一カ月過ぎてマジですみませんでした(ガチ土下座)
クライマックスに近づいているとか言っておきながら番外編を思いつくグダグダっぷり
それでもお付き合いいただければ嬉しゅうございます。
ロクでなし魔術講師と禁忌教典を見始めました。ルミアちゃんマジ天使。
「また金髪か」とか言わないの(ガチ土下座Ⅱ)
「よぉおこそ地獄の入り口へ!!」
扉を開けて中に踏み込むと同時に、野太い声に気圧されて危うく吹っ飛ぶか腰を抜かすところであった。
世紀末クサいセリフで出迎えてくれた強面の大男が眼光を光らせてくる。モリモリマッチョで筋肉質なガタイはさながら歴戦の闘士。頭部には角が生えており、こちらが言うまでもなく鬼であった。
チラッと周りを見渡しただけでも、目の前にいる鬼と同じくらいの巨漢の他にも様々な連中があちこちでテーブルを囲み、耳に塞ぎたくなるほどの大音量で雄々しい歓声を上げている。どこもかしこも男だらけでむさ苦しさここに極まれる。
もっとも、地底の雰囲気からすれば却ってこれが普通なのかもしれない。幻想郷に来てから美少女との出会いが続いて感覚がズレたのだろうか。我ながらトンデモなく贅沢な悩みである。「外」の友人に知られたら袋叩きに遭うかも。閑話休題。
知らない人が見ればここは闘技場かギルドの集会場所なのかと疑う光景が広がっていた。あ、言い忘れていたけど地底なう。
「あんちゃん、あんたも入会希望者か?」
幾たびの修羅場を潜り抜けてきたような渋いボイスで問われる。思わずマネしたくなる声色にあてられて、俺もいかにもなカッコつけた感じで返した。ニヒルな表情かつクールな笑みで、
「ああ、風の噂でここのことを聞いたよ。だったら俺も仲間に入れてもらおうとな」
「ふっ……そうかい。命知らずよ」
男は腕を組んで静かに笑う。というかさっきからやけにキャラ濃いなこの人。何者だ?
ほどなくして、彼は懐から一枚の紙切れを取り出し「ほらよ」と俺に差し出してきた。言われるがままに受け取った直後、俺は驚きのあまり目を見張った。
「これは、まさか……!?」
「餞別だ。持っておきな」
紙切れと思われたものは写真。右下には雑な手書きで六桁の数字が綴られてある。
写っているのはとある女の子だった。薄桃色のショートボブと小柄な体は年端もいかない少女。だが、全身から伝わる落ち着いた雰囲気は大人の余裕と呼ぶに相応しく、瞳に宿る母性は無邪気な子供を見守るそれ。最大の特徴たりうるは、アクセサリーのように身に着けられている第三の目。
地底に住む者なら誰もが知っている。彼女こそ地霊殿の主。そして彼らこそが、
「古明地さとりファンクラブ、通称『SSS』だ! 新入りが来たぞテメェら祝杯を上げろぉお!!」
『ウォオオおおおお!!』
SSS――
――古明地さとりのファンクラブが実在しているらしい。
出所がどこかも忘れたがそんな噂話を耳にした。面白そうだったのとついでに暇だったのもあり、その噂の真相を確かめに行くとした。そうと決まれば即実行。俺は地底への入り口がある妖怪の山に赴いた。
え、アリスは一緒じゃないのかって? 今日はパチュリーと共同で魔法の研究するんだって紅魔館に行ったよ。この間みたいな調合実験じゃなくて魔導書の解読とかするらしい。一緒に行こうかとも考えたのだが、ド素人の俺がいたら邪魔になりそうだったので見送った。でも咲夜さんとお話しするチャンスだったかも、と思ったところで時すでに遅し。彼女はとうに出かけていた。誠に遺憾である。
いい加減聞き飽きたかもしれないが、俺一人では地底に行くなんて不可能なので協力者が要る。無論その辺に抜かりはない。既に目星は付けてある。
山を登りながら「文ぁー! もみっちゃーん! はたてー! もみっちゃーん! もみっちゃーん!!」って叫び続ける。やがて期待に応えてもみっちゃんもとい犬走椛がやってきた。かくかくしかじか理由を説明し、地底まで送り届けてほしいとお願いしたところ、めっちゃ乾いた笑いだったけど引き受けてもらえた。やったね。
「帰りは文さんかはたてさんに迎えに行ってもらいますね」とありがたい気遣いとともに地上に戻っていくもみっちゃんに手を振り、俺は先を進んだ。そして集会の場所と囁かれていた旧都でとりわけ大きい飲み屋の扉に手をかけ――
「さっとりんりん、さとりんりん! さっとりんりん、さとりんりん!」
「エル、オー、ブイ、イー、ラブリーさとりん!」
「さとりちゃんマイラァアアアブ!」
『ウォオオオオオオ!!』
秋葉原あたりでお目にかかれそうなノリで昂ぶりまくっているSSSの集まり。ガタイの良い男たちが謎の掛け声に合わせて腕を高く振り下ろしたり、凄まじく軽快なステップでエールを送ったりと、もはや混沌と化していた。
