、ずっと思っていた。

 

思っていたからこそ、嶋田の元へ練習時間後に足を運び、サーブ練習を追い込み続けた。

 

そして今日のこの試合でも。

火神の交代の時は、身体に熱が走った。日向や影山、コートの皆程じゃないかもしれないが、それでも熱く滾ったのを感じた。

 

全てはこの時の為―――と言っても良い状況なのに、いざ声が掛かるとどうしても必要以上に委縮し、身体が震えてしまう。

 

 

「山口」

「!!」

 

傍にまで来た所で、火神がゆっくりと立ち上がった。

まだ応急処置をしただけで、試合後には病院に直行させるつもりだったのに、この行動。一瞬、ぎょっとした清水が座らせようとするが、火神は手で、問題ない、と言わんばかりの所作をし、山口に向き直る。

 

 

「―――相手は、青葉城西高校。別に大学生でも社会人でも、それこそプロの選手でもない。あ、それに とって食われたりだってしないよ」

 

 

火神は ニッ と笑ってそう伝える。

 

必要以上に恐れる事は無い、同じ高校生だ。

と言う意図のあるセリフだが……、これは 自分のモノじゃないのも重々承知。

だからこそ、後々の()のセリフを盗ってしまったなぁ、とちょっぴり自虐的な感じもするが、今は山口の方が優先。

 

サーブの威力が増している事、実力が上がっていってる事は、火神もよく知っている。

山口が、火神を見ていると言う事は、火神も山口のサーブを見ていると言う事なのだ。

 

だからこそ解る。

 

怯えて震えている山口の事も知っている(・・・・・)けれど、今の山口はきっと自分が知る以上(・・・・・・・)なのだと言う事も。

 

「やって来た事全部、ボールにぶつけて、点! 取って来い!」

 

拳を作り、山口の右胸辺りに当てる。

当たった場所が まるで、心臓でも出来たかの様に どくんっ! と脈打つのを山口は感じた。そして、それ以上の熱気も。

 

 

「……オレ、火神程は強く打てないけど」

 

 

熱気を貰っても、まだ自分の中での育て続けてきた自信が芽吹くには至ってない様だ。

当然、火神のジャンプフローターサーブも、スパイクサーブも、それと、あのサイドスピンサーブも目に焼き付けた。

 

サービスエースの数もチーム1だ。それを少しでも考えれば、どうしても後ろ向きな気持ちになってしまう。烏滸がましいかもしれないけれど、どうしても思ってしまう。

せめて、火神が先輩なら―――こんなことは思わなかったかもしれないが……、たら、ればをいいだせばキリがない。

 

山口の言葉を聞いて、火神はきょとん……とするが、直ぐに軽く笑って告げた。

 

 

「あのサーブの強みってのは、なにも威力だけじゃない。ジャンフロの最大の武器は、ボールがブレる(・・・)事だってオレは思ってる。……どんな選手だって、ジャンフロの無回転を、その軌道を自在に操る事なんて出来ないんだから。……だから、オレのジャンフロ(サーブ)と山口のジャンフロ(サーブ)は全くの別物だ。全く違う武器になる」

「!」

 

 

山口は、火神のサーブを真似ているだけ、模倣しているだけ、弱小版なだけ、と言うのは頭の中に何度も思っていた事だ。

嶋田が危惧していた事は、山口の中にはとっくに燻ってしまっていたのである。

 

だが、ここで偶然なのか、或いは火神は解っていて諭したのかは解らないが

 

【自分のサーブと山口のサーブは別物である】

 

とはっきり口にした。

 

山口のボールのブレ方と、火神のボールのブレ方。確かに威力や精度も重要だし、実際に火神のサーブには及ばないかもしれないが、そのブレる範囲や動作だけは自分の武器なんだ、と自覚する事が出来た。

 

 

「ここで一発景気よく行って来いよ山口」

 

 

火神に続く形にはなったが、烏養も肩をバシッ! と叩いた。

 

