さらに、感想までくださる方もいらっしゃって、うれピ……ゲフンゲフン、失礼。感激でございます。
今一度、この場を借りて感謝の言葉を……ありがとうございます!!
というわけで、今回も読んでいただけると、嬉しいです。
雑貨屋で買い物を済ませた後、俺達はさっき見つけた団子屋で、休憩も兼ねてのんびり過ごすことにした。こういうお店、わびさびっていうんだっけ? 今では京都くらいでしかお目にかかれないのではないだろうか。これまた貴重な体験をした。しかも隣には金髪碧眼の美少女。いっつ、わんだほー。
「いやはや、紅茶も良いが緑茶も捨てがたいな」
「別にどっちも好きで良いんじゃないかしら? 私は紅茶の方が好きだけどね」
「いっそ混ぜたら究極のお茶ができるのではないだろうか」
「やめた方が良いと思うわ」
む、そうか。結構良い案だと思ったんだが。
目の前を子供たちが楽しげに走って行った。これから寺子屋に行くところなのだろう。元気があって大変よろしい。
「おや、アリスじゃないか」
三食団子をもぐもぐしていると、誰かから声をかけられた。正確には、声をかけられたのはアリスの方だが。
声がした方を見ると、大人っぽい女性がいた。もちろん美人である。ストレートのロングヘアーは淡い水色。それに対して、帽子と服は鮮やかな青。落ち着いた物腰も加わってか、知的な印象を受ける。いかにも仕事ができる女って感じだ。
「あら、慧音。今日も授業?」
「ああ、それが私の役目だからな。ところで、そちらの男性は?」
「あ、彼は優斗っていうんだけど。つい最近知り合った外来人よ」
アリスの紹介を受けて、女性がこちらに向き直る。朗らかな笑みで右手を差し伸べられた。こちらも立ち上がってから、握手に応える。
「初めまして。私は上白沢慧音。寺子屋で教師をしている者だ。人里の守護者もしているよ。アリスとは良き茶飲み友達でな、よく相手をしてもらっている」
「なるほど、先生でしたか。自分は天駆優斗っていいます。よろしくっす」
こんな美人教師に授業してもらえるとは、ここの子供たちは贅沢をしている。うらやまけしからん。俺も入学してやろうか。
「それで、二人は何をしているところだったんだ?」
「優斗が幻想郷に来たばかりだから、色々と案内して回っているのよ」
俺がバカなことを考えている間に、話題が俺達のことになっていた。アリスが簡単に今朝の経緯を説明する。ふむふむと頷いていた慧音さんだったが、一通り聞き終わると、ニヤリと悪戯っぽい笑みを浮かべた。ちょっとエロスを感じた俺は悪くないはずだ。
「なるほど、二人はデート中だったか。邪魔してすまない」
「ちょっ!? そ、そんなわけないでしょ!? 何言い出すのよ、もう!!」
「いやぁ~、もしそうだったら、世界中に自慢して回ってるんすけどね!」
「~~~~~っ!!」
「ハハハ。面白い男だな、キミは」
軽快に笑う俺につられたのか、慧音さんも愉快そうに笑う。それに引きかえ、アリスはカァァッと顔を赤らめると、俯いて黙り込んでしまった。すまん、アリス。反省はしていません。後悔もしていません。
もう少し談笑を楽しんでいたかったのだが、これから授業があるとのことで、慧音さんとはここでお別れということになった。彼女は去り際、「そうだ」と何かを思い出して、こちらを振り返った。
「次の行き先が決まっていないなら、香霖堂に行くと良い。あそこは『外』の物を置いているから、キミなら使い方を店主に教えてやれるはずだ」
「香霖堂っすか? 了解です。わざわざ教えてくれて、ありがとうございます、慧音さん」
「では、私はこれで失礼するよ。また会おう、二人とも」
「というわけで、香霖堂とやらに行こうと思うんだが。良いか?」
「うん……」
まだ若干赤い頬で、コクンと小さく頷くアリスが非常に可愛くて危険です。
どうやら、人里ではなく魔法の森の近くに店舗を構えているらしく、俺達は人里を出て、来た道を引き返すこととなった。
魔法の森の入口らへんで、ちょいとルートを変更すると、一軒の建物が見えてきた。例の香霖堂とかいう店で間違いないようだ。どんどん近づいていき、店の前に立つ。
「ここが香霖堂よ。骨董品屋って言えば良いのかしら? 商売というよりは、店主の趣味ね」
「骨董品屋というよりは……ジャンクショップってやつだな。店先にガラクタ置くとか、実に個性的だわな」
店舗の前には、錆びついたバス停やら、どっかのスーパーのカートやらが無造作に放置されていた。ここの店主は、粗大ゴミを拾ってコレクションする趣味でもあるんだろうか。
アリスに「ほら、行きましょ」と促され、俺達は店内に入ることにした。何度か足を運んだことがあるのか、気構えることなく慣れた手つきで、アリスが店のドアノブを捻る。
ガチャッ カランカラン……
「お邪魔するわよ」
「おや、いらっしゃい。珍しいね、君がここに来るなんて」
「そうかしら?」
「まぁ、いいか。ところで今日は何用だい?」
「用ってほどでもないのだけれど。彼があなたの店に興味を持ったから」
そう言ってアリスは俺の方を向く。
俺は一歩前に出ると、奥の事務席に座っていた人物に、軽く頭を下げた。
「天駆優斗です。最近引っ越してきたばかりなんですけどね」
