ハドラー子育て日記 コーセルテル編   作:ウジョー

32 / 71
火竜家への出稽古 前編

「ではいってくる ジゼル ハータつかまれ」

 

       \ はい!ハドラー様を絶対離しません♡ /

 

[いや 着いたら離さないと・・・]

 

(ハドラーさん 火竜は本当に手を離したらすぐ迷子になるから)

 

風竜のサータが心配するような声を出した そういえば火竜は方向音痴だったな

 

「わかった気をつけよう では行くぞ ルーラ」

 

  ビュン

 

           \ \ いってらっしゃーい / /

 

                      ドオオン

 

クランガ山の頂上に着いた

 

[すごい!もうついたー 後は上に行けばもう火竜家だね!]

 

「ここは頂上だ 火竜家はこの下 山の中腹だ」

 

これは方向音痴というレベルではない・・・

 

『・・・火竜家に行くときはいつも麓から登っているでしょうから ついそう言ってしまっただけですよ

おそらく・・・・・・』

 

先にグイ族の村でジゼルの術暴走で燃えた分の服と改めて裁縫の手ほどきを依頼した

 

[また紙芝居を頼まれたねハドラーさん]

 

        \ ハドラー様の紙芝居はステキだから♡ /

 

娯楽に飢えているのかここは?

まあジゼルの修業後に 火竜家とまとめてやればいいだけだ

 

『持ってきてますからね 紙芝居』

 

「新作はまだ完成しておらんがな それよりも火竜家に着いたぞ」

 

アグリナ達が外で出迎えていた

 

〔みんないらっしゃい! プレアから紙芝居のことを聞いてからずっと楽しみにしてたんだから!〕

 

[アグリナもヤチも知ってたんだ]

 

           \ プレアは自慢ばっかりで おはなしはしらない~ /

 

「それはいいが 先に術の指導を頼むぞ

子供の成長は速い! 速すぎる!!

オレはそのことを身をもって知っているのだ

あの程度の術暴走でオレはどうということはないが あの力は磨かずにはおれん」

 

『暴走はジゼル自身が危ないですしね』

 

〔じゃあ 早速 術の練習部屋に行きましょうか〕

 

―――

 

アグリナの案内で火竜家の術部屋に入った

 

〔術練習をはじめる前に ジゼルが術暴走をしたって聞いたけど

身体は大丈夫? 術酔いとかしてない?〕

 

   \ ハドラー様のおかげでだいじょーぶ! 元気いっぱい♡ /

 

〔でも 術暴走って普通は 術を覚えはじめるころにやるそうだけど

ジゼルはもう術が使えるの?〕

 

「ジゼル見せてやれ」

 

この術部屋の中なら問題なかろうと オレは右手をひらきジゼルに向けた

 

           \ ハドラー様―――♡♡!! /

 

     ゴアアアアアアアッ

 

ジゼルの灼熱の息がオレの右手を僅かに焦がす

 

「・・・ヌ・・・

ヌフフフッ・・・!!」

 

思わず笑みがでる 暴走とは違う ジゼルの炎に・・・!

 

           \ すごい ジゼル・・・ /

 

アグリナとヤチが呆然と見入る

 

「グフフフ・・・」

 

実に気分がいいが今回の目的はこれではない

 

「カアァーーーーーーッ!!!」

 

           ボワッ

 

炎を消し飛ばした

 

「上出来だ」

 

           \ ハドラー様♡! /

 

『お疲れ様ですジゼル』

 

まだ本題に入ってない内からねぎらうな聖母竜 ジゼルの集中力が切れかねん

 

〔すごいじゃないジゼル! それにハドラーさんも!!

あんなすごい炎を受け止めて消したりなんて

あたしに教えられることなんて~〕

 

「いや 火炎系と閃熱系が得意なオレといえどそれを自在に調節 一点に集中などは非常に難しいのだ

ましてそれを教えるなどは まったく経験がない

・・・おまえが頼りだ」

 

〔よーっし まかせてっ!!〕

 

[ぼくも手伝うよ]

 

     \ てつだうーーっ /

 

アグリナにハータ ヤチまでやる気になったようだ ジゼルもテンションが高い この分なら・・・

 

―――

――――――

―――――――――

 

・・・と思っていたが 調節以前に 熱のみを発する術自体が ジゼルはてこずっていた

ジゼルがギラの呪文の契約ができなかった時点でオレにできることはあまりなく

アグリナ達に任せていたのだが 難航しているようだ

 

