ハドラー子育て日記 コーセルテル編   作:ウジョー

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幼竜のお茶会

 

「邪魔するぞ」

 

         \ こんにちは / 

 

すでに子竜たちが集まっているが・・・

幼竜の数に対して少年竜の補佐竜が少ない

それに竜術士もいない

 

「どうした?

もう各家の幼竜が揃っているのに

少年竜は水竜家のリリックと光竜家のマリエルだけか?」

 

・・・火竜術士アグリナと暗竜術士テイムが遠くから様子を見ているがな

 

≪はい 木竜家と風竜家では竜術士さんが寝込んでて

補佐竜たちは帰りました うちのエレはその看病に行ってます

地竜家は地竜術士の娘さんをお迎えする準備があるそうで

暗竜家のラルカは郵便組合の受験勉強があるからと・・・≫

 

{だいじょうぶですよハドラーさん!

リリックさんがいますし! 私もいっしょにいますから!!}

 

リリックとマリエルにテンションの差を感じるが・・・

まあこの二人なら大丈夫だろう

・・・それにオレがいるのは野暮というものだろう

 

「ではジゼルを任せたぞ」

 

        \ ハドラーさま?! / 

 

『ちょっとあなた!!』

 

「オレは新作の紙芝居を仕上げてくる

お前を迎えにきたときにここで披露してやろう」

 

    \ \ わーー! かみしばい! /  / 

 

ほかの幼竜どもも期待の歓声をあげた

 

      \ うー ハドラーさま・・・ / 

 

テンション底辺のジゼルを任せオレは呪文を唱えた

 

「ルーラ!」

 

ドン!

       ギューーーン!

                             ドーーーン

 

〔あれ ハドラーさん もうおかえりですか?〕

 

「ああ ジゼルは残してきた 後で迎えに行く」

 

オレは未完成の紙芝居と道具を手にし 呪文を唱えた

 

「リリルーラ」

 

                フッ

 

「どうだ?」

 

〔うわあ!!〕

 

〔ハ、ハドラーさん!?〕

 

オレは離れて様子を見ていたアグリナとテイムの背後にあらわれたのだが

思いのほか驚いているようだ 少し気分がいい

 

「あまり声をだすと子竜達にバレるぞ」

 

〔そうだった ハドラーさんもここから見守るんですか?〕

 

「オレは紙芝居の仕上げをするだけだ

後はどこでやっても変わらんからな」

 

『そう! どこでやっても同じなら

たまたまジゼルが視界に入るような所でも問題ありません!』

 

・・・お前の声は竜術士たちには聞こえてないがな

 

〔ハドラーさん ジゼルさんの様子が・・・〕

 

〔あ ちょっと表情が暗い・・・かな?〕

 

「気にするな あやつはオレのそばを離れると笑顔が曇るのだ

背中に不安をあらわす暗竜の羽がでているだろう

あれはオレのそばにいるときはほとんど見せないからな」

 

〔あ ホントだ でもどうして暗竜のプレアにはない暗竜の羽が

火竜のジゼルにはあるの?〕

 

〔私のプレアに羽が見られないのは『人化の術』に特化した変種

ということらしいのですが ジゼルさんはその逆・・・では?〕

 

「つまり プレアは竜の力を抑えることに長けた竜であり

ジゼルは竜の力が有り余っている竜ということか?」

 

その分制御にてこずりそうだな 暴走しやすいとも言える

 

『あなたがジゼルの命名の時にかけた

竜人化術が未熟だったのでは?』

 

〔あくまで仮定できる要素があるというもので・・・

私は術士の経験がまったくないものですから確証はとても〕

 

そのテイムのかけた命名の術の方が上手かったとも思えんが

 

〔こうやって距離をとってはじめてわかることもあるから

このお茶会楽しみだったのよね〕

 

「そうか・・・」

 

オレは紙芝居の作業にとりかかり時折子竜たちの様子を見ていた

 

『ああ!! ジゼルの表情がかたい!

いつもはあんなにいい笑顔ができるのに!』

 

折角の特技も持ち腐れだな

まあこれもジゼルにとっては経験だ お前も黙ってみていろ

 

〔あっ!!〕

 

アグリナがいきなり声を上げたことでオレも紙芝居から

子竜たちに視線を移した

・・・どうやらアグリナの子竜ヤチがテイムの子竜プレアを殴ったようだ

だがなぜ殴った方のヤチが大泣きしている?

しかも隣にいるジゼルもつられて泣きそうだ

 

           ゴアッ!!

 

さらにヤチが発火した これは術暴走か

 

流石に我慢しきれなくなったアグリナとテイムが

駆けつけたが オレは様子をみているだけだ

 

『あなたはいかないのですか』

 

ああ

 

『ですが先ほどのお話からすると

ジゼルも泣き出してしまうとそのまま術暴走するのでは?』

 

まあ ここは黙って見ていろ

水竜リリックが炎の延焼と燃え盛るヤチに近づこうとするアグリナを止め

テイムとプレアが暗竜術で術暴走の炎を消した

 

「テイムもやるものだな あれは中級竜術のはず

とても生まれたばかりの幼竜と素人術士とは思えん連係だ」

 

『テイムは元・天文学者と聞いていますね

アバンもそうですが学者というものは術に適正が高いのでしょうか?』

 

どうだかな しかしジゼルは混乱するばかりで役にたってないな

 

『それどころか 暴走寸前ですよ! あなたもはやく!』

 

だがアグリナがいち早く気付き マリエルやロットたちが

ジゼルにとりつき安心させている

ヤチもアグリナが落ち着かせ 事態は収まった

少々花畑が燃えたが木竜の花畑はこの程度は回復するらしい

 

『みんな無事でしたね ジゼルも今の一件で他の子竜たちと

馴染めたようですね 楽しそうにしてます』

 

そうだな ジゼルに笑顔がもどっている

アグリナ達はそのまま子竜らと遊んでいる

オレのことは話していないようだ

プレアとヤチも仲直りし子竜たちの輪の中で花輪などをつくっている

ジゼルがつくってきた薬草パンも好評のようだ

 

「まさか ここまでうまくいくとはな」

 

『もしあなたがあの時行っていれば結果が変わっていた、と』

 

・・・それはわからんが トラブルに助けられることもある、

オレの・・・経験だ

だが ジゼルは役に立たなかったな おまえに似たか

 

『精神的動揺に弱かったのはむしろあなたに似たのでしょう』

 

おまえもほざくようになったな

 

この茶会に参加した火竜ヤチ 暗竜プレア 

水竜リリック ラティ ティルク 光竜マリエル セユウル

風竜ゼイン 地竜クレット 木竜ロット 

火竜術士アグリナ 暗竜術士テイムらはジゼルにとってマシェル家以外で

はじめてオレを挟まずに接触したものたちだ

 

『こうやって色々な出会いや交流でジゼルが成長していくのですね

もちろん嬉しいのですが 少し・・・寂しい気もします』

 

 

 




花粉症に混ざっていつのまにか熱もでてたウジョーです。
鼻も目もグズグズで体調を崩しても治ってもわかりにくいのが曲者です
しかも暑い日と寒い日の差が極端という厄介さ
みなさまはくれぐれもお体にはお気をつけくださいませ

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