王様をぎゃふん! と言わせたい   作:ハイキューw

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第45話 音駒戦③

「……なんだか、結構失礼な事言われた気がする」

 

火神はタイムアウトの時、ちくっ、と頭や胸に来るのを感じた。

 

こういうのは、大体 噂されてる時に来てると言ってよくて、その大半が酷めな事を言われた時だ。

別に予知やら超能やらを持ってる訳でもないんだが……、こういう嫌な時に限って身体が事前に教えてくれたりする。あまり使えない能力。使いたくない能力だ。

 

 

因みに、丁度その時 猫又が火神の事を【大鬼】と称した時であり、当然ながら作戦内容は相手チーム聞かれたら意味がないので、聞こえるワケがないが。

 

「まー、初っ端からあんなヤバサーブやられた日には、警戒の1つや2つするってもんだな。しない方がやべぇわ。それに猫又先生は 静観しながら 本質を見抜く力がスゲーってジジイから聞いたことがあったし」

「いや、まぁ…… 警戒するのって言うのは、ひじょーに光栄って受け取れるんですけど、この感じは、月島に毒吐かれた時の感覚っていうか、田中さんや西谷さん達に在らぬ疑いを掛けられて迫られてる時の感覚というか……、まぁ、その……変な感じなんです」

「………それはまぁ、あれだ。……どんまい、ってヤツだな。うんうん」

 

烏養はちょっとばかり同情した。

気のせいじゃね? とも思えたのだが、今までの事を考えてみると一概にそうは言えない。かと言って、火神の事を考えれば色々と……思う所はあるので 相手側の気持ちも判る。

なので、【どんまい】の一言が一番適した解であると判断する烏養だった。

 

後 今はタイムアウト中……練習試合中なので。

邪念? は退散させて試合にのみ集中すべきだ、と言う事で締めた。

 

火神はその後 田中や西谷に絡まれてたようだが、とりあえず 妙な感覚は無視する方向で試合に集中。

 

 

 

 

そして、タイムアウト後、試合再開。

 

再開後も、日向の攻撃は順調に決まっていた……のだが、少なからず変化が訪れた。

 

 

「「ッ!!」」

 

 

今までは、日向の素早い動きについてきてるブロッカーは居なくて、基本的に届かないものばかりだったのだが、2本目が手が一つ分先に、2本目に至っては指先を掠めるまでに、相手が迫ってきていたのだ。

 

今回も日向のスパイクで得点となったが、手放しで喜べなくなっている。直ぐ背後まで迫ってきている様に思えるから。油断すればあっという間に捕まえられてしまうような感覚が。

 

「んぬぅ~~~っ! くっそっ!!! あとちょっとな気がするのにっ!!」

 

ブロックの基本はちゃんと止まって上に跳ぶ事。極力横に流れる様に跳ばずにだ。

そして、両手の締めは甘くならない程度に ブロックの面積を広げる事。自分の領域に来たボールは全て止める、と言うイメージを持つ事。そしてボールを見てから跳ぶ。

所謂リード・ブロック。

それが基本だ。

 

だが、今日向を追いかけている7番……犬岡は、ボールではなく日向にだけ集中している。ただただ日向を追いかけまわしてる、と言う感じだ。ボールの有無関係なく。

 

「………」

「あの7番……だんだん日向についてきてる?」

 

日向へのセットをしている影山は勿論、スパイクを決めた日向も 何度も何度も目の前にいる壁に気付き始めた。

 

「兎に角 翔陽をマンツーマンで只管 追いかけ続ける。このデディケートシフトは 対翔陽仕様みたいだな」

 

影山の疑問に答える様に火神がそう伝えた。

 

「オレは このブロック配置は、エースを徹底マークする為 って思ってたんだが……」

「ああ、勿論 東峰さんのマークも決して緩くないって思う。そもそも緩めちゃいけない人だし。……でも、今の優先順位の上位は翔陽だと思う。……ああも、偏った位置に構えられたら、動く範囲は限定されちゃうから」

 

火神はぐいっ、と汗を拭いつつ、前の配置を見て考え続けた。

見るのと体感するのとではやっぱり一味も二味も違うな、と内心笑いつつ、日向の事も頭に入れる。

まだまだ、空中でブロックを躱したり、ブロックアウトを狙えるような技術は日向には備わっていない。こういった所でやっぱりちゃんとした練習環境が無かった事を大なり小なり悔やむ所だが、今は無いものねだりしても仕方ないし、昔のこと……後ろを向いてる暇はない。

少なくとも今、日向は前を向き続けているから。

澤村や東峰にも考えてる事を手短に伝えた。

 

「オレも影山の意見と一緒だった。アサヒをマークするって感じだ。日向の速攻は 確かに縦横無尽な上に予測が立てづらいけど、打つ場所が判るのなら話は別。……まだまだコースの打ち分けが日向は出来てないから、フリー気味になったとしても、レシーブで処理するって感じか。音駒の守備力を考えたらあり得そうな話だ」

