ストライク・ザ・ブラッド~神代の剣~   作:Mk-Ⅳ

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今回で終わるといったな、あれは嘘だ(オイ
すんません。あの二人の始末を忘れていました。
勇が何でもしますんで許して下さい!

勇「え?」


第十話

前回のあらすじ

俺が断つのは夏音を縛る鎖のみ!

 

抜刀していた獅子王を収めると、元の人間へと戻った夏音を所謂お姫様抱っこしながら、ラ・フォリア達と合流した。

 

「ただいまー」

「勇!」

 

装甲を解除して皆に歩みよると、揃って駆け寄って来てくれた。

 

「夏音は無事ですか?」

「うん、眠ってるだけだよ」

 

膝の上に寝かせた夏音は、子猫の様に背中を丸めて眠っていた。

その寝顔を見て皆安心した様である。

 

「ベアトリス・バスラーとロウ・キリシマは逃げたか。まあ、いい後で引っ捕えるとしよう」

 

そう言って無線機を取り出し、待機させていた部下と連絡を取り始めた。

後は帰るだけと思っていた時、無数の足音が聞こえたきた。

音のした方角を見ると、全身をアーマーで包み重火器で武装した集団が迫ってきていた。

集団は、機械の様に統率された動作で整列すると、火器をこちらへと向けてきた。

 

「何だこいつら?」

「メイガスクラフトが作っていた、違法な軍事用機械人形(オートマタ)だな」

 

特に動揺することなく身構えると、父さんが丁寧に説明して下さった。

 

「ええ、そうよ」

 

オートマタが道を開けると、逃げたと思っていた糞女が現れた。

 

「逃げてりゃよかったのに、なぜ戻ってきたし。」

「あんた達を始末したら逃げるわよ、エンジェル・フォウのデータが欲しいって国は多いからね」

 

あ、そう。まあ、いいや、ぶちのめす手間が省けたし。

 

「で、そんな人形でどうする気だ?見たところ死霊魔術(ネクロマンサー)第一非殺傷原則(ひとをきずつけてはならない)を誤魔化しているようだが、そんなんじゃ性能はたかが知れているな」

 

ふん、とつまらなさそうに鼻を鳴らす父さん。確かに言う通り、あんなんじゃ驚異にはならないな。なのに糞女には余裕が感じられた。

 

「だったらこれはどう?ロウ!」

「あいよ」

 

糞女が叫ぶと、獣人化したロウ・キリシマが、鎖で繋がれた無数の棺桶のようなコンテナを引きずって来ていた。

そして醜悪な笑を浮かべた糞女が、夏音を操っていたのと同じリモコンを操作すると、金属製の蓋が、内側から弾け飛んだ。

キィィ―――と耳障りな咆哮を上げて、その中から小柄な影が現れた。

 

「あれは、儀式用の素体か」

「そうよ賢生。本当は叶瀬夏音と戦わせる筈だったんだけど、こんなことになっちゃったから余っちゃったのよ。だから有効にリサイクルさせてもらうわ」

「だが、私が用意したのは夏音を入れて七体までだ」

 

それが本当なら、どう見ても七体以上いるんですが…。

 

「悪いんだけど、それじゃ売り物にならないからね。こっちで勝手に増やさせてもらったわ」

 

クサレ女が蔑む様に説明してきた。ウゼェ。

翼を展開したエンジェル・フォウ達が空へと舞い上がる。彼女達の姿はどことなく似ていた。

 

「…クローンか」

「そういうこと。素体が粗悪だとデキも悪くて、性能では叶瀬夏音には遠く及ばないんだけど。まあ、こっちの命令忠実に従うぶん、使い勝手はマシってところかしらね」

 

得意げにリモコンを掲げて、糞女が笑った。ウゼェ。

 

「なるほど」

 

リアが冷然と呟いて、糞女を睨み上げた。あ、ブチギレてるなこれは。くわばらくわばら。

 

「お前達がわたくしを拉致しようとしていたのは、やはりアルディギア王族のクローンを造るのが目的でしたか」

「あはン、ようやく分かったの、お姫様?改造済みの叶瀬夏音からは細胞が摘出できないし、どうしたもんかと困っていたら、ちょうどあんたがのこのこやってきてくれた、って訳」

 

助かったわ、と荒々しく牙を剥き、糞女が自らの眷獣である深紅の槍を呼び出し、リアへと歩き出す。

 

「全身バラバラに切り刻んで、増やせるだけ増やしてあげるわ、雌豚。あんたのクローンなら、兵器になんか改造しなくたって、高く買う奴がいるだろうし「黙れ」っ!?」

 

糞女を黙らして、アスタルテに夏音を預けて立ち上がる。

好き勝手言いやがって!どいつもこいつもリアをそんな目でしか見れねぇのかよ!

