ストライク・ザ・ブラッド~神代の剣~   作:Mk-Ⅳ

32 / 63
お待たせしました!
ネタに詰まったりパソコンの調子が悪かったりと、手間取ってしまいました申し訳ありません!
こんなクオリティですいません!勇が女装しますので許してください!

勇「やめろオオオオォォォォ!!!」


エピローグ

前回のあらすじ

初めての共同作業

 

クサレ女をしばいた後、アイランドガード総出で、機能停止したオートマタの片付けが行われていた。

エンジェル・フォウの素体にされていた子達とクローンは、父さんの知り合いの施設に預けるそうだ。

 

「にしても生きてるのか、こいつ?」

 

古城が足元に転がっている、真っ黒焦げのクサレ女を見て不安そうな顔をしていた。

 

「手加減はしました。ただ、精霊の加護を受けた傷です。魔族と言えども、適切な処置をしなければなおることはありません」

 

担架の上に寝かされている夏音に付き添っているリアが、涼しい顔をして答えた。ストレス発散したからか上機嫌だなぁ。

 

「にしても獅子王にあんな力があったなんて、よく知ってたねリア」

 

他人の力を合わせられるなんてイサム言ってなかったんだけどなぁ。単純に伝え忘れたのかもしれんけど。

 

「勇の力になりたいって思ったとき、声が聞こえてきたんです。頭に流れるように」

「声が?」

「ええ、女性の声で教えてくれたのです。後、勇をよろしくお願いしますと」

 

それってもしかして母さん?さり気なく恥ずかしいことを言わないでもらいたい。

 

「あー多分それ、俺の母さんだわ」

「勇のお母様ですか?」

「うん、リアの思いに応えてくれたんじゃないかな?」

「なら、お義母様はわたくしのことを認めて下さったのでしょうか?」

「んーそうだと思うよ、うん」

 

凄いうれしそうだねリア。まあ好きな相手の親に認められりゃそうなるか。そう考えると物っ凄い恥かしくなってきた…。

にしても、あるならあるで、もっと早く教えてくれてもよかったじゃん。

 

「使いこなせんもん教えてもしょうがないだろうよ」

「あ、父さん」

 

心の中でボヤいていると、大量のオートマタを抱えた父さんがやって来た。こともなげに心を読まないでよ。

まあ、父さんの言うことも最もか、今までも俺だったら宝の持ち腐れだったしね。

 

「忘れるなよ勇。獅子王は想いを力に替える、正しき心で強く願えば必ず応えてくれるってことをな」

「うん、分かったよ父さん」

 

じゃあな。と言うと父さんは去っていった。正しき心か、何が正しいか何て人それぞれだけど、自分が決めた道を突き進むのが一番だよね。

 

「う…ん…」

「夏音!」

 

夏音が意識を取り戻したので、慌てて駆け寄った。思いっきり攻撃しちゃったから、どこか怪我とかしてなければいいけど…。

 

「お兄ちゃん?」

「うん、俺のこと分かる?」

「お兄ちゃん!」

 

意識がはっきりとして俺のことに気が付くと、飛び起きるように俺に抱きついてきた。

 

「ごめんなさい!私お兄ちゃんに酷いことしちゃいました!他の人にも…!」

「大丈夫だよ、こんな傷大したことないから。それに皆も気にしてないから、ね」

 

俺の胸で泣きじゃくる夏音の頭を優しく撫でながら、集まっている皆に視線を向けると頷いてくれた。

 

「大丈夫です夏音。もう、あなたが苦しむ必要は無いのです」

 

リアが夏音の手を握りながら話しかけた。

夏音はそんなリアを不思議そうに見返した。まあ、いきなり自分そっくり人が現れればそうなるわなぁ。

 

「あなた…は…?」

「わたくしは、あなたの…そうですね、家族です」

 

少し思案する様な沈黙を挟みリアが言った。

その言葉が、何かとても大切なものであるかの様に、夏音は自分の口で繰り返した。

 

「家族…」

 

正確に言えば叔母と姪なのだが、後が怖いので黙っておきます。

 

 

 

 

 

「いいのか声をかけなくて?」

 

夏音と勇達のやり取りを、離れた位置から見守っていた賢生に背後から声がかけられる。振り向くと友人である勇太郎が立っていた。

 

「必要無い。もう、私がいなくてもあの子は大丈夫だろう」

「そうかね?あの子はそうは思ってないと思うがねぇ」

 

もう自分は必要ないと考えている賢生の背中を、豪快に笑いながら叩く勇太郎。加減していないためか痛いのだろう、さすがの賢生顔をしかめていた。

 

