東方人形誌   作:サイドカー

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気が付いたら、お気に入り登録してくださった方が、二十名を超えていました。
さらに、感想までくださる方もいらっしゃって、うれピ……ゲフンゲフン、失礼。感激でございます。
今一度、この場を借りて感謝の言葉を……ありがとうございます!!

というわけで、今回も読んでいただけると、嬉しいです。


第五話 「友達百人いる奴より、彼女一人いる奴の方が勝ち組なのか?」

 雑貨屋で買い物を済ませた後、俺達はさっき見つけた団子屋で、休憩も兼ねてのんびり過ごすことにした。こういうお店、わびさびっていうんだっけ? 今では京都くらいでしかお目にかかれないのではないだろうか。これまた貴重な体験をした。しかも隣には金髪碧眼の美少女。いっつ、わんだほー。

「いやはや、紅茶も良いが緑茶も捨てがたいな」

「別にどっちも好きで良いんじゃないかしら? 私は紅茶の方が好きだけどね」

「いっそ混ぜたら究極のお茶ができるのではないだろうか」

「やめた方が良いと思うわ」

 む、そうか。結構良い案だと思ったんだが。

 目の前を子供たちが楽しげに走って行った。これから寺子屋に行くところなのだろう。元気があって大変よろしい。

 

「おや、アリスじゃないか」

 

 三食団子をもぐもぐしていると、誰かから声をかけられた。正確には、声をかけられたのはアリスの方だが。

 声がした方を見ると、大人っぽい女性がいた。もちろん美人である。ストレートのロングヘアーは淡い水色。それに対して、帽子と服は鮮やかな青。落ち着いた物腰も加わってか、知的な印象を受ける。いかにも仕事ができる女って感じだ。

「あら、慧音。今日も授業?」

「ああ、それが私の役目だからな。ところで、そちらの男性は?」

「あ、彼は優斗っていうんだけど。つい最近知り合った外来人よ」

 アリスの紹介を受けて、女性がこちらに向き直る。朗らかな笑みで右手を差し伸べられた。こちらも立ち上がってから、握手に応える。

「初めまして。私は上白沢慧音。寺子屋で教師をしている者だ。人里の守護者もしているよ。アリスとは良き茶飲み友達でな、よく相手をしてもらっている」

「なるほど、先生でしたか。自分は天駆優斗っていいます。よろしくっす」

 こんな美人教師に授業してもらえるとは、ここの子供たちは贅沢をしている。うらやまけしからん。俺も入学してやろうか。

「それで、二人は何をしているところだったんだ?」

「優斗が幻想郷に来たばかりだから、色々と案内して回っているのよ」

 俺がバカなことを考えている間に、話題が俺達のことになっていた。アリスが簡単に今朝の経緯を説明する。ふむふむと頷いていた慧音さんだったが、一通り聞き終わると、ニヤリと悪戯っぽい笑みを浮かべた。ちょっとエロスを感じた俺は悪くないはずだ。

「なるほど、二人はデート中だったか。邪魔してすまない」

「ちょっ!? そ、そんなわけないでしょ!? 何言い出すのよ、もう!!」

「いやぁ~、もしそうだったら、世界中に自慢して回ってるんすけどね!」

「~~~~~っ!!」

「ハハハ。面白い男だな、キミは」

 軽快に笑う俺につられたのか、慧音さんも愉快そうに笑う。それに引きかえ、アリスはカァァッと顔を赤らめると、俯いて黙り込んでしまった。すまん、アリス。反省はしていません。後悔もしていません。

 もう少し談笑を楽しんでいたかったのだが、これから授業があるとのことで、慧音さんとはここでお別れということになった。彼女は去り際、「そうだ」と何かを思い出して、こちらを振り返った。

「次の行き先が決まっていないなら、香霖堂に行くと良い。あそこは『外』の物を置いているから、キミなら使い方を店主に教えてやれるはずだ」

「香霖堂っすか? 了解です。わざわざ教えてくれて、ありがとうございます、慧音さん」

「では、私はこれで失礼するよ。また会おう、二人とも」

 

「というわけで、香霖堂とやらに行こうと思うんだが。良いか?」

「うん……」

 まだ若干赤い頬で、コクンと小さく頷くアリスが非常に可愛くて危険です。

 どうやら、人里ではなく魔法の森の近くに店舗を構えているらしく、俺達は人里を出て、来た道を引き返すこととなった。

 

 

 魔法の森の入口らへんで、ちょいとルートを変更すると、一軒の建物が見えてきた。例の香霖堂とかいう店で間違いないようだ。どんどん近づいていき、店の前に立つ。

「ここが香霖堂よ。骨董品屋って言えば良いのかしら? 商売というよりは、店主の趣味ね」

「骨董品屋というよりは……ジャンクショップってやつだな。店先にガラクタ置くとか、実に個性的だわな」

 店舗の前には、錆びついたバス停やら、どっかのスーパーのカートやらが無造作に放置されていた。ここの店主は、粗大ゴミを拾ってコレクションする趣味でもあるんだろうか。

アリスに「ほら、行きましょ」と促され、俺達は店内に入ることにした。何度か足を運んだことがあるのか、気構えることなく慣れた手つきで、アリスが店のドアノブを捻る。

 

