ハドラー子育て日記 コーセルテル編   作:ウジョー

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太陽と王 ~前編~

「今日もよく晴れているな」

 

洗濯物を干し終え 朝の家事が一段落ついた

 

「秋の太陽か・・・」

 

         \ ハドラー様? /

 

まだ役には立たないが オレについてきたジゼルが同じように太陽を見上げる

やはり火竜だけあり 太陽がまぶしいという様子はない

ただ太陽を眺めていたオレを不思議に感じたのか 首をかしげた

 

「・・・太陽には色々と思うところがあってな」

 

太陽・・・

オレ達魔族の故郷 魔界にはその光は届かない

・・・ダイ、大魔王バーン、アバン、凍れる時間の秘法・・・

太陽を通じて オレはかつての戦いの日々を 因縁を思い出していた

いずれは紙芝居を通じて ジゼルも知ることになるだろう

 

「・・・ジゼルよ これから この日を浴びながら瞑想をする まずはやってみろ」

 

     \ はい! ハドラー様! ん~・・・ /

 

  コテン!  ごろごろ・・・  コテン・・・  ゴロゴロ・・・

 

逆立ち状態で座り瞑想をする魔法の基礎なのだが、そもそも逆立ちができないようだ

 

「仕方ない 今回は普通に座れ 

そしてひとつのことに意識を集中するのだ」

 

その短い足ではオレのように組めないが とにかくジゼルは地面に座りなおした 

そして目を閉じ 瞑想状態に入ったように見える

・・・まあそれほど簡単ではないのだが とりあえずはいいだろう

 

『あなたもジゼルに合わせて 普通に座ってくださいね』

 

「・・・やれやれ では オレもジゼルに合わせるか」

 

オレも地面に座り 足を組んで目を閉じる

目を閉じても太陽の光を感じていたが それも段々と遠くなっていく・・・

 

瞑想状態となった世界 そこでは目の前にいた筈のジゼルも

オレの中にいる筈の聖母竜さえ感じず 太陽の力も届かない闇・・・

少々深く入りすぎたか?

 

            ピカッ

 

・・・いや光を感じる なんだ?

 

「「今日の余の心は実に晴れやかだ・・・

この闇の世界に入り込んだ 秋の太陽のように・・・」」

 

「あああああっ・・・!!!」

 

オレは知っている この声を!

 

「「・・・どうした? 余を忘れたわけではあるまい・・・?」」

 

この姿を!!

 

「あっ・・・ あなた様はっ・・・!!?」

 

その存在を!!!

 

「「そうだ・・・余はバーン

今の余は肩書きを持たぬ身だ、好きに呼ぶと良い」」

 

大魔王バーン!!!!

 

         ビクッ

 

たしかにかつてのような いやそれ以上の威圧感はある・・・

だが・・・ あの方はダイに敗れ死んだ筈

まあオレが言うのもなんだが 死んだはずの者が生きていた例などいくらでもあるが

だがおかしい・・・

今オレの前にいる姿はかつて対していたものと同様ご老体のもの

違いといえば首に巻いている赤いスカーフぐらいだ

ダイとの戦いで全盛期の若い姿にもどり、さらに鬼眼王なる禁断の魔獣となったと聞く

それに 明らかに纏う空気が違う!

長年畏怖してきた 魔界の神と名乗ってきた者が纏うものではない!

 

「「・・・ふふふっ よい よい・・・

以前の余しか知らぬおまえには 疑問しかもたぬであろう

最近のおまえが変わったように、ダイとの戦いの後余にも変化があった

だが お前から覇気と強さを信じる心が失われてはおらぬように

余にも変わらぬものがある 余は紛れもなく バーンだ」」

 

「・・・どうやら そのようですな 

何があったのか お聞きしてもよろしいですか?」

 

すでに決別し刃すら向けた相手ではあるが 憎む心が湧くわけではない

しかし長年畏怖の対象だったせいか 自然と言葉がかたくなる

 

「「・・・ふむ 話せば長くなるが

あえて端的に言えば 余は念願であった太陽を手に入れた」」

 

「太陽・・・」

 

「「そして余は太陽となった ・・・それが今の余だ」」

 

・・・成る程

 

「「ところでハドラーよ、今おまえは 実に興味深いことに

かつての戦いの歴史を紙芝居という形で遺そうとしているようだな

そこで 全知全能たるこの余がおまえに知恵をくれてやろう

“凍れる時間の秘法”をはじめとする秘術や 魔界のことなどを語ることで 余以上の者は存在せぬ」」

 

         !!!!

 

「・・・なかなか魅力的なご提案ですが 

既に太陽を得たという今のあなたが 今のこのオレに力を貸す真意は?」

 

「「・・・・・・んっふっふっふ・・・ 

余の真意、望みか・・・ ハドラーよ ふたたび余の片腕となれ」」

 




いつのまにか ハドラー子育て日記コーセルテル編もお気に入り数100に到達していました まことにありがとうございます
今回ついに登場のバーン様は黒太陽さん作「東方大魔王伝」最終話後からの出演です。
バーン様に何があったのかはどうかそちらをご覧ください
後編でも多少は明かしますが「東方大魔王伝」のネタバレも含むのでまだ読んでる途中の方などは要注意です。
そしてありがたいことに「東方大魔王伝 ‐夢現幻想‐」ではこちらのハドラーがあちらにコラボ出演しております そちらもよろしくお願いします。
それでは

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