ストライク・ザ・ブラッド~神代の剣~   作:Mk-Ⅳ

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こんな拙い小説を本当にありがとうございます!


第一話

前回のあらすじ

いいツッコミだな、気に入った。

 

黒死皇派のテロリストをしばいた翌日。

俺は現在、学校に通うために古城達と合流するため、モノレールに乗っているけど…。

 

「プッククックククッ」

「いいかげんにニヤけるのをやめろよお前は…」

 

俺の目の前で古城がうんざりしたように溜め息を吐いていた。

 

「いや…だって…妹の部屋に…ノックせずに…入ったら…姫柊の着替えを…覗くって…お前ラッキースケベにも程が…ギャハハハハハハハァ!!」

 

もう、無理堪えらんねぇ!腹痛ぇ!

 

「そんなマンガみたいな展開、あるのかよ!プクククク!!」

「笑い過ぎだろ!いくらなんでも!」

 

モノレール内で腹を抱えているのに、さすがに機嫌を悪くしたようである。

 

「そうです笑いごとじゃありません。神代先輩」

 

被害に会った姫柊としても、堪ったものではないのだろう。冷ややかな視線を向けてくる。

 

「ごめん、ごめん。悪かったよ」

 

必死に笑いを堪えながら謝ると、呆れが混ざった溜め息を吐かれたでござる。

 

「姫柊その、悪かったな。覗くつもりはなかったんだ」

「いえ……その事は、もう怒っていませんから」

 

ちなみに、古城が覗いた際に顔面に思いきり蹴りを入れられ鼻を折られたそうだ。

姫柊もやり過ぎたと自覚してるらしく、羞恥と諦めがない交ぜの口調で許すようだ。

 

「駄目だよ、雪菜ちゃん。この変態君をそう簡単に許したら!」

 

そんな和解ムードをぶち壊したのは、古城の妹の凪沙である。

姫柊を庇うように割り込み怒りを露な様子で古城を見上げていらっしゃる。

 

「もう信じられない。ホントあり得ない。だいたいあれのどこが事故なのよ、ノックもしないで女の子の部屋に入ってくるなんて。そうでしょいさむん」

「んーまぁそうだねぇ。家族であっても部屋に入る時にはノックはすべきだねぇ」

 

猛烈な勢いで捲くし立てる凪沙。確かに異性である以上それくらいの配慮はすべきだな。

 

「つーか、なんで朝っぱらから姫柊が凪沙の部屋にいたん?」

「球技大会で使うチア衣装の採寸と仮縫いをしてたんだ」

「ん?何で姫柊がチア衣装を着んねん?」

 

チア部の凪沙ならともかく、姫柊が着る必要はないのでは?

 

「その、どうしても断り切れなくて…」

「クラスの男子全員が、土下座して雪菜ちゃんに頼んだの。姫がチアの衣装で応援してくれるなら家臣一同なんでもする、死に物狂いで優勝目指して頑張るって」

 

重苦しげに深々と溜め息を吐く姫柊と、対象的に明るい声で笑う凪沙。

 

「男子全員、土下座?」

 

古城は、凪沙の説明に唖然とし、姫柊はますます困ったような顔で目を伏せる。

姫と言うのは姫柊のあだ名か。上手いことを言ったもんだ。

 

「普通ならそんなのドン引きなんだけど、何しろほら、相手が雪菜ちゃんだし、男子がそう言いたくなる気持ちもわかるから、女子(あたし達)も協力しようって話になったんだ」

 

何故か偉そうに胸を張る凪沙。古城も大体の事情は把握したようだ。

 

「そう言えば、いさむんは今年も実況をするの?」

「ああ、そうだよ」

「実況?競技には参加しないんですか?」

 

姫柊が不思議そうに首を傾げている。そういや彼女は知らないっけか。

 

「獣人を殴り飛ばす奴がいたら、おもしろくないでしょうよ。バランスブレイカーもいいところだからね。だから実況で盛り上げ役に徹するのよ」

「な、なるほど」

 

どうやら納得してくれたようだ。哀れみの目で俺を見ているが…。

 

「ん?あれは」

 

ふとモノレールの社窓から見えた絃神港に、無駄に豪華な船が停泊しているのが見えた。

 

「どうした勇?」

「いや今、港に見慣れない船があったんでな」

「えー何?あ、あれ?うわーすごいね!」

 

俺の言葉に古城達も港の方に視線を向け、凪沙が車窓に張り付きながらはしゃいでいる。

 

「どっかのお偉いさんが来てんじゃねえか?絃神島(ここ)は”魔族特区”だしな」

「そうだろうが、姫柊は何か聞いているか?」

「いいえ、獅子王機関からは何も。何か気になることでも?」

「んー何か最近、身の危険を感じるんだよね…」

 

