ハドラー子育て日記 コーセルテル編   作:ウジョー

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地竜家の昼食会 前編

今日は地竜家の昼食会に招かれる日 朝食を終え片付けも済ませ

 

「さて では行くぞ アータ ジゼル 用意はいいな」

 

         \ はい!ハドラー様♡ /

 

ジゼルはいつもの火竜の赤い服ではなくアータの古着 地竜の服を着て頭にも地竜の頭巾をしていた

ただしアータがいつも着けている地竜の牙かざりは石製の為今のジゼルには

少々重過ぎるからと代わりにマータのスカーフを着けている

深い緑の色服に薄いピンク色のスカーフの組み合わせは実際見てみれば意外と悪くない

 

『いつもと違う服もいいですね こうやって色々な服を着たジゼルを見るのも楽しいです』

 

《はい 道案内は任せてください あ 地竜家へのお土産ぼくが持ちますよ》

 

「ではこのケーキを任せた 崩さぬよう両手で持てよ」

 

これで片手が空いたな 紙芝居はアータには持ちにくいだろうからな

 

         \ ハドラー様 私も持ちます! /

 

「お前は 地竜家まで歩くことに注力しろ

言っておくが 例え倒れようと オレは一切手を貸さん

アータお前も手を貸すな もっともケーキで手が塞がって貸せないだろうがな」

 

『あなた そこまで計算して?!』

 

いや偶然だ

 

『・・・そうですか

まあ昨日 ジゼルが目を覚ましてからは一日歩く訓練をしましたから大丈夫とは思いますが』

 

「地竜家は マシェル家からもっとも近いと聞く

この程度歩けなければ 格闘の修業がはじめられん

まず足腰の鍛錬の基礎は 自分の足で歩くことからだ」

 

《ジゼルは格闘の訓練もするの!? エレさんの武術訓練じゃなくて?》

 

「いずれはあの訓練にも参加させるが その前にオレが直々に稽古をつけてやる」

 

           \ ハドラー様が直接♡! /

 

《よろこぶんだ・・・》

 

「それも まずは地竜家の往復ができてからだ」

 

             \ はーーい! /

 

《じゃあ いってきまーす》

 

・・・地竜 マシェルの家にあった本によると

その身体は頑健にして重さを操る能力により幼竜の頃より

どんな重い物でも持つことができ その術は大地を割り 揺らすこともできるという

オレの知る力の象徴の竜のイメージにもっとも近い種族と言える

さらに磁極がわかるから 道に迷うこともなく 土に埋まっているものがわかる

という便利な術も使いこなし 知恵の竜と呼ばれるほど知識欲があり頭を使える

それでいて空も飛べるはずなのに 弱点が高いところというのは なかなか興味深い・・・

アータはその例に漏れず マシェルの七竜の中でも一番思慮深い性格だ

実際 迷うはずもないのに ジゼルに合わせてか 歩みは速いものではない

 

「アータ ペースを上げてもいいぞ」

 

《すみませんハドラーさん ケーキを崩さないようにちょっと慎重になってました 

ケーキには保冷石が備えてあるから 夏場でもすぐには傷まないと思ってましたし》

 

「なるほど」

 

『すでに答えを用意してたかのようですね

本当に賢い子ですね』

 

「ジゼル いいと思うことは 周りからどんどん学べ

経験を積み レベルアップをはかるのに今ほど最良のときはない」

 

              \ はい!ハドラー様 /

 

などと言っている内にどうやら 地竜家が見えたようだ 本当に近かったな

丘の上に巨大な岩で出来た遺跡がある

 

《この階段を上がった丘の上に地竜家があります》

 

「階段かちょうどいい・・・

ジゼルこの階段も自力で上がってこい 術は使用してもかまわん

オレ達は先に上がって しばらくは待ってやる」

 

《ええ!? この階段結構段差ありますよ!

