ハドラー子育て日記 コーセルテル編   作:ウジョー

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~カータと絵本日記~

     \ ハドラーさま~♡ /

 

オレの右腕にしがみついてくるジゼル

地下の術部屋で就寝の支度を済ませたことで

ようやく手が空き 新作の紙芝居を書こうとしたところだったが

 

「邪魔だジゼル」

 

   \ ハ~イ♡ /

 

  パッ  パタパタ   ピト

 

右腕から離れてすぐに左腕にとりついてきた

オレの技術を盗もうと熱心なのはよいが 

紙芝居の作成など見てもな・・・

 

「さっさと・・・」

 

寝ろ と言うのは容易いが ただこのまま寝るよりは

眠くなるまで術書でも読ませるか

 

『ジゼルはまだ文字がまともに読めないはずですよ』

 

そうだったか せめて竜言語だけでもそろそろ教えねば・・・

何か自主的に学べるような本があれば上達が早いが

 

『ここにはないですね あなたの紙芝居は魔族言語ですし

適当な本をマシェルから借りた方がよいのでは』

 

「そうするか」

 

          ブラ~ン

 

立ち上がってもジゼルが左腕にしがみついたままだったが

まあ マシェルの部屋へ行くだけだ 放っておこう

 

・・・

 

マシェルの部屋の前でカータにでくわした

 

{あ ジゼル ハドラーさん マシェルに用事?いっしょに入る?}

 

「うむ」

 

   トン トン         カチャ

 

カータがノックをしてマシェルの部屋に入りオレ達もつづいた

 

{マシェル 絵日記持って来たよ}

 

〔ありがとう 読ませてもらうよカータ

ハドラーさんとジゼルは何のご用事ですか?〕

 

「ジゼルひとりで竜言語に馴染めるような

読み易い本を借りようかと思ってな」

 

{竜言語ってなに?}

 

「お前たちが使っている言語のことだ

オレは他にも魔族言語と人間語が使えるが

ジゼルにはまず竜言語を教えようかと思ってな」

 

〔そうですか ここでは特に竜言語という言い方はしてないですが

そうですね やっぱり絵本がいいと思います

・・・この本棚にある絵本どれでも持っていってもいいですよ〕

 

「そうか では見させてもらおう」

 

〔じゃあ僕はカータの絵日記を・・・〕

 

 ぺら・・・   ぺら・・・

 

ふむ 絵本か・・・ たしかに絵から内容が推察しやすい分

文字をおぼえやすいかもしれん・・・

 

『・・・これは怪物でしょうか?』

 

イルカのプープー・・・と書いてあるな 

 

『イルカ・・・ 海の生物ですか

ジゼルはまだ海を見たことありませんし

もっと馴染みのある内容の方がよいのでは?』

 

贅沢をいってはキリがないぞ

 

〔ふふっ カータはとっても絵がうまいね

字も文も読みやすいし まるで絵本を読んでいるみたいだよ〕

 

絵本?

 

「カータ オレにもその絵日記 読ませてくれぬか?」

 

  \ カータおにいちゃん見せて~! /

 

{うん いいよ}

 

  ぺら・・・・

 

「ほう たしかに読み易いか・・・」

 

オレの紙芝居の絵とはタイプが違うがこういった絵も味があるな

 

   \ あ これ朝の~! /

 

『ジゼルにはこれがちょうどよいのでは

さっきの絵本より楽しそうですよ』

 

「ふむ すまないがほかの絵日記もみせてもらえるか?」

 

〔・・・カータがよければカータの分だけなら〕

 

{いいよ~}

 

〔じゃあ たしかここに・・・〕

 

  ガタ      スッ

 

〔はい とりあえず最近のだけですが〕

 

  \ わ~い ありがとうカータおにいちゃん! /

 

 ぺら

 

 \ あ これハドラー様だ! /

 

ジゼルが指さした一際大きな人物の絵

 

『これは たしかにあなたですね』

 

なるほど 特徴をよく捉えている

 

『直接文字が読めなくてもジゼルは楽しそうです

これを 借りれませんかね?』

 

「マシェル カータ もしよければしばらくこの絵日記を借りたい

ジゼルが文字に親しむのに丁度よさそうだ

術部屋でフェルリに読み聞かせを頼むこともできる」

 

{ジゼルが読みたいなら・・・いいよ

でもその日記帳まだ少し書くところ残ってるけど}

 

〔―――あ そうだ〕

 

ガタッ   パタン   がさがさ

 

〔はい 絵日記用のノート と色えんぴつの予備

たくさん用意してたのにもうみんなほとんど書かなくなっちゃたから

あまってたんだ〕

 

{もらっていいの!?ぜんぶ!?}

 

{うん いっぱい絵日記書いてね}

 

{うんっ}

 

 \ カータおにいちゃん書いたら見せてね /

 

