ストライク・ザ・ブラッド~神代の剣~   作:Mk-Ⅳ

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第七話

前回のあらすじ

執事と美女軍団とホモ

 

ヴァトラーの船に迷い込んだ翌日。ホモがベットに潜り込もうとしてきたので、首の骨を折って海に投げ捨てたりしたが、無事朝日を拝むことができた。

キラが作ってくれた朝食を食べた後、キラや風呂場で知り合った水着ガールズ(今後はオシアナス・ガールズと呼ぶことにする)と談話したりして暫く寛いでいると、煌坂に呼び出された。

どうやら姫柊から電話がかかってきたそうである。

 

「は?古城の身体が乗っとられた?」

『正確に言いますと少し違うのですが、そうなります』

 

姫柊の説明を要約すると、昨日パーティーの時話していたユウマって奴が古城の家に泊まり、朝古城が起きたらそのユウマって奴の身体になっていたそうだ。

姫柊の仮説ではそのユウマって奴は魔女で、空間制御魔術を使い古城と自身の五感を入れ替えたのではないかとのことだ。

確かにそれなら神に呪われた吸血鬼の身体を奪うことはできる。直接奪おうとすれば呪いでそいつの自我が喰われて廃人になるだけだからな。

 

「だったらお前の槍で今の古城の身体を刺せばいいだけの話だろ。試したのか?」

 

姫柊の持つ雪霞狼はあらゆる魔術を無効化する力を持つ。乗っ取りのカラクリが魔術である以上、雪霞狼で解除するのは実に簡単である。

 

『しかし、これだけ緻密な空間制御の術式を強制的に無効化すれば、術者に相当な反動がある筈です。接続されている神経に回復不可能なダメージを与える可能性も』

「それがどうした?わざわざ自分の身体を置いていくマヌケに遠慮する必要などないだろう?死んだとしてもそいつが悪い」

 

俺が術者ならその可能性を考えて、古城が寝ている間に自身の身体を安全な場所に移して拘束している。そうしなかったんなら遠慮なくやればいい。

 

『駄目に決まってんだろう!』

 

電話口から姫柊とは違う声が響いてきた。何やらかなり怒っているみたいだが誰だ?ってああ、古城か。そう言えばユウマって奴は女だったか。

 

「うるさいぞ古城。お前今の状況が分かってんのか?このままだとお前の身体が悪用されるんだぞ?」

 

ユウマって奴が魔女なら恐らくLCOの構成員だろう。奪った古城の魔力を利用して監獄結界から仙都木阿夜を脱獄させるつもりだ。そうなれば他の脱獄囚も逃げ出し那月ちゃんの負担になる。それだけは防がなければならない。

 

『だからってユウマが死んでいい理由にはならないだろう!他の方法がある筈だ!』

「今止めなければこの島の人達が大勢死ぬかもしれないんだぞ!そんな悠長なこと言ってる場合か!だいたいお前を裏切った奴だぞ、庇う必要があるかよ!」

『違う!ユウマそんな奴じゃない!きっと何か理由がある筈なんだ!』

「このわからず屋め!そんな甘いことを言ってられる状況じゃないんだよ!」

 

俺の言っていることが許せないのか怒鳴りつけてくる古城と、裏切られてもユウマって奴を庇う古城に苛立ち怒鳴り返す。

 

「ちょっと!落ち着きなさいよ勇!」

「落ち着いている!少し黙ってろ!!」

 

煌坂が慌てて止めに入ってくるが無視して古城と怒鳴り合う。古城の方も姫柊が何か言っているが無視している様だ。

 

「勇」

「だからそれじゃ…!」

「勇」

「ああ、もう誰だ!今へぶちッ!?!?」

 

後ろか肩を揺すられたので振り返ると、バチィンッ!!と響きと共に頬に強烈な衝撃が襲ってきた。余りの衝撃に地面に倒れる。

 

「何を熱くなっているのですか勇?」

「り、リア!?」

 

顔を上げるといない筈のリアが仁王立ちして半目で見下ろしていた。

 

「ぶ、ぶつことないじゃないか!」

「あなたがわたくしを無視したからです」

「うっ…!」

 

そう言われると確かに俺が悪いけど、ぶたなくてもいいじゃない。首が吹き飛ぶかと思ったよ。

 

