ハドラー子育て日記 コーセルテル編   作:ウジョー

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父と娘の戦い???の巻

ついに地竜術士ランバルスの娘がこのコーセルテルにやってくる

 

「準備万端 細工は流々・・・」

 

『あなたは歓迎の余興の準備しかしてませんが』

 

おまえはまったく役にたってないがな

 

『・・・いつもどうりですね』

 

・・・こいつも強くなったものだ

だが当面の問題はさっきから一人で騒いでいるこの・・・

 

《何か良からぬ事でもたくらんでいるんじゃないのか!?》

 

地竜族守長トウレン 

わざわざ外の地竜の里から今回の客人を見極めにきたという

以前ミリュウが マシェルに頼みに来たのは

こいつを止めろ ということだったが・・・

 

〔コーセルテルにも竜たちにも

害になるような人ではけっして―――〕

 

《そもそもなぜ あなたたちがここにいる!?

竜術士マシェル!! 神の使いハドラー殿!!!》

 

「ほう マシェルの説得が効かないばかり

オレにも飛び火してきた」

 

『珍しい展開ですね』

 

おそらくこやつにとって見極めする客人の中には

オレも含まれているのだろう

 

『なるほど ですが今更ですよね・・・』

 

・・・遅すぎるぐらいだろう

以前に会った火竜族族長候補のメオが

よほどうまく里に報告したのか

それとも竜術士たちへの信頼のあらわれか

 

『その割にはトウレンの態度が

刺々しいですね』

 

ふん この程度ぬるすぎるわ

あの言動は守長の立場によるものだ

大した問題ではない

それよりもそれに刺激された・・・

 

《やっと師匠とヴィアンカさんを

会わせてあげられるというのに

―――もし 邪魔をするなら

たとえ守長でもゆるしません》

 

    キビッ

 

《ユイシィ!?》

 

そして無言でマシェルの元へ行くナータ

竜術士優先の補佐竜どもが暴走する方が

・・・おもしろくなりそうだ

 

それよりも 一番の当事者の地竜術士ランバルスだ

 

『いつも豪放磊落な風情のランバルスが

今日はずっと不安そうですね

無事に親子対面できればいいのですが

ダイとバランのような不幸な再会だけは避けなければ・・・

そもそもなぜあんなにこじれたのですか?』

 

ダイとバランか・・・ あれはたしか

フレイザードがダイ達に敗れ魔王軍の戦力が半減した頃

カール王国を滅ぼし戻ってきたバランがダイと戦うと宣言

その時のオレはそれを止めようとしたがあの時は

蘇生されたばかりだったが生きた心地がしなかったな

11年探し渇望していた息子との再会の手がかりを見つけ

自ら剣を振るうほどの激戦だったカール王国攻略で上がった戦意

ダイの正体を隠し続けていたオレへの怒り、

などと色々条件が重なったバランが・・・

 

『それ ほとんどあなたのせいですよね・・・』

 

・・・ダイと再会したそばから戦闘になり力づくで

連れ帰ろうとした結果 散々抵抗された挙句

クロコダインの加勢で手傷を負い警戒し

ダイの記憶を抹消するという強硬手段にでたあたりが決定的だな

 

『あなたのせいですよね』

 

・・・あのときのオレは保身と野心しか頭になかった

ただでさえ魔王軍最強のバランがダイを連れ帰ろうものなら

オレの地位がとぶと容易に想像でき 大魔王も明言した

ダイがバランを倒すことをひそかに願ったものだ

 

『・・・その結果 本当にダイがバランを退けたものの

その後結局あなたはダイとバラン二人と同時に戦った上で

竜魔人化したバランに一方的に敗れたのでしたね』

 

因果とは恐ろしいものだな 竜の逆鱗に触れた報いだ 

しかもオレの体に埋め込まれていた黒のコアがバランの命を奪った

 

『やっぱりあなたのせいですよね』

 

まあそれはさておき 今はランバルス親子だ

あのときのバランとは事情が違う 参考にはならんかもな

そもそもオレはあやつらの事情をよく知らんが

・・・あの表情 色々と抱え込んでいるようだな

やはり余興の準備は無駄にはならんな

 

『そのようですね・・・

あ!?』

 

来たようだな

空のかなたから風竜術士ミリュウとともに

飛んでくる女が一人

 

 ヒュウウウ・・・

 

 

            すとん

 

〔ヴィ・・・〕

 

直接出迎えたランバルスに対し着地した女が抜刀し一閃

 

『!!??』

 

ふみこみが浅く ランバルスにはあたっていないが

場の空気は一変した 顔の面影に太刀筋 あれがやつの娘か

そして顔面蒼白し後退するランバルスに剣を振りながら

接近していく娘

 

『あなた!! すぐに止めてください!!!』

 