まぁ、その中に普通に俺も混ざっているんですがね。美少女が好きなやつに悪いやつはいないのだよ、ワトソン君。同志たちと古明地姉の魅力を語り合う時間、プライスレス。
ところがぎっちょん。オタクじみたパフォーマンスをしても此処は地底でメンツは鬼を初めとする旧都の住民に変わりはない。オタ芸だけで終わるはずもなくむしろ次第に本来の血が騒ぎ始めた。
「おぉーい! 酒が足りんぞコラァ!」
「オウオウこっちにも早う持ってこんかぁーい!」
「酒じゃ酒じゃぁぁああ!!」
はい、ご覧の有様です。一升瓶の直飲みは当たり前、中には樽ごと持ち上げてゴクゴクと喉を鳴らすバケモノまでいる。あっちゃこっちゃで酒を求める怒号が飛び交い、たまに皿や料理も宙を舞う。そのうち喧嘩祭りに発展しそうな物々しさ。
「うぅむ、これはこれでありだが……ちとマズイな」
そんな蒸気用に俺は密かに離脱を企てた。
男たちの宴は見ていて楽しいのだが、このまま場に飲まれたらほぼ確実に酒に溺れる。このあと迎えが来る予定だし、知らぬ間に酔い潰れて一夜を明かしていたなんてワケにはいかない。アリスにも心配をかけてしまう。
となればここは戦略的撤退に限る。幸いなのは他人に飲ませるよりも自分が飲むのを優先する連中ばかりということ。ついでに既に収拾がつかないくらいにハチャメチャになっている。おかげで一人くらい減ったところでバレはしない。
「それでは皆さんサヨナラ~……」
下手に見つからないように小声で別れを告げてコソコソとしゃがみ移動で出口に近付く。去り際に、最初に話しかけてきた渋い鬼さんがグッと親指を立ててきたので、とりあえず俺も同じように返しておいた。結局何者だったんだ、あの人……
「困った。予想外にも暇になってしまったぞ」
さとりんの魅力について語り合いたかったのだけど、あの様子じゃ仕方あるまい。思っていたよりも早く集会場を後にしてしまったため、時間が相当余ってしまった。お迎えがくるのもまだまだ先だろう。さて、どうしたもんか。
いっそのこと本人にでも会いに行こうか。なんて考え始めた時、
「お兄さん、お兄さん。ちょいと頼まれてやっちゃくれないかい?」
「俺?」
あたりをキョロキョロと見回すが俺以外に男性の姿はない。もしかしなくても話しかけられたのは俺らしい。
声がした方を振り返ると、赤髪ネコミミでゴスロリ系に近い黒ファッションの少女がいた――犬を十匹ほど引き連れて。
猫娘が犬の散歩ってまたシュールやなぁ。しょうもない感想を抱きつつも片手を上げて応える。
「ういっす。いつぞやの温泉以来だな、お燐」
「ああ、あたいのこと覚えててくれたんだね。嬉しいよ。それでお兄さん今ヒマ?」
「まさかのナンパの常套句が来るとは……ちょうど暇になったところで、お前さんの主に会いに行こうかと思っていたところでもあるぞ」
俺がそう言うとお燐はパァッと顔を輝かせた。どうやらお困りだった様子で「ちょうどよかった!」なんて喜んでいる。
予想通り、すぐさま彼女は両手を重ねて頼み込んできた。
「ものは相談なんだけど、あたいの代わりにこの子たちの散歩をしてあげてくれないかい? ちょっと急用ができてお空のところに行かないといけなくなったんだけど、途中で切り上げるのもこの子らが可哀相で……」
「なーんだそげなことかい。別にええよ、構へん構へん」
「本当かい!? 助かるよ!」
なぜか大阪ノリで快諾する。困っている女の子がいたら手を差し伸べるのが紳士の道。ワンちゃんのお散歩ぐらいお安い御用だ。お燐やさとりんには子分な狸が世話になっているみたいだし。いや、別に親分になったつもりはないんだけどさ。
「あ、もちろんタダとはいわないよ。お礼にお兄さんにはコレをあげるよ」
お燐は衣服のポケットからある物を取り出して俺に渡してきた。あれ、これさっきも似たような展開があった気が……
案の定、彼女が俺にくれたのはまたもや写真だった。そしてその紙面を見てまたまた目を見開いた。
「な、なんとォッ!?」
「気に入ったかい? さとり様とパルさんがお茶会しているところだよ。よく撮れているだろう?」
「こいつぁスゲーよ。マジで本当に貰っていいの?」
「もちろんさ」
上品に微笑む小柄な少女と、ツンとすまし顔の金髪エルフ耳の少女がテーブルを挟んで向かい合う。よくよく見れば橋姫の方も満更でもなさそうに微かに口元を緩ませている。気心の知れた友人と過ごす憩いの一時だった。というかアイテム入手するイベントが続くのだが一体何事?
