ハドラー子育て日記 コーセルテル編   作:ウジョー

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~お手紙でつながるもの~

コーセルテルにいた夏の精霊は夏の国とやらに帰り

この地は秋を迎えた

秋の晴れた日 夏の暑さが苦手だった木竜や水竜にとっては

すごしやすくなったせいか 今日は外にムシロを敷き茶を飲むそうだ

その茶菓子を任されたが・・・

食事のときに半端に余った小麦粉があるな

これをつかって適当につまめるものにするか

 

「ジゼル 卵を割ってみろ」

 

    \ はい ハドラーさま! /

卵を片手でつかんだジゼルが見よう見まねで割ろうとする

片手割りなど10年早いが・・・

 

  コン コン

 

そもそも卵にヒビすら入っておらん

力加減がわからず とまどっているのだろうが・・・

 

『教えてあげないのですか?』

 

失敗を繰り返して自分でコツをつかむいい機会だ

割るのに少々失敗したところで 中身は使える

 

『・・・そういえば 卵を割っているとジゼルが生まれたときのことを

思い出しませんか?』

 

ああ あのときは異常に硬い卵だと思ったらいつの間にか

竜の卵になっていたからな そうそう忘れはせんぞ

 

『あれも 月の精霊コーセルテル いえ コーナのおかげでしょうか?』

 

「そのようだな 本人に自覚はないようだが

あれほどの魔力の持ち主だ 無自覚で何かやらかすこともある

・・・それはジゼルにも言えることだがな」

 

『! それでジゼルに卵を割ることで 加減をおぼえさせようど』

 

いや これはただの手伝いだ

 

 カツン!? ゲチャ・・・

 

  \ ハドラーさま・・・ /

 

「かまわん 中身をこの粉と混ぜ込み 殻は別にわけておけばいい

加工はオレがやる」

 

  \ はい!ハドラーさま!/

 

 かちゃ かちゃ

 

\う~ん カラにぶよぶよしたのがくっついてとれない・・・/

 

ジゼルが割れた殻に固まりこびりついた白身にてこずっていた

どうやら卵をにぎりしめていた間に 体温で半端に固まったようだ

 

『これは たしかに加減をおぼえないと色々大変そうですね』

 

いかに強力な竜の力を秘めていても所詮は幼竜

制御を身につけるには地道な経験の積み重ねだ

さて さっさと 菓子をこさえて持っていくか

 

・・・

大皿に菓子をのせて マシェルたちが待つ外に出た

茶の支度は水竜のマ-タが用意していた

・・・オレも水竜術を使いこなせるようになれば

何もないところでも水や湯が生み出せる

 

『便利そうですね』

 

     \\ いただきまーす//

 

子竜たちが円座になり茶を飲みながら菓子に手を伸ばす

卵の都合で少々予定とは変わったものにしたが

子竜たちの評判はいいようだ

 

\ おいしいです!ハドラーさま!/

 

「そうか」

 

〔じゃあみんな そのままでいいから ロズおじさんからの

みんな宛のお手紙読むね〕

 

   \\ はーーい //

 

・・・・・・・・・・

ロズ・アルバ ・・・オレがコーセルテルに来る少し前まで

マシェル家の地下にいた魔族の幽霊

 

『フェルリから聞いた話では・・・ 

フェルリが生きていた頃 コーセルテルが竜都だった時代

この地に侵略にきた魔族の兵士であり戦の中でこの地で没し

・・・その後 色々あって子竜たちと仲良しになり

今は私達が住んでいる地下の術部屋で

ときにフェルリの話し相手となり・・・

ときにささやかな対立を楽しんだりしていたそうですよ』

 

生前の経歴からすればとても仲良くなれそうにはないな

 

『今は 幽霊から手紙の精霊に生まれ変わり

同属の魔族たちが住む里へお引越しして

こうしてお手紙のやりとりをしていると・・・』

 

異世界の魔族か・・・ やはり興味があるな

手紙の内容からは秋の祭を楽しみに待つ平和な様子だが

 

〔マシェルーーーっ

みんなーーーーーっ

こんにちはーーーーーーーーっ〕

 

   \ こんにちはーっ /

 

〔アグリナ ヤチ

いらっしゃい ふたりとも〕

 

  \\ いらっしゃーーいっっ //

 

火竜家が来たか あいつらは本当によく来る

 

『あの家は二人しかいませんからね』

 

アグリナがマシェルに気があるせいでもあるが

 

『・・・あなたは意外とそういうことに気がつきますよね』

 

あいつは わかりやすいだろ

・・・マシェルは子竜しか見ていないようで気づいてないが

 

〔あれ?

