ストライク・ザ・ブラッド~神代の剣~   作:Mk-Ⅳ

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第四話

前回のあらすじ

ニャンコが大好きだからじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 

夏音と出会った翌日、授業が終わり帰り支度を始める者やクラスに残り友人と談話したりとそれぞれ過ごしている中、勇は教壇前で那月と話し合っていた。

 

「昨日の件だが、お前が責任を持つなら構わないとのことで許可が降りたぞ」

「オッケィ任せんしゃいな!」

 

大船に乗ったつもりでいなさいと言わんばかりに、サムズアップしながら元気よく答える勇。

 

「今回は大丈夫だろうが、無茶だけはするなよ」

「はーい」

 

念を押すように告げると教室を去っていく那月。事件が起こる度に、病院送りになることが日常茶飯事レベルなのである。猫の世話程度ならそんなことはないだろうが、どうしても言いたくなってしまうのだ。

 

「許可降りたのか勇?」

「うん、降りたよー」

 

振り向くと古城と浅葱、基樹、倫が立っていた。

 

「手伝ってくれてありがとうね。持つべき者は友だねぇ」

「まあ、お前には色々と助けて貰ってるしな」

 

勇は古城が第四真祖であることを知っている数少ない人間なので、色々とフォローしていることが多いのである。

 

「にしても、お前いつ”中等部の聖女”と知り合たんだよ?」

「”中等部の聖女”?なんぞやそれ?」

 

基樹の言っていることが理解出来ずに?を浮かべている勇。

 

「知らないのかよ。中等部の叶瀬夏音って言えば、去年までは中等部女子ランキングでお前に次いで連続二位で今年は堂々の一位を獲得したんだぞ。ついでに高等部はお前がぶっちぎりの一位だ」

「そうなんだ。てか最後の情報はいらん」

 

最後の部分は心底どうでも良さそうに、手を顔の前で横に振る勇。

 

「勇とその叶瀬って子目当てで、この学校を選ぶ人もいるらしいわよ。ファンクラブなんか、この学園以外の人も加入してるみたいだし」

「知りたく無い情報をありがとう浅葱さん…。たくっ何でそんなに人気なんですかねぇ」

「そりゃその容姿に、学生で国家攻魔官の資格持ってるし、数々の事件を解決してれば人気もでるわね」

「そんなことのためにやってる訳じゃ無いんですけどねぇ」

 

倫の説明に肩を落としながら項垂れる勇。

 

「つーか、そろそろ行かないと時間無くなっちまうぞ」

「そうだね。待たせちゃ悪いし」

 

古城が時計を見ながら言うと、気を取り直して夏音と待ち合わせている校舎裏へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

校舎裏に向かって歩いていると、夏音以外にもう一人いるようである。

 

「ありゃ凪沙じゃねーか。なんであいつがいるんだ?」

 

近づくにつれてその輪郭がはっきりとしてくる。勇と同じ小柄な体格でうしろ髪をポニーテールにしている少女。古城の妹の暁凪沙であった。

凪沙が勇達に気が付くと、おーいと両手を挙げて元気よく振り回しながら、その場にピョンピョンと跳ね始める。その横で夏音が礼儀正しく頭を下げていた。

 

「ごめんね。待たせちゃったかな?」

「いえ、ちょうど私達も来たところでした」

 

軽く挨拶を交わす勇と夏音。そこに凪沙が話し掛けてくる。

 

「久しぶり、いっ君!それにしてもいっ君や古城君達が手伝ってくれて助かるよ。正直私達だけじゃ限界があったからね、皆で協力すればあの子達の引き取り手もすぐ見つかるよね。うん。」

「久しぶり凪沙。及ばずながら協力させてもらうよ。それにしても叶瀬さんと知り合いだったんだね」

「うん、去年一緒のクラスでね、その時から手伝ってるんだ」

「ああ、だから時々帰りが遅かったんだな」

 

渚の話を聞いて、何か納得した様子の古城。

 

「そう言や彼氏が出来たんじゃないかって、ストーキングしようとしてたよね君。物理的に止めたけど」

「ちげぇよ!ただ、様子を見ようとしただけだ!」

「それをストーキングっていうのよ、このドシスコン」

 

必死に言い訳している古城を、冷めた目で見ながら呆れている浅葱。

そして凪沙が物凄い形相で古城を睨みつけていた。

 