何か、纏わりつくような気持ち悪さを感じてるんだよね。よく寝付けないしさ。

 

「命を狙われているのかお前?」

「そうとも言うような、言わないような」

「どっちなんですか?」

「俺もよくわかんないんだよねぇ。いや、まさかね」

 

あいつ(・・)がいるわけが無い。うん、そうだ。そうだよね。

 

「大丈夫か?顔色が悪いぞお前」

「大丈夫だ。問題ない」

「何故かそう聞くと不安になるんですが…」

 

姫柊が物凄い不安そうな顔をしているが、心配症だねぇ。っとちょうど目的の駅に着いたようだ。

 

「ほら、駅に着いたし行こう」

「凪沙!置いて行くぞ!」

「わわ!皆まってよぉ!」

 

今だに車窓に張り付いている凪沙を古城が呼びかけると、ハッとしたように慌てて追いかけて来るのであった。

 

 

 

 

 

校門で姫柊と凪沙と別れ教室へ向かうと、異様な光景が俺を出迎えてくれた。

 

「何やってんの、君達?」

 

何故か古城と基樹を除くクラスメートの男子が土下座をしていたのだから…。

 

「お願いします!勇様!どうか今度の球技大会にこのチア衣装をげぁ!?」

 

先頭にいた松田という名の男子がチア衣装を掲げながら、下らないことをほざいたので頭を踏みつけてやった。

 

「ん?今何て言ったのかな?よく聞こえなかったんだけど」

「ああ!もっと強くお願いします!」

 

ぐりぐりと頭を踏みつけていると、歓喜の声を上げる松田。

 

「くっ松田の奴、何て羨ましい!」

「どうか俺もお願いします!」

「やらねーよ」

 

何人かの男子が頭を差し出してくるが、それを冷めた目で見下す。

 

「あら、おはよう勇君」

「おはよう委員長。この状況の説明を求める」

 

混沌としているクラスの中、何時も通り挨拶してきてくれたのは築島 倫(つきしま りん)俺のクラスの学級委員である。

 

「ほら、最近中等部に転校生が来たじゃない」

「ああ、そうだな」

 

姫柊のことかってまさか…。

 

「姫柊がチア服着るから、俺にも着せようって腐った考えに到った訳かこいつらは」

「話が早いわね。その通りよ」

 

俺の推測を肯定してくれる委員長。その表情には若干の呆れが混じっていた。

 

「そう言うわけなんで、よろしくお願いしまふぶぅ!?」

「何がよろしくだボケ。着るわけねえだろうが」

 

再び松田がほざいたので踏みつけて黙らせる。

 

「たっく、どいつもこいつもことある毎に女装させようとしてくるんだよ!」

「そりゃ、中等部じゃ女子人気ランキング三年連続1位だし、高等部でも独占間違い無しって言われてるしね。女子でも期待している人が多くいるしね」

 

委員長の言葉にクラスの女子が頷いている。

 

「そこがおかしいだろ!何で男子の俺が入ってるんだよ!?」

「全校生徒からの要望があったからね」

 

俺の必死の問い掛けに冷静に返してくる委員長。相変わらずのクールビューティぶりだな。

 

「くっなぁ暁に矢瀬、お前達からも頼んでくれよ親友なんだろ!」

「えっやだよめんどくせぇ」

「俺も死にたくねえし」

 

男子達が我関せずを決めていた古城と基樹に助けを求めるが、冷たくあしらっていた。

 

「コーホー、いい判断だ、コーホー」

「ほら、何か暗黒面に落ちかけてるし」

「この前、女装させられてからそのネタでからかえねえし」

『何、だと…!!』

 

基樹の言葉に衝撃を受けている男子共。つーか待て。

 

「何で知ってるんだ基樹?」

「え、いや風の噂で…」

「そうかそうか、盗聴していた訳か」

「いだだだだだ!肩!肩が砕ける!」

 

基樹の肩を掴み上げると悲鳴を上げて逃げようとするが、逃がす訳がない。

 

「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇえええ!!!」

「ギャァァァァァァァァァァアアア!!!」

「や、矢瀬ぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええ!!!」

「勇×基樹キタ!ネタがキタァァァァァァァァァアアア!!」

「ちょ、お倫!何であたしと古城が、ダブルスでバトミントンに出なきゃなんないのよ!?」

「いいじゃない浅葱。折角の機会なんだから活用しなきゃ」

「な、何をよーーー!!」

「直ぐに女装させた人物を特定しろ!そして写真に収めていたら、いくらはたいても構わん入手しろ!」

『サァー!イエッサァー!!』

 

「何をしているんだ。お前達は…」

 

余りのクラスのカオスぶりに、担任の那月ちゃんは激しい頭痛と眩暈に襲われたそうである。


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