東方人形誌   作:サイドカー

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誰かが評価してくれるのって、こんなに嬉しいことなんですねぇ。
ビックリし過ぎて、思わず心臓がGrip & Break down !! するところでした……


第二話 「帰るより此処に居た方が面白いんじゃね?」

「つまり、こういうことか。此処は『幻想郷』っていう、忘れ去られた存在が行きつく先で、俺が元々居た世界は『外の世界』とか『現代』とか、そういう風に呼ばれていると。んで、ここじゃ妖怪とか神様とかがバリバリ存在していて、ほとんどの奴らが『何々する程度の能力』とかいうオリジナルな力を持っていると。さらに言えば、そういう奴はほとんどが空を飛べて、一部じゃ人間も能力持ち&飛行可能ってことか」

「ええ、概ねそんな感じよ」

 俺の解釈にアリスが同意する。

 あのあと、アリスのお誘いを受けて、彼女の家にお邪魔して、幻想郷とかいうこの世界についてあらかたの説明を受けた。ちなみに、アリスの自宅は洋風な一軒家で、ここで一人暮らしをしているらしい。彼女自身、西洋人形のような風貌をしているので、雰囲気はピッタリだな、と思ったのはここだけの話だ。

「なんとまぁ、こんなトンデモ世界があったなんてな、驚いたでござる」

 アリスが淹れてくれた紅茶を口に運び、ふぅと一息つく。

 だが俺は、心穏やかな状態でいるには厳しかった。突然わけのわからない世界に飛ばされた恐怖から? いやいや、そんなチャチなもんじゃない。むしろ逆だ。かつて遭遇したことのない非日常が目の前にあるんだ。ワクワクして仕方ないくらいさ。

 喜びを隠しきれず、表情に少し出てしまったのか、アリスが怪訝そうに聞いてくる。

「何だか嬉しそうね。良いことでもあったのかしら?」

「そりゃそうだ。アリスに出会えたんだからな!」

「……バカ」

 この短時間で随分親しくなれたおかげで、アリスも俺の性格に慣れ始めたようだ。それでも、罵倒する時につい視線を逸らしてしまったところが、彼女の恥ずかしがり屋なところを象徴していて非常に萌える。

「とにかく! これからどうするかは、博麗神社に行ってから決めましょう」

「ああ、さっき話に出てたな。アリスのお友達の巫女さんが居る所だっけ? 行くのはもちろんOKだが、俺は空飛べないぞ?」

「歩いてでも十分行ける距離だから、大丈夫よ」

 

 

 今更だが、俺が倒れていた場所であり、アリスの自宅があるこの場所は、魔法の森というそうだ。魔法のって名前がつくからアリスは魔法使いなのか、と冗談半分で聞いたら「ええ、そうよ」と当然のように答えられた。ちなみに能力は「人形を操る程度の能力」というらしい。そのため、「七色の人形遣い」と呼ばれているとか。それにしても、魔法使いだから可愛いのか、アリスだから可愛いのか、間違いなく後者だな。

 二人並んで歩きながら、引き続き幻想郷についてレクチャーを受けていると、

 

「あれ、アリスじゃないか? こんなところで何しているんだ?」

 

 上空からボーイッシュな女の子の声がした。見上げると、白と黒で構成された服と、黒い三角帽という、いかにも魔女スタイルの格好をした少女が箒に跨って浮いていた。

 少女の乗った箒がこっちに向かって降下してくる。彼女は「よっと」と着地し、こちらに向き直ると、ニカッと元気溌剌な笑顔を見せた。

「ちょうどアリスの家に行こうとしてたんだ。入れ違いにならなくて良かったぜ。ところで、そいつ誰だ?」

「魔理沙、彼はついさっき会った外来人なの。まだ幻想郷に来たばかりみたいだから、霊夢のところに行こうと思って」

 どうやら二人は知り合い、というよりは親しい友達のようだ。服装からしてこの娘も魔法使いなのだろう。背中に届くくらいの長さの、色の濃い金髪が特徴的だ。

「ふーん、そうだったのか。私は霧雨魔理沙、普通の魔法使いだ。アリスとは親友なんだぜ。お前は?」

「俺は天駆優斗。能力も無ければ空も飛べない、ただの人間だ。今はな!」

「ははっ! 前向きで面白い奴だな。よろしく頼むぜ、優斗。それで、博麗神社に行く途中だったんだっけ? なら私も同行するぜ! いいだろ、アリス?」

「ええ、魔理沙にも相談したかったし、丁度いいかもしれないわね」

「決まりだな!」

 自己紹介から話がトントン拍子で進んで、気が付いたら仲間が一人増えていた。まぁ、魔理沙もなかなかの美少女だし、俺は一向に構わないんだがな!

 魔理沙が自分の箒に再び跨る。そして自分の後ろのスペースをぽんぽんと叩いた。

「優斗、私の後ろに乗るといいぜ」

『え?』

 なぜか俺とアリスの声がハモッた。俺たちの様子に、魔理沙は怪訝そうな顔をする。

「飛んで行った方が早いだろう? 何か変か?」

「いや、そんなことはないが……大丈夫なのか? 定員数とか、安全面とか」

「心配すんなって! ほらほら乗った乗った!」

「お、おう。それじゃ同乗させていただきますか」

 道中振り落とされないことを祈りつつ、俺は恐る恐る後部座席に腰を下ろす。

 美少女と二人乗りとか、フツーならば嬉しいシチュエーションなんだが、何せ乗り物が箒というのが何ともシュールな上に、不安定そうで怖いぞ……

 そんな俺たちの様子を、アリスは複雑そうな顔で見ていた。

「……いいなぁ、魔理沙……」

 アリスが何か言っていた気がしたのだが、小声だったせいで俺の耳には届かなかった。

 

 

つづく

 




歌詞が全部英語の歌を、カラオケで熱唱できる人を見ると、スゲーなぁと思うと同時に羨ましく思ったりもします。アルファベットは苦手なんです……
一人カラオケは一度だけやったことがありますが、あまりの恥ずかしさに心が折れました!

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