「今日は光竜家に行くつもりだが ジゼルはここに残れ」
ガシッ
無言でしがみついてくるジゼル
力づくでひきはがすのはたやすいが 放っておけば
リリルーラですぐについてくる
「紙芝居のためだ お前に見られたくはない」
フルフル
しがみついたまま首を振るジゼル どうやら諦める気はなさそうだ
これ以上の言葉は面倒なだけだ
「すまんがカータ お前も同行してくれ こいつの相手を頼むことになる」
{はーい いいよー}
「オレが手土産を用意している間に行く準備をしてこい」
\\ ハーイ! //
・・・
手土産の菓子ができたところでジゼルとカータがやってきた
カータと揃いの黄色を基調とした服を着たジゼル
『やはり明るい色も似合います カータと並ぶと更にいいですね』
服の違いはジゼルは太陽をモチーフとした前掛けがあり
カータは胸に太陽をモチーフにしたプレートを下げている
「準備はできているようだな では手をつなげ」
〔ハドラーさん このスケッチブックをどうぞ使ってください〕
「ああ ありがとう 次の紙芝居を楽しみにしておけ ではいくぞ
ルーラ!」
{いってきまーす}
\\ いってらっしゃーい! //
ギューーン ドォン
{とうちゃーく!}
\ ハドラー様 これいつか使えるようになれるの? /
「お前次第だ」
〔あら ハドラーさん ジゼル カータ いらっしゃいませ〕
「すまんな光竜術士モーリン 今日はオレの紙芝居の為に
お前の娘レオノラの絵を何枚か描かせてもらいに来た」
〔そうですか よろしいですよ レオノラは今寝ていますけど
夫のラスエルが見てますので 静かにしていただければ〕
「そうか 好都合だ 父と赤子の構図が描きたいからな」
人間の赤子と異種族の父親の組み合わせはコーセルテルでは貴重だ
\ 地獄の騎士のおはなし 大好きです! /
{ぼくもー!}
『バルトス大人気ですね』
なんとも誇らしいことだ 今回は主役ではないがな
・・・
「・・・邪魔するぞ ラスエル レオノラ」
{いらっしゃい ハドラーさん ジゼル カータ}
部屋には父親で成竜の光竜ラスエルと娘(人間)のレオノラがいた
{あ やっぱりレオノラまだ寝てる
ぼくたちはあっちのセユウルたちの所にいこうよジゼル}
「光竜家の子竜たちと土産の菓子でもつまんでいろ」
\ はーい・・・ /
カータに連れられていくジゼル 連れてきた甲斐があったな
カリカリカリ・・・
すー・・・ すー・・・
静かな部屋にデッサンの音とレオノラの寝息だけがひびく
「フム」
ペラッ
ふ・・・ ふええっ
レオノラがスケッチブックをめくった音に反応したのか
少しむずがりだした
{よしよし レオノラ}
ラスエルがレオノラを抱き上げあやしだした
いい構図だ これは筆がのる
カリカリカリカリ・・・!
『いつにもまして筆が速いですね』
これを描きに来たようなものだからな
「・・・ふう こんなところか」
一気に描き上げたスケッチをじっくりと見る
『いいですね 少し涙目になったレオノラを
やさしく抱きしめながらなだめるラスエル』
ベリッ
このスケッチをラスエルにも見せ そのまま渡す
{わああ レオノラ かわいい かわいい~ かわいいーー!}
絵と抱いている実物のレオノラを何度も見比べ喜色満面のラスエル
「今日の礼だ それはお前にやろう」
{ええっ! いいんですか 折角描いたのに}
「ああ 一度描けば ある程度応用が効かせられる
問題ない それに・・・
人間の成長は早い 魔族や竜とは比べ物にならん
今のこの姿もすぐに変わる・・・
こういった形で残すのも一興よ とっておくがいい」
{ありがとうございます ハドラーさん!
そうだ ハドラーさんもレオノラを抱いてみます?
