形あるものに終わりはある。
必然だ。全ての存在には定められた時間があり、その時間の中で生を謳歌するのが生物だ。故に命の終わりのないものは生物ではなく、ただの現象―――もしくは概念だ。
だから人の生には終わりが来る。人は生まれ、生活し、発展し、進化し、そして最後には死ぬ。それは神によって定められた命のサイクルであり、矮小な人間の身では抗う事の出来ない必然的な終わりだ。あるいは人間を超越し別の存在へとなる事が出来れば逃れることも可能だろうが、人類の99%はそれから抜け出す事は出来ない。故に多くの人間は定められた死を受け入れ、この世を去る。
人が死ねばどうなるか?
その問いに対する回答は実に単純であり―――来世へと向かうだけだ。
だがそれにももちろん手順は存在する。まず死した魂は彼岸の岸へと向かい、死神に三途の川を渡してもらい、そして黄泉の国で死の裁定を閻魔に受けてそれぞれに相応しい来世を迎えるのだ。それが死者の裁定のシステムであり、この世にあぶれものを、化外を生み出さないための方法として太古の昔より生み出された法則だった。
人類がその数を少ないうちはまだ一人でも大丈夫だった。
だが科学の発展と共に人類の数は爆発的に増える。死産の数は減り、国の人口が増える。すると寿命を迎え死ぬ人間の数も増える。それだけであったらまだ問題はなかったが、発展した国は領土を奪い合おうと戦争を始める。
爆発的に死人は増え、
そして冥界も死者で溢れ返す。
とてもだが簡単に死者を裁ける状況ではなくなった。もっと人員が必要だった。
そのころすでに幻想郷へ―――幻想に属するものが存在できる最後の理想郷に冥界は組み込まれていた。科学の発達により信仰や、幻想という発想自体を必要とする存在はもはや外の世界では活動できない。冥界もまた幻想郷へと押し込まれた場所。その主が信仰を必要とせずとも―――多くの存在は幻想郷へと移る必要はあった。
そこで、未だかつてない死者の数の前に冥界がとった措置は簡単なものだった。
人材が足りないのであれば、増やせばいい。それだけの徳を積んだ地蔵を閻魔として転生させれば公平に人の魂を裁く存在になれる。その発想から日本中の多くの地蔵が閻魔へと転生させらた。見習い閻魔として転生した多くの地蔵は知識を持っていたが、実際に閻魔の裁判を見た事はない。故に人を裁く前にはその公平さ、そしてその行いを見なければならない。
閻魔たちには基本的な事を教える先輩が与えられた。
◆
「四季映姫」
「ハイ」
「君は今年生まれた閻魔の中で期待の株だ―――その理由は解るだろ?」
先任の閻魔がそう言ってくる。その理由は解っている。自分が持つ能力は閻魔の裁定を考えると非常に有用な能力だ。自らの能力が人を次の世に進めるための助けになる―――大いに喜ばしい事だ。閻魔として転生したその役割、一生をかけて果たしたいと思っている。
「お前の面倒を見る閻魔様はこの冥界にもっとも古くから存在し、一番多くの業務をこなしてきたお方だ……失礼のないようにな?」
その言葉に軽く緊張する。それはつまりそれだけ自分が期待されており、注目されているという事を示しているのだ。かなりの待遇だ。これは確実に高い評価を出せる様に頑張らざるを得ない。使命感に燃えながら先導してくれる閻魔にについて行く。
彼岸花が咲き誇る冥界を低く浮かぶように進みながら進んでいくと、死後の裁定をする裁判所へと到着する。冥界の拡張に従い昔は一つしかなかった裁判所が一気に数が増えたが、そのうち一番古い建物へと向かう。
入り口に入り、木でできた床を歩きながら次の扉の前で止まる。
「この中が裁判所―――あのお方が裁く場所となっている。くれぐれも失礼のないように気を付けてくれ」
「は、ハイ」
緊張をしながらも、扉を開ける。
その中に見えたのは広い空間だった。
広い空間には大量の魂が存在し、その一番奥では一人の男と、そしてその横には小さな少女がいた。此方の存在に気づいているようだが閻魔は此方の存在を無視し、そこに並ぶ魂を見ていた。両目でではなく、その額についている第三の目で。
数瞬見つめたところで閻魔が手で印を組み、
「TON☆JI☆CHI!」
その場にいた魂はそれぞれに相応しい来世へと旅立った。その様子を閻魔は満足そうに見て、その横にいる少女はまるで危ない薬を使ってきたかのようにその姿を見てガクガク体を揺らしている。とりあえず静かに扉を閉めて、
「先輩、これ参考にならないです! お願いします! 変えてくださいお願いします!」
四季映姫・ヤマザナドゥ、その生涯における唯一のワガママであった……。
そんなわけでTON☆JI☆CHI裁判の夜行様とその姿を見てヘブンしてるロリ龍水さん。ザミエル姉さーん! 貴女の娘変態です。マジでどうにかしてください。
神咒神威神楽遊んでる人にしか解らない超一発ネタ。