ハドラー子育て日記 コーセルテル編   作:ウジョー

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賢者への道

「ではこれより 紙芝居 ドラゴンクエストの新作 

魔王の両輪をはじめる」

 

        \\ わーーい! //

 

子竜たちの歓声と拍手を受けて紙芝居の読み聞かせを行った

 

今回はこの後につながる非常に重要な内容ではあるが

オレが当時実際に見ていたのはほんの一部で

後に手に入れた日記が非常に役にたった

 

「魔王軍最強の戦士である地獄の騎士がかつてない窮地にいた

人間の赤子を拾い地底魔城で育てはじめ間もないころ

まだ歯も生えていない赤子に何を与えればよいのか苦心の末

城にいる魔物の中で一番飲みやすく栄養がありそうな

魔物の乳を飲ませ続けていたのだが それが裏目となる事態が起きたのだ」

 

それまでバルトスの6本の腕の中で笑っていた赤子の顔が

紙をめくり青色に変わった絵になったところで

 

       \\ ・・・ごくっ //

 

以前の紙芝居でヒュンケルが成長しバルトスに星型の勲章を渡す

といったことをやったため助かることはわかっているはずだが

意外にもかなり緊張した様子で見ている子竜たち

 

「たしかにその魔物の乳には魔物にとっても人間にとっても

十分な栄養があったが人間に対しては毒にもなりえたのだ

赤子の顔色や体温の変化により異常に気付いたが治療は困難だった

毒消し草はあったが歯もなく飲み込む力も弱い赤子には使えず

また地獄の騎士にはその強力な力の代償として魔法が使えない

力が強く術も強いものは魔王のようなごく一部の例外だけだ」

 

『ここでこっそり自慢をもってこないでくださいよ』

 

「だが地獄の騎士はあきらめなかった

赤子を抱え城の魔物手当たり次第に協力を仰いだが

魔王軍には攻撃魔法を得意なものが多いが

回復魔法の使い手は少なく更に解毒呪文を使えるものはいなかった

これには魔王も例外ではなく攻撃・回復の両方を使える者は

更に限られてくる 人間では勇者や賢者とよばれるほどのな」

 

『そう考えるとそれら全てを兼ね揃えた

大魔王バーンはとんでもない存在ですね』

 

竜の騎士もそうだろうが

 

『もっとほめてもいいんですよ』

 

ダイは魔法が苦手だったがな

 

「だが 子の為に駆け回る地獄の騎士に心を動かされた魔物がいた

それがこの鬼面道士だ」

 

      ドン!

 

   \\ うわっ!! //

 

鬼面道士の姿に驚く子竜たち

 

『ついにでましたね』

 

「上位の回復呪文を使い補助呪文も使える術者が

治療に名乗りでた

そして新たに解毒呪文キアリーの習得に成功したのだ

手に持った杖から放たれた光に包まれた赤子からは

みるみる毒が抜けていった」

 

子竜たちがあきらかにほっとしたところで・・・

 

「だが!!」

 

     \\ びくっ!!! //

 

あまりに素直な反応に笑いをこらえながら続けた

 

「まだ赤子は持ち直してはいなかった

地獄の騎士の腕のなかでその体温がまだ戻っていないのだ

たしかに解毒は成功したが もうあと一押しが足りない

地獄の騎士はせめてあたためようとするが骸の体には血も肉もなく

人間のようなぬくもりを与えることができなかった

やけつく息を吐けるが赤子には刺激が強すぎる

もちろん他の魔物が使う火の息も同様である

地獄の騎士は途方に暮れそうになるがあきらめる気はなかった

その瞳には赤子しかうつっていなかったのだ

焦る心をうつすかのように顔には汗がにじみ瞳には・・・

そんな姿にまた心と体が動かされるものがいた」

 

     \\ ・・・・・・ //

 

「戦場では阿修羅のような戦士が目の前で父として必死な姿に

鬼面道士はまた新たな一歩を踏みだしたのだ

それは炎の呪文メラの習得である」

 

     \ あっ・・・ /

 