「事情は紗矢華から聞きました。冷静さを欠くなんてあなたらしくもない」

「だって、那月ちゃんが危なくて早く何とかしなきゃって、それにユウマって奴が古城を裏切ったのが許せなくて…」

「だからと言って、親友である古城の幼馴染を犠牲にしてもいいと?本人から聞き出していないのに裏切ったと決めつけていいのですか?」

「駄目です」

 

無意識に正座してリアの話に耳を傾ける。

リアの言う通り、那月ちゃんが危ないからってユウマって奴を犠牲にしていい訳が無い。俺が敵だったアスタルテや、堕天して世界を壊しかねない存在にされてしまった夏音を助けた様に、古城もユウマって奴を助けたいんだ。だったら俺がすべきはその手助けをすることではないだろうか。

それに状況だけを見て、ユウマって奴が裏切った確証も無いのに決めつけてしまった。自分で確かめたことしか信じないと決めていたのに。

 

「ならまずやるべきことは?」

「うん」

 

リアの言葉に頷くと落としてしまった煌坂のスマフォを拾う。

 

「もしもし古城聞こえる?」

『お、おう聞こえるぞ。凄い音がしたけど大丈夫か?』

「首が痛いけど大丈夫。それよりごめん。那月ちゃんが危ないからって、熱くなり過ぎてた。色々と酷いことを言って本当にごめん」

『いや、俺も悪かったよ。那月ちゃんを大切にしているお前の気持ちを考えて無かった。すまん」

 

互いの非を認め合ったところで今後の動きを話し合いたいけど…。

 

「そう言やよくここまで無事に来られたねリア」

 

家から港区まで距離があるのに、空間の歪みに巻き込まれずに来れたのはかなり運がよかったのではなかろうか?

 

「私がここまでお連れしたのだ神代勇」

「あんたは賢生のオッサン!?」

 

声をかけてきたのは夏音の養父で、元アルディギアの宮廷魔道技師であった叶瀬賢生であった。

 

「お義父様に一時的に釈放してもらえるようお願いしたんです。彼の空間転移魔術なら歪みに影響されずに移動できますから」

「なる程。で、君のことだから他にも何か交渉してたんだろう?」

 

彼女のことだからオッサンの仮釈放だけで終われせる筈が無い。大方予想はつくけど聞いみた。

 

「今回の事件わたくしも解決に協力させてもらえる様にお願いしました」

「君ねぇ…」

 

予想通りの答えに深く息を吐く。別に君が出てこなくてもいいのに…。

 

「君の立場ってのもあるんだから、大人しくしててもよかったのに」

「だって、早くあなたとデートしたいから…」

 

そんな頬を赤らめて見つめないで!色々とヤバイから!めっちゃ可愛いから!

 

「ゴホンッゴホンッ!それでこれからどうするのかしら?」

 

見つめ合う俺達を見かねたのか、わざとらしく咳払いして話を進める煌坂。ごめんなさい。

 

「そろそろ何かしら起きる筈だ。そしたら現地で合流しよう」

『それはいいけど俺や姫柊はどうやって向かえばいいんだ?』

「人工島管理公社や獅子王機関が誘導してくれるよ。あいつらに利用されるけど別にいいよね?」

 

恐らく連中がこの事態を打開するために、俺達を利用してやろうとしてくるだろう。

それはそれで構わん。奴らにも多少は役に立ってもらうとしようじゃないか。こちらもせいぜい利用させてもらおう。

 

『ああ、ユウマの所に行けるならなんだってやってやる』

 

俺の言葉に力強く応えてくれる古城。よし、後は時が来るのを待つだけだ。

 

「そう言やヴァトラーの奴がいなくなってるや」

 

通話を切って煌坂にスマフォを返しながら周囲の気配を探るも、あのホモの気配が船から消えていた。

 

「え、本当だ。まさか外に!?ああ、もう。出かける時は一言声をかけてからにしてって言ってるのに!」

 

 

うがー!と憤慨している煌坂。監視者に無断で外出とか相変わらずフリーダムな奴だ。そして苦労してるね煌坂。

 

「彼が動き出したとなると、面倒なことになりそうですね」

 

憂いを帯びた顔で溜息を吐くリア。アルディギアとあいつの領地は隣接しているから、あいつの破天荒ぶりは知っているのだろう。

それには大いに同意する。あいつがやることは大抵碌なことじゃないからなぁ。

そのことを考えると無性に気が重くなるのであった。


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