「……確かにオレの時は確実に2枚は付いてきたし、まだ様子を見るのも良いかもしれないけど……、さっきの流れに関しては火神の言う通りだった。ずっと日向の方を見てたし」

「はい。東峰さんが言う様に、まだ数プレーですし、確実間違いない、とまでは言えません。……ですが、向こうの7番、あの体躯で翔陽に負けてないくらい動きが速いのは事実です。身長が高い上に翔陽のあの速さにもう追いついてきてるって事実は無視できないかと。……もし、捕まえられても、落ち着いていきましょう」

 

火神の言葉で 日向の手に入る力が上がった。

負けられないし、負けたくない。どんな壁が来ても打ち抜ける様に、と掌をギュっ、と握り締めて拳を作る。

 

「翔陽! 後ろにはオレが居るんだ! おもいっきりやれよ?」

「っ! あス!!」

 

西谷に良い具合に力を抜かせてもらい、改めて日向は 犬岡の方を見た。

犬岡自身も、【次は捕まえてやる!】と言う強い決意を目に宿らせている様で、じっと日向と見据えていた。数秒間互いに譲らず。

 

 

 

 

 

 

烏野のコートのやり取り。

全て聞き取れるワケはないが、何だか嫌な予感がしたのか、猫又は力を抜いて 座ってた椅子に更に もたれ込む様に身体を預けた。

 

「んっん――。むぅ」

「どうしました? 猫又先生」

「いや、研磨の作戦なんだけどな……、犬岡はまだ抜かれてるが このセットで良い具合にハマりそうだな、って思ってるんだけど……、まーた あの11番が 何かやらかしてくれそうだな、と思って」

 

むぅ、と口元に手を添えながら、猫又は火神の方を見た。

 

孤爪が火神に感じた印象。

 

【日向の影に隠れている】

 

と言う印象は それは猫又にも少なからずあった。

あれだけのサーブを打てる選手なのであれば、他のスキルも低いとは思えない。

ピンチサーバーと言ったサーブ特化型の選手も確かにいるから一概には言えないのだが、それを踏まえたとしても、妙に静かだ、と。

ブロッカー3人とも右側へと片寄らせる配置 デディケートシフトに変えた時点で何等かの変化を少なからず期待していたのだ。

 

そして案の定、何かを話している姿が見て取れる。内容までは流石に把握できないが。

 

「もうこちらの意図に気付いたと? それはそれで早くないですかね。……確かに、何か話してる様には見えましたが 幾ら何でも……」

「ああ。確かにな。あの配置は あの社会人兄ちゃんの攻撃にはきっちり対処出来てるし、ブロックとレシーブで返球率が上がっている。だから、そっちの対処法って思ってくれても全然不思議じゃないんだが……、気のせいかな。さっき犬岡の方をじっと見てた気がするんだよなぁ」

 

日向を追いかけだして数手目。

最初はチラリと、2度目からははっきりと、視線が動いているのが判った。

最初はボールを目から逸らせるワケにはいかないから、当たり前か、とも思えたが……。

 

「研磨は予測が上手い。……それは他人が苦手で他人の目を気にするが故に、よく観察するからだ。その結果、【コイツはこういうタイプできっと動く】とか【こいつはこういうのが苦手そうだ】とか、予測を立てて 組み立てていく。……んだがなぁ。研磨があの11番は隠れてる(・・・・)、って表現した時点で、ちょっとだけど嫌な感じがしてたんだよ。つまり アイツの観察の外って事だろうし」

 

ぎしっ、とパイプ椅子を鳴らせながら、腕を組み替えながら考える猫又。

確かに今はハマりつつあるのは事実。犬岡は回数を重ねるごとに間違いなく日向との距離を縮めているのだ。作戦は順調。点差も変わらない。このままで何ら問題ない、とは思うのだが。

 

「ん……、先ほどのタイムで、猫又先生は奥に鎮座している大鬼を引っ張り出す~と言ってましたし。今はまだ静観する方が良いのでは? ウチは良い形になりつつあるのは間違いないですし」

「うーむ……。それもそうか。犬岡は期待通りの動きをしているのは間違いない所だ」

「ですね。犬岡は体躯もある上に素早さも一級。あの様子では もうじき捕まえると思います」

 

と、直井と猫又が話題を犬岡の事へと変えていた丁度その時だった。

影山から日向へのセットが始まろうとしていたのは。

 

 

「アイツは頭を使ったプレーは全然駄目だけどな。……だが、ひとつの事を徹底してやらせれば、大いにその力を発揮する。単純な脚力と体力以上に、集中力があるからだ」

 

 

その期待通り。

今度は、日向の速攻の攻撃を先ほどよりも深く指先に当てたのだ。

僅かの差だが、驚くべき速度で対応しつつある。

 