まぁいい。こんなお宝をいただけるとあれば俄然やる気が湧いて出るというもの。手渡された十匹分のリードを力強く握りしめる。ちなみに左右の手に五本ずつである。
「用事が片付いたらあたいがそっちに行くよ。特に散歩コースは決まっていないから適当にその辺ぶらついておいておくれ」
「了解、報酬を前払いしてもらった以上はキッチリこなしてみせるぜ」
じゃあ頼んだよ、と言い残してお燐は同僚の鴉がいる方向へと去っていった。お空が張り切りすぎて温泉が熱すぎと苦情が出たのかもしれない。なんとなくそんな気がした。
「さて、と」
ゴーサインを今か今かと待っている犬たちを見下ろす。二匹三匹ならまだしも十匹もいるとなかなか圧巻だ。アレみたい。犬ぞり。白く染まった北の大地を駆け巡ってそう。
物は試し。ちょっとした出来心で両手の手綱を軽く上下に振ってみる。
「ハイヨー! なんつって冗談冗談――」
『バウバウバウ!!』
「――ゑ?」
瞬間、犬たちの目がギラリと光った。グンッと物凄い引力が働いてブレる残像が生まれる。あまりにも早すぎて最初何が起きたのか全くわからなかった。
怒涛の勢いで駆け出した犬たちに引っ張られている自分がいたと気が付いた時には既に手遅れだった。先ほどの合図で野性が目覚めたのか、地鳴りを上げて突き進む様はまさしく獣の軍勢と呼ぶに尽きる。
「うそぉおおおおおおん!? ちょっ、待っ! うおぉおい!」
止めようにも総勢十匹の動物パワーに俺一人で抗えるはずもなく、ただひたすらに足を動かす。しかし、想像以上の速さに自分のペースで走ることも叶わず、うっかり躓いて足がもつれてしまった。
あっ、と思った頃にはもう遅い。主導権を奪われている真っ只中の俺に体勢を立て直す暇などなく、そのまま背中から転倒した。さらに悲劇の連鎖は止まらない。
今度はどこぞの処刑方法みたいにズザザザーッ!と地面を引き摺られ始める。摩擦で背中が擦り減っていく。熱い痛い絵面も酷いの三連コンボが成立する。
「んほぉおおおおお!!」
先ほどは犬ぞりと例えたが撤回しよう。そんな生易しいものでは断じてなかった。本能のままに地を踏襲する彼らの姿はもはや地獄の番犬だった。
いっそ手綱を放してしまえば楽なのではと誰もが思うだろう。だがしかしここで悲しいお知らせをもう一つ。さっき転んだ拍子に紐が手首に絡まって振り解けないの。いよいよもって処刑の光景に近い感じになっています。
あえて言おう、「これアカンやつや」。だッ、誰かぁー! ヘルプミー!