 

「おい、クサレ女。いいか、リアはな結構腹黒くて、ことある毎に俺を女装させようとして、からかってきたりするんだよ。でも、すっごい寂しがり屋で、ちょっと仕返しでそっけなくすると、しょんぼりして可愛らしいんだぞ!笑ったり怒ったり泣いたりして、どこにでもいる女の子なんだよ!それに王女として、何時も民や騎士団のために、どうしたら皆が笑顔でいられるか必死に考えているんだよ!すっごく優しいんだよ!夏音だって、困っている人は誰だって助けようとして、そのせいで危ない目にあってもめげないんだ!嵐の日なんか、子猫達のためにボロボロになった教会で側にいてあげるんだぞ!それを天使にするだの、クローンで増やすだの、好き勝手なことばっかり言いやがって――!」

「勇…」

「すげーな、怒気だけで島全体が揺れてるぞ。これ、崩れるんちゃうんか?」

 

皆には悪いけど、あの女だけは許せない、俺の手でぶちのめす!

 

「くっ!威勢はいいけど、そんなボロボロな状態で勝てると思ってるのかよガキィ!」

 

取り繕う余裕も無くなったのか、苛立しげに叫ぶクサレ女。

確かに、俺達は先程の戦いで傷だらけで、俺も立っているのがやっとだ。でも、――

 

「まだ、頼りになる仲間はいるんだぜ?」

 

そう言った瞬間、澄んだ声が辺りに響いてきた。

 

「――獅子の舞女たる高神の真射姫が願い奉る。極光の炎駒、煌華の麒麟、其は天樂と轟雷を統べ、憤焔をまといて妖霊冥鬼を射貫く者なり―!」

 

煌坂の祝詞と共に空へと打ち出され鏑矢が、広大な魔法陣を形成し、オートマタに呪詛を降り注がせる。

すると、人形の集団が糸が切れたように倒れていった。どうやら煌坂が使ったのは、解呪(ディスペル)の呪矢で、死霊魔術を無効化させたようだ。

 

「ちょっと、遅かったんじゃないの古城?」

「悪ぃ勇。その、色々とあったんだよ」

 

煌坂と共に現れた古城に軽く文句を言ってみると、気まずそうに頬を掻いていた。

 

「分かってますよー。どーせ、お楽しみだったんでしょー?」

「ち、違うわよ!あくまで人命救助よ!いかがわしいことなんてしてないんだからね!」

 

煌坂が必死に言い訳しているが、せめてシャツのボタンをちゃんと止めてからにして頂きたい。

 

「第四真祖ッ!」

「よお、あんた。悪いがこの戦争(ケンカ)俺達も混ぜてもらうぜ!」

 

そう言って古城の目が真紅に染まっていく。この感じ、あいつが目覚めたか。

 

「ざっけんな!テメェら纏めて皆殺しにしてやるよ!」

 

クサレ女がリモコンを操作すると、エンジェル・フォウ達が光の剣を打ち出してきた。

それら目掛け、古城は左腕を突き出し、その腕から鮮血が吹き出した。

 

“焔光の夜伯”(カレイドブラッド)の血脈を継ぎ者、暁古城が、汝の枷を解き放つ――!」

 

鮮血は膨大な魔力の波動へと変わり、凝縮されたその波動が、実体を持った召喚獣へと変わる。艶やかな銀色の鱗に覆われた、吸血鬼の眷獣へと。

 

「――“疾く在れ”(きやがれ)、三番目の眷獣”龍蛇の水銀”(アル・メイサ・メルクーリ)!」

 