「もう信じられない。あり得ない。何やってるの古城君!いっ君にも迷惑かけて、バカ!」

「バカって何だよ!俺はお前を心配してだな…!」

「心配の仕方がおかしいんだよ!だいたこの前だって…!」

 

ぎゃあぎゃあ口喧嘩を始める古城と凪沙。ハラハラしながら見ている夏音と見慣れているので、放って置いている勇達。

 

「え、えっと。大丈夫でしょうか?」

「ああ、いつものことだからすぐ終わるよ。古城の負けでね」

「なんだかんだで、妹には激甘だからな古城は」

「超が付くくらいのシスコンだからね、あいつ」

「喧嘩する程仲がいいって言うしね」

「そう、なんですか…」

 

勇達の説明を聞きながら、暁兄妹の喧嘩を、どこか羨ましそうに見つめている夏音。

 

「どうしたの?」

「いえ、ああいうのいいなと。修道院にいた頃は兄と呼べる人がいなかったので」

「そっか、俺一人っ子だから羨ましいって思う時あるねぇ」

 

結局、古城がるる家のアイスを奢ることで講和がなされ、兄妹喧嘩は終結するのであった。

 

 

 

 

 

その後、修道院へ向かった勇達は猫の世話をしていた。

 

「わぁ可愛い!ほら見てよ古城!」

「お、おう」

 

子猫を抱き抱えて古城に見せつけている浅葱。そのテンションの高さにたじろいでいる古城。

 

「にしても、よくこれだけの数を拾ってきたな」

「街を歩いてると、自然と寄って来てくれるんです」

 

数十匹いる子猫を見ながら感心したように呟く基樹。

 

「動物に好かれるんじゃない?」

「勇君もそうだと思うけど」

 

勇の体に張り付いている子猫達を見ながら倫が呟いた。

 

「それで、こいつらの引き取り手を探せばいいんだよな?」

「そうだよ古城。取り敢えず、知り合いに片っ端から声を掛けていこう」

「あたしはホームぺージを作ればいいのね」

「うん、そっちはよろしくね浅葱。」

 

こうして”ニャンコを愛でてハッピー大作戦”(命名者勇)が始まるのだった。

 

 

 

 

「とか言ってたら、一週間程で作戦終了したでござる」

 

父の職場や浅葱が作ったホームページの効果で、島中から引き取り手が見つかったのである。

成功を祝い、参加メンバーで打ち上げを行った後、公園に立ち寄っているのだった。

互いにブランコに腰掛けたおり、日が沈み始めた空を眺めていた。

 

「にしても、無事に引き取り手が見つかってよかったね」

「はい、皆さんのおかげでした。私だけだったら、どうしようもなかったです」

「いんや、そんなことないって。単に人気過ぎて皆遠慮してただけだったし」

 

主に男子に避けられている件を凪沙に聞いたところ。自分から夏音に話しかけると罰金刑で、設定された時間以上に会話すると厳罰に処されるそうである。

なんじゃそりゃとも思ったが、夏音の性格からしたら、それくらいの方が安全なのかもしれないなと思う勇。実際一緒にいると危なっかしい場面もいくらかあった。

 

「それでも本当に助かりました。いつまであの子達の面倒を見られるか、分かりませんでしたから」

 

空を見上げながら笑う夏音は、どこか儚げで今にも消えてしまいそうだった。

勇はブランコから降りて、夏音に近づき頭を無意識に撫でていた。

 

「先輩?」

「あ、ごめん嫌だった?」

 

突然のことに少し驚いてしまう夏音。自分のしていることに気がつき、慌てて手を離す勇。

 

「いえ、もっとして欲しいです…」

 

恥ずかしそうに俯きながらも、懇願する夏音を優しく撫でる勇。

くすぐったくも、不思議と心が落ち着く心地よさに目を細める夏音。

暫くそうしていると、不意に夏音が顔を上げて口を開いた。

 

「あの、一つお願いをしてもいいですか?」

「ん?なんだい?」

「その、『お兄ちゃん』って呼んでもいいですか」

 

頬を染めながら、上目遣いで言った夏音の言葉に、感電したような衝撃を受ける勇。

 

「いい!その響きぐっときた!じゃあ俺も夏音って呼ぶね!」

「はい、お兄ちゃん」

 

やたらハイテンションな勇を見ながら、微笑む夏音であった。




やっと終わったぜよ。次回から本編に戻ります。

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