そして犬岡の居る場所から打たれる、と言う事を頭に入れておけば、ボールの軌道を読むのもそう難しい事ではない。今度は日向の得点にはならず、後ろで構えていた夜久が問題なく拾い上げた。

緩やかな回転で弧を描きながら孤爪まで返球されたAパスは理想的なレシーブそのものだ。

次にどうセットしてくるか非常に読みづらい。

 

 

「オレだって攻撃も負けないぜ!!」

「(速攻来る!?) オレだってブロックも負けない! 止めてやる!!」

 

 

犬岡が助走距離をある程度確保して突っ込んでくる。

日向も、負けじと犬岡を見据えていた。

 

そして その行動こそが日向にとっての悪手となる。

犬岡の真っ直ぐな言葉と素早さは、それだけで十分優秀な囮となるので、それにつられた日向は、孤爪のセットする、と見せかけてのツーアタックに気付く事が出来なかったのだ。

 

極小の動きの孤爪。影山とはまさに対極と言っていいセッター。

 

それは 孤爪自身が あんまり動きたくないから、周りが過保護に……と言う本人のちょっと難あり気味な性格を最大限に機能させた結果、非常に読みづらい動きとなっているのだ。型に嵌ればかなり厄介な存在である。

 

 

「!」

「っ、と!! 翔陽悪いっ!」

「へっ!? ふぎゃっ!!」

 

 

だが、そのツーアタックは 火神の片手のブロックにて阻まれた。

孤爪が火神をそれとなく警戒していた様に、火神も当然ながら孤爪を警戒していた。ツーアタックの姿勢は逃さず見ていた。こういうのは一番初めが肝心で、これ以降は少なくとも火神が前衛にいる間は、極力控える様になってくるだろう。忘れたころに不意打ちとしてしてくるかもしれないが、何本か抜かれるとは思っていたが、一番初めを止めれたのは僥倖だ。

 

日向は、犬岡に集中しすぎていて 孤爪の攻撃の気配に一切気付いてなかったようなので、火神は 声掛けよりも先に身体を動かした。

 

結果 日向が火神の隣でブロックを構えていたので、少し当たってしまってふっ飛ばしてしまったが。

 

「ぼえーーっ!」

 

ずざざーっとコートにヘッドスライディングしてしまう日向。

見事、孤爪のツーアタックを止めたボールは、今度はトラが飛びこんで拾おうとしたが、後ほんの手一つ分の距離で床に落としてしまった。

 

 

「火神ナイスブロック!! それと日向大丈夫か?」

「よく気付けたな!? 今の抜かれてたら オレ、絶対間に合ってなかったわ、ほらほら翔陽!」

 

澤村と西谷が日向をひっぱり起こしつつ火神を称賛する。

 

直感(ゲス)ブロック、成功して良かったです、っと、翔陽。大丈夫か? 悪かったな。ブレーキ掛けれなかった」

「いてて……、だ、大丈夫大丈夫。ビックリしただけだ! くっそー……、ぜんぜん気付けなかった!!」

 

日向は、倒されてしまった事よりも 孤爪に淡々と頭上を抜かれてしまった事に憤慨気味だった。どんな高い壁でも打ち抜いてやる! を信条としている日向。背丈関係なく やっぱり自分の頭の上を抜かれるのはそれなりに悔しいらしい。

 

「おいボゲ。ちょっと当たったくらいで吹っ飛びやがって! 弱すぎんだろうが! その癖 力み過ぎなんだよ。ちょっとの隙も向こうのセッターに見られてんぞ!」

「うぐぅっ……」

 

 

ぐぅの音も出ない日向に追い打ちをする……事は無く、その後 ちらっ、と孤爪の方を見る影山。

その孤爪の表情は、影山が知る中でではあるが、本日初めてほんの少し歪んでいた。

殆ど無表情に近いのだが、おそらくは止められた事が少なからず悔しかったのだろう、と思えた。

 

 

「ふん……」

 

 

コートの外でも、何だか悔しそうにしている月島()が居るんだから、直接止められたともなれば、男なら普通だろう。

 

 

 

 

「おおお………! 今のは【ツーアタック】と言うプレイですね!? そして火神君がそれを見事止めてみせた、と! てっきりトスを上げるものと思ったのに、あの火神君の反応の良さには舌を巻きます!」

「反応の良さもあるが、今のは火神が言ってた通り、【ゲス・ブロック】って名のブロックだ。見事にハマったな」

「え……? げ、げす??」

 

ゲス、とは下衆?? と思ってしまった教師の武田。……が、爽やかなスポーツであるバレーでそんな下衆なんて漢字は使わないだろうから、直ぐに頭の中では否定したが……。

 

 

「【読みと直感のブロック】 ゲス、つまり GUESSっつーのは、推測って意味で トスが上がる前に攻撃を読んでほぼ直感で跳ぶって事だ。当然、直感が外れる事だってあるし、さっきみたいに味方ブロックにぶつかったり、時には邪魔になったりしかねない個人技頼みのブロックだわな」