まだ 手は震えている。

 

でも、もう迷いはない目になっていた。

 

 

 

「ったく、立つ瀬ねーぜ、火神(おとーさん)

「………コーチまで その呼び方は流石にヤメテください」

 

「あはははは」

「………くすっ」

 

「ふ、2人も笑わないでくださいよ!」

 

 

あまりに頼りになるので、まだまだ駆け出し指導者とはいえ 悔しくもあり、澤村達の気持ちも判ってきた烏養は、不意に火神をお父さん呼び。

 

流石に大人相手にお父さんは嫌だったようで、火神は否定し それを横で聞いていた武田と清水は思わず笑ってしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、コート内にて。

 

山口の元へと仲間たちが駆け寄ってくる。

 

「オオウ! オレと一緒で大抜擢じゃねーか! 山口! 存分に暴れるぞ! 一気に力の全部出しちまえ!」

「は、はい!」

「一発だ。一発いったれ山口!」

「あ、アス!!」

「ナイッサー」

「………………気楽にな?」

「コラ旭。(頑張ったとは思うけど)変に間を作ってんじゃないよ。そもそも、気楽って意味解ってんのか?」

 

いつも通りの雰囲気作りを徹底しようとするチームメイトたち。今はかなり重要な局面だが、それでもいつも通りを発揮できる様にと。

 

 

 

それぞれが思う事は勿論ある。

 

この場面では流石に委縮する(ビビる)のでは?

東峰や日向なら、もっと大変な事になりそうだが、山口は?

それに加えて 山口はこれが高校初の試合だと言う事もある。

心臓が弱ければ、この場面に遭遇しただけでも、手元が盛大にブレる。下手をすれば山口の打とうとしているジャンプフローター以上に。

 

 

でも。

 

 

「山ぐーーち!!」

【一本ナイッサーブ!!】 

 

 

外からの援護(声援)

無念にコートを去った男の熱意。

それは、コートの中全員に受け継ぎ、繋がれている。山口も例外ではないのがはっきりとその目を見ただけで解った。

 

後は山口本人次第。

全てをボールに込めるだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

一連のやり取りを、そして火神の事を聞いた嶋田は、滝ノ上が言っていた意味を理解し、感嘆していた。

 

「コートの外、仲間や観客の声援とかに勇気づけられる、つーのは 何度も聞いたことあるし、実際に背押された気にはなった事だってあんだけど……、ここまでのは無ぇなぁ……」

「……解る。オレは自分の事でいっぱいいっぱいだった。初出場ん時なんて 特に」

火神(かがみん) マジ ヤベェよ。ほんと。オレが女なら惚れてる」

「キモイ事言うな」

 

滝ノ上の言葉にツッコミを入れつつ、それでいて 景気よく今出来るであろう最高の形で背を押した火神、コートの仲間たちに尊敬の念を送りつつ―――嶋田は 愛弟子である山口のプレイに注目していた。

 

 

 

「―――サーブポジションに立った瞬間は、お前が主役だ。そのサーブは、他の誰かの武器なんかじゃない。お前の(・・・)武器なんだからな」

 

 

 

 

嶋田の声とほぼ同時に、主審からの笛が鳴る。

 

 

山口は、やや早かったかもしれないが、しっかりと笛の音を聞いてから動いた。

自分も戦える―――それを証明するために。

 

 

 

右足を前に出し、両手で持つサーブの初動前姿勢。

その後の体重移動や両手でボールを上げる所作。

バックスイングを行わない跳躍(ジャンプ)

 

 

 

それらを目の当たりにした青葉城西は脳裏に嫌なサーブの記憶が……、ついさっきまで自分達を苦しめてきたサーブの記憶が一斉に湧いて出た。

 

 

「(マジか!? コイツ()ジャンフロを……!?)」

「(ピンサーでジャンフロ……!? まさかアイツ(・・・)と同等……!?)」

「(ここで起用するって事は間違いなく奥の手……! やばっ、心構え出来てないかも!?)」

 