現れたのは龍である。緩やかに流動してうねる蛇身(だしん)と、鉤爪を持つ四肢。そして、禍々しい巨大な翼。水銀の鱗に覆われた蛟龍(こうりゅう)だ。

それが二体――

同時に出現した二体の龍は、螺旋状に絡まり合って、前後に頭を持つ一体の巨龍の姿を形作っている。すなわち双頭の龍の姿を。

双頭龍は巨大な顎を開くと、飛来して来た光剣を喰らう。

そして、そのままエンジェル・フォウ達の翼を喰いちぎっていく。

 

「そんな、何なのよあれは!?」

 

切り札であるエンジェル・フォウが、容易く蹴散らされてうろたえているクサレ女。

その光景を見ていた賢生のおっさんが、そうか!と声を張り上げた。

 

「あの眷獣――次元喰い(ディメンジョン・イーター)か!すべての次元ごと、空間を喰ったのか!?」

「そ、見た目は地味だけども、凶悪さなら飛び抜けているのさ」

 

あいつに防御なんて無意味さ、食われた物はこの世界から消えてなくなる。それが神だろうが悪魔だろうがね。

そして、唖然としているクサレ女に一つの影が襲い掛かる。

 

「獅子の神子たる高神の剣巫が願い奉る。破魔の曙光、雪霞の神狼、鋼の神威をもちて我に悪神百鬼を討たせ給え!」

 

姫柊の祝詞と共に、振り下ろされた雪霞狼が深紅の槍を両断した。

 

「なっ!?」

「――若雷!」

 

何が起きたのか理解できていないクサレ女も脇腹に、強烈な肘打ちが叩き込まれ吹き飛んだ。

その拍子に手放したリモコンを姫柊が掴み操作していると、エンジェル・フォウ達が眠った様に動きを止めた。

どうやら姫柊は、リモコンを奪うために今まで姿を隠していた様だ。

 

「やったな、姫柊」

「はい、先輩」

「ちょっと!私も頑張ったわよ!」

「分かってるから怒鳴るなよ煌坂!」

 

仲睦まじいですねー。尻が痒くなるですたい。

 

「じょ、冗談じゃ・・・」

 

ロウ・キリシマが逃げ出そうとしたが、その前に父さんが立ちはだかった。

 

「どこへ行こうというのかね?」

「う、うぉぉぉぉぉおおお!!」

 

意を決して父さんへ襲い掛かるが、顔面を掴まれて片手で軽々と持ち上げられる。ミシミシと骨が軋む音が聞こえてきます。

手足をバタつかせて必死に抵抗しているが、徐々に力を込めて行く父さん。

 

「あ、あがぁぁぁぁぁ!!」

「ヒィィィィィィトエンドォ!」

 

ゴキャッ!と鳴ってはいけない音と共に、手がブラリと下がり動かなくなったロウ・キリシマ。死んでないよね?

ま、いいや。仕上げといこうか。

 

「さあ、お前の罪を数えろクサレ女」

「ヒッ!?」

 

仲間を惨殺(多分、死んではいない)され、怯えた表情をしているクサレ女に歩み寄る。

 

「た、助け「断る」」

 

ここまでやっておいて、ただで済むなんて思っているのか?

獅子王を抜き、空へと掲げるとリアが手を添える。

リアの顔を見ると、微笑みながら力強く頷き、祈りの詩を紡ぐ。

 

「――我が身に宿れ神々の娘。軍勢の守り手。剣の時代。勝利をもたらし、死を運ぶ者よ!」

 

その詠唱が終わる前に、獅子王が閃光に包まれる。青白い輝きが太陽の様に周囲を照らし出し、数十メートルもの巨大な刃を形成した。

 

「…まさか…精霊を召喚したのか…自分の中に!?」

 

クサレ女が、リアから流れ出る膨大な霊力の正体を知って、驚愕している。

 

「ええ。今は、わたくしが精霊炉です(・・・・・・・・・・・・・・)。ベアトリス・バスラー――」

 

リアが瞳を細めて笑う。青白く輝く碧眼を――

 

「騎士達を手にかけ、勇を傷つけたあなたの所業――ラ・フォリア・リハヴァインの名において断罪します。我が部下達の無念、その身で思い知りなさい」

「後、夏音を泣かせた分もなぁ!」

 

二人の怒りを乗せた獅子王の閃光が、クサレ女を飲み込んでいった。




勇とラ・フォリアの初めての共同作業。
次回こそ終わる筈!

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