「夏音はこれからどうなる?」

 

今の賢生にとって唯一気がかりなのは、それは夏音の処遇だけだった。

エンジェル・フォウの儀式のために、夏音は絃神市の上空で戦闘を行っているし、アルディギア王家の飛行船を襲撃して多数の負傷者が出ている。そのことで彼女が何らかの罪に問われる可能性は高かった。

 

「それなら心配いらんよ。未成年だし、自分の意思でやっていた訳じゃないんだ。むしろ被害者ってことでお咎め無しだろうよ。それに、何と言っても彼女にはアルディギア王家の後ろ盾もあるんだからな。あの子がアルディギアに行くって言うならそれでいいし、この島に残るなら俺の教え子の所に預けようと思ってる。そこなら勇もいるし、一番安全だろうよ」

 

エンジェル・フォウの力は失ったが、夏音がアルディギア王家の血を継いでいることに変わりはなく、彼女自身優れた霊媒のため今後も身を狙われる可能性は十分あるのだ。

 

「…そうか。なあ勇太郎、彼はこの先勝ち抜いていけるだろうか?」

 

賢生は無茶なことをしたことについて、アスタルテにお説教されている勇を見ながら呟いた。

 

「さあ?」

 

肩を竦めていい加減に答える勇太郎を睨みつける賢生。

 

「そんな怖い顔するなよ。俺は預言者じゃないんだぞ?未来のことなんて分からんさ」

「それは、そうだが…」

「でも、あいつが諦めない限り、道は切り開ける俺はそう信じているぞ」

 

一切の迷いなく言い切る勇太郎に、そうかと苦笑する賢生。

 

「ならば、私も信じてみよう彼を」

「うっし、そろそろ行くか。何かお上(管理公社)がお前さんに話があるそうだ」

「ああ」

 

船へと歩き出す勇太郎に続いて、歩き出そうとする賢生だが、一度だけ夏音へと振り向き、彼女の勇達に囲まれて幸せそうな顔を見ると、満足そうに歩き出すのだった。

 

 

 

 

 

結局絃神市に帰ってきたのは日曜の夕方だった。休日が潰れたでござる。妹のためだから別にいいけどね。

事件の後始末は父さんがしてくれるとのことで、早く帰るよう言われたのだ。今回も俺は病院送りだけど。

下船の際、俺と古城の服がボロボロになっていたので、着替えることとなった。俺の分はアスタルテが持ってきてくれていた。お礼に頭を撫でてあげたら凄く嬉しそうだった。

古城のは船長が譲ってくれた、ド派手なアロハシャツとピチピチのバミューダパンツと呼ばれる物だった。

 

「――もう少しどうにかならなかったのか、この服は」

 

チンピラと言う言葉がよく似合う自分の姿を見て、古城が溜息を吐いていた。いや、よく似合ってるよプククッ。

 

「似合ってますよ、先輩」

「そ、そうよ…あんたにピッタリよ…くくっ」

「褒められても微妙に嬉しくないんだが…つーか、煌坂は完全に笑ってるだろッ!」

「だ、だって…完全にチンピラ…もう、無理…アハハハハッ!!」

「笑うなーー!好きでこんな格好したんじゃねーー!」

 

我慢の限界を迎えた煌坂が腹を抱えて笑い出し、それに釣られて姫柊も笑いだした。

 

「さ、紗矢華…さん…笑ったら先輩が…可愛そうですよふふっ」

「チクショーー!!」

 

姫柊にも笑われた古城がその場に崩れ落ちた。諦めな今の君は笑いしか生み出さないから。

俺も笑いたいが、再び眠ってしまった夏音を背負っているので、必死に堪えているのだ。

やはり天使化の負担が大きいのだろう、暫くは入院しないといけないそうだ。

 

「おーい皆ー!」

 

慌ただしい足音と共に古城の妹である凪沙が駆け寄って来ていた。その後ろには浅葱と那月ちゃんと委員長もいた。

 

「あれあれ?どうしたの古城くんその格好?チンピラみたいだね!あ、もしかして今になって反抗期になっちゃったの!?」

「違うわああああああ!!」

「ちょ、古城…その格好、マジでツボった!お腹痛い!アハハハハッ!!」

 

妹に止めを刺された古城が撃沈した。その姿を爆笑にしながらスマフォで激写している浅葱。南無三。

 

「やっと帰ってきたか勇」

「たっだいまー那月ちゃんに委員長ー」

「お帰りなさい勇君」

 

いやー、二人にも会うと帰ってきたって感じがするよー。

 

「叶瀬さんは大丈夫なの?」

「うん、少し入院するけど、すぐに元気になるって」

 

背中で気持ちよさそうに寝ている夏音を見せてあげたら、安心した様子の委員長。

俺が綺麗に魔術回路を消したから、それ程の負担にはならなかったそうだ。でなければ、死んでいてもおかしくなかって父さんが言ってた。

 

「勇ここにいましたか」

「あ、リア用事終わったの?」

 

リアの声がしたので振り向くと、船からリアがティナさんを連れて降りてきていた。

下船前にリア宛に連絡があったみたいだけど、なんだろう?