 

アイツ―――とは勿論、火神の事だろう。

スパイクサーブかジャンプフローター、或いは強回転(サイドスピン)サーブか。幾度も頭を悩ませられ続けたあの火神のサーブが頭を過る。

 

確かに、こんな形で退場したことを望んでなかった、と言う及川の意見は誰もが共感する事だった。……それでも、少しも安堵しなかったか? と問われれば首を縦には決して振る事が出来ない。

 

それ程までに、彼のサーブは大いに悩まされたから。

多種のサーブを操る男が去った事で、考える事が減って負担が軽くなったのも事実だから。

 

 

だが、それが油断と言うモノだったのだろう。

 

何故、火神以外にもジャンプフローターサーブの使い手が居ないと思ってしまったのか。

 

 

 

山口のジャンプフローターサーブ。

 

その球威は 極めて緩やか。そこまで警戒するサーブには分類されないと考える。

インパクト直前も、ボールには最低限度の力しか伝わっていないかの様に見える。

 

……だが、それは 何度も受け続けてきた火神のサーブが脳裏に焼き付いて離れないからなのだ。

 

打点の高さ、体格を含めた単純な力まで、山口と火神では軍配が上がるのは 間違いなく火神の方だ。

 

だが、だからと言って、その山口のサーブは弱い、イージーサーブか? と問われればこれも話が変わってくる。

 

火神が言った通り、ジャンプフローターサーブの真骨頂とも言えるのは、魔球ともいわれる程、ボールがブレる事。

 

それと更に凶悪だと思えるのは、山口の姿勢(フォーム)だ。

 

火神を手本とし、磨いてきたからこそ、必然的にその姿勢は似ている。

完全に一緒とは言えないが、この疲れてきている頭の中では、ジャンプフローターサーブを打った瞬間、火神の事を考えてしまったから、その山口の姿が火神と被ってしまったとしても何ら不思議ではないし、無理もない事なのだ。

 

仮に野球で例えると言うならチェンジアップ。

同じ姿勢(フォーム)(に見える)で、火神のボールより遅い。それでいて――――。

 

 

「くっっ、そ、がっっ!!!」

 

 

ボールのブレ方は全く違った。

火神のサーブは、手元で伸びてくる事が多かったのだが、山口のソレは意図して変えたのか? と思える程、ボールが沈み込んだのだ。

沈むサーブへ完璧に反応しきれる程、膝が言う事を聞いてくれる状態ではない。特にサーブレシーブに入ったのは金田一。

 

あの日向を何度も追いかけ、負けじと攻撃をし、何度もブロックに跳んだ。

同じ1年同士であり、中学時代の因縁もありな金田一だからこそ、疲労を気合で誤魔化していた様だが、流石にこのボールに反応しきる事は出来なかった。

 

沈むボールに手を伸ばしたが、アンダーハンドの先端部分に当たり 上にあがる、と言うより 前に弾き出されてしまい、ネットの下を潜って烏野のコートへ。

 

 

起死回生、サービスエースである。

 

 

 

「ぅ…………」

 

 

 

山口の身体も沈む。

両拳を握り締め、身体を沈め―――ため込み、そして一気に発散!

 

 

 

 

 

【おおおっしゃあああああああ!!!】

 

 

 

 

ベンチ内外問わず、一気に湧き踊った。

終盤も終盤、デュースの30点目は、まさかのサービスエース。

 

 

「やまぐちぃぃぃぃぃ!!」

「しょーーよーーー!!! 気持ちは解る!! すっっっっげぇぇぇ解る!!! でも、コートに入るのは駄目だ!!!!」

 

 

ベンチを飛び出そうとしている日向を懸命に抑える火神。

日向はここからは体力勝負。少しでも休む為、元の場所に戻らず、火神の隣ベンチに座っていたのだ。

 