「外来人ってことかな? 僕は森近霖之助。この香霖堂の店主だ。よろしく頼むよ」
相手は意外なことに、見た感じ若い男性だった。限りなく白に近い白銀の髪は、そこそこの短さに切り揃えられており、何より彼を特徴づけているのは、今のところ幻想郷ではあまり見かけてない、眼鏡をつけていること。やや個性を効かせた和服がサマになっている、なかなかイイ男だ。どことなく慧音さんと似ているのは、落ち着いた雰囲気からか。
森近さんが興味深そうに「ふむ……」と俺のことを観察し始める。
「どうかしましたか、森近さん?」
「霖之助でいいよ。代わりに僕も、君のことは優斗君と呼ばせてもらうよ。そうそう、君は外来人だっけね?」
「はい、そうですけど」
質問の意図が分からず、とりあえず言葉通りと受け取り、肯定する。
俺の返事に、霖之助さんは「そうか、そうか」と何やら納得し頷いている。そして、
「時に優斗君、ここで働いてみる気はないかい? いや、たまに気が向いたらでいいんだ。こういうの『外』の世界では、あるばいと、とかいうんだっけ?」
何か誘われた。
話の展開について行けず、ポカーンとしていると、アリスが助け舟を出してくれた。
「何でいきなり、そんな話になるのかしら?」
「ああ、すまないね。説明不足だった。僕は、『外』から流れ着いたものを回収しては、商品として置いているんだ。ただ、物の名前とか価値とかは分かるんだけど、その使用方法までは分からなくてね。だから、推測で判断するしかないし、それでも不明なものはガラクタ同然なんだ」
そこまで説明を聞いて、さすがの俺も、彼が何を言いたいのかは大体わかった。
要するに、自分では使用方法が分からないものでも、俺なら分かるんじゃないかと、霖之助さんは期待しているのだ。というか、さっき慧音さんが言った通りの展開になった。さすが慧音先生、パネェッす!
「なるほど、つまり俺は、新しく入った商品のチェックを時々すればOKというわけですか?」
「そういうこと。どうだい、頼めるかい?」
「優斗、どうするの?」
霖之助さんだけでなく、アリスの視線も俺に向けられる。ふむ、たまにでも良いというなら断る理由はないか。
それに、忘れられがちだが俺はフリーター大学生だ。バイト経験ならお手の物よ。ここらで一つ本領発揮といきますか。いや、本業は大学生なんだけどさ。ついでに言えば、アリスの家に居候させてもらっている以上、家事だけでなく金銭面でも、貢献していくべきだろう。
というわけで、俺はグッと親指を立てて、大きく頷く。
「わっかりました! その役、引き受けましょう!」
「引き受けてくれるか! ありがとう。もちろん、給料は手配するから安心していい」
「その言葉、忘れないで下さいよ?」
「もちろん、男同士の約束だ」
俺と霖之助さんとの間に、店主と従業員を超えた、熱い友情が芽生えたことを、俺達は魂で感じ取っていた。考えてみれば、幻想郷って女性ばかりだったな。しかも美女美少女のオンパレード。まぁ、一番可愛いのはアリスだけどな!
「それで、これから二人はどこに行くんだい?」
アルバイトは後日ということにし、俺達は引き続き幻想郷観光をするべく、香霖堂を後にすることにした。霖之助さん曰く、来るのは本当にたまにで良いらしい。店長、商売する気あるんですか?
霖之助さんの質問に、アリスは顎に人差し指を当てて思考する。
「そういえば、まだ次の行き先を決めていなかったわね。優斗、行きたいところある?」
「せやな。こう、幻想郷にしかないようなスゲーもんってない?」
「凄い所ねぇ……」
「それなら紅魔館なんてどうだい?」
アリスが悩んでいると、霖之助さんが一つ提案してきた。その紅魔館とかいうのがオススメなのだろうか。確かに名前はスゲーな。紅い魔の館か、ホラー映画の舞台にでもなりそうだ。あ、でも幻想郷なら妖怪とかフツーにいるんだっけか。
どんなところなのだろうか。アリスに聞いてみよう。
「紅魔館って?」
「吸血鬼が住んでいる、大きな屋敷よ。他にも門番とかメイドとか、私や魔理沙と同じ魔法使いも居るわね」
「よし行こう!」
「何でそんなに元気良く反応するのよ?」
「面白そうだからな!」
「はぁ。優斗って自分からトラブルに巻き込まれに行くタイプでしょ」
「さすがアリス。よく分かったな」
「一緒にいれば、誰でも分かるわよ」
呆れたように溜息を吐かれてしまった。男はいくつになっても危険と冒険が大好きなものなんだよ。アリスは優等生タイプっぽそうだから、そういうのは好きじゃないんだろうか。いやしかし、弾幕ごっことかいうド派手な遊びをするらしいし……うむ、わからん。
何はともあれ、次の目的地は吸血鬼の館で決まりだ。その場所には、とんでもねぇべっぴんさんが居ると、俺の第六感が叫んでいる。はたして、どんな美人との出会いが待っているのか。オラ、ワクワクしてきたぞ!
つづく
プロットを作ろうと、ペンとネタ帳を持って外出したのですが……
持ってきたペンが、先日捨てたはずのインク切れのものでした。じゃあ、自分があの時捨てたペンは、一体……? そういえば、この前買ったやつが見つからないなぁ。どこに行ったんだろう?