 

「これから病院に向かいます。墜落した飛行船の生存者が収容されているようなので」

「そっかーじゃあ一緒に行こっか」

「はい」

 

俺も夏音を送ったら検査しないといけないしねー。

 

「ほう、お前がアルディギアの王女か。勇の姉である南宮那月だよろしくな」

「初めまして。勇の婚約者のラ・フォリア・リハヴァインですお義姉様」

 

互いに笑っる筈なのに目が笑ってないよー。滅茶苦茶怖いよー。

あっれー?何でか二人の間で火花が散ってるぞー?疲れてるのかなー?

 

「勇君あの人が?」

「あーうん、一応婚約者ってことになるかなー」

「そう、何だ」

 

リアを見ながら複雑な顔をしている委員長。好きな相手に婚約者がいればねぇ。委員長の気持ち?気づいてますよ、古城じゃあるまいし。これでも日々どうしようか悩んでるんですよ俺っち。

そんなこんな考えていたら、リアが委員長に気がついた様で歩み寄り右手を差し出していた。

 

「初めまして、アルディギア王国第一王女のラ・フォリア・リハヴァインです。気軽にラ・フォリアと呼んで下さい」

「築島倫です。勇君のクラスの学級委員をしています」

 

差し出された手を握りながら、落ち着いた様子で挨拶している委員長。流石委員長こういうことに慣れているのかな?

 

「あの」

「はい、何でしょう?」

「勇君少し前まで凄く元気がなかったんですけど、アルディギア王国に行ってからまた元気になりました。きっと、あなたに会えたからだと思うんです。だから、お礼を言いたくて…」

 

委員長にしては、珍しく言葉に詰まりながらも、自分の想いを口にしていた。本当は、自分がしたかったことをしてくれたリアに感謝しているけど、複雑な気分なんだろうな。

 

「そうですか。あなたも勇のことが…」

 

委員長の想いに気づいたリアが、委員長の手を取ってしっかりと見据えた。

 

「でしたら遠慮することはありません。婚約と言っても、わたくしの父が勝手に決めたことです。勇の気持ちが決まっていない以上、あなたも諦める必要はないのです」

「ですが…」

「わたくしも勇と結ばれるなら、後腐れなくしたいのです。ですから、あなたの想いを存分に勇にぶつけて下さい」

「ラ・フォリア…。はい!分かりました!」

 

ここに女同士の友情が生まれた!イイハナシダナー俺の胃は痛むけどねぇ!

 

「そして那月ちゃんにアスタルテ!俺の両足を踵でグリグリしないで!マジで痛いから!」

「モテモテだなぁ勇。よかったじゃないか、ん?」

「嫉妬、せずには、いられない」

 

あたたたたたた!砕ける骨が砕ける!

 

「それからユスティナ。あなたもです」

「ひゃい!?わ、私めはそのようなことはごぜいません王女!」

 

リアが後ろで控えていたティナさんに声をかけると、顔を真っ赤にして両手をブンブンと横に振っていた。

 

「違うと言うのですか?」

「わ、私はあくまで同じ武人としてお慕いしているだけでして!決して思慕の念など…!」

 

ティナさんが弁明していると、リアが詰め寄っていく。

 

「本当に無いと?」

「うっ…!」

「男性として、勇を恋焦がれていないと言い切れますか?」

「それは…」

「今は主従の関係は忘れなさい。おなたの本当の気持ちを聞きたいのです」

「うぅ。す、好きです!勇殿のことを殿方として愛しております!」

 

ティナさんが意を決して叫ぶと、リアは満足した様に頷いた。あの、こっちも死ぬ程恥かしいのですが…。

 

「ならば、隙あらば勇の貞操を狙うくらいの気構えで行きなさい。わたくしが敗れれば、それまでの女だったまでのことです」

「はっ!承知しました王女!」

 

吹っ切れた様子のティナさん。いやーイイハナシダナー胃も足も痛いけどね!そろそろ足が限界なんですけど!那月ちゃんにアスタルテさん!

