ストライク・ザ・ブラッド~神代の剣~   作:Mk-Ⅳ

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今回は、勇と夏音の出会い話です。
※お気に入りが300突破!本当にありがとうございます!


第二話

前回のあらすじ

約束は儚く散る

 

太陽の日差しがさんさんと降り注ぐ絃神島。その島に存在する彩海学園高等部の教室に二人の男女がいた。

向かい合うように並んだ机の上に、広げられたノートと睨めっこしている少女にしか見えないが、実は男の神代勇。

 

「誰が女じゃい」

「?どうしたの勇君?」

 

突然ツッコミを入れる勇に、対面にいる築島倫が不思議そうな顔をしている。

 

「いや、誰かに女って言われた気がするけど。まあ、いいか」

 

そう言って、再びノートと睨めっこしながらノートにペンを走らせる勇。

 

「えーと、ここはこう?」

「ここはね、この応用だよ」

「こう?」

「うん、そう」

「おー」

 

わーい!と両手を挙げて問題が解けたことを喜んでいる勇。それを微笑ましく見ている倫。

 

「ごめんね。今回は長く授業出れなかったから、何時もより付き合せちゃって…」

「気にしないで、最近勇君元気なかったから、アルディギアに行ってよかったと思うよ」

 

申し訳なさそうに顔の前で両手を合わせる勇に、気にして無いという風に軽く首を振りながら微笑む倫。

現在、勇がアルディギア王国に出かけていた間の授業分を教えて貰っているのである。

 

「心配掛けてごめんね。もう大丈夫だから」

「そっか見つけられたんだね゛戦う理由を゛」

「うん、今度こそ手放さなように、もっと強くなるよ」

 

安心したような表情で語り掛ける倫に、決意を込めた目で右手を握り締めながら答える勇。

 

『ぐああっ! ク、クライン・・・アッー!』

 

「あ、ちょっとごめん」

 

不意に勇のスマフォの着信音が鳴り出し、ディスプレイを見ると゛那月ちゃん゛と表示されていた。

倫に断りを入れてから電話に出る勇。

 

「どしたの那月ちゃんちゃん?え、直ぐに来い?うん、うん、わかったぁ」

「南宮先生から?」

「うん、何か頼みたいことがあるんだってさ、だらか行かなきゃ。今日はありがとう。また教えてね」

「いいよ。また声掛けてね」

 

那月との通話を終えると、倫と別れて那月の元へ向かう勇であった。

 

 

 

 

 

「教会を見て来い?」

「そうだ。学校の裏手にある丘に公園があるだろう。そこの廃墟となった教会で、彩海学園(ウチ)の中等部の生徒が何かしているとの話があってな、ちょっくら行って来て確認してこい」

 

学園の職員室棟校舎の那月の執務室へ向かった勇は、そこで那月から告げられた内容に首を傾げていた。

 

「確か、公園の奥は何年か前に事故があって立ち入り禁止なんだっけ?でも、何で俺なのさ、事件性が無いなら教員がするべきじゃないの?」

 

凶悪犯が潜んでいるならともかく、ただの生徒の素行調査程度なら自分が動く必要性が無いだろうと、面倒臭そうに反論する勇。

 

「教師全員が、お前にやらせればいいだろうとの結論が出たからだ」

「え~」

 

何その理不尽?と肩をがっくりと降ろして項垂れる勇。

そんな勇を見ながら、革製の年代物の椅子腰掛け、ふんぞり返っている那月。

 

「そうボヤくな、お前がそれだけ信頼されている証拠だぞ、もっと喜んでも罰は当たらんさ」

「本音は?」

 

自分のことの様に誇らしげに語る那月を、疑わしそうに半目で軽く睨む勇。

 

「私が汗水流して働いているのに、お前が暇そうに寛いでいると何か腹が立つ」

「やっぱりか!あんたの仕業か!こうなるように仕向けたのか!つーか、汗水流すほどの肉体労働は全部俺に押し付けてるじゃん!」

 

うがー!と吠えながら地団駄踏む勇。

それにフンッと、鼻を鳴らしながらボソッと呟く那月。

 

「でないと築島とイチャつくだろうに…」

「別に委員長と一緒にいたっていいじゃん、何か不都合があるの?」

 

不思議そうな顔をして、首を傾げている勇。

 

「ええい、何でも無い!さっさと行けぃ!」

 

顔を赤くしながら、手に持っていた扇子を横に振る那月。

 

「え、ちょありゃー!?」

 

すると、勇の足元に魔法陣が現れボッシュートされる勇。

 

「まったく、あいつは…。とは言え、何であんなことを言ってしまったんだ。あいつはあくまで弟分であって、別に男としてとかでは無くてってああ、もう!誰に言っているんだ私は!?」

 

一人で頭を抱えて、誰ともなく言い訳しながら悶絶する那月であった。

 

 

 

 

 

彩海学園校舎裏に魔法陣が浮かび上がり、勇が放り出される。

 

「いったい!もう、どうせ転移するなら公園まで連れてってよぉ!」

 

服についた汚れを払い、ぶつくさ文句を言いながらも丘の上の公園目指して歩き出す勇。

暫く公園に続く道を歩いていると、木々に覆われた小さな公園が見えてくる。授業なんかで時折訪れることがあるので、迷わず進んでいく。

公園の奥の方まで歩くと、廃墟となった建物が姿を現した。

中庭と見られる場所には雑草に埋もれた花壇と、錆びた三輪車が放置されていた。

 

「さてと、問題の子はいるかねぇ」

 

取り敢えず入ってみようと、木製の扉に手を掛ける。扉も傷んでいるようで、ぎしぎしと音を立てながら開いていく。

教会の中に足を踏み入れる勇。すると、日の光が余り入らず薄暗い建物内に金色に輝く無数の瞳が浮かび上がる。

何だ?と目を凝らして見てみると、勇の表情が驚愕に染まる。

 

「猫、だと!?」

 

暗闇の中から子猫が十数匹程、勇の足元に群がって来た。

 

「ここが、俺の探し求めていた理想郷か…」

 

感涙の涙を流しながら、足元の子猫の一匹を抱き上げて頭を優しく撫でる。

すると、『ふにゃぁ』と嬉しそうに目を細めて可愛らしく鳴く子猫。それにつられたように他の子猫が構って欲しそうにじゃれてくる。

 

「素晴らしい、これが極楽浄土か…」

 

今にも魂が抜け出そうな程幸せそうに子猫と戯れる勇。

ふと、教会の奥の方に人の気配を感じ取る。

 

「誰かいるの?」

 

思わず声を掛けると足音が聞こえてきて、暗闇から人の輪郭が見えてくる。

恐る恐るといった感じで歩み寄って来た人影が、窓から差し込む光によって照らし出された。

 

「っ!?」

 

その人物の顔を見た瞬間、まるで狐に化かされたような表情で、勇の体が石になったように停止した。

暗闇から現れたのは、中等部の制服に身を包んだ少女で、雪原を思わせる銀色の髪に、氷河の輝きにも似た淡い碧眼をしていた。

 

「リア?」

 

その少女は、自分を救ってくれた女性と瓜二つの姿をしていたのであった。


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