ガチャッ カランカラン……

「お邪魔するわよ」

「おや、いらっしゃい。珍しいね、君がここに来るなんて」

「そうかしら?」

「まぁ、いいか。ところで今日は何用だい?」

「用ってほどでもないのだけれど。彼があなたの店に興味を持ったから」

 そう言ってアリスは俺の方を向く。

 俺は一歩前に出ると、奥の事務席に座っていた人物に、軽く頭を下げた。

「天駆優斗です。最近引っ越してきたばかりなんですけどね」

「外来人ってことかな? 僕は森近霖之助。この香霖堂の店主だ。よろしく頼むよ」

 相手は意外なことに、見た感じ若い男性だった。限りなく白に近い白銀の髪は、そこそこの短さに切り揃えられており、何より彼を特徴づけているのは、今のところ幻想郷ではあまり見かけてない、眼鏡をつけていること。やや個性を効かせた和服がサマになっている、なかなかイイ男だ。どことなく慧音さんと似ているのは、落ち着いた雰囲気からか。

 森近さんが興味深そうに「ふむ……」と俺のことを観察し始める。

「どうかしましたか、森近さん?」

「霖之助でいいよ。代わりに僕も、君のことは優斗君と呼ばせてもらうよ。そうそう、君は外来人だっけね?」

「はい、そうですけど」

 質問の意図が分からず、とりあえず言葉通りと受け取り、肯定する。

 俺の返事に、霖之助さんは「そうか、そうか」と何やら納得し頷いている。そして、

「時に優斗君、ここで働いてみる気はないかい? いや、たまに気が向いたらでいいんだ。こういうの『外』の世界では、あるばいと、とかいうんだっけ?」

 何か誘われた。

 話の展開について行けず、ポカーンとしていると、アリスが助け舟を出してくれた。

「何でいきなり、そんな話になるのかしら?」

「ああ、すまないね。説明不足だった。僕は、『外』から流れ着いたものを回収しては、商品として置いているんだ。ただ、物の名前とか価値とかは分かるんだけど、その使用方法までは分からなくてね。だから、推測で判断するしかないし、それでも不明なものはガラクタ同然なんだ」

 そこまで説明を聞いて、さすがの俺も、彼が何を言いたいのかは大体わかった。

 要するに、自分では使用方法が分からないものでも、俺なら分かるんじゃないかと、霖之助さんは期待しているのだ。というか、さっき慧音さんが言った通りの展開になった。さすが慧音先生、パネェッす!

「なるほど、つまり俺は、新しく入った商品のチェックを時々すればOKというわけですか?」

「そういうこと。どうだい、頼めるかい?」

「優斗、どうするの?」

 霖之助さんだけでなく、アリスの視線も俺に向けられる。ふむ、たまにでも良いというなら断る理由はないか。

 それに、忘れられがちだが俺はフリーター大学生だ。バイト経験ならお手の物よ。ここらで一つ本領発揮といきますか。いや、本業は大学生なんだけどさ。ついでに言えば、アリスの家に居候させてもらっている以上、家事だけでなく金銭面でも、貢献していくべきだろう。

 というわけで、俺はグッと親指を立てて、大きく頷く。

「わっかりました! その役、引き受けましょう!」

「引き受けてくれるか! ありがとう。もちろん、給料は手配するから安心していい」

「その言葉、忘れないで下さいよ?」

「もちろん、男同士の約束だ」

 俺と霖之助さんとの間に、店主と従業員を超えた、熱い友情が芽生えたことを、俺達は魂で感じ取っていた。考えてみれば、幻想郷って女性ばかりだったな。しかも美女美少女のオンパレード。まぁ、一番可愛いのはアリスだけどな!

 

「それで、これから二人はどこに行くんだい?」

 アルバイトは後日ということにし、俺達は引き続き幻想郷観光をするべく、香霖堂を後にすることにした。霖之助さん曰く、来るのは本当にたまにで良いらしい。店長、商売する気あるんですか?

 霖之助さんの質問に、アリスは顎に人差し指を当てて思考する。

「そういえば、まだ次の行き先を決めていなかったわね。優斗、行きたいところある?」

「せやな。こう、幻想郷にしかないようなスゲーもんってない?」

「凄い所ねぇ……」

「それなら紅魔館なんてどうだい?」

 アリスが悩んでいると、霖之助さんが一つ提案してきた。その紅魔館とかいうのがオススメなのだろうか。確かに名前はスゲーな。紅い魔の館か、ホラー映画の舞台にでもなりそうだ。あ、でも幻想郷なら妖怪とかフツーにいるんだっけか。

 どんなところなのだろうか。アリスに聞いてみよう。

「紅魔館って?」

「吸血鬼が住んでいる、大きな屋敷よ。他にも門番とかメイドとか、私や魔理沙と同じ魔法使いも居るわね」

「よし行こう!」

「何でそんなに元気良く反応するのよ?」

「面白そうだからな!」

「はぁ。優斗って自分からトラブルに巻き込まれに行くタイプでしょ」

「さすがアリス。よく分かったな」

「一緒にいれば、誰でも分かるわよ」

 呆れたように溜息を吐かれてしまった。男はいくつになっても危険と冒険が大好きなものなんだよ。アリスは優等生タイプっぽそうだから、そういうのは好きじゃないんだろうか。いやしかし、弾幕ごっことかいうド派手な遊びをするらしいし……うむ、わからん。

 

 何はともあれ、次の目的地は吸血鬼の館で決まりだ。その場所には、とんでもねぇべっぴんさんが居ると、俺の第六感が叫んでいる。はたして、どんな美人との出会いが待っているのか。オラ、ワクワクしてきたぞ!

 

 

つづく

 




プロットを作ろうと、ペンとネタ帳を持って外出したのですが……
持ってきたペンが、先日捨てたはずのインク切れのものでした。じゃあ、自分があの時捨てたペンは、一体……? そういえば、この前買ったやつが見つからないなぁ。どこに行ったんだろう?

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