ハドラー子育て日記 コーセルテル編   作:ウジョー

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地竜家の昼食会 後編

昼食にはまだ早い時間だったこともあり 早速紙芝居の読み聞かせをはじめた

まずは最初の魔王編から

 

・・・

・・・・・・・

・・・・・・・・・・

 

「さらなる力を求める魔族の男が真っ先に目をつけたのは

まさに『最強の力』を象徴とした存在『竜』だった」

 

地竜たちのはじっと オレの声を聞き 真剣に紙芝居を見ている

反応は上々といったところだろう

 

「そして男は知る『竜の騎士』の存在を!

それは神が世界のバランスを乱す存在を正す者として生み出した究極の戦士!!

竜の戦闘力 魔族の魔力 人の心を持ち 

永久不滅のオリハルコンで作られた地上最強の剣を使いこなし

その額には累代の竜の騎士の戦いの経験が刻まれた竜の紋章が輝くという

まさに究極の戦闘生物・・・!!」

 

地竜たちの息を飲む気配を感じる

 

「その男にとっては 伝説に過ぎないその存在が自らの理想に重なるものを感じた

そしてそれは自分の生き方に大きく関わっていくことになる・・・」

 

・・・

・・・・・・・

・・・・・・・・・・

 

「・・・つづく!!」

 

           \ \ ふ~~~・・・・・・ / /

 

パチパチパチ!!!

 

皆がいっせいに息をついたあと 拍手がおこる

この瞬間はなかなか気分がいい

 

時間は ちょうど昼食の頃合になった

 

「実はこのつづきが そこのランバルスの協力で最近出来上がってな 

昼食の後にでも初披露するつもりだ」

 

              \ \  おお~~~  / /

 

  \ ハドラー様 それはわたしも知らない どんなのなんですか? /

 

「フム 詳しいことはまだ明かせんが・・・

今回は魔王の生い立ちであったが 次はその宿敵となる勇者の話だ」

 

・・・昼食中の話題はもっぱら紙芝居のことだった

先の紙芝居の感想や考察 次の内容の予想 勇者の正体などだ

 

《まるで伝記みたいだったな~ 

ロッタルクの冒険記みたいに実際にいた人のお話なのかな?

ユイシィ知ってる?》

 

《いえ 私も知らないわ

私が読んだことのない本に載ってるかもしれないけど・・・》

 

ロービィが中々鋭いことを言っている

・・・昼食はなかなか旨い ジゼルもよく食べている

質素で素朴な雰囲気だが手が込んでおり

特にメインを張る卵料理はなかなか興味深い味わいだった

卵の味や風味の生かし方にこだわりを感じる

 

《ねえねえ 次のお話の勇者さんって どんな人だと思う?

ぼくは地竜の守長とかだと思うな》

 

《そうだね 魔王さんも竜のことを色々調べてたみたいだから

やっぱり竜絡みだと思うんだ

ぼくは竜術士だと思うな 師匠(せんせい)みたいに旅慣れて強い感じの》

 

《師匠(せんせい)が勇者・・・》

 

 \ ハドラー様みたいに 強くてかっこいいお父さんだと思うわ/

  \さっき魔王様の仲間になった竜のお父さんよ      /

 

        \ 竜王だよ 地竜王なら魔王にも負けないよ /

 

《ぼくは さっきの話にでてきた『竜の騎士』がでてくると思うなあ

わざわざああやって細かい描写があったんだから》

 

リドの発言をきっかけに 勇者議論が盛り上がる

内容を知っているランバルスはあえて口を出さず愉快そうに眺めている

こういった議論を見るのも面白いな 食後に紙芝居を披露するのが楽しみだ

・・・だが これだけ盛り上がっている中 あえて未発表で帰るのも面白そうだ

 

『それはまさに悪魔の所業・・・

まさか本当にやらないでしょうね?』

 

悪魔だからな まあ それをすると 後でこの料理のレシピを聞きずらくなる上に

地下書庫の探索にも支障がでかねん 面倒を増やすようなことはせん

 

         \ \  ごちそうさまでした  / /

 

食事を終え  テーブルの上も片付いたところで いよいよだな

 

・・・カールでの料理修業中に当人たちから聞いた話をもとに 

ランバルスと共にかなり脚色・解釈を加えてはいるが

我が生涯の宿敵・・・         勇者アバンの物語をはじめるとしよう

 

 

「世界最強の騎士団をかかえる王国

その郊外に住む貴族 竜学者の家系に生まれた人間の青年は

あるとき 家に代々伝わる古文書でありながら父にも気付かなかった暗号に気付いてしまった」

 

《勇者さんは人間なのかな》

 

《・・・竜学者ということは師匠(せんせい)の亡くなられた奥さんのような方かしら》

 

子竜たちの呟くような声が聞こえる

竜学者というのはランバルスの提案による子竜向けのアレンジだったがそういう事情もあったのか

 

「難解な暗号を解いていくと・・・

それは 幻の攻撃呪文の契約に関するものだった

資質がなければ呪文の契約はできないが 幸か不幸か青年にはその資質があった

苦労の末解いた暗号 その結果判明した呪文の契約

その契約に成功した青年にとって 研究の完成としてその呪文を唱えた」

 

・・・ッ

 

「ド・ラ・ゴ・ラ・ム!!」

 