 

「フフ、これで役者が揃ったようだネ勇」

「あぎゃあああああぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」

 

突然背後に現れたヴァトラーから飛び退いて距離を取る。ビビったマジでビビったぁ!!

 

「これはアルデアル公。お久しぶりですね」

「久しぶりだねラ・フォリア王女。ご機嫌麗しく何よりだ」

 

見知った愛柄の様に挨拶しているリアとヴァトラー。そう言や、アルディギア王国とアルデアル領って隣接してるんだったな。なら顔見知りなのも当然か。

 

「勇が怯えているので、お帰り願えると助かるのですが」

 

口調こそ優しいが、さっさと帰れやホモ野郎ってオーラを溢れさせている。

それを真正面から受け止めつつ、にこやかな笑を絶やさないヴァトラー。

 

「そうはいかないね。ボクも勇に恋焦がれる者として引く訳にはいかないヨ」

「うるせー!帰れボケェ!」

 

お前なんて読者もお呼びじゃねーんだよ!

 

「おー盛り上がってるねー」

 

騒ぎを聞きつけてきたのか父さんがやって来た。このホモどうにかしてもらえませんかねぇ!

 

「俺的には来るもの拒まずだから、お前がよければそれでいいよ」

「よくないだろう!神代に血を絶す気かあんたー!!!」

 

ご先祖様に怒られるぞ!

 

『え?別にいいけど?』

 

祖先様ああああぁぁぁぁ!?!?!?

 

「大丈夫だよ勇。男同士でも交配できりようになる研究が、後数年で完成するからサ」

「何げにスッゲーな!?どんだけ優秀なんだよお前の部下は!?」

 

これで世界の少子化も解決だね!ってか馬鹿野郎!

 

「それはそうと。その子も忘れるなよ勇」

「ほえ?」

 

父さんが俺の背中に視線を向けたので追ってみると、いつの間にか目を覚ましていた夏音かムスっとした顔をしていた。

 

「か、夏音?どったの?」

「うーお兄ちゃんは渡しません」

 

そう宣誓すると思いっきり俺に抱きついてきた。え?どゆことですか?

 

「ちょ夏音夏音。え?何どゆこと?」

「夏音もお兄ちゃんのことが大好きでした」

「それって、兄妹としてってことだよね?」

「むー違います」

 

俺の考えが違ったのか、頬を思いっきり抓られたでござる。え?じゃあ異性として?いやーそれは予想だにしてませんでしたなー。

 

「ハッハァ!頑張れよ勇!」

 

愉快そうに俺の肩を叩く父さん。本当に楽しそうですね。うん、取り敢えず。

 

「うえええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?!?」

 

夕日が沈んでいく港に俺の悲鳴が響いたのだった…。

ちなみに古城の方は、凪沙と浅葱が煌坂のことを問い詰めていたりと愉快な状況になっていた。




勇争奪戦!レディ・ゴォォォォォォォォォ!!!

オマケ

何もない真っ暗な空間で、イサムと志乃は座布団に座りながら、スクリーンの様に映し出された思いっきり動揺している勇を眺めていた。

「いやー僕の時もそうだったけど、あの子もモテるねー」

目の前のちゃぶ台に置かれているお茶を啜りながら、愉快そうに笑うイサム。

「そうですねーあの豚野郎もモテましたからねー」

勇の隣で爆笑している夫を罵りながら、せんべいをかじる志乃。

「遺伝なのかねー?」
「遺伝じゃないですかねー。おかげで手綱を握るのが大変でしたよー。すぐにあっちこっちの女に尻尾を振るんですよー」

どことなく刺のある言い方に冷や汗が出始めたイサム。

「い、いやー彼も狙ってやってた訳じゃないんだしさ。僕も遺伝させた訳じゃ無いと思うんだよねー」
「あら、別に責めている訳じゃありませんよー。ただ、苦労したなーって話をしただけですよー」

言い知れぬ圧力を全身に浴びせられ、息苦しさを感じ始めたイサム。
取り敢えず頭を下げて謝ることにした。

「えと、その、すいませんでした」
「あらあら、頭を上げて下さいよイサムさん。あなたが謝っても私の苦労が還ってくる訳じゃないんですからぁ」
「ホントごめんなさい!」

遂に土下座をするイサムであった。
                                    終わり


これにて天使炎上編は終了です。
次巻前に、日頃応援して下さっている皆様への感謝を込めて、短編で勇の女装ネタを解禁しようかと思っています。
いつになるか不明ですがお楽しみに!それでは次回お会いしましょう!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。