ジゼルが卵から孵った日 マシェル達がその祝いをしたいと 言い出した
マシェルの子竜もずいぶん乗り気のようだ 祝いの歌だの料理だのと用意に余念がない
オレも宴の準備を手伝いたかったが
肝心のジゼルがオレの腹に貼り付いたまま離れる気配がなく
無理に引き剥がして 一人にさせるわけにもいかぬ とのことで
地下の術部屋に フェルリとともに待機となった
‘まあ この子がジゼルちゃん! かわいいです~!!
孵りたてホヤホヤで まだおでこや おててに鱗が残ってるのって
この時期だけなのよね~’
そういうものか 別にオレの術が未熟だったわけではなかったようだ
『そうですよね! 待ちに待って やっと顔が見れたんですけど
もう こんなにかわいいとか! もう!もう!!』
テンション高すぎるぞ フェルリに聖母竜・・・
しかし オレの腹に話かけられているみたいで妙な気分だ
‘そういえばジゼルちゃんは お花好きかしら?
この地下は子竜ちゃんたちが竜術で咲かせてくれたお花で いっぱいになってますから
気にいってもらえるといいですけど’
この部屋が花だらけなのは見ればわかるが
花畑が地下に広がっていたのか こんな日も差さん地下で怪物化もさせていない花を
咲かせ維持させるとは 竜術の可能性を感じさせるな
ちなみにジゼルはまだオレの指をくわえている
牙をたてるわけでもないので放っているが このままでは手が使えん
あぐらをかいた オレのひざの上から まるで動こうとしないジゼル
\~♡!/
「これでは 卵のままとあまり変わらんのではないか?
しいていえば 立ったときにオレが支えんでも 自力で貼り付く分
面倒がひとつ減ったぐらいか」
『あなたは なにをいってるんですか!!』
‘そうですよ! 子竜ちゃんの可愛さに変わるものなんてないんですよ’
しまった 今のテンションのこやつらに余計なことを言うべきではなかったな
反撃が厄介で適わん
\~♡♡!/
こやつは フェルリたちを気にした様子もなく まだ オレの指に吸い付いている
中々の度胸だな それともよほど腹でも減っているか?
そういえば 生まれたばかりの幼竜は何を食えるのか気になるな
「少し料理を見てくる」
‘ええっ?! ゆっくりしましょうよ せっかくの マシェルちゃんたちの厚意なんですから’
「ジゼルはお前に預けていく おいジゼルいい加減離せ」
素早く指を引き抜き ジゼルがそれに気をとられている隙にオレから引き剥がし
フェルリの元に転がした
ころん ころん ころん・・・ ぽてっ
\?! ふ・・・ ふあああん わあああん!/
火がついたように泣き出したジゼルだが それよりも・・・
バサッ
「ジゼルに羽が生えたっ?!」
‘これは ナータちゃんたち暗竜の翼とおなじ 不安の証のものね
昔の竜にはなかったし 火竜で見るのは はじめてだわ’
だが この羽から感じる微かな禍々しさ・・・ 竜のものというよりも魔族のものに近いようだ
やはり 子というのはどこか親に似るものだな・・・
『ハドラー そんなことで喜んでないで すぐにジゼルを抱いてあげてください!』
「フム まあ試してみるか・・・」
ジゼルを拾い上げてみると・・・
ふぅ・・・
と 羽は跡形もなく消えた
不安が解消されたということか ピタリと泣きやんだしな
「まだまだジゼルには このオレが知らんことを多く秘めているのだろうな クククッ」
‘ええ 子竜ちゃんの魅力はまだまだ これからですよ
ハドラーさんも 楽しそうでなによりです’
今回は少し短め 前回がいつもより長くなりすぎたのですが。
おかげさまで ついに前作「ハドラー子育て日記」と同じ話数までやってきました
でも今作はヒロイン誕生でここからが本番・・・?
本文では特に書いてませんが 聖母竜がやたらとテンションが高いのは 卵を産んでから孵るまでずっとやきもきしながら「ためる」状態だったため スーパーハイテンションになったような感じです 親バカなのは前作からですが・・・