「な、なるほど……、メモメモ」

 

ぱっ、ぱっ、と烏養から聞いた言葉を一言一句逃すまい、とすかさずノートにメモを取る武田。

それを横目で感心しつつ、烏養は火神を見た。

 

「(今の読みも 見事の一言に尽きる。正直、外から見ててもツーで来るって全く読めなかった。あの7番の速攻とばかりだった。あの何一つ読ませてくれないセッターの攻撃を見事読んじまったよアイツ)」

 

 

 

 

 

先ほどの攻撃の際、日向の隣でブロックを構えている火神は冷静に戦況を見定めたのだ。

孤爪には決して視線を送らなかった。他人の目を気にする男だから、不自然に見続けていると、ツーアタックを打とうとせず、直ぐに切り替えてくる。それが判っていたからこそ、直感のブロックが最大限に活きた。

 

視界の中に孤爪の事を留めつつも決して視線は向けない。

孤爪が跳んで、ボールが触れるか触れないかの刹那を見極めた。

後は、孤爪の身長が高かったら追いつけなかったかもしれないが、自分の方が身長が高かった事、そして犬岡の様に片手のブロックだったからこそ、追いつける事が出来た。

 

 

 

 

 

「今のは 完全に読まれてしまったな研磨」

「………む。なんか、ズル(・・)されてる気がしてきた」

「は? 何だよ研磨。ズルって」

「………最初っから。………やる前から攻撃する(ツーアタック)ってバレてたみたいな感じ? ……誠也チート使ってる? チートは あるまじき行為…………」

 

孤爪は、また少しだけ表情をムスッと歪ませた。

ゲーマーとして、チートを使った不正プレイは断じて許容できるものではないのだ。処罰すべき案件だ! とも思ったりしている。

地道に積み重ねていって、レベルを上げ、アイテムを集め、自力で攻略していく事に意義があるのだ! と頭の中で考えていたが……、そこまで声には出さなかった。

勿論 ちゃんと仮想と現実の区別は付けられているから。

 

「かーっ 研磨の癖に馬鹿発言でたーーっ! つーか 負け惜しみかよ。負けず嫌いなのも相変わらずだが、それは流石に見苦しいってモンだぞ? そもそもなんだよ ちーとって」

「うるさいトラ。そういえば さっきのフォロー、遅かったんじゃないの? トラも取れなかった事棚に上げてない?」

「うぐっ……わ、わーってるよ! オレだって あそこから手が出てくるなんて思ってなかった! くっそーー! 次は拾ってやる!!」

「はいはい。反省しつつ 次いってみよーか。止められたんなら、それを拾っていくぞ。粘り負けないようにな」

「早くアイツのサーブ来ないかなぁ……??」

「そんなの喜ぶの夜久(やっく)んだけだから」

 

 

音駒側も少々孤爪の攻撃をブロックされた事に驚きを見せていたが、落ち着いて対処する様に、と声掛けをした。

点差はまだ3点。烏野は20台となり、自分達は17。まだまだ試合はここからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

烏野からのサーブで再び試合は動き出す。

 

 

 

レシーブに関しては、火神や影山の強烈なサーブのせいで、どんなサーブにも最大級の警戒をされてしまっているので、なかなかサーブで崩す事が出来なくなってしまっていた。それはスパイクでも同じかもしれない。

それは 守備がまるで加速しているかの様に感じられる程、濃密に練り上げられた守備力。

 

烏野の攻撃も綺麗にAパスで返され、今度はツーアタックで来る事はなく、孤爪はそのままトラにオープントス。

 

「フェイントだ! 前っ、前っ!!」

「っ!!!」

 

トラのスパイクには、東峰と月島と言う2トップの身長を持つ2人がついていた為、強引に打ち込む事はせず、フェイントを選択したトラ。

そのボールは、ブロックを緩やかに飛び越え、アタックライン内に落ち、見事ブロックやレシーブを欺いてやった……ように見えたのだが、ストレート打ちを警戒していた火神に飛び付かれ何とかレシーブで上げられる。

 

「ナイス火神!!」

「カバー!! よろしく!!」

 

飛び付いて、倒れるのではなく 器用に回って直に復帰。それを見た西谷は【ローリングサンダー2だな!】と笑顔で呟きつつ、【任せろ!】とフォローに回る。

 

 

「西谷さん! ライト!!」

 

 

ライト側から呼ぶのは 影山。

普段セッターである影山のコールには少々驚きを隠せない。

それは、西谷と代わって外で見ていた日向は勿論、控えの田中、菅原も同様だった。

 

 

 

「エッ!? 影山がトス呼んだ!?」

「何だか珍しい光景って感じ!?」

「うんうん」

 

 