歩き始めたばかりのジゼルじゃあ一段ずつ上がるのも大変ですよ

それに風竜のサータでも一人で飛べるようになったのは》

 

「できるな? ジゼル」

 

             \ はい! ハドラー様! /

 

「いくぞアータ 手は貸すなよ」

 

オレはアータの返事を待たず 汚れるであろうジゼルのスカーフだけを外して預かり

階段を上がりはじめた

アータはジゼルを気にしながらもオレに追いついてきた

 

《ハドラーさん! どうして?》

 

「アータよ たしかにオレがジゼルを小脇に抱えて行けばすむが

思いのほか地竜家が近かったのでな 折角の初の外歩き何事もないのもつまらんのだ

心配いらん たとえ上れ切れなくとも困難に挑戦したことは経験になる

上でゆっくり待っておればいい」

 

といっている内に階段を上り終え ジゼルからは見えない位置で待っていた

アータは落ち着かない様子だがとりあえずは待ってみるようだ

 

・・・しばらく待っていると

 

《大変ですハドラーさん!

階段を上がっていたはずのジゼルの気配が消えました!

ひょっとして いきなり転げ落ちたのかも?!》

 

どうやら地竜術で階段の様子を探っていたようだ

 

『ジゼル!?』

 

だがオレもジゼルの気配はとらえていた

 

《うわあ!!?》

 

             \ ハドラー様~~~♡ /

 

階段の上り口に駆け寄るアータの目の前を一気に飛び抜けジゼルがオレに抱きつき頬ずりしてきた

 

         \ ハドラー様♡ ハドラー様~~~♡ /

 

ジゼルをよく見れば服は結構汚れていた

どうやらしばらくは階段をよじ登り途中から一気に飛んできたのだろう

ジゼルを引き剥がし 頭巾をとり服をはらった

幸い地竜の服は汚れが目立ちにくく その上に綺麗なスカーフをつければまずわからんだろう

 

『外しておいてよかったですね』

 

顔は丁寧に拭いてやった どうやら怪我はないようだな

 

〔おお 来たなハドラー まってたよ 

みんな! きたぞー!〕

 

ちょうど外に出ていたランバルスがオレたちに気付いて家の中に声をかけていた

そういえば こやつだけオレを呼び捨てにするようになったな

 

『気さくな人ですね』

 

〔ん?どうしたんだその顔どこかで転んだかい〕

 

?何のことだ ジゼルの顔はもう汚れていないが・・・

 

《ハドラーさん さっきジゼルが頬ずりしたときに顔が汚れてる・・・》

 

オレの方か! 完全に失念していたな・・・ 

顔を拭いていると 家から子竜たちがでてきた

やはりロービィもいるな みなアータと同じような服を着ている 皆地竜家の子竜だろう

 

            キビッ

《いらっしゃいませハドラーさん ジゼル アータ

私は地竜家補佐竜のユイシィ 地竜家一同 みなさんをお待ちしていました

どうぞ楽しんでいってください

ランバルス師匠(せんせい)とロービィ以外は

ハドラーさんとジゼルとは初対面ですから 簡単に自己紹介を》

 

『可愛らしいお嬢さんですね キビッとして いかにも補佐竜という貫禄もあります』

 

《ぼくは 三番竜のリドです アータよりちょっとだけ年上です》

 

    \ 四番竜のクレットです おいぬかれたけどアータとおないどしです /

 

『地竜家は 一・四番竜が女の子で 二・三番竜が男の子なんですね』

 

そういえばちょうど半々だな

 

「オレはハドラー このジゼルの父だ コーセルテルには子守りの修業にきた」

 

    \ ハドラー様の補佐竜のジゼルです 今日はお招きありがとうございます /

 

笑顔で挨拶をしたジゼル

 

「上出来だ」

 

いつのまにか立派な挨拶ができるようになっていたジゼルの頭に つい手が伸び

その頭をなでた

 

          \ !! ~~♡ ♡ フェルリありがとう・・・ /

 

どうやらフェルリの入れ知恵だったようだ まあいい

 

《ユイシィ これハドラーさんからお土産 ケーキだって》

 

《わざわざありがとうございますハドラーさん どうぞ家の中に入ってください》

 

ユイシィに招かれ家に入った 石造りの丈夫な家だ

地下には歴代の地竜術士が集めた本が収蔵された書庫があるそうだ

地下何十階もある竜術でつくられた叡智のダンジョン なかなか興味深い

機会があれば探索したいものだ

 




地竜家の子竜が地竜術士ランバルスに対して師匠と書いてせんせいと呼ぶのがなぜか好きです
昼食会が前後編だけで終わるかどうかは書いてる本人にもわかりません・・・

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