Fate/last night《完結》   作:枝豆畑

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お久しぶりです

謝罪に関しては後書きで

それではまず本編をどうぞ


第七話 苦悩

 

「ほう…私のことを知っているのか」

 

__あぁ、嫌と言うほどにな

 

「建物をこうも派手に爆破するとは…常識を弁えてほしいものだ」

 

キャスターは一人話す言峰を睨み続けた。

 

「なに、別に私はお前に用はない。単刀直入に言おう__お前のマスター、衛宮切嗣はどこにいる?」

 

「…」

 

「答えぬか…だがこれでお前のマスターは衛宮切嗣であるというのは間違いないようだな」

 

「フン、敵を目の前にしておきながら随分と口が達者なものだ。」

 

キャスターは双剣を構えた。

 

「…願わくば、今ここでサーヴァント同士の争いは避けたいのだが」

 

「先に仕掛けてきたのはそちらのほうだろう。ところで言峰綺礼、貴様は何故それほどに衛宮切嗣に固執する?」

 

綺礼はゆっくり瞼を閉じた。

 

「私は己の求めるものが何なのか、いや己が何なのかすら分からない。かつての衛宮切嗣は私と同じ迷い人だった。だがやつは、アインツベルンで何かを得た。故に私は問いたいのだ。お前は、そこで何を得たのかを」

 

キャスターはそれを聞くと鼻で笑った。

 

「何がおかしい__!」

 

「とんだ勘違いだな。衛宮切嗣と貴様とでは天と地ほどの違いがある。」

 

「なん…だと…?」

 

「貴様の願いを叶えるなら、それこそ聖杯を求めるべきだろう。ま、そうはさせんがね」

 

「お前は、私の何を知っているというのだ!」

 

「なにもかも知っているさ。嫌と言うほどに」

 

(なにを…言っているのだ…!?)

 

キャスターは構えた剣を投じ、一番近くにいたアサシンを切り捨てた。

 

「戯れはここまでだ。私も倒せる敵を前にして見逃すほど甘くはないのでね」

 

「まてキャスター、私の質問に答えろ!」

 

瞬間、言峰綺礼にキャスターが矢を放った。だがそれは一人のアサシンの犠牲により防がれた。

 

「ッチ、数だけは一人前だな」

 

再びキャスターは矢をつがえる。

 

「綺礼様、ここはひとまず撤退しましょう。他のアサシンが時間を稼ぎます。」

 

女型のアサシンは綺礼の返事を聞く前に綺礼を抱えビルを飛び降りた。

 

「…っ!」

 

(いつか、必ずまた__!)

 

綺礼は抱えられ飛び降りる際、キャスターと目があった。

 

その目は、かつての衛宮切嗣と同じ目だった。

 

 

 

 

 

 

 

ことを後に、綺礼は教会の私室の扉を開いた。そこには、己の師のサーヴァントたるアーチャーが寝そべっていた。

 

「なにをしているのだ、アーチャー」

 

「なに、退屈しのぎに来たまでよ。時臣めはつまらない男でな。それに、弟子の酒のがなかなかのものが揃っているではないか」

 

クツクツと笑いながらアーチャーは答えた。

 

「…アーチャー、お前は聖杯に何を望む?」

 

「…ふん?」

 

質問を受けると、アーチャーは興味が湧いたのか体を起こし、ワイングラスから綺礼へと視線を移した。

 

「なぁに、特に願いがあるわけではない。ただそこに財宝があるならば俺のものだというだけだ。それよりなんだ綺礼、聖杯に興味でも湧いたのか?」

 

「…私は、自分の望みがなんなのかわからない。だがキャスターが、聖杯を手にすれば分かると言ったのだ。そして衛宮切嗣と私は違う人間だとも」

 

「ほう…?なるほど確かに聖杯があらゆる願いを叶えるならば、その程度の望み簡単に叶えるだろう。むしろ釣りがくるほどだろうよ。だがいいのか綺礼。お前が聖杯を求めるということは、師である時臣への裏切りということでもあるのだぞ?」

 

「…」

 

綺礼はそれに対して無言で返した。だがその言葉のない言葉には、苦悩で満たされていた。

 

「フハハハハ!良いぞ綺礼、貴様には興味が湧いてきたぞ?その苦悩の行く末、我が見届けてやろうではないか!」

 

そう言うとアーチャーはグラスの中を空にし、長椅子から立ち上がった。

 