【サーブでもいつか誠也より強いの打ってやるからな!】

 

と山口と交代した事に対する悔しさや、日向なりのいつも通り感を出して火神に接していたのである。

 

 

それはそうと、火神も日向の様に 思わず駆け寄りたい気持ちにはなっていた。

それ程までに会心の一撃ならぬ、会心の1点だったから。

 

……が、流石にそれはダメなので(ルール的にも怪我した足的にも)何とか我慢。

日向を抑える事で、火神は自分自身も抑えていたのである。

 

 

 

 

「わー、凄い! ……って、思わず言っちゃった。……でも、ほんと凄かったねー」

「うん。確かに勢いは あの11番……、かがみくん? よりは 無いかなって思うんだけど、凄く獲りづらかった、っていうのが解ったよ」

 

青葉城西応援側の筈の女性陣たちも思わず拍手してしまう程の出来だったのである。

 

 

 

「うん。凄いよね。でも ピンチサーバーの仕事は本当に一瞬の時だってある。サーブが続けば 延々と出続けることが出来るんだけど、もし 今のサーブで失敗したら、それだけでベンチに引っ込む」

「え!? なんだか それカワイソー……、決めれて良かった……のかな?」

「いや、うち等青城(向こう)側だからね?」

「あ、うんうん。解ってる解ってる!」

 

火神の事をそれとなく名前で呼んだり、話題に出したり、歳下だと言う事を気にしだしたりしてはいたのだが、どうやら 応援する側までは変わらない様子だな、と滝ノ上は思わず苦笑い。

そして、嶋田は更に続けた。

 

 

「ピンチサーバーは、その一瞬を、ワンプレイを、繋ぐ仕事をする。試合の流れと自分のプライドを全部ボールにのっけてね。……そして、今。(アイツ)は ここで初めての試合で成功してみせた。仮に失敗したとしても、悔しさとか無力さとか知るチャンスも得るから、失敗してそこまで、って訳じゃないけど」

 

 

嶋田は、自分の事の様に歓喜する。

初めて試合で打ったサーブを、そして点を決め、仲間たちと抱き合った時の事を、鮮明に思い返す。

 

 

(アイツ)は自分自身の手で掴んだ! 今完璧にイメージ出来た筈だ。自分の攻撃が通用した。点を決めた快感。それ全てが(アイツ)を更に強くする筈だ。――――間違いなく!」

 

 

 

あの時の自分と山口の姿を重ねる嶋田。

そして、より強く思う。

 

 

―――お前なら、お前たちなら、もっと高く飛べる……と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァイ、めっちゃしんどいし、まさかのジャンフロ、13番君verが来て頭ん中ぐっちゃぐちゃかもしんないけど、落ち着いて!」

 

及川は両手でぱちんっ! と手を鳴らせて皆に呼び掛ける。

あと1点で敗北が決まる場面だが、こういう時こそ、落ち着かなければならない。動揺したままでは、このまま点が捕られてしまう。

サービスエースを取られたが、最後の最後、試合を決める最後の点をこちらが決めれば問題なし。……それを烏野にあげる訳にだけはいかないから。

 

そんな及川の心配は――――。

 

 

「おう。落ち着いてる」

「落ちたなー、今のボール。ジャンフロだから仕方ないにしても、11番の軌道がどうしても頭ん中に入っちまってるから、修正していこう」

「次次。金田一も引きずるなよ。次とりゃ良い」

「あ、うス」

 

 

―――全くの杞憂だった。

 

「やっぱさすがだよお前ら! しっかりし過ぎててさっっ!」

 

 

ガビーン、とセルフ効果音付きで、及川は固まる―――が、これはこれで良い。

 

良い具合に力は抜けた筈だ。

 

 

「今の13番君のサーブ。厄介な軌道だったけど、せいちゃん程の威力は無い。落ち着いてブレる前にオーバーで捕まえようか。……簡単じゃないと思うけど、やるしかないよ」

【おう!】

【はい!】

 

 

場面はピンチ。

だが、余裕のない及川だったら、足元から崩壊するかもしれないが、このふざけて飄々とした仕草が出てるのなら、まだ大丈夫だ。

 

口には決して出さないが、心強い主将・及川は健在だ。

 

 

 

 

そして、何よりも―――、恐らく共通する想いがこの場には渦巻いている。

 

 

―――負けてたまるか!

