ハドラー子育て日記 コーセルテル編   作:ウジョー

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武術訓練!? ~前編~

「なかなかいい岩だな これなら大きさもちょうどよい」

 

子竜たちが寝静まった闇の時間

オレは世が世ならりっぱな『うごくせきぞう』にしてやるほどの良質の岩をマシェル家の

近くで見つけ出した

 

                 ジャキッ! ズバッ!!!

 

地獄の爪で目当ての岩をまっぷたつにした

 

「・・・オレの地獄の爪(ヘルズクロー)は今宵も冴えておる」

 

     ゴリッ ゴリ・・・・

 

そして二つになった岩を地獄の爪で思い通りに加工していく

かつて戦ったヒュンケルの鎧に比べれば岩など豆腐と大差ない 大した時間もかからず目当てのものができた 

爆弾岩を一回り小さくした程度の大きさになったものが2つ

 

『これで完成ですか ハドラー?』

 

「二つとも試しに使ってみる それで成果があれば完成だ」

 

結果がでなければ意味がない

 

『私には よくわからないのですが・・・ 

アータならともかく ナータやサータの「弁当箱」にはいささか重過ぎるのでは?』

 

たしかに今宵の外出は 夕食どきに頼まれた明日の剣術修業用の弁当を用意するためと言ったが・・・

 

「心配するな これはオレが直接運ぶ 

それにアバンがつくっていたようなものをそのまま再現するわけではない」

 

たしかに アバンが用意していたような体力回復効果もあり満腹感も満たせるあの「おべんとう」が

つくれればベストだが今のマシェル家には材料が揃っておらん 

間に合わせの材料でつくって昼までにもたなければ意味がない

そこでこれを作ったわけだが さて、やるか・・・

 

 

〔では ハドラーさん ナータとサータをどうかよろしくお願いします

二人ともちゃんとエレさん達の言う事聞くんだよ

くれぐれも危ないことしちゃダメだよ〕

 

「おいおい武術訓練にならんぞ それにオレは簡単な回復魔法なら使える 心配無用だ」

 

〔ええ!? それってかえって心配なんですけど!?〕

 

【マシェル・・・ できるだけ気をつけるが・・・】

 

ため息まじりのナータ

 

<前もあったよね こんなやりとり>

 

どうやらいつもこんな調子のようだ 見送る子竜たちも苦笑している

 

〔がんばるんだよーー〕

 

\いってらっしゃーいっ/

 

 

(いってきまーす)

 

見送りの者たちの声を背に受け手を振り応える風竜・サータと

寡黙だが意外にもやる気を感じる暗竜・ナータとともに

オレは例の弁当を小脇に抱え武術訓練に向かった 

この平和なコーセルテルだが武術訓練というものがあるとは興味深い 

それが戦を想定したものか自己の心身の鍛錬の為のものかは知らんが 一見の価値はあるだろう

 

『ホイミが必要ないといいですが』

 

おまえも過保護だな ・・・まあオレは回復呪文はあまり得意ではないがな

 

そんなことを考えながらも森を歩いていると すこし拓けたようなところに見慣れぬ子竜たちと竜術士・エレ そして・・・

 

[俺は万年雪の精霊カシ あんたがあの子守り竜術士のとこにいる見習いだな]

 

「いかにもそうだが」

 

雪の精霊と名乗ったな なかなか強い力を持っているようだな 

オレの知る精霊は力よりも特殊な能力に特化したものが多いイメージだったがこやつは違うようだな

 

[あの子守り術士の見習いになるようなやつだから一見弱そうなやつかと思っていたが

あんたいかにも強そうじゃないか]

 

カシの目に好戦的な光が宿る かつては見慣れていた戦士の目だ 

 

[なあ こいつらの訓練の前に 俺と手合わせしねえか?]

 

このオレに訓練用の木剣の柄を向けるカシ その目の輝きに感化されたのかオレの血が騒ぐ 自然と剣を手に取った

 

〔こらこら二人とも なに勝手に はじめようとしてるの 

・・・やるのはいいけど私が審判をつとめるから ちゃんと従ってよ〕

 

エレがそういいながら オレとカシの間に立つ 子竜たちはやや遠巻きに見ている

まだオレは名乗ってもいないがどうやらこの一戦に興味があるようだ

 

「オレの名はハドラー ・・・さてはじめるか」

 

オレの前で剣を構えるカシ どうやらオレはつくづく剣と縁があるようだな

かつてオレを熱くさせた ロカ、ヒュンケル、ダイ、バラン、そしてアバン やつらから刻まれた剣傷は常にオレを強くさせた

オレがかつて最期に挑んだ闘いに選んだ武器もまた剣だった・・・

 

[いざ 勝負!!]

 

〔はじめっ〕パン

 

ガン!!!                 ・・・パシッ!カラン・・・

 

双方の剣が折れたか ならば!!!

 

〔そこまでっっ!!〕パン

 




初の前後編 さらに初のハドラーの戦闘シーン・・・でも4行で終わった。

風竜の主な特徴
やんちゃでいたずら好き 高いところと自由を愛するが水が苦手
竜族の中で空を飛ぶ術がもっとも得意で 
最初に人化術を使い人と共に生きることをはじめた 最初に竜術士を得た種族であるが 人化術は苦手
ちなみに風竜家の竜術士は最初の竜術士とその風竜(六代目風竜王)との間に生まれた子の末裔で
竜術士と補佐竜の間に生まれた子が代替わりしていくことが多い
白を基調とした服を着ている

風竜・サータ
二番補佐竜 男子
いつも笑顔なトラブルメーカー 生後ほぼ三年だがナータが卵から孵化した日の夜に生まれたての状態でマシェルに預けられたのでおそらくナータと同じ誕生日
喜怒哀楽が大きく負けず嫌いで冒険好き 
ナータにライバル心むき出しで絡んだり いたずら大将なのでナータやアータから注意されることも多いが
二番竜という自覚も強く弟たちのためなら苦手なものにも飛び込み 精神年齢の高さなどから浮くこともある
ナータを引っ張り込んだりと溢れる行動力は兄弟に欠かせず リーダーとなることも多い
月の術資質がありすべての竜術を使える資質はあるが地竜術は苦手


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