双子の心と秋の空   作:蒼奈涼音

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第十一話「負けたくないから」

 

 

 

 

第11話

 

「負けたくないから」

 

 

 

 

春との再開から早数日…。

 

 

 

 

柚瑠の練習態度は目に見えて変わった…練習に集中するようになり、練習で周りが見えていない時も多々あった。

 

幸村は不思議に思い「この頃随分真面目に練習してるね」と柚瑠に声をかけるが柚瑠は「悪ぃかよ」と吐き捨てすぐに練習に戻ってしまう。

 

 

そしてその日の部活も何事もなく終了した。

 

 

切「やっと終わった〜」と切原が思いっきり伸びをする。

 

丸「今日は早く終わったし、ラーメンでも食いに行くか」

 

切「えっ!!!もしかして奢りッスか!!丸井先輩!!!!」と期待に目を輝かせる切原に丸井は得意げに「あぁ、奢ってやるぜ………ジャッカルが」とジャッカルを指差した。

 

ジャ「おいオレかよ!!!!!………って聞いてねぇし…」と肩を落とすジャッカル。

 

切「小向先輩もどうッスか?」と切原は柚瑠にも声をかけた。

 

どうやらこのところ真面目に練習している柚瑠を見て恐怖心はうすれたようだ。

 

「卵の奢りかーそりゃいいな…って言いたいとこだけど、悪ぃな。オレ、これから用があんだよ」

 

切「そうなんスか?」

 

「そうなの。ほら、早く行かねぇと置いてかれるぞ」と柚瑠は丸井とジャッカルを指差す。

 

切「あ!!!じゃあ小向先輩お疲れ様でした!!!!!丸井先輩待って下さいよ〜!」と切原は慌しく走って行った。

 

 

そんな切原を見送った後…「さて…行くか」と柚瑠は学校付近にあるストリートテニス場に向かった。

 

 

壁打ち、スマッシュ、サーブ、ボレー、ロブと独自に考えたメニューで練習していく柚瑠…。

 

 

「まだだ…まだ足りねぇ…」と独り言を呟いた時だ!!!!!

 

 

?「随分、練習熱心だな」と声がした。

 

「そりゃあ、まぁ……って…ん?」と柚瑠が声のした方を振り向くと.....。

 

「糸目!!!!何で!!!!!」

 

そう、そこには柳蓮二が立っていた。

 

柳「柳蓮二だ(苦笑)オレは自主練だ。お前もか?」と柳は足元に転がっていたボールを拾う。

 

「てめぇに関係ねぇだろ?」

 

柳「関係はあるな。練習試合前に無理をしてコンディションを崩す恐れがある」

 

「んなヘマしねぇっつの」と吐き捨てた後、柚瑠は「…弟相手に負けたくないからな。ブランク埋めねぇと」と呟いた。

 

そんな柚瑠に柳は「それならば…壁とより…人とやった方がだろう?」と提案をする。

 

柚瑠は少し驚いた様に目を見開き「ほぉ、オレとやるってか?」とニヤリと笑った。

 

柳「お前とは一度ゲームをしてみたかった」

 

「はっ、後悔しても知らねーぞ」と二人はコートに入る。

 

試合は1セットマッチ…現在は柚瑠がリードである。

 

「どうした糸目!!!!!お前の実力はこんなもんか!!!!」と柚瑠が柳のサーブを返すと柳は「いや、お前のデータはもう取れた」とその打球 を強く返した。

 

「だから何だよデータって!!!!」と柚瑠は絶妙なボールコントロールで球の威力を殺し、打ち返した。

 

(よし、あの球なら返せない)と柚瑠が思った矢先にその打球は返された。

 

柳「言っただろう?データは取れたと…」

 

それから柳は点を詰めていきとうとう同点まで追いついた。

 

ゲームは柳のサーブから始まる…。

 

柳がサーブをあげると柚瑠はため息をついて即座にラケットを持ち替えた。

 

柳「!!!」

 

左の空いたスペースに打球を叩き込む。

 

 

 

 

「誰が右利きって言ったよ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オレは左利きだ」

 

 

柳「サウスポーか…なるほど、面白い」と柳が次のサーブを打とうとした時だ!!!!!

 

 

 

 

ポッ…

 

 

ポツ…

 

 

ポツッ…

 

 

と突然雨が降り出し、試合は中止を余儀なくされた。

 

二人は近くの橋の下で雨宿りをする。

 

「雨とはついてねぇな〜傘もってねーよ」とボヤきながらも柚瑠は柳に「でもお前のお陰で大分試合の感覚思い出してきた。付き合ってくれてサンキューな。これで練習試合は大丈夫だ!」と柳に礼を言う。

 

柳「弟に負けたくないか」

 

「当たり前だ」

 

柳「負けず嫌いだな(苦笑)ところで…ブランクというのは……どのくらいあったんだ?」と柳が聞くと柚瑠は「ん?そうだな…5年くらいかな?」とサラッと言いのけた。

 

柳「!!!」

 

思わず開眼する柳。

 

「やめろって!!!!目ぇ開けんじゃねぇよ!!!!怖いって!!!」とツッコむ柚瑠。

 

柳「そうか?」

 

「そうだよ。やめろよな(−_−;)あ、スポドリ飲むか?二本あるから一本やるよ。礼だ」と柳にスポーツドリンクを投げよこした。

 

二人の間に沈黙が走る…雨音はだんだんと強くなっていく…。

 

柳「小向…」とそんな沈黙を破ったのは柳だった。

 

柳「お前はなぜ…テニスをやめたんだ?」と柳が聞くと柚瑠は「張り合いがある奴がいなくなったから…ただそれだけ」と呟いて残りのスポーツドリンクを飲み干した。

 

柳「張り合い?」

 

「そ、本気でやり合える奴がいなくなった。で、テニスをやる意味がなくなった訳だ」

 

柳「なるほど…ならば聞こう。今お前がテニスをやっている意味とは何だ?」

 

「今テニスをやっている意味……ねぇ……

 

 

 

楽しいからじゃないかな…」

 

柳「楽しい?」

 

「何つーか…テニス部の連中って何気に強いし試合してても飽きねーんだよ。だから楽しい。それが今オレがテニスやってる意味だし理由だと思う」

 

それを聞いて柳は「そうか」と微笑んだ。

 

そんな柳を見て柚瑠は「か、勘違いすんじゃねーぞ!!!!あくまでお前らのテニスの腕を買ってるんだからな!!!!!魔王とかおっさんとかに言うんじゃねーぞ糸目!!!!!」と全力で否定した。

 

雨の中…時間は穏やかに過ぎていった。

 

 

to be continued




お待たせしました11話です!!!

柚瑠君にとってテニスとは何かと考えながら書きました。
話として成り立っているか心配ですか楽しんでいただけてるでしょうか?

もし楽しんでいただけているのなら嬉しい限りです。

ご意見、ご感想、ご質問などがありましたら遠慮なくお書きください。

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