ハドラー子育て日記 コーセルテル編   作:ウジョー

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伝えるのは父の魂!!の巻

 

 

「こ・・・こうなったらイオラで 充分!!

まとめて 灰にしてやるわッ!!!

 

片腕を失った魔王は怒りのままにもう一方の腕で呪文を放ち

 

よくも・・・ よくも 私の友を・・・!!

許さぁんッ!!!!

 

メガネの騎士も剣に怒りを込めて振るった

それはとっさに繰り出したものだったが イオラの威力に相殺されがらも・・・

 

なっ・・・なにィッ!!?

なんだ!!? この閃光はぁッ!!!?

あああああーーーーーーーーーッ!!!!」

 

今日一番の声をだす

 

『今回は一人で紙芝居を進行しているのにそんな絶叫して大丈夫ですか?』

 

フン!知ったことか!

 

「光に包まれながら 頭が冷えた魔王はこれ以上の戦力の消耗を嫌い

撤収を決断 城外の全怪物と気絶した竜を含め移動呪文を使った

魔王の襲撃をしのぎ歓喜にわく城内の人間たち

だが 魔王とメガネの騎士・・・いや勇者との宿命の戦いはこれがはじまりだった」

 

地竜家の連中は反応が薄いが 集中して紙芝居を観ているのがわかる

子竜たちはみな行儀がいいだけに 一番楽しんで観ているのは

竜術士のランバルスのように見えた

・・・この後の勇者として旅立つアバンとフローラのアイテム交換の方が

子竜たちの反応が顕著だったのが不思議だったが

 

紙芝居を終えたあとは子竜たちが内容について熱く語り合っていた

ジゼルもその輪の中で言葉はつたないながらも参加していた

 

「こころなしか・・・ だんだんジゼルの語彙が増えているようだな」

 

『女の子にとっておしゃべりは 色々と大事なものだそうですよ

フェルリから聞いたことですが』

 

・・・そうか それはオレだけではどうにもならんな

やはりこのコーセルテルという地はオレだけでなくジゼルにとっても

レベル上げに最適のようだな

 

  \やっぱり今回のお話は みんなでやったほうがいいと思うの!/

 

《それもおもしろそうだけど・・・ どうやってたの?》

 

    \ ハドラー様が魔王様役をやってその肩に私が乗って!/

 

『ジゼルがそれをやりたいだけでしょう 

ハッ!?ジゼルが魔王役を 私が竜の役をすれば肩に乗せるとか!』

 

おまえも大概だな・・・ やはり親子か

 

『そう! 親ですから!!』

 

「この地竜家なら メガネの騎士をランバルス 王女をユイシィがやればいいだろう」

 

オレも会話に加わった

アバンやフローラのイメージに一番合いそうなのは この地竜家だしな

 

《ええっ!! そんな!?師匠(せんせい)が騎士で 

わた・・・しが おひ、めさま?!》

 

ユイシィが真っ赤になってこんらんしていた

 

「キビッとした姫を飄々と助ける騎士 絵になると思うぞ」

 

オレの言葉でユイシィの熱量がさらに上がった まるで火竜のようだな

 

〔いやいや ここはロービィとエリーゼがやった方がいいだろう

いい想い出になるぞ~〕

 

《ええ!? なっっ 何言ってんですか せんせいはっっっっ》

 

〔はっはっは リドやクレットもどうだ? 面白そうだぞ〕

 

ちっ このままからかえば面白そうかと思ったが ランバルスにそらされたな

 

『あなたも悪趣味ですね』

 

オレは元々悪魔だからな

 

『ジゼルがろくな大人にならないような気がしてきました』

 

何を今更・・・ まあいい

 

「ランバルス 次の紙芝居のことで協力を頼みたい」

 

〔ああ いいぞ じゃあ向こうの部屋に行くか

みんな ジゼルを任せるぞ〕

 

           キビッ

 

    \ \ ハイ! 任せてください / /

 

「たのもしいことだな」

 

〔はっはっはっ うちの子竜たちは頼りになるぞ~

俺の立場がないくらいにな・・・〕

 

――――――

 

「次回は今までとはかなり趣向が変わっていてな

あらすじとしては・・・」

 

オレはランバルスに おおまかな流れを話した

・・・次回の主役は魔王のオレや勇者アバンではない

オレの最初の配下であり 禁呪によって生み出した最初の子

ジゼルにとっては長兄と言える存在・・・地獄の騎士バルトスだ

 

・ さらなる力を得るために魔術についての研究をしていた魔族の男は伝説の禁呪法というものを見つけた

・ 自分とは違うタイプのスピードと手数を求めた6本の腕を持った骸骨、不死身の地獄の騎士を生み出した

・ 初めての部下を得て新たな力の境地を見出した魔族の男は 自ら軍を興し 魔王への道を歩みだした

・ 地獄の騎士は魔王の第一の配下として戦う日々過ごす

・ 魔王は拠点を得てからも自ら最前線に出続けるので 城の防衛を任せられるようになった地獄の騎士

・ 拠点のある大陸、魔王軍の攻撃により焼かれた町の中で 地獄の騎士は人間の赤子を拾った

・ 魔王にとっては自軍最弱のスライムよりも無力な赤子に興味はなく 魔王軍最強である地獄の騎士の酔狂、赤子を育てることを許した

・ 世界を恐怖で覆う魔王の邪悪な気配が最も濃い城の中 赤子は何の疑問を持たず大きくなっていく

・ 地獄の騎士は父として赤子を少年に育て上げ 少年は父を慕い手作りの勲章を贈った

・ 地獄の騎士はまた強くなった 父として 騎士として・・・

 

 

・・・これがほぼ事実なのだからバルトス有能過ぎるだろう

子育てレベルで言えばオレはいまだにバルトスに遠く及ばん

 

〔・・・なあ ハドラー、すごくいい話だとは思うんだが

これ 多分このままで終われないんだろう?〕

 

「ああ この親子にはお前が考えているよりも残酷かもしれん別れがある

子竜向けを考えれば紙芝居でやる必要はないか・・・」

 

〔たしかにユイシィはともかく うちのちび達には 少し重いかもしれないな

だが あんたはジゼルにはそれを見せるつもりでいると〕

 

「そのとおりだ 紙芝居の流れからして すぐ、とは言わんが」

 

やはり こいつは話のわかるやつだ

 

『バルトス・・・ ジゼルにとって一番のおにいちゃんですか

その最期まで伝えるのですか?』

 

そうだ ジゼルにとって いや何よりオレにとっても大事なことだからな

オレは握り締めた拳を見る 

フン! 後悔はない だからこそ伝えねばならんのだ・・・

 

 

 




書いてていつも思うのですが バルトスさんもブラスさんも前知識なくいきなり赤子から子育てをやることになって あれほどの親子関係を築いた満点パパぶりは 子育てレベルカンストしてるだろ、と。
もちろん周囲の怪物たちとの協力関係もあったでしょうが それに比べて 親馬鹿と過保護の両親でジゼルがどうなることか いまだに想像すらできないあたり書いてる本人が一番レベルが低いのは確実、 子育てを甘くみるなと怒られそうです・・・

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