オレが洗濯を終え 乾いたばかりの産着をジゼルの卵に着せ マシェルから借りた
抱っこひもで胸の前に固定し さらしを巻いていると マシェルの子竜たちが
≪ハドラーさん そんなに色々つけたら 卵ちゃんが茹だっちゃうよ・・・
コーセルテルは暑さに弱い種族が多いから 夏の精霊が直接入ってこないおかげで
夏でも暑すぎないけど・・・ たまに虫さんがいるけど≫
<たしかに ジゼルちゃんがあつそう・・・
ただでさえ干したてホカホカの産着なのに チューリップに包まれてるみたいで
熱が逃げるとこがないよ>
『たしかに過重包装のようですね』
マータやタータの指摘に聖母竜が同意するように言う
《ジゼルは火竜だから あつさに強いはずだし それは大丈夫のはずだよ
それより両手を使えるようにするには 卵ちゃんをしっかり固定しないといけないから
これくらいはしょうがないんじゃ・・・》
(でも こんなにガッチリ巻いたらハドラーさんもあついし 動きにくそうだろ)
【マシェルも お前たちが卵だったころ 色々工夫していた
マータとタータの卵二つ同時に抱えていたころに比べればこの程度問題ない】
ア―タにサータ ナータまで話に加わってくる
[だっこいいなーっ]
{ねーっ}
ハータとカータのあまえんぼコンビは見るところが違っているがいつのまにか
マシェルの子竜全員が集まってジゼルに注目している
「・・・・・・フッ オリハルコンより丈夫な殻に守られている以上余計な装備は不要だろうが
卵が孵ったときのための産着を別に持つ方がわずらわしいからな
たしかに少々の不自由さを感じるがオレほどの者になればっ・・・」
パタパタパタ
と とりこんだ洗濯物を素早く畳んで見せた
\\おおーーっ//
「・・・・・・ご覧の通りだ
何の問題もない」
『他に見せることないんですか?』
子竜たちの反応は結構いいぞ まあそんなことはいい
「さて 家事はひと段落ついたところで オレはこれから光竜家に行ってくる」
{あ ぼくもいきたーい}
光竜・カータが手を挙げ同行を提案してきた
「オレは構わんが・・・ マシェルの許可を得てこい 日帰りとはいえ
どれほど邪魔するか わからんぞ」
{うん わかったー マシェルー}
たったった・・・・・・
カータがマシェルのところに行ってる間に準備を済ませておく
まあジゼルを巻きつけた後だけに他に必要なものなど・・・
『手土産はどうしました』
「すでに用意している
フルーの菓子を再現するのは中々骨が折れたがな」
(あ いいなー)
「おまえたちの分はマシェルが用意している 手伝ってきたらどうだ」
オレが言い終わるよりもはやく動きだしたナータに 他の子竜たちもつづいていった。
『みんないい子たちですね ジゼルもこんな風に育ってくれるでしょうか?』
「オレの子ならどいつも命令には忠実だったぞ」
{ハドラーさーん いっしょに行ってもいいってー
あとお菓子もらったー}
「では 行くぞ 案内は任せるぞ カータ」
{はーいっ いってきまーすっ}
「トベルーラ」
ドン!
