その他、トーシロー。   作:ひょうきん者の使者

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主人公の高校での立場を薄っすらぼんやりとお送りします。


初登校でもない始業式。

私事からはじめて申し訳ないと思うが、これだけは言わせて欲しい。チューリップの歌(童謡)を使いたかった。これ程までに著作権に関する規制を恨めしく感じる日は後にないであろう。

 

byひょうきん者の使者

 

僕は中高一貫校に進学したこともあり、今日で高校生になる。

 

正直に言うと……新鮮味はあまりないね。

 

学校に着くと、見馴れた……見飽きた面子たちと新学期をこれから迎えようとする中高の新入生たちが校門の内側に入り乱れていた。

 

今朝、早起きはしたものの、食後にニュースを見ているうちに、七時代に起きた場合と同じ出立時刻になってしまっていた……あーあ。我ながらに上出来だ…………どこらへんが?

 

「おはようございます」

「あ、おはようございます」

 

玄関に立つ教師に音節のはっきりした挨拶を行った。教師もそれに応じる。

 

二ヒヒ……。

 

教師の横を通過して玄関内部に入ると、僕は笑を浮かべた。

 

この笑い方をする理由は何も自分にしっくりとくるからだけではない。

 

頬の形も舌の形も「ーy」の終着地の形にあり、頬が引き締まり、下の歯を隠して前歯のみを見せるという俗にいうところの「営業スマイル」や「アイドルスマイル」に最も近いからなんだよね~。

 

僕はそんなの似合わないから……じゃないんだよ、これが。イケメン爆散しろとか言って、クールを気取っている場合でもないんだよ。笑は男女関係なく、見知らぬ誰かとコミュニティを建設するためには必要なツール。「相手にとって」の「自分への敷居」を低く見せるためのツールなんだよ。

 

僕がこれに気づいたときには手遅れだったよ。僕の葬式はたぶん、数少ない関係者が行うかな、それとも警察の人かな、だとしたらお国に迷惑かけてるな……ハア。

 

 

それから、僕は今年、世話になった教室にてHRに参加した後、始業式のため講堂に移動したんだよね。

 

「なあ、校長の話、マヂ長くね? マヂ、ダリイ!」

 

「…………」

「タケくん、それ、マズイって。まだ間に合うから教室に置いてきたほうがいいって!」

 

「この平和な光景がずっと続けばいいのに」

 

「よ! 若葉。今日もかわいいね!」

 

 

銀色、青色、白色、金色が黒山の人ざかりのなかに浮いて見える。そうでない人でもあからさまに幼馴染同士の付き合いといった様子の二人組も見受けられる……何だか面白いな、見ている分には。

 

 

____転生者の中には髪の色を指定する人や、特典の内容により髪の色が決定される人もいます。どの特典を取るかに関わらず、知っていて損はないでしょう。

 

受付の人もそう言っていたっけ。そんなことで、彼らは転生者である可能性が高い候補ということになる。

 

因みにこれが初対面ではない。彼らもクラスは異なれど、僕と同学年にいる。

 

 

その誰を見ても整った容姿や、凄みをもっていて、確認はできないけれど、それぞれが凄い特典を持っていそうに感じる……というよりも、オフの日にオートバイを転がすというノリで強力な特典をブン回しに来た気がしてならないくらいに、その容姿が娯楽とカブキに富んでいた。

 

実際、他の転生者たちはこれほど近くにいるわけだけれども、中等部での三年間、増してやそれ以前の人生においても、僕には転生者と関わりになる機会すらなく、何故か比較的に無事に過ごしてこれたんだよ。不思議なんだな。

 

 

それは何故か。確信はできないけど、考えてみると、色々と心当たりがあるんだよ、コレが。

 

僕も一応その転生者に当たるけどさ、彼らと比べれば天地……というよりも野良柳とその隣にある高級盆栽の差なんだよね~。

 

金銀赤白青そしてグレイと、カラータイプに富んだ彼らの髪に対して、僕はと言えば、日本人にありがちな黒い髪、髪型もワックスを使わず、馴染みのパーマ屋で切った面接ヘアである。

 

これは僕の呼び方であって、面接で好印象な、ほどよい短髪くらいに思ってくれたらいい。

 

また彼らは武道をやっていて身が引き締まっていたり、そうでなくとも細マッチョと俗に言う(若い)人受けがいい体格であったりする。

 

これは、思い立ったら腹筋と腕立て伏せを偶にやって、次の日には忘れている僕とは大違いだな。

 

いやあ、感服、感服……僕? 僕は一時期だけ筋トレが続いたけど、今じゃ衰弱気味。生前からの身体を動かす感ならあるけど。主に歩行姿勢や、ラジオ体操、ストレッチ(オリジナル)で培ったものに限られる。体格もやや痩せ気味な中肉中背である。

 

つまるところ、偶然にも容姿も体力も凡庸、故に転生者たちに感づかれなかったというわけだ……全然、凄くないぞ、ハハハ!

