ハドラー子育て日記 コーセルテル編   作:ウジョー

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ハドラー 新たな楽しみ

風竜たちとジゼルが 地上に降りてきた頃 水竜家から補佐竜リリック 光竜家から補佐竜マリエルが

ジゼルの祝いにやってきたのを機にささやかながら茶会をはじめた

結局これでコーセルテルの全七竜家から 祝いの使者がきたことになる

 

「やはり木竜家の持ってきた果物の砂糖漬けはなかなかの出来だな ジゼルの反応も上々だ」

 

<ありがとうございます そう言ってもらえると持ってきた甲斐がありました

カディオ達も喜びますよ>

 

                   \~♡/

 

ジゼルはオレのひざの上で 夢中で砂糖漬けを手づかみで食べている

砂糖をボロボロこぼしているが オレのエプロンがいい仕事をしている

 

《ハドラーさん ぼくが持ってきた包みを開けてみてください》

 

ロービィが地竜家の土産を開けるようにすすめる

 

『そういえばまだ 中身を見てないですね 知恵の竜と呼ばれる地竜のお祝いの品

アータが好きな本などでしょうかね』

 

まあ そんなところだろう

 

(あ やっぱり本だ それも『六代目風竜王(ロッタルク)の冒険記』だ うちにもあるよ!

そのお話おもしろいから おぼえてるもん これより小さいけど)

 

「ロッタルクというと そこの風竜と同じ名前だな」

 

(うっ)

 

先ほど ロッタルクと名乗った風竜の小娘がうめく

 

〔ええ ロッタルクさんの名前に限らずボクやフアナ ジェンさんたちの名前も

歴代の風竜王や風竜術士からとっているんです〕

 

『それで名前の雰囲気と実際の性別にズレを感じる子もいるのですね』

 

《内容は多分マシェルさんが 持っているのとほとんど同じだろうけど 

これは本じゃなくて 紙芝居なんだ 本より大きくて重いから多分地竜家にしかないはずだよ》

 

成る程 たしかにこの重さと量ではマシェルには いささか負担が大きく 最後まで読むのは一苦労だろう

重さを感じないアータでもこのサイズでは手が届かない 

結果として体格のある竜術士ランバルスや成長した地竜がいる地竜家にのみ ある品なのだろう

 

《ハドラーさんなら 問題なく使えるだろうと ランバルス師匠がおすすめしたので》

 

「たしかに この程度の重さはオレにとってなんら問題にならんが

紙芝居なぞオレは見たことも聞いたこともないから どう使えばよいのだ?」

 

〔じゃあ 僕がちょっと最初だけやってみせますから ハドラーさんもやってみてください〕

 

そういって紙芝居をうけとったマシェルが子竜たちを テーブルを挟んで自分とは逆側に移動させた

 

『めずらしいですね マシェルが自分から 子竜たちを離すように移動させるのは

読み聞かせなら よく聞こえるように自分のところに集めるのに』

 

たしかに だがこれは興味深いな・・・

 

・・・・・・・

 

マシェルが紙芝居をはじめた

内容は大昔 風竜族の王の冒険譚のようだ

子竜向けに脚色されているようだが 史実をもとにし 歴史を身近に感じさせようというものだろうか

 

『みんな聞き入っているようですね』

 

マシェルが紙芝居の絵を見せながら 裏から内容を朗読していく

その声は聞くものを警戒させない いつものゆるい声で 

時折 紙芝居の裏から子竜たちの様子をうかがっている

おそらく あの紙の裏に内容が書いてあるのだろう なかなか興味深いものだ

だがオレならば・・・ と考えをめぐらそうとした矢先 物語の冒頭部分が終わり

マシェルがオレを手招きした 交代しろということだろう

ジゼルを椅子に座らせマシェルと代わる やはり 紙の裏に内容が書いてある 

マシェルから紙芝居を読むときの注意事項を聞き いよいよオレの出番だ

先ほどまでの空気を・・・            変える!

 

 

・・・!

 

・・・・・・・!!

 

・・・・・・・・・・・・・・!!!!

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!?!??!

 

そして 最後の一枚を読み終えたところで

 

                \\  パチパチパチパチ!! //

 

(すごい! マシェルに読んでもらったときと 全然違う!!)

 

《内容はほとんど同じだよ でも たしかに 全然違った気がする》

 

マシェルの読み聞かせでは表現されにくかった 部分を強調するように意識したが

どうやらサータやアータをはじめ 子竜たちにも通じたようだ

 

<すごく こわいときなんか もうダメって 何度も思ったもんね>

 

〔ヤチが泣いちゃったから ハータやカータはがんばったけど 

わたしもちょっと ふるえちゃったもんね〕

 

<アグリナさんも? 実は私も・・・>

 

<それでノイ さっきからずっとロイにつかまってるのね>

 

<え!? いや タータこれは?!>

 

魔王として 人間たちに恐怖を与えていた経験が生きたようだな

 

『なんの経験が生きてくるか わからないものですね』

 

≪風竜王さんと人間のお姫様が結婚するところも すごいドキドキした≫

 

【・・・よかった】

 

【・・・・・・】

 

≪正直ハドラーさんが あのシーンをあんなに熱演するとは思いませんでした≫

 

{素敵なシーンでしたねリリックさん! ジゼルもそう思います?}

 

               \~♡ ~♡/

 

オレ自身に結婚歴はないが バランやアバンから馴れ初めやのろけ話のようなものを聞く機会が多く

面白いものだったので 多少影響もあったのだろう

ジゼルも楽しんでいたようだ

 

『バランも意外とそういうこと 話しますよね まあダイが聞きたがりましたし』

《マシェルさんよりも 師匠が読んでくれた感じに近いみたい

師匠 冒険者をしてたみたいだから 冒険譚に生かせるのかな》

 

やはりあの地竜術士は冒険者だったか レベルもかなりのものだろう

紙芝居というのもなかなか面白いものだったが

 

「これならオレでも 作れそうだな」

 

物語は実話を多少脚色すればいくらでも作れそうな上

絵も少々描ける ヒマを見つけて試しに作ってみるか

 

               \ ! ? ? /

 

(ハドラーさん 紙芝居も作れるのか!? どんな話 どんな話?!)

 

『ジゼルたちも 期待してますね 私も少し楽しみですが どうします?』

 

そうだな やはりはじめて作るものは実体験をもとにしたほうが かきやすいだろう

その上でこやつらの 興味をひきそうな 「竜」にまつわる冒険譚のような話となると

 

                         ・・・ニヤリ

「ドラゴンクエスト というのはどうだ?」

 

               \\  おおーーーー  //

 

またひとつ楽しみができたわ

 

 

 

 




暑中お見舞い申し上げます
前作より長くなってきており
ハドラー様もコーセルテルにぼちぼち馴染みだしてきましたが
まだ顔あわせてない子竜たちもいるのでこれからはまた お家訪問の話になると思いますが またゆっくりとすすめていきます。

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