〔まあ あたしは竜術が使えるようになるまで何日もかかったし

ジゼルは生まれたばかりであんなすごい火が出せるんだから心配いらないわよ〕

 

[そういえば マシェルに弟子入りしたいとか 練習したいって前にうちにきてたね]

 

〔あ! そうよ たしかあのとき外で術練習やって火事になったりしたけど

そんなあたしでも 一人前の竜術士になれたんだから〕

 

『それは 別の意味で心配なんですが・・・

ハドラー あなたからも何か助言を』

 

いや オレは今回は口を出さん

うまくいかなくてもよいのだ それが その悔しさこそが 再び自分の殻を破るときに必要になる

このオレの経験だがな

それに マシェル以外の竜術士のやりかたを知るいい機会だ

 

〔ねえジゼル はじめて火がだせるようになったときはどうやったの?〕

 

アグリナがジゼルに質問したところ ジゼルの体が震えた そしてオレの方を見ると

アグリナの手をとりオレとは反対側の部屋の隅に移動し耳打ちしている

 

「珍しいな ジゼルがオレから離れるとは あれではオレには聞き取れん」

 

『たしかフェルリが助言してから灼熱の息がだせるようになったのでしたね』

 

そうだったな あのときもオレには聞こえないようにしていたが そこにコツがあるのだろう

かつて竜王竜術士とよばれた幽霊の秘伝・・・ジゼルが学べたのは幸運だったな

 

〔へー そうなんだ〕

 

アグリナの声ばかり聞こえるが 術自体は成功してはいないようだ

今日のところは こんなところだろう

 

〔あっ ハドラーさーん とりあえずお昼ごはんにしよー〕

 

アグリナ達がこちらにやってきた

 

〔ごめんね ハドラーさん 何も成果が上がらなくて〕

 

「また機会もあろう 後は基礎の瞑想(メディテーション)でもさせる」

 

[メディ・・? なにそれ?]

 

「魔法力を高めるための基礎だ 実際やってみせたほうがはやいか」

 

オレはその場であぐらをかき そのまま逆さになる

 

〔わ 頭だけで逆立ちしてるのに全然ゆらがないし 

ハドラーさん これどうなってるの? っていうかしゃべれるの?〕

 

「ああ 慣れれば問題なくこの状態で話もできる

最初の内はこの体勢を維持することだけで精一杯だろうが

魔法を使う上で重要な集中力を身につける効果もある」

 

〔どういうことです?〕

 

「この体勢を無意識で維持し会話などができるようになるコツは

術に集中しながら周囲に気を配る感覚に通じるものがあるからだ」

 

       \ ? アグリナわかる? /

 

〔えーと・・・ わかるようなわからないような・・・〕

 

[うーん たとえばぼくの話だけど・・・

術を使えるようになった最初のうちは 目を閉じて術のことだけ考えてやってたけど

今なら術を使いながらほかのこと たとえばこの間みたいに 明かりの術を使いながら

遺跡の中を歩いたりができるようになってるから そういうことの練習かな?]

 

「まあ そんなところだ 術に必要な集中力にはそういった面もあるのだ

高レベルともなれば二つの異なる術を同時に使うことや

両手で極大呪文を制御しながら・・・」

 

瞑想の解説をしながら オレの頭にはあのアバンの仲間の大魔導士が浮かんだ

たかだか100年程度しか生きられん人間があれほどの域に到達したのも

基礎の積み重ねがあってこそだろうが・・・

そして その大魔導士とアバンの弟子ポップ・・・

オレも久しぶりの瞑想で 基礎の重要性を再認識し 宿敵達との戦いの日々に思いを馳せた

 

〔あたしもやってみようかな・・・ それよりもまずおひるごはん

そしてその後はみんなで紙芝居よね!〕

 

       \ ごはんー! /

 

[アグリナのパンー!]

 

    \ ハドラー様のかみしばいー♡ /

 

・・・まあ よかろう

 

 




皆様の行楽と食欲の秋でお仕事をしているウジョーです 2ヶ月ぶりぐらいに自分の部屋に帰ってこれました。
その間に小説書き始めてからもう一年がたっているとか 仕事中にも小説のネタはあたためていたので 前作の更新も視野にいれながらまたぼちぼち書いていきます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。