 

 

今の笑は何か。それはいわゆる緩衝剤であり、エンジンの空吹かし。バラエティー番組を見てご覧なさい。弄られたタレントがその直後に共通してやる動作を。

 

皆一様に大袈裟な高笑いや大口を開けた朗らかな笑を漏らすどころか放射するでしょう。あれは一番無難でかつ、気分を持ち直す最善の方法なんだよ!笑う動作や発声で筋肉が解れ、心が落ち着く。

 

何よりも、笑っている自分が心に見える人は、苦境に強い!

 

……生きていて切に思うことがあったよ。

 

 

 

 

やれ、ヒロイン奪取や。やれ、俺がオリ主だ、モブは引っ込めとたまに喧しい転生者たち。

 

そんな彼らとは違い、僕は頭髪の色、顔のつくり、そして恵まれた、もしくは根気強く築かれている肉体も持たず、「神野煜(ライト)」や「白銀 護」と言った俗に言うDQNネームでもない。故に、大衆に溶け込むようにしてのほほんと学生ライフを満喫している。

 

え、名前?

 

転生特典の企画開発側が決めるらしいよ。僕の場合は、ミサキさんに引き取られる前に養護施設に拾われたことがあり、その時に当時は赤子だった僕が入っていた使い古しの百目籠(何故か趣向が渋い)に一緒に添えてあったらしいよ。

 

 

式が始まると、前年の出来事の総まとめに始まる今年の学年への期待、それから時勢や日頃の出来事や予定の行事から教訓や指示といった指導で結ぶ教諭の話。

 

指導教官による規律の確認、風紀指導の念押し。

 

始業式はこういった内容が続いた。

 

退屈かそうでないかに関わらず、たとえ恒例の話題でも何を話すかが聞いてみないことにはわからないので、結局最後まで聞いてしまうのが私である。

 

おい……あいつメモしてるぞ。真面目すぎwwww。

 

ハニーボイス(男子)が聞こえてきたけど、私はいつも持ち歩くぺら紙(下書用)に話題の見出しをとっていた。

 

ふと見れば、金髪のイケメン男子生徒がこちらにキラン☆とウィンクを飛ばすところだった。どうやら僕は彼に嘲笑われたのかな?

 

__キミ、あのねえ。

 

ぐわしィィィ!

 

仕方なく僕はその「七色に輝く飛来物」を掴み取ると、囓りィィッと口に放り込んだ。

 

僕は味のしないそれをムシャリムシャリと食みながら思った。六年間増してや生きている間、彼らのような転生者たちとの縁は出来なかったわけだ。今年も大丈夫さ、きっと。

 

そう思っている自分がその時まではいた。

 

入学式、始業式が順に済むと僕は人の流れに乗って、教室に向かった。張り出してある座席表を確認した。

 

自分の位置がわかると、そこへ荷物を移動させた。両手に荷物を持って、横、失礼します、後ろ、失礼します、と断りを入れたり、階段をぞろぞろ百足の如く並んで上がったりで、作業が終わり、息を吐くその時まで僕はあたりを伺う暇さえなかったわけだが。

 

「お、若葉。席、隣か。よろしくな!」

 

つい最近聞いたことのある声に振り返ると。

 

ボサボサヘアな金髪の男子生徒が、短髪の女子と談笑していた。

 

「タケくん、また一緒のクラスだね」

「そうみたいだな」

 

そして、あちらにいるのはつい先ほど見てしばらくと経たない無愛想な男子生徒とその幼馴染だ。一緒になれたね、おめでとさん。取り敢えず、特に言うことなし。

 

「うるさいなあ……早く世界が滅びたらいいのに」

 

そこの眼帯したキミ、とりあえず、あと百年待ってみようか。きっといいことあるって。

 

「今年こそ……」

 

ん、なんか右の方で男子生徒が呟いている。

 

「今年こそ、ハーレム作るぞ!」

 

「「絶対作るぞって、あア⁈」」

 

銀髪くんと赤髪くんが互いに牽制を始めた。雄たちは生存競争において障害となる可能性のあるものに対しては、容赦がない。

 

大自然ナ◯ョナル・ジ◯グラフィックは他所でやって欲しい。

 

他にも、何やら宙に視線を飛ばしているカラー髪の生徒や机に伏しているやる気のない生徒とかが目に付く。

 

「んー。今年は厄年だったっけ?」

 

えんへらへら。

 

 

 

 




違和感があると思われた語尾を一部訂正。

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