 

 

と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

山口の会心のサーブは、2連続とまではいかなかった。

 

「(!! ズレた。回転を殺せてない……ッ!)」

 

殆ど無回転のサーブだが、ほんのわずかにズレたミート。

それが結果としてボールに回転を少し与え……、最大の武器が消失される。

 

後は、言い方は悪いが、威力が少々上がった普通のフローターサーブだ。

疲れていようが頭の中が混乱しようが、青葉城西には通用しない。

 

 

花巻(マッキー)!」

「おう!」

 

花巻のレシーブから、及川のセット。

 

「金田一!」

「行け!!」

「おおおおッッ!!!」

 

 

そして、先ほどのレシーブの失態を挽回する様に、金田一の速攻で見事沈めて見せた。

 

 

【っしゃああ!!】

「ナイスキー!」

 

 

烏野に負けずと劣らない盛り上がりを見せる青葉城西。

余裕は一切ないが、それでも頭上から見たら淡々と取り返している様にしか見えない。

 

 

「マジか……。忠のサーブ、ちょっと回転掛かったとはいっても、まだ慌てても良い場面だって思ってたのに……」

「全く崩れねぇな……。これで1回も全国いったこと無いとか殆ど詐欺じゃん……」

「くぅ……、忠!! ナイスサーブだ!!」

 

 

あの勢いのまま、山口のサーブでとどめを! と嶋田は盛り上がっていたのだが、そう簡単にはいかない様だ。

 

山口も、2本目の当たりが悔しかったのだろう。

少し顔を顰めていた。一番付き合いと親交のある月島が、小さく軽く【ナイス】と言う言葉を山口に添え、そして西谷と交代した。

 

 

「山口! ナイスだナイス!!」

「次、10点決めろよ!」

「ッ……!! ハイ!!」

 

 

悔しいが、これが現段階での実力だ。

試合で打ったのはたった1本だけ。体力的にもまだまだ自分は余裕がある。でも、それを試合中に発揮できなければ意味は無い。

 

 

山口はベンチへと戻ってきて、そして火神はそれを見て拳を伸ばした。

 

「山口ナイス!」

「……ッッ! つぎ、つぎは10点決める。サーブで火神よりも多く点獲るから」

 

山口の宣戦布告とも取れる言葉を聞いて、火神は、にやっ! と笑った。

 

「っしゃ。今日から山口との勝負も開催だな」

「あっ! オレもオレも!! サーブ点獲る!!」

「あ、いや 翔陽は、勝負云々前に、もうちょっとサーブの腕を磨いてからだろ。っていうか、この手のやり取り多くなってきたぞ! あーんまり欲張らないよーに。一歩ずつだ。コースの打ち分けとか バックとか」

「ううーー!! オレだって負けねぇからな!!」

 

 

凄いプレイを見るとついつい自分もと声を上げたくなる。

まだまだヘタクソなのは理解しているが、上手くなるために貪欲に迫るのが日向の良い所でもある。……あまり猪突猛進過ぎて周りが見えてない事も多々あったが、その辺りは烏養を始めとして、皆でカバーだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、今度は青葉城西が追う側へと変わった。

 

 

体力的な消耗は例え一緒だとしても、精神的にきつくなってきたのは青葉城西だろう。火神が抜けた事で、烏野の戦力ダウンは確実と思えていた周囲は、最早そんな考えは一切ない。

 

デュースで点が次々と重ねていく度に、歓声も重なり合っていく、

 

 

 

 

 

 