ブン    ブン

 

・・・あれではダメだ

 

『!?』

 

あの程度ではランバルスの服すら斬れん

動揺するマシェルや子竜たちもトウレンに止められている

・・・そもそもマシェルはトウレンを止めに来たはずだが

 

〔まってくれ ヴィーカ〕

 

     キンッ

 

ランバルスが鞘に納まったままの小刀で娘の剣を止めた

 

〔いまだ絶望の中にいらっしゃるのではと心配してました・・・が・・・

私の剣を止めて下さった・・・ 生きる力をとりもどしておられる

本当に良かった〕

 

涙を浮かべる娘

 

〔生きていて下さって良かった

また・・・会えて ―――本当に・・・〕

 

〔俺も・・・ずっと 会いたかった ヴィーカ〕

 

〔お父様〕

 

抱き合う親子を前に 聖母竜もようやくおとなしくなった

 

『ああ・・・本当に良かった 

あの時のような悲劇が繰り返されなくて』

 

守長トウレンと風竜術士ミリュウ以外は剣劇の意図に気付かず

あっけにとられていたが ランバルス達がこっちに来て

 

〔はじめまして グランレイック・ランバルスの娘

ヴィアンカ・リオティールです

あこがれの竜都に呼んで下さり ありがとうございます

まさかこの地で父と再会できるなんて思ってもみませんでしたわ〕

 

自己紹介をはじめたことで ようやく正気を取り戻したようだ

 

《私は地竜術士ランバルスの一番竜ユイシィです

ようこそおこし下さいました》

 

〔ユイシィ?〕

 

《こっちは師匠(せんせい)の元で一緒に育つ兄弟竜で―――》

 

〔ちょっと待って

もしかしてお名前は『ロービィ』『ドリス』『リド』『クレット』『マルティ』・・・〕

 

《ロービィです!》

 

《リドです》

 

      \クレット/

 

関係ない名前もあったが初対面のはずの子竜たちの名前を

いいあてたヴィアンカ

 

〔どれもお母様が好きだった著名人の名よ〕

 

「なるほどそういうことか」

 

  \ ハドラーさま 私の名前はどういう意味ですか? /

 

ジゼルが今の話に興味を持ったのか聞いてきた

 

『あなたのお名前は 次世代への希望をこめて

ジゼ と名付けようと私が提案して』

 

「お前の長兄と長姉に共通する一文字 ル を

オレが足し ジゼル と名付けた」

 

 \いちばんおにいちゃんと おねえちゃん・・・ ル・・・?/

 

まだバルトスとアルビナスのことを直接教えていないため

よくわかっていないようだな

 

 \ナ・ー・タ・・・ あれ・・・? ・・・あっ!!/

 

『?』

 

    \ マシェ『ル』! フェ『ル』リ! /

 

「『あっ!?』」

 

そっちか ジゼルにとって兄姉は身近な年長者だからな

 

『そういえば偶然ですが一致しますね

どうしますあなた?訂正しますか?』

 

・・・いや好都合かもしれん 少なくともこの地にいる間は

あの二人を兄姉として見習うことはジゼルの

レベルアップにつながるはずだ

しばらくこのままにしておこう

 

「名前につながりを持たせるのは

それだけ期待を込めている ということでもある

その名に恥じぬ成長をな」

 

      \ はい!ハドラー様♡ /

 

応えるジゼルの顔に オレの子バルトス達だけでなく

ダイ達アバンの使徒の面影も感じていた

そして互いの自己紹介を終え トウレンをあっさり攻略し

周囲とも馴染んだヴィアンカだったが宿泊先を風竜家にすると

ミリュウが言ったあたりからまた風向きが変わった

 

〔お父様 私―――・・・

お父様が元気で生きていて下さってうれしいし

会えて本当に良かったと思ってますが

置き去りにした事は ゆるしてませんから〕

 

再び顔面蒼白となるランバルスと地竜家の子竜たち

 

『えええーーーーー!!』

 

と うるさい聖母竜

どうやら ただなごやかには済みそうにない

まだまだ楽しめそうだ

オレは期待をしながら余興の支度をはじめた

 

 

 

 




発売されたばかりのコーセルテルの竜術士のドラマCDブックの影響で
当初に書きたかった内容にいく前の段階で盛り上がってしまったウジョーです。
次回は早く更新できればいいのですが どうなることか

言うまでもないのですがジゼルはディアさん作「魔軍司令親衛隊隊長の恋愛!」
からの出演なので名前の由来もそこからなので
不敬かとも思いましたがせっかく思いついたので拙作では
ハドラーと聖母竜が合作で名付けたことにしました。

梅雨も明け連日暑さが続きますがくれぐれもお気をつけください
(私は仕事場で一回吐いた上に微熱に悩まされました)


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