もうお茶してたの!?〕

 

「ああ」

 

    \ ? /

 

〔おやつもう食べちゃった!?〕

 

 \ うん!ハドラー様のおやつ おいしい~ /

 

    \ えーっっ /

 

『おしくも食べそびれましたね ジゼルのお手製』

 

ジゼルは卵を割っただけだが

 

〔――――実は

これ ヤチが作ったひとくちケーキ

すっっごくおいしくできたから

みんなに食べてほしかったんだけど・・・〕

 

「ほう! ヤチが」

 

<ええ!?これヤチが作ったの!?>

 

≪上手・・・≫

 

[おいしそう]

 

 \ えへっ アグリナといっしょにだけどっ /

 

『ヤチはジゼルとほぼ同じ時期に生まれたのはずなのに

もう これほどのものが作れるのですか!?』

 

ケーキからわずかに感じる火の気配はたしかにヤチのものだ

間違いなかろうが・・・ カゴいっぱいの量、

一つ一つの造形 焼け具合 なかなかの出来だ

 

『・・・・・・・・・』

 

ここはひとつジゼルを軽く煽るか

 

『よそはよそ うちはうちです!

焦らなくても ジゼルにも出来るようになりますから!』

 

・・・今日のところは まず おいといてやろう

その後は ヤチのケーキをつまみながらアグリナが持ってきた

精霊術士クレリアからの手紙の読み聞かせが行われた

 

『クレリア・・・ ジゼルのお友達コーナが

かつて月の精霊コーセルテルだったときの半身

旅の月の精霊イルベック 今はエトワスとなった方の相方ですね』

 

ジゼルの卵が生まれたときにこの地に来ていたようだが

オレはその娘とは直接会っていない

あの時はそれどころではなかったが・・・

 

『月の精霊に見込まれ加護をうけているということは

世界によっては勇者とよばれるかもしれませんね』

 

そういえばマシェルや木竜術士カディオが術士として

抜きん出た力をもっているのもその旅の月の加護を受けたことが

大きいと聞く 勇者というのも大げさではあるまい

あのヴィアンカの旅の仲間でもあると聞く

どこかで魔王と闘うかもしれんぞ

アグリナが読むクレリアからの手紙では

海沿いを旅し 故郷へ向かう途中で恩師と再会し

今 コーセルテルにいるヴィアンカからの手紙で近況を聞き

旅を続けることと いずれはこの地で再会したいこと

またの便りを送る言葉でしめられた

 

   \\ わい わい //

 

すっかり聞き入っていた子竜たちは各々感想を言い合っていた

 

〔よし!!帰ったらそうお返事書こう!!〕

 

[ぼ・・・ぼくも書こうかなお手紙]

 

《ぼくらはまずロズおじさんに書かなきゃ》

 

(魔族の里も行ってみたいなあーー)

 

「ロズ、魔族の里か・・・     ジゼル

おまえもロズ・アルバ宛に手紙を書け」

 

  \ はい!ハドラーさま! /

 

『ジゼルはまだ文字を習い始めたばかりですよ』

 

「簡単な挨拶程度いい おまえが直接手書きさえすれば

ほかにだれの手を借りてもよい

相手は手紙の精霊 しかも子竜好きと聞く

おまえのこれからの成長を見せる相手としてはちょうどいい」

 

『これから・・・ですか

一度きりではなく何度も書けと』

 

手紙というものは面白い文化だ

オレも鏡を使った通信呪文は使ったことがあるが

こういった手紙のやりとりなどはあまり経験がない

今日のロズやクレリアだけではない

最近ではマータへ手紙を持ってきた夏の精霊のアクタエオンや

竜術士が里への報告に使うのも手紙だったはずだ

この世界では竜・人・精霊・魔族さえもつなぐものとして機能している手紙

ジゼルにとってこの経験がどう生きていくか・・・

楽しみなことだ

 




「ダイの大冒険」で手紙というとバランからラーハルトへの
遺言状を連想したウジョーです。
「DQ4」ではトルネコ郵便で戦争を回避し、ロイヤルウェディングを生み
「コーセルテルの竜術士」では竜術を使って宇宙ごしでも伝言が可能でありながら
エピソードがずっと豊富なお手紙効果 ハドラー家に新たな風が吹けばいいのですが。

季節の変わり目らしい不安定な気候 おつかれのでませんように

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