「
凛とした声が響く。
『わん!』
その声がハッキリと聞こえた直後、あれだけ暴走していたドッグランが一糸乱れぬ統制でピタッ!と足を止めた。よくわからんけど……た、助かったぁ~……
仰向けのまま地底の空を見上げて安堵の息を吐く。すると、俺のすぐ傍で砂利を踏む音がした。顔だけそちらの方へ向けると彼女が立っていた。そして開口一番、
「なんで毎回懲りもせずにバカげた騒ぎ起こしてんのよ。あなたって人はホント妬ましいわね」
眉間にしわを寄せてジトッとした視線で見下ろす金髪少女。眩いエメラルドグリーンの瞳には呆れと怒りと諦めが入り混じった風な、こちらとしても返事しがたい色に染まっていた。
まったくもって仰る通りで返す言葉もない。「たはは……」と笑って誤魔化すしかなかった。いやはや面目ない。
「あー……はろ~、助かったぜパルスィ。ついでに悪いんだけど手首の紐解くの手伝ってくれない? 絡まっちまってお手上げ侍なんよ」
「……はぁ~。ほら、見せなさいよ」
深々と溜息を吐きつつも、俺を引っ張り起こしてくれるパルスィの優しさに涙が止まらない。彼女もその場にひざを折ると俺の手に巻き付いた何本ものリードから解き目を見つけてシュルシュルと解いていく。相変わらずの女子力の高さと手際の良さに惚れ惚れする。
あと偶然というか必然というか、橋姫の柔らかいお手々が俺の手を包み込んできて嬉しハズかしな構図になっている。パルスィみたいな可愛い女の子と触れてちょっとドギマギしちゃう。これぞケガの功名なんつって。
「またバカなこと考えてないでしょうね?」
「滅相もございませぬ」
ジロリと軽く睨まれてしまった。どうして女の子ってこうも鋭いときがあるのだろう。それとも俺が分かりやすいだけなのか。
俺のときは散々好き勝手走り回っていた犬たちも、パルスィの周りで甘えの鳴き声を上げている。かなり懐かれているのが伺えた。彼女が「もうちょっとだけ待ってなさい」と一声かければ、彼らはお座りしたり寝そべったりと大人しく従う姿勢をみせる。
「手馴れてんなぁ、大したもんだ」
「さとりが躾けているから当然よ。むしろ振り回されていたあなたがおかしいんだけど。で、なんでまた犬の散歩なんかしてたわけ?」
「あぁ、それはお燐が……」
冗談でもハイヨーなどと言ってはならぬと身を以って知った。嫌な事件だったね。
リードを解いてもらっている間にお燐から頼まれた経緯をパルスィに話しておく。さとりんファンクラブのことは言わなかったけど、地底に住む彼女ならとっくに知っているのだろう。
そうこうしているうちに複雑に絡まっていたはずの紐束は橋姫によってキレイに解かれて一本一本の状態に戻された。
あやうく止血しかけていた手首をコキコキと回して無事を確かめる。もちろんお礼も忘れない。
「いやぁ危なかったぜ。いつもスマンね、ありがとな」
「別に。もう慣れたわ」
『ワンワン!』
「はいはい、待たせたわね」
催促してくる犬たちを撫でながらパルスィが身を上げる。ついでに俺が左右に持っていたリード束のうち片方をさりげなく取っていった。
彼女に続いて俺も立ち上がる。あれだけ凄まじいデッドヒートがあったというのに怪我ひとつない不思議。世間一般でいうところのギャグ補正とかいう神のご加護やもしれぬ。
って、さりげなく手綱を半分こにされたんですがこのパターンは……
俺が期待した目で彼女を見ると「ふん……」とそっけない態度で短く言った。
「また暴走されても迷惑だから付き合うわよ」
「さすがパルスィ! そこに痺れる憧れるゥ!」
『わおーん!』
「うるさい。まったく、さっさと行かないなら置いていくわよ」
俺と犬たちが歓喜の声をあげるのに文句を言うも、散歩の続きを促す橋姫様。
というわけで、「お燐が来るまで適当に犬の散歩」は「パルスィと一緒に犬を連れて旧都を見て回る」ルートへとシフトチェンジしたのであった。うひょー! テンションあがってキター!
「だからうるさいって言ってるでしょうが! 妬ましいわね!」
「モノローグなんですけど!?」
やっぱり女の子の洞察力は凄い(小並感)。
番外編なのに後半に続く
今更になってPSYCHO-PASSを見始めました。
こんな面白いアニメを見逃していたなんて……!(後悔)
あとグッドスピードなら来週には投稿します ←小声
さて、PSYCHO-PASSⅡでも見ようか