 

 

30点を超え、更に点を重ね―――36-36。

 

 

 

 

 

 

 

青葉城西ボール。

サーバーは……及川。

 

ローテが一周し、青葉城西の中で一番厄介なビッグサーバーである及川にまで再び回ってきたのだ。

 

この極限の状態。

精神も体力も限界ギリギリで繋いでいるであろう場面で、及川はどう出るか。

 

 

 

「――――ふぅ……」

 

 

 

青葉城西を、そして かつては北川第一も率いてきた。

バレーが楽しく、皆と上へ上へと行けるのが楽しくて仕方が無かった。

 

でも……、中学でも高校ででも、壁がずっと立ちはだかり続けた。

王者白鳥沢―――怪物 牛島若利。

 

幾度となく阻まれ続けた。

 

 

「(今年こそは……必ず)」

 

 

及川は、転がっているボールを手で止めようと手を伸ばしてボールが到着するのを待った。

 

 

 

 

 

―――今度こそ、白鳥沢凹ましてやる……!!

 

 

 

 

 

その脳裏に浮かぶのは………対戦相手ではなく……。

 

 

 

「オイ」

「!」

 

 

そして、ボールは及川に届く前に、岩泉の手によって止められた。

ギュっっ、と強い力でボールを握り、そして及川に押し付ける様に渡すと同時に、口を開く。

 

 

「100万歩譲って、火神ならまぁ、殴るくらいで許す。……が、お前、試合中にウシワカの顔までチラついてんなら、思いっきりブットバスからな」

「っっっ!!!」

 

 

まさかの事態に、さしの及川も驚きを隠せられない。

今日、この試合で白鳥沢の事が頭を過ったのは、本当に数える程だ。

影山のスランプを見て 中学時代の事を思いだした時に、あくまでついでに浮かんだけだった。

 

でも、今は違う。

明確に、はっきりと頭の中に、あの牛島が浮かんだ。

どうして、岩泉にソレが解ったと言うのだろうか、あまりに図星過ぎて、殴るブットバス、と言う岩泉により恐怖を覚える。

 

 

「まだ倒せてねぇ(・・・・・)だろうが。望んでなかったっつっといて、半ば無念に出て行ったヤツに対しても最悪だ。―――それによぉ。() 戦ってる相手を見えてないヤツが、その更に先に居る相手(・・・・・・・・・・)を倒せるもんかよ」

 

 

岩泉の言葉に、思いっきり頭をぶん殴られた感覚がした。

いつもいつもぶん殴ってくる岩泉の言葉だからこそ、強烈で その時々の痛みまでも思い出させてくれる。

 

前は牛島に阻まれ、後ろは影山が迫ってくる。

 

苦しみ葛藤し、不調に嘆いていた時。頭突き一発で戻してくれたのが目の前の岩泉だ。

 

 

「ふ……、ふっふふ………」

 

 

そう―――烏野に、影山に火神()が居る様に、こっちにも岩泉が居る。

幼い頃から共に戦ってきた最高の相棒が。

 

 

 

 

 

 

「―――そうだね」

 

 

 

 

 

全て吹っ切れた。

そう言わんばかりの及川の顔。

 

 

 

その明らかに変わった身に纏う雰囲気。それを見た途端、一気に体中に悪寒が走る。

 

 

 

「!!!」

 

 

 

レシーブの要の1人として、烏野の地を護り続けた男、澤村はよりそれを顕著に感じていた。

 

 

 

「一本で切るぞ!!」

「ッス!!」

 

 

 

あの悪寒を、感覚を振り払う様に澤村は声を荒げる。

 

 

 

本当に長い長い闘いだった。

これまでのどの試合よりも長く、濃密に感じられていた青葉城西との試合。

 

 

 

その結末が――――訪れる。

 




この話で終わらせようと思ってたのですが…………
次です! 次が本当に決着です! 苦笑

本当に長かったです。
これからも頑張ります!

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