「うむ 思わぬところにちょうどいい絵本作家がいたか」

 

『あなたは紙芝居作家ですね』

 

過去の経験を読み物にするところも共通だな

 

「カータ 何か必要なことがあればオレも手を貸そう

お前の絵日記にはそれだけの価値がある」

 

{ありがとう ハドラーさん!}

 

〔でも今日はもうおそいから早く寝るんだよ〕

 

{はーい}

 

「たしかに ジゼルもいい加減寝ろ」

 

   \ は~い zzzzz・・・ /

 

言ったそばからオレにくっつき眠りだしたジゼルを小脇に抱え

カータの絵日記を2冊借りてマシェルの部屋を出た

 

『ここで寝なくても・・・ がんばって起きてたのですね

あ ちゃんとだっこしてあげてくださいよ』

 

〔おやすみなさい〕

 

「ああ また明日」

 

  \ zzz・・・ /

 

・・・

・・・・・・・

 

翌朝 カータたちが朝食の支度に遅れてやってきた

同室の2竜 寝坊しがちな暗竜のナータや

夜更かしして本を読むことがある地竜のアータはともかく

普段は早起きな光竜のカータが寝坊とは珍しいな

そして マシェルや他の子竜たちが出かけるときも

カータは家で留守番したいと発言し周囲を驚かせた

マシェルの子竜の中でも七番竜であり末っ子気質が強い印象だったが

 

『あれは逆に自分より小さい子竜の前でよいお兄ちゃんとして

はりきっている顔ですね』

 

ああ なるほど そういうことか ならば・・・

 

・・・

・・・・・・・

 

 コンコン   ガチャ

 

{あ ハドラーさん}

 

「おやつだ 今日はお前とジゼルの分だけだからな

直接もってきた」

 

{わ~ ありがとうハドラーさん

これ お団子?}

 

「ああ 朝食後の食器に残っていたパンくずを元にこさえたものだ

マシェルなら子竜たちには食べさせないだろうが どうだ」

 

   ぱくっ

 

{おいしい ぼく好きな味かも}

 

「そうか もっともまったく同じ味はもう再現できんが

足りぬなら ジゼルの分も食うか?」

 

{それはジゼルにもちゃんとあげてよ

そういえばジゼルはどうしたの?

いつもはハドラーさんといっしょなのに}

 

「地下の術部屋で昨日借りた絵日記をよんでいるはずだ

フェルリに読み聞かせを任せている

二人とも随分と楽しんでいたぞ」

 

    ぱあああ

 

『いい顔ですね 光竜らしい輝くような笑顔』

 

本当に光ってないか?

 

{ごちそうさま ハドラーさん!

あの・・・ ハドラーさん ちょっときいてもいい?

光を絵で描くのが難しいんだけど どうしよう?}

 

「光竜に光のことを聞かれるとはな・・・

たとえば だが・・・ オレがギラ(閃熱呪文)を

使っている絵を描こうとした場合

凝縮し 穴を空けるように撃つときの絵をこう・・・

拡散させ 広範囲に放ったときはこう・・・」

 

適当にサラサラと描いてみせるとカータが食い入るように見てくる

 

「同じ拡散して放つとしても マキに火を点けようとするのと

洗濯物を乾かそうとするのでも こう描き方に違いが・・・」

 

{そっか! こうすると光がやさしくなるんだ!}

 

光が優しい?さすが光竜面白いことを言う

 

{ありがとう!ハドラーさん!!}

 

「・・・フフッ 甲斐があったようだな 待っているぞ」

 

一段と輝いた笑顔のカータへ自然と期待が高まる

 

そして少しずつ描かれていくカータの絵日記

カータが描く子竜たちの日常がやがてはジゼルの血となり肉となる

・・・愉快なことだ

かつてアバンの使徒たちは 「アバンの書」を通じ

はげまされ 技を学び 道を示され 世界も動かしたと聞く

 

『そういえば ダイがかつて「おれがちゃんと字を全部読めてたら

アバンの書をもらってすぐにアバンストラッシュXが完成してたかも」

と言ってましたね』

 

・・・そうだったな

さあ大いに学べ ジゼル そして強くなれ!

 




小説は時間を忘れて読みふけるのに参考書を読むとすぐに頭痛がするウジョーです。
「コーセルテルの竜術士」は原作が連載中なので書きたい話が次々でてくるのですが
小説を書くペースがおいつかないのが辛いところです
今作はあらすじ考えてから形にするまで1年以上かかってます
私は幼少時保育園や幼稚園に行っておらず家にあったキン肉マンやドラえもんの
コミックスを読んで字をおぼえていたような記憶がうっすらと・・・

暑くもなく寒くもなく スギ花粉も落ち着いて個人的には一番過ごしやすい時期で
ついついのんび~りしすぎてる気がしないでもないですが
これが世に聞く五月病でしょうか・・・

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