「また来るぞ綺礼。我もお前の求めるものとやらは分かる。だがそれは己で聖杯をつかみ、己でその身をもって知るがいい。その時が来るまで、俺は俺の好きなようにやらせてもらうとするか」

 

そう告げると、アーチャーは黄金の粒子を纏いながら霊体化した。

 

言峰綺礼は思う。真に答えを知るべき男はアーチャーではないと。だが、それは衛宮切嗣でもないだろう。己が真に問うべき男はあの紅きサーヴァント、キャスターなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その廃工場に、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトはいた。

 

「おのれアインツベルンのドブネズミめ…!」

 

自分が聖杯戦争における工房としていたハイアットホテルの爆破。こんな魔術の秘匿からかけ離れたことをするのはあのアインツベルンの雇われマスター以外にいるはずがない。

 

「…ふん、だがまぁいい」

 

たしかに工房は爆破され、持参してきた魔術礼装のほとんどもそれに巻き込まれてしまった

。だが、ケイネスが真に頼りにしている最強の魔術礼装『月霊髄液』は未だ健在である。ケイネスたちが爆発に巻き込まれることなくこうして生きているのも、この『月霊髄液』があったおかげなのだ。

 

「…ランサー、出てこい」

 

「…は、お側に」

 

「標的はアインツベルンだ。明日にでも奴らの根城に仕掛けるぞ」

 

「承知しました、我が主よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶりね、キャスター」

 

「あぁ、まぁそんなに日は経ってはいないのだがね」

 

町の郊外の森にあるアインツベルン城では、今朝到着したアイリスフィールを加え四人が集まっていた。

 

「つまり切嗣、当分の方針としてはこの城に攻め込んできたマスターの排除ということで間違いないのだな?」

 

切嗣は城の地図を眺めながら答える。

 

「あぁ、そのほうがやりやすいからね。少なくとも、ランサー陣営…つまりケイネス・エルメロイ・アーチボルトたちがもしも生きていたら、仕返しするために間違いなく僕たちを最初の標的にするはずだ。早ければ今夜にでもね」

 

「なるほどな、だがアイリスフィールたちはどうするのだね?」

 

「あぁ、アイリにはこの森に敵が来たら知らせてもらうためにまだここに残っててもらう。その後は舞弥と一緒に用意してある別の拠点へと城の裏から逃げてもらう。それよりもキャスター、この視界の悪い森ではお前の弓は不利になるが…」

 

「いや、問題ない。それに関してはこちらでなんとかするさ。私は城の外で敵サーヴァントの相手を、マスターは城内で敵マスターの相手をすればいいんだろう? 」

 

「あぁ、そういうことだ。ほかに質問がなければとりあえず会議はここまでだ。」

 

 

 

 

 

 

 

部屋には、アイリスフィールと切嗣だけが残っていた。

 

「ねぇ切嗣…」

 

アイリスフィールは外を眺める切嗣に声をかける。

 

「アイリ、僕は逃げないよ」

 

その言葉にアイリ少し驚いたが、同時に安心した。

 

「僕はなんとしてでも聖杯を手に入れる。そして僕の理想を実現させる。」

 

「えぇ、貴方なら必ずできるわ。そしたらあの娘を…城に残されたイリヤをお願いね…?」

 

切嗣はそれを聞くと振り返ってアイリスフィールを強く抱き締めた。

 

「あぁ、必ず僕たちのイリヤを迎えに行くさ…必ず…」

 

そうして切嗣はアイリスフィールにそっと口付けをした。

 

 

 

 

しばらく時間が経ち、アイリスフィールの魔術回路に森の結界の術式の異変が伝わってきた。

 

「切嗣…!」

 

「…来たか」

 

切嗣の表情はかつての魔術師殺しの顔つきに戻っていた。

 

「それじゃあ行ってくるよアイリ…」

 

「えぇ…いってらっしゃい、切嗣…」

 

 

 

__こうして、聖杯戦争のさらなる戦いが幕を開ける

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうもお久しぶりですそしてごめんない

予定よりも更新が大分遅くなってしまいまことに申し訳ありません

思っていたよりも用事が長引いてしまいまして汗

おそらく今後も複雑な予定が続いてしまっているので、更新も不定期になるかと思います

ですが必ず完結はさせます。というかしたいんです。

皆様には大変迷惑をかけてしまうことと思いますが、どうか今後もlast nightをよろしくおねがいします

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