勿論、影山の実力は全ての面において高い。

嘗て、レシーブもトスもスパイクも、全部自分がやれれば良い、と名言(日向が抜粋)を残している。それだけ豪語するだけのスキルは持ち合わせているのだ。……あの凄まじい超精密なトスに目がいきがちだが。

 

「影山!! ラスト頼む!」

 

西谷がアンダートスで影山に上げた。

乱れたセットの為、相手ブロッカーにも当然マークされて丁度2枚ブロックがついてきたが、影山は冷静にブロックの穴をロックオン。

 

ズドンッ! とブロックにもアンテナ(赤と白のシマシマのやつはアンテナって言うよ)にも当たる事なく、ポールとブロックの間 丁度ボール1つ分の隙間を見事に打ち抜いた。

 

 

「「「!!!」」」

 

 

セッターの見事なストレート打ちに絶句するのは、烏野エースの東峰。そして 外で見ていた田中や菅原、……日向も同じく表情を面白いくらい歪ませていた。

 

 

「「ナイス影山!」」

「ウス。ナイストスでした西谷さん」

「結構締められてたのに、よく打ち抜いたな。ナイス!」

 

あんまり 驚いてない組である澤村や西谷、火神は普通に賞賛。

影山は、それに答えた後に、ぐるんっ、と首を回して 外に出てる日向の方を見て指さした。

 

「オイ! 今のがストレートだからな! サイドライン沿い真っ直ぐ! 外で見てんだから見て覚えろよ! ちゃんとコースの打ち分け出来る様につったろ!」

「ふぐぅ……!!」

「あ、でも あまり狙いすぎてアンテナには当てないようにな? 翔陽。ブロックアウト狙うんなら全然有り」

「んな高度な打ち方まだ日向(コイツ)には まだ無理だ」

「はぐぅ!! む、無理とかいうなーーー!! 今にやってやるよっ!!」

 

 

影山(コイツ)もハイスペックだって判ってたっちゃ判ってたんだけど、なんか、一番腹立つかも~~~~」

「全くです。ウチの1年たち、色々と凄すぎて1周回って小憎らしい」

 

絶賛は絶賛なんだけれど、あまりに高かったら空を見上げているみたいな感じで、眩しいやら首が痛いやら、色々と嫌な感じも出てきて………、と割りと理不尽気味な中傷を受けてしまった影山。日向への公開教授が無かったらまだ違ったかもしれないが。

……因みに、菅原が【1年たち(・・)】と言ってるので、当然ながら その中には 大活躍中の火神も居たりしているのである意味飛び火である。

 

 

 

「やはり凄いですね。あの烏野高校のセッター。WS(ウイングスパイカー)だって言われても全然不自然じゃないです」

「あぁ。あの9,10番コンビを乗せるのも怖いが、9、11番コンビも合わせだしたら未知数になってくる。組み合わせを考えたら倍増しどころじゃなくなるかもな。……考える事が多すぎだ」

「研磨も今いろいろと考えてるみたいですね。特に11番に止められてから。烏野のセッターに対抗してあれだけやれれば……って言っても無理かな……」

「そりゃ仮にやれるだけの実力があったとしても 無理無茶ってもんだ。……他人が苦手って事は目立つ事を嫌う性格なんだから。だからこそ必要最低限しか動かない。それが強みでもある。脳を最大限に活用するためにも。そして、ああ見えて研磨は負けず嫌いだ。今はじっくりと整えてる所だろう。音駒(うち)の強さを存分に発揮しつつ」

 

猫又は 孤爪を見て そして他のメンバーたちも見た。

今、止められた事を頭に入れつつ カバーを忘れずに、夫々がインプットして行っているのが判る。まだまだ粗削りな部分が多いものの 実に多彩な引き出しを持つ未知数の烏野。

好敵手となるのがよく判る。

 

時に緊張し、引きつってしまう事が多いのだが、それでも こんな有意義な練習ができる事に、驚く事が多い事に ついつい頬が緩んでしまう自分が居る。

 

「いやぁ、ここまで躍動する試合になるとはな! 武田先生には感謝せんと! ………んでも、あのまだまだバレーに関しては初心者で素人なのに、繋心の奴はなっとらんなぁ? 試合も選手達自身がちゃーーんと組み立てていってるのに、背中の押しが足らんのじゃないか?」

「!!」

 

 

聞こえたワケでもないが、烏野側に座っていた烏養は 何かを察したのかビクッ と身体を震わせていて、猫又の方を見ていた。

 

そして、猫又がニヤニヤと笑っているのが判る。

 

聞こえたワケでは断じてないのだが……、何となく言わんとする事がその顔から判った。

なので、より引き締めなおすのだった。

 

 

 

 

 

 

そして、試合も進み ブロックの要 月島が前衛に来た。

じっ……と孤爪を見据えているのが判る。そして見られているのが孤爪も判る。

 

「……(……さっきのフェイントもそうだけど、こいつは賢いやつだ……。冷静によく見て考えれるタイプ。翔陽とは真逆。………でも、それを隠そうとはしてない……まだ誠也よりはある意味安心できるかな……)」