「回復呪文を得意とし攻撃呪文が使えなかった鬼面道士だったが

その限界を超え おぼえたての呪文を必死に制御した

ただ目の前の親子の力になりたかった その一心で」

 

そんな鬼面道士を恐がるように見るような目はもうなかった

 

「赤子の顔に赤みがもどり 平穏がもどった

世界を恐怖に包む魔王軍の中枢地底魔城でおきた小さな奇跡

それに気付いたものがいた 城の主 魔王である

回復呪文だけではなく攻撃呪文も習得するという

自らの限界を超えた配下に興味をもったのだ」

 

『ああ そっちなのですか まあ あなたのことですからね』

 

「魔王はその鬼面道士に名前を与えた

自分と地獄の騎士の名から一文字ずつをとり命名した」

 

『それで ブラス となるのですね』

 

そういうことだ バルトスも自分と同じ一字をもつ伝説の剣豪の名

ヒュンケルと名付けているからな

 

「こうして魔王から命名された鬼面道士は魔王軍の中で地位を上げ

いつしか武の地獄の騎士 魔の鬼面道士として

戦場では部下を率いることができるほどの存在になっていった」

 

多くの怪物たちをしたがえ杖をふる鬼面道士の絵

結構な力作だったのだが 反応がいまひとつだな

 

「だが城にもどれば赤子用の食べ物の用意を

地獄の騎士と共に苦心する毎日だった」

 

『さすがですね 本当にあなたの部下とは思えませんが』

 

オレが信じるのは力だけだ 普段の行いまでは興味がない

 

「そんな姿に周りの魔物たちもほだされたように 赤子に笑顔を向け

その子育てに積極的にかかわるようになっていった・・・

というところで 今回はここまでだ」

 

パチパチパチパチ!!

 

    \ わー いつのまにか手に汗びっしょり /

 

〔あ ほんとだ つい力はいっちゃった〕

 

    \ あかちゃんぶじでよかった~ /

 

\あのだっこの絵 リオノラをだっこしたときの絵とそっくり~/

 

\ハドラーさま 鬼面道士はなんてお名前になったんですか?/

 

「そこはあえて書いていない ・・・なぜなら

名付けというものは力がある おまえたちにもそれぞれ

命名の術というものがかけられているようにな

たしかにここで名前をだした方が自然でわかりやすい

だがオレはこの紙芝居をおまえたちにとって

できるだけ身近なものに感じてほしいからだ」

 

        \\ ? //

 

『どうもあまりよくわかってないようですね』

 

〔あえて名前を明かさないのは その方が面白いからですよ

たとえばこの一人一人を自分や身近な方と置き換えて想像してみたり

紙芝居ごっこをするときにそのまま自分たちの名前で遊んだりできますから

そういった自由な遊びの妨げにならないようにという配慮ですよ〕

 

〔流石テイムさん!

なんかあたしにもわかった気がする

うん たしかにその方が楽しそう!〕

 

竜術士二人が同調したことで子竜たちも納得したように見える

 

「・・・とりあえず今回のところは名付けのときに

文字を継がせ繋がりをつくった ということだけ憶えておけ」

 

まあ匿名は紙芝居上の演出のひとつということもある

そもそも実名では魔王がオレであることもわかる為

仕方がない面もある

 

『ジゼルたちが紙芝居を楽しめたのなら何よりです

今も紙芝居の感想や内容を話題に盛り上がってますし』

 

・・・だが見てみろ聖母竜 この小さな頭で考える子竜たちを

この行為がやつらのレベルアップにかかわってくるのだ

 

『自分の限界を超えたブラス老のように ですね』

 

フフフッ・・・  こいつめ・・・

 




前作含めハドラーが新たに習得した特技・呪文
ホイミ キアリー 初級火竜術 アバン流お料理術

ジゼルから力を借りたときのみ使えるもの
フィンガー・フレアボムズ・ダブル
中級火竜術 

聖母竜と同化中のみ使えるもの
ドラゴラム 不思議な力がはたらく場所でもルーラ等移動呪文が使える
肉体を失った存在との会話が容易になる
マザースキャン

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