      ゴクリ

 

と子竜たちのノドがなる音が聞こえた

 

「人間の青年は巨大な火竜へと姿を変えた

皮膚は鉄よりも硬く その力はありとあらゆる怪物よりも強く 口からは強力な炎を吐く竜に・・・

その呪文は並みの攻撃呪文の何倍も魔法力を消費するもの

青年は呪文の発動のみにその魔法力を使いきり そして意識を失った・・・

 

・・・・・・・・・・・・

 

その青年が目を覚ましたときに目にしたものは見慣れた景色が変わり果てたものだった

幸いにも郊外で周囲に民家もなく 身内の必死の消火活動もあり人的被害こそなかったが

竜の力は岩を砕き 林を焦土と化していた・・・

その後青年は一人 家が管理する森の中に住み自己の鍛錬に励むようになった

学者としてさらに幅広く知識を深めるとともに

その知識を生かして武芸の鍛錬に呪文の研究と文武を追求していった

ドラゴラムという強力な力がもたらしたものは ただの破壊であった

そしてそれを制御できなかった自分・・・

 

『正義なき力が無力であるのと同時に 力なき正義もまた無力』

 

竜学者に伝わる家訓の意味に 気付きはじめていた・・・」

 

皮肉なものだ オレは竜の力を得ることができなかったから腕を磨いたが

アバンは竜の力を得たがゆえに腕を磨いたのだからな・・・

子竜たちのテンションが明らかに低いが 皆真剣な顔だ・・・

声ひとつないが 子竜たちの頭の中はフル回転しているのだろう

ランバルスもそんな子竜たちを真剣に見ている 紙芝居作成中は

 

〔小さい子竜には少々難しいか〕

 

などと言っていたがどうやら収穫はあったようだな

ジゼルにとってもそうであればいいが まあ今すぐ成果がなくともいい 

これから何度も機会はあるのだからな

 

その後の内容は・・・

 

・世界中に恐怖をふりまく存在魔王があらわれ戦いの時代がおとずれる

・青年は森の中で凶暴化した怪物に襲われていた自国の王女を助け その推薦により騎士になる

・修業により得た力を隠しダテメガネをかけ 騎士団の公務をぬけだし 知恵を生かすことを選ぶ

・騎士として敬愛する主君に仕え 気のいい友ができ 知識と知恵が国のため人のためになることにかつてない充足感を感じる

・森での王女との出会いから三年後 ついに魔王の侵略の手がその王女にのびようとしていた・・・

 

つづく!!

 

 \\ パチパチパチパチ!!  ハドラーさん ありがとうございました//

 

紙芝居を終え 拍手がおこる

 

     \ ハドラー様 おつかれさまです /

 

〔いいところで区切ったな これはまた次が楽しみだ〕

 

最前席から飛んできたジゼルの後から声をかけてきたランバルスに礼を言った

 

「おかげで 第二話も無事完成できた ありがとう」

 

そしてランバルスの隣にいたユイシィが

 

《ありがとうございました そしてお疲れ様でした ハドラーさん

この後はみんなでお茶にしようと思います

ハドラーさんが用意してくださったお菓子もだします

どうぞ ごゆっくりしていってくださいね》

 

「ああ 馳走になろう」

 

オレが用意したプリンケーキは地竜家には随分と好評だった

昼食の卵料理に続いて卵が続くのはどうかとも思ったが どうやら卵が好きなようだな

特に意外にもランバルスに受けがよかったようだ

 

〔へえ~ こりゃうまい!! これもあんたがつくったのかよ

すごいな オレなんか台所に立つなとか言われてんのに〕

 

            キビッ

《私がいるんですから 任せてくれればいいんです!

それよりハドラーさん 私料理のレシピを集めて本にしてるのですが

是非このケーキのつくりかたを教えていただけませんか?》

 

ユイシィの申し出にオレは興味をひかれた

 

「そのレシピ本をオレに一冊都合をつければ教えてやるぞ」

 

《はい それは勿論 お菓子編はもう写本がありますから持って来ますね

つづきはまた今度用意しますから》

 

「では書くものは何か・・・」

 

《この紙をどうぞハドラーさん》

 

《ぼく筆記用具持ってます これ使ってください》

 

リドとロービィがすぐに用意した 手際がいいな流石知恵の竜

 

オレがレシピを書いてるいる最中 地竜たちの話声が聞こえてくる

内容はやはりさっきの紙芝居についてだ

 

 \ おもしろかったね~ ハドラーさんの声 たまにいきなりこわいけど /

 

  \ ハドラー様の声最高よ 特にあのシーンが・・・ /

 

・・・クレットとリドの感想は内容とは少し違うようだが

地竜家の食卓はずいぶんとにぎわっている これは次回作の製作がはかどりそうだ

 




今回は紙芝居の中身もすこしだしてみました これからも内容にあわせて少しずつだしていこうかと思います

今日は資格試験の試験地として卒業以来久しぶりに母校に行き たまたま同クラスで試験を受けたのですが教室にエアコンがついてました
いちばん驚いたのは自分が学生のときにあったかどうかはっきり憶えていない自分の頭でした 3年間通ってたはずなんですが・・・モヤモヤを抱えたまま試験をする羽目に
憶えてないということは多分なかったということなのか?

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