ハドラー子育て日記 コーセルテル編   作:ウジョー

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元魔王のよろこび

  チク チク チク チク・・・・

 

「・・・こんなところか」

 

゜すごいですねハドラーさん この作業用手袋に使っている素材は

火竜向けの火にも水にも強い分 縫うのにとても力がいるので

大変だと思いましたが これでいいですよ゜

 

オレが縫った手袋を見たグイ族の長の言葉に 気分がよくなる

 

「あとはこれを裏返すだけか こいジゼル」

 

   ジゼルは さぎょうようてぶくろを 装備させてもらった

   守備力が7あがった

 

「どうだジゼル? 少しきついのではないか」

 

      \ ♡~~! ~♪!! /

 

ジゼルは手袋を頬にあて笑うばかりで 出来についての感想がない

 

『ジゼルが喜んでいるからいいではないですか』

 

おまえはそれでいいだろうが

 

゜ちゃんと寸法をはかってますし 使っているうちに

のびて手にぴったりと馴染みますよ

これなら手袋をはめたままでも作業に支障がでないほどになりますよ゜

 

「なるほど それはよいことを聞いた」

 

゜ではこちらをお渡ししますので また縫っておいて

ローテーションして使えば長持ちしますし 予備にもなりますよ゜

 

手袋を作る過程でオレが作った型紙と素材を渡された

ああ型紙を作っておけばまた寸法をとらなくても済むのか

 

「それは助かるが いいのか?」

 

゜ええ 実はですね・・・

こちらを見てください!゜

 

長が嬉しそうな顔でとりだしたものを見せてきた

 

「・・・これは星の勲章?」

 

かつてヒュンケルがバルトスに贈った勲章に似た布製の首飾りのようだ

 

「これが どうした?」

 

゜ハドラーさんの紙芝居をご覧になったニアキス族の子供達が

いつものお礼と言ってくださったんです゜

 

「ああ それでおまえたちが作ったにしては不恰好に見えたのか」

 

゜たしかに技術的な面でいえばそうですけど 一針一針心のこもった

とてもいいものです゜

 

「そんなことまでわかるのか?」

 

゜ええ 縫い目のクセから3人で作ったこともわかります

ハドラーさんも縫い物に慣れればわかるようになりますよ

私たちグイ族はコーセルテルで服屋を担当しているので

他の獣人の方から手縫いのものを贈られたことがあまりないもので

心のこもった縫い物が嬉しくて・・・゜

 

この長の顔・・・ たしかにあのときのバルトスを思い出すな

 

゜これもハドラーさんの紙芝居のおかげです゜

 

「そうか お前たちの日頃の仕事の成果だと思うが・・・

まあ 素直にこの素材は受け取っておこう」

 

          \ ♡~~!! ~♡♪! /

 

ジゼルはまだ喜んでいた

 

「礼、というわけではないが・・・

ちょうどその星の勲章がでる内容の紙芝居を持ってきている

ここで披露するとしよう」

 

最近はバーン様の依頼で作り直している紙芝居の分

新作が滞っている・・・というより手をつけていないせいだが

ちょうどよかったかもな

 

『本当に大魔王バーンが・・・』

 

もう大魔王ではなく肉体もないから実害はないようだぞ

 

『・・・・・・・・・』

 

・・・・・・聖母竜よ いざとなれば オレが戦う

 

『・・・わかりました まあその件はいいでしょう

ジゼルも楽しみにしていますし 紙芝居をはじめましょう』

 

  \ ハドラー様!アグリナとヤチおにいちゃんもいっしょにいいですか /

 

「ほう・・・ そうだな火竜家はすぐ近く この山を少し下るだけだ

いかにやつらでも迷わず来れるはずだ

ジゼル おまえ一人でリリルーラ(合流呪文)を使いやつらをよんでこい」

 

            \ はい! /

 

『!?』

 

「ただし リリルーラは一人用だ

アグリナ達と合流した後は他の手段でここまで戻ってこい」

 

  \はい! いってきます ハドラー様! ん~・・・ リリルーラ!!/

 

フッ

 

『いってきます・・・ですか どこか寂しいのですが』

 

「ジゼルが成長している証拠だろう ・・・慣れろ」

 

・・・

・・・・・・

 

『ジゼル戻ってきませんね・・・』

 

「・・・そういえば アグリナとヤチ、ハータの三人は

火竜家の中で迷子になった挙句に地竜家にたどりついたことがあったらしいな」

 

『・・・その情報は不安しかないのですが』

 

もしくはアグリナ達が家にいなかったのだろう

ジゼルがルーラをおぼえていれば問題ないが・・・

 

『ジゼルにヤチ 保護者がアグリナ・・・』

 

・・・聖母竜よ 心配と過保護が過ぎるぞ

 

『しかし! 

もしリリルーラを使った先が崖で

そのままクランガ山を転げ落ちたりしているかも!?』

 

・・・まあ絶対ないとは言わんが ジゼルは一人でも飛べるぞ

 

『とっさに飛べるとは限らないでしょう!』

 

やれやれ・・・

まあ最初から強くなんでもこなせるならオレも苦労せんか・・・

 

『では!!』

 

「あくまで様子を・・・む!?」

 

外から竜術の力を感じる これは火ではないな 風か

外に様子を見に出てみると 折りたたんだ紙が落ちていた

これは風竜術で飛ばした手紙か 

 

『・・・いっしょにいくよ だけですか どういう意味でしょう?』

 

゜これは風竜術士さんの字ですね゜

 

ということは マシェルの兄のミリュウからの手紙か

さては迷子の末 風竜家に辿りついたな

しかし なんだこの手紙は・・・ 

『言葉が足りない気がします』

 

 キラン!   ギューーーーーン!

 

      \ ハドラーーーーさま~~~♡! /

 

            ドン!!

 

ジゼルがトベルーラでオレの胸に突撃してきた

やはりまだルーラは使えんか

すぐ後には風竜家と火竜家の連中が飛んできていた

 

『おかえりなさい』

 

\ ただいま ハドラーさま!お母さま! /

 

「おそかったな

ジゼルが風竜家の世話になったようだな」

 

〔ごめんねハドラーさん いっしょに迷子になっちゃって

グレイス達に出会えなかったら もっと遅くなってたよ〕

 

謝るアグリナだったが グレイスやフアナら風竜家はあいかわずの笑顔で

 

(おかげでハドラーさんの紙芝居が見れるからオレたちはラッキーだったな)

 

〔おー ジゼルのとーちゃんの紙芝居おもしれーもんな~〕

 

と、どいつも本当に楽しそうだった

火竜家と風竜家 竜術士に竜を合わせて8人も増えて急に にぎやかになってきたな

まあ人数が多くなっても紙芝居を読む手間が増えるわけでもない

・・・グイ族には また多少迷惑をかけるがな

 

―――

―――――――

 

やはりバルトスとヒュンケルの話は食いつきがいい

地底魔城戦の内容になったらこいつらどう反応するのか・・・

 

  \ \ \ パチパチパチパチパチパチパチ!!! / / /

 

今回は一段と大きい拍手だ やはり大勢を相手にするのはなかなか心地よい

これを聞くと 新作の意欲も湧いてくる

その点だけはジゼルの手柄といえるな

 

『流石元魔王 やはり目立つのが好きなのですか?』

 

・・・かもしれんな 折角作った物だ

どうせなら できるだけ披露したい

自分の口元がニヤリとするのがわかる

 

 


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