 

一瞬だけ目があった孤爪は、瞬時に視線を逸らせた。

月島はそれに気にする事なく、淡々と構えている。

 

どう攻めようか、どう攻略すべきか、孤爪は色々と模索し、頭の中で可か不可かを検証し続ける。

そして、いざ実行する時 味方たち、つまり血液が活躍をするのだ。

 

 

「山本!」

「よっしゃ!!」

「ナイスレシーブ!」

 

 

半端な威力のサーブでは完璧に安定して取られる。一縷のミスも望めない程に。

 

それが観客側の席ではよく判った。返球率を考えても間違いなく例年通りのレシーブ精度だと。

 

 

「しっかし、やっぱ相変わらずレシーブ。レベル高ぇな音駒は」

「うん。……セッターが殆ど動かずに済んでる。トスを上げる前の動き(モーション)が少ない」

「ぜんっぜん読めねぇ。何処に上がるのか……。ってかさっきの、火神のヤツはほんとよく読んだよなぁ」

 

 

 

 

 

 

山本からAパスで孤爪に返すボール。

センターか、レフトか、ライトか、はたまた先ほどあったツーで返すか、選択肢が多ければ多い程、ブロックは迷う。

 

「(誰に上げようかな……。誠也は後衛、なら普通止められた後での2回連続はないって思うツー………? いや、まずは……)」

 

孤爪は ちらっ、とライト側に控えている海を見た。海と孤爪は目が合い、そして 頷く仕草も見てとれた。

それを見た月島も反応する。

 

「! (ライトか)」

 

まだ、ボールは孤爪の頭上。

火神のゲスブロックに触発もされたのか、月島はいつもよりも反応が良く思えた。

 

だが、それをも見越していた孤爪は 月島の考えを訂正する様に自然に極小の動きでトスを上げる。

 

「レフトだよ」

「!!」

 

完全に出鼻を挫かれる。一歩出してしまい、重心もライト側に寄っている。一度振られてしまえば もうボールには追いつけない。

 

 

「(やっぱり よく見てた。……反応も早い)」

 

上げられた先に構えているのは福永。

月島は、孤爪の視線につられて間に合わず、烏野のブロッカーは影山の1枚ブロック。

 

「影山! ストレートしめろ!」

 

火神は月島が振られた影山に後ろから指示を出した。

今後衛は、火神と西谷、そして澤村の烏野トップの守備力を誇るローテ。ストレート側には澤村がおり、今クロス側に控えているのが西谷と火神。西谷が隣にいる時点で、相手側には大分牽制されているだろうと予測。

なら、影山にはストレートを締めさせて、相手がクロスに打つよう誘発させてもらうのが良い、と判断した。

その判断、そして意図を後衛のレシーバー陣も理解した様で、小さく鋭く構えた。

無論、影山のストレート側のブロックを抜いてくる可能性もあるので警戒を強めながら。

 

ドっ!! と打たれたクロスへのスパイク。

 

狙いは丁度西谷と火神の間――やや火神より。

互いに取り合い、若しくはお見合いをしてしまう可能性も高い良いコースだった。

 

だが、西谷は 打たれたその刹那の時、火神の動きを横目、視界の中に捕えていた。

頭の中で、自分の領域を、そして火神の領域を感覚で感じ取り、その領域の外である事も瞬時に判断。故に火神の取りこぼしに備える方へと回った。

 

互いに以心伝心出来ていたワケではないが、この時は見事にハマった。

火神自身も 【これはオレのボールだ】と認識していて、コース取りをしていたからだ。

 

正面を取った――とは言えないが、身長に見合うだけのリーチを活かして腕を伸ばして見事にボールに手を当てた。だが、当たった時のボールの入射角が悪かった様で、ボールはやや勢いよく後方へと弾き出されてしまった。

 

 

 

「すいません! フォロー!!」

「任せろ!!」

 

 

そこに、西谷がカバーに入って影山の方に高く飛ばした。

 

「影山ラスト!」

「はい!」

 

影山は そのままスパイク。

音駒もどうにかボールを触る事が出来たが、流石にコート後方の彼方へと飛んでいったボールを繋ぐ事はできず、再び烏野の得点とした。

 

 

 

 

 

セッターの影山からのスパイクは 勿論ながら、あの福永からのスパイクをレシーブした火神に少なからず 驚きが見える音駒。孤爪に関しては また 【チート】の文字が頭の中を過っていた……が、流石に今回は否定。ズルでも何でもない見事なレシーブだから。

 

それを感じ取れたのか、火神は笑っていた。

 

 

【THE-Aパス】

【守りの音駒】

【過保護上等セッターを動かさないのが音駒品質】

 

 

音駒を思い浮かべたら、それらの言葉が頭を過る。

 

