【・・・・・・】
(どうしたのナータ)
ナータとサータと共に武術訓練に向かう途中
ナータが立ち止まり振り返った
(はっ まさかまたマシェルに何かあったの!?
書庫回廊が崩れたとか!?)
【・・・違う】
(へ!?じゃあ何!?
ナータがあさっての方向を見てにらむのって
マシェルに何かあった時でしょ!?)
\そうなの?ナータお兄ちゃん?/
【・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ふう・・・何か嫌なかんじがした―――・・・が
マシェルに・・・じゃない】
「あの方角 何かあったか?」
『あなた、今神託がくだりました すぐにナータの視線の先、
私たちがこの地に来たときに使った旅の扉跡に行ってください』
何だと あそこは既に塞がったはずだが
『痕跡を使って何者かがここにこようとしているようです
竜の神からの神託です』
いいだろう
「ナータ サータ、オレが様子を見てくる
おまえたちはこのまま武術訓練に行け
ジゼルはオレが連れていく 何事もなければすぐに合流する
少々心当たりがある」
【・・・わかった】
(ジゼルも行くならおれも!)
「サータ おまえたちは武術訓練を優先しろ
マシェルに余計な心配を増やすこともあるまい
行くぞジゼル」
\はい!ハドラー様!/
ドン!
オレにしがみついてきたジゼルを小脇に抱え
ルーラで旅の扉跡に向かって飛んだ
ぐにゃ~~~・・・
旅の扉跡はたしかに空間が歪んでいる 何かが起きる前兆のようだ
空間を操る暗竜のナータだから異変に気づいたのだろう
あれからお前に神託はないのか?
『あれからは一度も・・・』
\ハドラー様!穴が!/
ジゼルが指さした先には旅の扉が徐々に開き
そこから一人の男がでてきた
*・・・どうやら着いたようだな
小癪な呪いが感じられるが わしには効かんゾ
ふむ 出迎えご苦労じゃ*
「何だ・・・?」
外見は幼竜を成長ではなく膨らませたような丸みのある姿
気配から竜の男だろうがその属性は見当もつかないが
昔オレが着ていたようなローブと竜をかたどった杖を装備していた
おそらくこの世界の存在ではない
オレ達の世界かそれに近い世界からの闖入者のようだが
強いのか弱いのかすら感じ取れない
こんなつかみどころのないやつははじめてだ
「オレはこの地住む男ハドラー
おまえはいったい何者だ」
*ほう・・・
わしは名を持たぬが この姿のときは竜ちゃん、
と呼ばれておった*
「リュウ・チャン?この姿?
では お前も術でその姿になっているということか」
\ハートみたいな頭におわんみたいなお目々/
*ワシはいくつもの世界をまたにかけ
そのたびにその世界に適応した姿になることができる
竜族には違いないがな
ところでここは竜都コーセルテルで間違いないか?*
「たしかにコーセルテルだが・・・
竜都とよばれていたのは3000年以上も前のことだぞ」
*なんと・・・
竜と人間が協力し世界を支配していたと聞いていたが・・・
だがこの地にはまだ竜も人間もいるようじゃな*
「たしかにいることはいるが猫の額のような集落しかない
この世界での竜の天下はすでに過去の栄光
長居せず帰ることをすすめるが・・・」
*折角きたのだ わしは竜都の末路に興味がある
ハドラーよ 詳しい話を聞かせてほしい
無論報酬は考えてやるゾ どーーーだ?*
「そうは言うが・・・」
『・・・・・・・・・・』
?どうした聖母竜よ お前が言う神託とやらは
この男のことなのだろう?
『それは間違いないと思いますが
・・・この御方はどなたなのでしょうか?
知っているような気もするのですが
思い出せそうな そうでもないような・・・?』
長生きしすぎて思い出せんか
そういえばジゼルもどこかおとなしいな
やはりこの男ただものではないのか
ナータの懸念もある
コーセルテルにとっては長居されるのはまずいかもしれんな
『ですが目を離してはいけません
ナータの心配もありますが
わざわざ神託がくだるほどです
ひょっとすると竜の神族かもしれません
ここは望み通り竜都の歴史にふれていただき
納得の上で帰ってもらいましょう』
「そうか リュウ・チャンよ
自分の世界に自力で帰ることはできるのか?」
*当然だ
「ルーラ?
ということはやはりオレ達の世界か 近い世界の出身か」
『そのようですね』
*ハドラーよ 竜都の末路について知ることができれば
わしはすぐに帰ることを約束してもよい*
「そうは言ってもオレもここの歴史に詳しいわけではないぞ
地竜家の書庫に案内するか
当時の幽霊であるフェルリに聞くか・・・」
*ほう 当時の幽霊がいるのか
それは好都合じゃ わしは幽霊との会話は問題なくできる
必要なら仮初の肉体を与えてやってもよい*
「幽霊に仮初の肉体だと!?