間近で見るとそのかわいさといったらもう!}
「そうか では折角の機会だ」
オレはレオノラを預かり抱きかかえる
{ハドラーさん抱っこ上手ですね
レオノラがまったく動揺してません}
「ジゼルが生まれる前に少しな」
『ダイの時の経験が生きましたね』
バランと共に天界での悪戦苦闘の日々だったからな・・・
ダイは赤子でも手強すぎた バランは寝かしつけるのが下手で
聖母竜は役に立たず オレも指を舐めさせるしか手がない中
バルトスがヒュンケルにやっていたことを思い出しながらな
ギュッ
いつのまにかジゼルがオレのズボンをつかんでいた
「なんだジゼル? お前も抱いてみたいのか?」
{ジゼルちゃんにはまだ少し難しいかな
こうみえても結構重いし コツもいるんだよ}
「こうすれば問題あるまい」
オレはレオノラをラスエルに返し床に座り 胡坐をかき
そのヒザの上にジゼルを誘った
そしてジゼルがレオノラを抱きオレはジゼルの背中ごしから
レオノラを抱き支えた
{成る程 その手がありましたか
今度ぼくもやってみようかな うちの子竜たちもレオノラを
抱っこしたがるけど我慢させてしまってるから}
\ ♡ ・・・あったかい /
「・・・そうか」
バルトスよ お前から一字を受け継いだお前の妹が
今 お前と同じように『ぬくもり』を感じているぞ・・・
『私も混ざりたい・・・』
お前には無理だ
『・・・っく 竜の体ではアンバランスすぎてだっこがむずかしい』
そもそもオレが変身することになればオレが手を貸せんからな
せめて六本の腕でもあれば
・・・六本の腕?!
「ラスエル 後ひとつだけ描きたい絵がある 頼む」
{はい なんですか?}
・・・
・・・・・・
{これでどうですか ハドラーさん?}
〔セユウル重くない?〕
\ レオノラのにーにだもんっ /
ラスエルの上に幼竜のセユウルを抱いたモーリンが乗り
三人が六本の腕でレオノラの
頭を 首を 腰を 尻を 足を支え 手を握り 抱きあげている
「これだ! そうか六本の腕をこう使えばいいのか」
カリカリカリカリカリカリ!!
今まで以上に筆が走る
一気に書き上げた光竜家の一枚
我ながら会心の出来だ
{うわあ!}
〔まあ!〕
{ああっ いいなぁ! 私も書いてほしい}
{とってもステキです!}
\ ぼくもレオノラもいるっ /
\ ハドラーさま すごーい♡ /
『高評価ですね まあモデルがいいですから』
六本腕の実働の姿が見れたのは思わぬ収穫だった
・・・
・・・・・・
その後 レオノラの授乳時間直前まで子竜が交替しもう3枚描き上げ
描いたスケッチはそのまま光竜家に渡しオレ達は帰ることにした
{ハドラーさん 今度暗竜術士のテイムさんの呼びかけで
幼竜のプレアに同じ年頃の友達ができるように
各家の幼竜を集めてお茶会をやりましょうっておはなしがあるのですが
ジゼルも是非参加してください
私やセユウルも参加します}
「ほう それは面白そうだな ジゼルにとってもいい機会だ
詳しい場所と日時はわかるかマリエル?」
{木竜のお花畑でリリックさんが段取りをするそうです
詳しいことがきまればマシェルさんのおうちにすぐ連絡がいきます
楽しみにしててねジゼル}
\ ・・・うん /
ジゼルがどこか不安げな顔を見せる
・・・どうやら一人で参加させたほうが面白くなりそうだな
「では帰るぞ カータ ジゼル」
{描いた絵みーんな あげちゃってよかったの?}
「ああ 見ていろ」
オレは一見白紙のスケッチブックのページに軽く木炭でこすった
{あっ 絵がでてきた!}
\ すごいおもしろいっ どうなってるの?ハドラーさま? /
「固めのペンや鉛筆で絵を描けば下のページに跡が残るからな
それをこうすれば浮き出てくるという仕組みだ
後は帰ってからお前たちで楽しめばいい
これはカータ お前の物だ」
元々マシェルのものだからな 今日の同行の礼にはこれが最上だろう
スケッチブックを手に喜ぶカータと
それを羨ましそうに見るジゼルを抱き上げルーラを唱えた
あけましておめでとうございます
旧年中に書き上げるつもりがいつのまにか年を越していて紅白の小林幸子さんの復帰戦を見逃したウジョーです。
今回六本の腕の使い方を考えていた際 アシュラマンがサンシャインと阿修羅バスターの改良を模索してるシーンを思い出しました 台無しである。
本年もよろしくおねがいします。