そう、彼らはとても粘り強い。

どんな攻撃にだって 粘って粘って 地道に、丁寧に、1点1点を積み重ねていく。ボールを繋いでいく。どんな戦術にだって慣れていく。

 

 

そんな音駒を火神は知っている。

 

 

ひょっとしたら、この場の誰よりも知っているかも(・・)しれない。誰よりも考え続けたかもしれない。孤爪の事を猫又は予測が上手い、と称しているが、火神はそれ以上かもしれない。

何故なら 何度も何度も夢想したから。見えない部分も想像し続けていたから。

 

 

そして今も。

音駒の事は尊敬しているし、敬愛していたりもする。

 

 

……でも、負けたくはない。

 

 

――ある意味、皆の倍くらいは 記憶(からだ)に刻み込み、研ぎ澄ませたレシーブ力だ。そう簡単に粘りで負けたくない。これはオレの個人的な挑戦でもある。

 

 

 

火神はそう思いつつ笑っていた。

その笑みを改めて宣戦布告と捉えたのか、或いは音駒のプライドを刺激したのか、イラつき顔を見せる者も多かった。

 

だが、それ以上にしっかりと火神のその言葉なき意図を受け取った。

 

 

【粘り負けてたまるか!】

「!」

 

 

火神は思わず目を見開いた。

自身の挑戦にも似たその顔を見た音駒たちからの返答が返ってきたかの様に感じたからだ。

 

 

それはまるで、1段階音駒が進化したような……、そんな感じだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………なんというか、その…… 目立たない、ですね」

「? あン?」

 

 

試合を見ていた武田の感想の1つが【目立たない】だった。

勿論、その理由もはっきりと判る。どうして自分にはそう感じるのかが。

 

「例えば……1つ目に挙げるなら、ウチの影山君。素人の僕が見ていても、【なんか凄い】感じがビシビシ伝わってきます。……けど、音駒のセッター君は何か凄いことをやってるのかもしれないけど、見ててもよくわからない。……そして、もう1つは火神君。あのサーブから始まり、先ほどのレシーブも凄い、と僕は感じました。西谷君が言っていた一番の歓声が出るのがスーパーレシーブ、と言う意味がよく判る程に。……でも、音駒側は 凄く粘っている様に見えるんですが、どうしても……その……」

 

武田の感覚。それは烏養にもよく判った。

判る事をひとつひとつ、自分の解説を武田に伝える烏養。

 

「まず、影山とあっちのセッターの違いは、音駒の安定したレシーブのせいだな。多彩な攻撃を仕掛ける為に、何より重要なのはセッターの頭上にキレイに返ってくるあのレシーブだ。それがあるからこそ、向こうのセッターは考える時間、余裕があり、そして本領を発揮できているんじゃないか? ウチの場合は 多少レシーブが乱れたとしても、あの影山が強引に力ずくでカバーしちまう」

 

影山の凄さについては烏養もよく判る。

あの日向・影山の速攻を見るだけでよく判る。超精密機械ではないか? と思えてしまうから。

最高打点に寸分も狂いなくボールを持っていく空間認識力は努力でどうこうできる問題じゃないから。

 

そして、次の印象。

 

「それと火神の件は、音駒が目立たないと言うよりはこっちが目立ってるって感じだ。さっきのプレイが決定的だな。火神が攻守で目立ちすぎてるからそう感じたんだろうさ。西谷や澤村も同じく守備力は高い。……が、他がどうしてもまだまだ粗削りだ。ミスも目立つ。……だが、音駒は満遍なく全員の守備力が高いんだ。あのサーブにしろ、レシーブにしろ 一度でも目立っちまえば、そうそう眩む事はないからな。それは日向のあの囮にも言える事だが」

 

ふむ、ともう一度烏養は 両チームを見た。

 

「セッターの影山とオールラウンダーの火神。2人の才能の塊が、まだまだデコボコしてるチームを繋ぎきってるのが烏野なら、セッターである孤爪を全員のレシーブ力で支えるのが音駒。……先生。よーく見てろよ。さっきの火神のレシーブは見事だっつーことは紛れもない事だが、アレと同質な事を、音駒の選手達もやってるぞ」

「……はいっ」

 

 

武田は再び試合を見た。

確かに、影山・日向の攻撃、火神のサーブ&レシーブ。

非常に目立つ。見栄えがする。

 

だが、どんな目立つ攻撃をしたとしても、同じ1点に違いはない。如何に強烈なサーブでノータッチエースをたたき出した所で、1点。

如何に小さな選手が、大きな選手の上から叩きつけて点を取ったとしても同じ1点。

5点や10点取れている訳じゃない。

 

 

【粘れ、粘れ。拾え、拾え。……オレ達は血液だ。滞りなく流れろ。酸素を回せ。脳が正常に働くために】

 

 

どれだけ凄い選手が居たとしても、全てをカバーできる訳じゃない。

 