ギューーン
カータの案内で南下して飛んでいくと山の上に大きな池とその中央に建物が見えてきた
{あれが光竜家だよ ハドラーさん}
「ホウ これが・・・」
バルジの渦のような気の効いたものはなく バルジ塔のようなものものしさも感じさせない
マシェルの家や木竜家には大きな木が巻きついていたが この建物自体には
そういったものがなく 花壇があちこちにおかれた平和そのものな雰囲気を感じさせる家だ
陸地からのびている桟橋と家の間に着地するとカータがそのまま家に入っていった
「カータ だれかいるようなら呼んできてくれ オレは外で待っている」
{うん! わかったーっ}
間もなくして カータが家から連れてきたのは はじめて見る顔ぶれだった
オレが光竜家の関係者で知った顔は 竜術士のモーリンと
武術訓練に参加している補佐竜のマリエルだが・・・
{はじめまして ようこそハドラーさん。
ぼくは 光竜術士モーリンの夫であり
今抱っこしてるかわいいかわいいレオノラのお父さんのラスエルと申します
そしてこの子たちが}
{私 モーリンの二番竜のファーリルです}
\ぼくは さんばんりゅーで レオノラのにーにの セユウルっ/
ラスエルは成竜(おとな) ファーリルが少年竜 セユウルが幼竜といった年頃のようだ
「ハドラーだ 子守の修業にきている ・・・この卵 ジゼルの親だ
これは 手土産だ うけとれ」
持ってきた菓子をファーリルに渡し ラスエルの抱いているレオノラの顔を見た
父が竜の赤子であるがどうやら人間のようだ
混血の場合 子は母親の種族になると聞いていたので
母親の竜術士モーリンが人間だからだろう
{わー まだちっちゃーい またかわいくなったねー}
たしかに こうして見ると随分と小さく ジゼルの卵よりも小さいぐらいだ
バルトスが地底魔城にまだ赤子だったヒュンケルを拾ってきたのを思い出した
そういえばダイを天界で育てていたときに たまごから孵ったときはもっと小さかったか
{ハドラーさんも レオノラを見てますね やっぱりかわいいですよねーーっ
かわいいですよねーーーーっ
かわいいですよねえ~~~~~~~っ}
『まあ とってもかわいらしい
ですがダイの赤子時期も負けてませんよ』
「フム、そういえば 目元があの光竜術士に似ているな
やはり子は黙っていても 親に似るものよな・・・」
{!!!
そうですよね ハドラーさん!
エレノアの目元がもう!もう!
ハドラーさんのジゼルちゃんもきっととてもかわいい子が生まれますよ
ああ こんな玄関前でいつまでも 立ち話なんかさせて申し訳ない
今 うちの補佐竜がテラスでお茶会の準備をしてますからどうぞあがってください
うちの子竜たちはお菓子作りが趣味ですから とってもおいしいですよ
もちろん ハドラーさんのお土産もみんなでいただきましょう}
{私も お手伝いしました}
ラスエルに通されたテラスには既に茶の用意ができていた
テラスからは一面に広がる澄んだ池と山々がなかなかの絶景といえる
{おいしーーっ}
\カータにーにの おみやげもおいしーっ/
カータやセユウルの歓声があがる たしかにいうだけのことはある出来だ
オレの菓子も悪くないようだ
〔ハドラーさんのお菓子とっても美味しいです
ところで 今日のご用件は?〕
ああ そういえば まだ何も言ってなかったな
「このジゼルだが カータがいうには光竜の力も感じるらしくてな
以前モーリンがオレにも光の術資質があると言ったことも思い出してな
何か術の一つでも覚えようかと思い 邪魔した次第だ
・・・まず光竜術はどんなものがあるか聞かせてもらえるか?」
{えーっとぉ 光る?}
\光る!!/
ほお 魔界で使えば天下がとれるかもしれんな・・・
太陽の光は魔族の宿願ともいえるからな
まあそこまでの規模はのぞめんだろうが 面白いかもしれんな
『大魔王バーンも 魔界に太陽を照らすために地上を消そうとしていましたね』
{探し物の術があります! 光が届いてる範囲だけですが 人や物を探せる便利な術です!}
それも 使えそうだな 悪魔の目玉を使役するよりも便利そうだ
子竜たちが次々と光竜術を紹介していく・・・
光竜術士や ラスエルあえて口を出さず子竜たちを見守っている
これも子育ての一環なのだろう
どうやら互いに有意義な時間になりそうだ・・・
///
おまえも興味があるか ジゼルよ・・・
その後 子竜たちの力を借りて 日が暮れるまで光竜術を試してみた
光だけを発生させるのは意外と難しかったが
探し物の術は すこしカンをつかめそうだった
太陽の光を自分の目のように意識し『見る』術 魔王時代の経験値が生きているようだ・・・
ジゼルが生まれるきっかけとなった9話での地震ですが 原作でいうところの最新刊「イルベックの精霊術士」2巻での できごとで そこから現在原作が休載中でして 最近の話は原作の時間軸よりも少し先をいってる状態です。 連載が再開される6月末まで更新は難しいかもしれません。