それはオレも使えるが禁呪法ではないか!」
\きんじゅほうー?/
『たしかにフェルリに使われるのは困りますね
怪物化して戻れなくなるかもしれません
そもそもそんなことをしなくても普通に話せますが』
*ならば話が早いな神竜の眷族よ
わしを案内せよ*
『やはり私に気づいていましたか
それに素性も知られてますね
どこかでお会いしましたか?』
*いや 初対面だ
で ハドラーよ どうする?*
「・・・・・・いいだろう ついてこい
だが おまえ自身のこともある程度話してもらうぞリュウ・チャン」
*よかろう
こうやってわしをそう呼び 話をするのも【あやつ】以来よ*
マシェル家への帰路でリュウ・チャンとの会話から
こやつの口から語られた素性は・・・
・親の顔を知らずに育った
・竜の中でもかなり長生きをしている
・いくつもの世界を渡り歩いた
・人間とは時に戦い 時に共闘し 人間の弟子もいた
・時折口にする【あやつ】と呼ぶ特別な人間がいる
・今は楽隠居状態である
大体こんなところまで聞いたあたりでマシェルの家に着いた
できれば遠回りをして情報を集めたかったが
下手な駆け引きができる相手ではなかった
*ここに例の幽霊がいるのか
たしかにそんな気配があるナ*
「ここの地下にいる」
マシェル達はまだ留守のようだ
その方が都合がいいか
*案内ご苦労*
『いえ・・・ フェルリは私にとって大切な友人です
直接紹介いたします リュウ・チャン殿』
*? あの方角からも幽霊の気配があるぞ*
「なんだと・・・
たしかに希薄だが何か気配がある
これはフェルリではないな
今日 地竜家に行ったはずのマシェル達がこちらに帰っているようだが
その後ろについてくるように幽霊が近づいてくる」
*なかなか年期の入った幽霊のようだな
しかもこの気配 精霊化しているとみた
・・・ハドラーよ 地下の幽霊はいつでも会えるのだな?
この近づいてくる精霊に興味がある*
「たしかに・・・・・・
マシェル達の後を追うように近づいてくるのも妙だ
先にそちらに接触するか
いくぞジゼル」
\はい ハドラー様!/
オレ達は今度は新たにあらわれた幽霊いや精霊か、
マシェル達が向かった地竜家への道を歩き出した
折角の機会だ リュウ・チャンのことをもう少し聞き出そう
今度は話題を限定して深く探るとしよう
『何のお話ですか?』
ここは 先程での会話でこの男がもっとも感情的になった
「【あやつ】とはどのようなやつなのだ?
人間、なのだろう?」
*【あやつ】、か・・・・・・そうだな
―――わしが長く生きてきた中で
もっとも苦手とする男だ*
「ほう」
*あやつとはその先祖の代から長く深い因縁があってな*
「敵だったのか」
*敵ではあったが
わずかな間 手を組むこともあった
なれ合うことはことはなかったが
かつては拠点が近いこともあってどうにも意識せずにはいられなかった*
『ご近所トラブルでもありましたか?』
*あれをご近所トラブル扱いされるとむなしいものがあるが
・・・あながち間違ってるとはいいきれぬか*
「いったい何があった」
*何が・・・ 何が・・・ か・・・
あやつと・・・・・・・・*
『すごく苦悩しているようですね』
「口にしづらいのか 思い出すのも嫌なのか」
『でもあの顔・・・
あなたがアバンのことを語るときの顔に似てますよ』
「グ・・・」
\ハドラー様 アータお兄ちゃん達が帰ってきましたよ!/
ジゼルが指さした先にマシェル達と
その後ろにふらふらとついてきた弱々しく希薄な精霊が
ゆら・・・
「む!」
ゆらー・・・ ぶわっ!
’魔族―――・・・ 竜―――・・・ 滅べ!!!’
精霊がマシェル達を一気に追い抜き
大きくなってオレ達に襲い掛かってきた!
「!!」
『ジゼルさがって!!』
*・・・・・・*
ギン!!
ブオオオ
とりあえず反射的に闘気を込めた眼力をぶつけると
精霊が動きをとめ人間の大人の男の姿になった
’フェ・・・ルリ ラシェ・・・
うばわれた・・・ 父も・・・母も・・・
故郷も―――・・・ 竜に 魔族に! 滅べ!!’
精霊が剣を構えて再び襲い掛かろうとしてきた!
「ぬおおおおッ!!!!」
バッ ゴアアアアッツ
左手から魔炎気を出し精霊にぶつけた
’あ・・・ う・・・ うあ・・・
うああああああっ!!’
\子供になった!?/
「しかも泣きながら逃げたか」
『今 フェルリと言いませんでしたか!?』
*竜と魔族に滅ぼされた人間の幽霊が
精霊 いや黒精霊となったか・・・*
黒精霊 怪物化の一歩手前だったな
・・・オレは久しぶりに自分に向けられたむき出しの敵意に反応し闘気で反撃したが
隣にいたリュウ・チャンはまったく反応しなかった
いや まるで動揺しなかった
何が半隠居だ
オレには黒精霊よりも 力の底を全く見せないこの男の方がよっぽど脅威だ
あけましておめでとうございます
週末の方が仕事が忙しいためダイの大冒険の新アニメがなかなかリアルタイムで見れないウジョーです
年明け早々寒さが厳しくなってまいりました
コロナはもちろんですがノロにインフルエンザと他の病気の脅威もかわりません
くれぐれもお体を大切に