それが点差となって徐々に現れる。

最大4点ビハインドだった得点差も気付けば24-24の同点のデュース。

 

 

 

「あの11番の多彩さには驚かされるもんだ。多芸は無芸と言うが、どうやら当てはまらんらしい」

「研磨が隠れてる、と評していたのはある意味当たっていましたね。後ろに回っても前衛の影に隠れて粘り強く守っている。相当な守備範囲の持ち主。まさに攻守共に無欠のオールラウンダー……」

「うむ。その中で 一番驚いたのは やはり漸く止めた犬岡のブロックを見事カバーしてしまった所だな!」

 

わはは! と大笑いと共に 思わず喝采してしまった場面があった。

敵味方問わず、この体育館全体を包み込む程のものだった。

 

それは、23-23の大事な局面。

 

後1点でセットポイントの場面。

 

日向を追いかけ続けていた犬岡がとうとう捕まえた。片手ではあるが日向のスパイクを完全にシャットアウト。ブロック、と言うより スパイクをスパイクで返した、と言う方がしっくりくるかもしれない。触るだけでなく下に叩き落したのだから。

 

【やっと捕まえた!!】

 

と犬岡が言おうとしたが、それを口に出す事は出来なかった。

 

それは 伸ばして伸ばして伸ばして―――伸びきった右手。

コートとボールを隔てる厚さ約1cm程の手。ボールとコートの間にその手を滑り込ませ、得点を阻んだ者がいたから。

ボールと日向を見続けていた犬岡。空中で 今日 初めて火神の目を見た気がした。

 

ブロックフォローを見事成し遂げたのは火神。

そのボールはふわっ! と浮き上がり、そのままネットの白帯に当たり……そして音駒側へと零れ落ちた。

音駒は まさかのレシーブで得点を許した形となったのだ。

 

【せいやゴメンっ!!】

 

と、思わず謝ってしまった日向。

そんな日向に火神はただただ笑って答えていた。

 

【いつも猪突猛進だったのは翔陽だろ? 色々と拭ってやるなんて今更じゃん】

 

それを聞いた瞬間、一瞬静まり返っていた体育館が大歓声だ。

手に汗握っていたラリー間のスーパーレシーブだったから、尚更。

白帯に当たったネットインじゃなければ、ブロックフォローに備えていた選手達が拾えたかもしれないが、それを鑑みても脱帽ものだった。

 

 

【………絶対、誠也チート使ってるデショ?】

 

 

ジト目で 孤爪が火神を見ていた。観察しても観察しても、何だか掴めない相手は初めての経験だった。ゲームでもだ。だからこそ、孤爪は【チート】と称したのである。

 

それを聞いた火神は思わず噴き出した。

 

そんなの(チート)を使えるなら、もっともっと凄い事しますよ? 例えば…… ほら、研磨さんが熱血になるチートとか面白そうじゃないですか】

【………ヤメテそんなの使わないで】

 

 

その後、互いのチームが笑っていた。

チート云々の話は、烏野側はよく判ってなかった。

 

 

だが―――……音駒側は火神の意見【研磨熱血化コード】を大いに支持したのはまた別な話。

 

 

 

 

「9番と10番。9番と11番。それぞれのコンビに注視してきたが、一番のコンビはあの10番と11番かもしれないな」

「そうですか?」

「ああ。何も強力な攻撃手段が1番って訳でもないからな」

 

日向のミスを火神がフォローする。

影山と日向の超速コンビも度胆を抜かれ、印象に特に残るものだったが、こちらも何だか堂に入っている様に見えたのだ。

 

 

 

 

「………影山。もっかいオレに上げてくれ。次は、次こそは打ち抜く」

 

「っ!?」

 

 

 

ピリッ、と空気が一瞬震えた気がした。

その小さな身体の何処に威圧するような気配があると言うのだろうか。

影山は一瞬だけ気圧されてしまったが直ぐに整え直して答える。

 

 

 

「あたりまえだ」

 

 

 

影山の言葉を聞いて、日向の目は徐々に大きく見開かれつつあるのを猫又は感じ取った。

 

 

 

堂に入っている、と言うのは時として良い事ばかりではない。

あのプレイをそう表現する、と言う事は 常に守ってもらっているのが当たり前、と思われてしまってるようなものなのだ。

 

雛鳥であるならば、それで良いだろう。……だが、進化を求めると言うのなら、そうはいかない。仮にも男なのなら。もっと上を求めるのなら。

 

 

「………あの10番はまだまだ雛鳥。そこから進化したら……、金棒ではなく 烏野に新たな鬼が生まれるな」

 

 

恐ろしくもあり、そしてそれ以上に楽しみでもある。

 

 

ゴミ捨て場の決戦を、全国の地で行う。

 

 

それが長年の夢だった。

 

今、互いに高揚し合い、そして得点を重ね続けていく両チームたちを見て、猫又はただただ自分達に姿を重ね、そして笑っていたのだった。

 


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