Fate/last night《完結》   作:枝豆畑

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おひさしぶりです




どぞ


第二十一話 光

轟と音をたて、聖剣の一撃がライダーへと襲いかかる。

 

だが、その時だった。

 

「AAAALaLaLaLaLaie!!」

 

「──!!」

 

王の軍勢の右翼側が、ライダーとウェイバーの前へ乗りだし──

 

「──ぁ」

 

その黒い暴力に呑まれた。

 

「ふんっ!」

 

だがその一瞬、兵たちが聖剣に呑まれるその一瞬に生じた僅かな隙に、ブケファラスは聖剣の範囲から脱する。

 

「うぅわっ!」

 

ブケファラスの大きな跳躍に、ウェイバーは声をあげる。

 

そして自分たちが数秒前にいた場所を振り返り見る。そこは、聖剣の一撃により焦土と化し、その横にいた多くの兵士たちの姿は無く、その全てが消滅したことを示すように魔力の粒子が散っていた。

 

「…間一髪だったな」

 

ブケファラスの手綱をとりながら、ライダーが言った。

 

「間一髪だったって…お前…」

 

ウェイバーが声を震わせながら、焦土と化した場所を指差した。

 

「みんなが…お前の仲間が、僕らのために…」

 

誰かを守るために、自らを犠牲にする。ウェイバーはそれを目の当たりにした。王の軍勢により喚ばれた兵士は皆過去の英雄である。つまり過去に既に死んでいることに違いはない。その事実をウェイバーは頭の中では理解しているが、目の前で誰かが死ぬことが、ましてや自分たちを守るために犠牲になったという現実に、ウェイバーは恐怖で体が震えていた。

 

「ウェイバーよ…」

 

ライダーが口を開いた。

 

「王とは獰猛で、残忍で、己の野望のためならば如何な犠牲をも問わぬ…例え、それが大切な余の臣下(盟友)であってもな」

 

「そんな…!」

 

「だがそれでも、こやつらはその事実を受け入れ、余の臣下として共に駆け抜けてきたのだ。余について来たやつらはそんな馬鹿どもばかりだ…だからこそ」

 

「……」

 

「だからこそ、命を懸けようという余の臣下たちの意気込みに、報いてやらねばならん」

 

ライダーは騎士王に向かって叫んだ。

 

「なぁ騎士王よ。貴様の自慢の騎士共は、貴様のために命を捨てられたか?」

 

 

 

 

 

「…」

 

征服王の質問に対し思考する。

 

騎士達は、自分のために命を捧げてくれただろうか。

 

もちろん、王のためにとその身を犠牲にしてくれる騎士もたくさんいただろう。

 

だが、全てがそうとは騎士王は思わなかった。

 

─もしも自分が生前、征服王のような暴君だったらどうだろう?

 

─自分の理想を、騎士達と共に追いかけることができたならば?

 

「─国は、滅びなかった」

 

騎士王は聖剣を構え直した。

 

「世迷いごとだ…!」

 

再び、聖剣に膨大な魔力が帯びる。

 

騎士王は、自分が苛立っていることに気付いた。そしてそんな自分に怒りを覚える。

 

「来るがいい、征服王」

 

騎士王の怒りはそのまま魔力となる。

 

「──"約束された"」

 

轟と音をたて、再び聖剣が黒く輝く。

 

「"勝利の剣"──!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは…固有結界」

 

セイバーが口を開いた。

 

「これが…キャスターの心象風景なの…?」

 

アイリスフィールは、自分の頬に涙が伝うのを感じた。

 

「なんて…寂しい…」

 

キャスターのこの孤独な世界に、アイリスフィールは涙を流したのだ。

 

──無限の剣、迸る炎、空には巨大な歯車

 

──この世界の支配者たるキャスターは、剣に囲まれながら佇んでいた。

 

「…その通りだ」

 

閉じていた瞳をゆっくりと開くと、キャスターは言った。

 

「一人の男が、ただひたすら走り続けたどり着いた世界」

 

ゆっくりと、キャスターはセイバーへと歩み寄る。

 

「貴殿は…一体…」

 

「…フン、君はそればかりだな」

 

キャスターは皮肉気な笑みを浮かべる。

 

「貴殿は私のことを心まで見透かすかのように知っている。なのに私は貴殿のことが何一つわからない…」

 

「…そうだろうな。ただ、君は分かりやすい」

 

キャスターは手をかざした。すると、それに連れられるように地面に突き刺さっていた剣が宙へ浮かぶ。

 

「…!!」

 

剣軍はセイバーへと刃を向けた。

 

「往け…!」

 

キャスターの号令と共に、剣の雨がセイバーへと降り注ぐ。

 

「…!!」

 

セイバーは剣を構え、それらを弾く。

 

「っく!おぉぉぉぉっ!」

 

その数えきれないほどの必殺の数々に、セイバーは神速で対応し続ける。

 

「──はっ!」

 

そして最後に、身の丈程の巨大な剣を殴るように弾き飛ばすと、キャスターもほう、と声を漏らした。

 

「見事だ。流石は湖の騎士といったところか」

 

そしてキャスターは一本の剣を出現させ、先程と同じようにセイバーへと放った。

 

「っ!?」

 

セイバーはそれを弾いた。しかし弾かれて足元に落ちたその剣を見て驚愕する。

 

「これは…"無毀なる湖光"(アロンダイト)!?」

 

キャスターの放った"無毀なる湖光"は静かに消滅した。

 

「その通り。今私が放ったのは君の剣の"贋作"だ」

 

「なんだと…?」

 

担い手であるセイバーには分かる。キャスターが贋作と呼んだ今の剣が、限りなく真に迫っていることを。

 

「宝具の贋作を作り出すなんて…そんな…」

 

アイリスフィールも驚愕する。宝具とは、その担い手である英雄を英雄たらしめる象徴。そのオリジナルに限りなく近い贋作を作り出すということがいかに規格外であることか。

 

「では…ここにある剣も全て…」

 

「あぁ、私が作り出した幻想に過ぎん」

 

セイバーは剣を構えた。

 

「たしかに…これほどにまで真に迫った物を作り出すことは賞賛に値するでしょう。しかし、貴殿が私に見せたかったのは、ただの貴殿の幻想という訳ですか…?」

 

セイバーは言った。

 

「…たしかに、ただの幻想かもしれん」

 

「──っ!!」

 

セイバーは剣を握り直し、必殺の構えをとる。

 

「だがその幻想の中にも、答えはある」

 

「──?」

 

キャスターとセイバーが立つ間に、魔力の粒子が集まり形を成す。

 

「そ…そんな…それは…!!」

 

それは剣となり、姿を現した。

 

墓標の如く突き刺さる剣の中で、一際強い輝きを放つ黄金の剣。

 

「…それは…それは王の…!」

 

「…"勝利すべき黄金の剣"(カリバーン)。かつて騎士王の失われた剣」

 

キャスターは黄金の剣に近づくと、それを地面から引き抜いた。

 

「…何故、貴殿がそれを…!」

 

「…」

 

キャスターはセイバーの問いに応じること無く、剣を構える。

 

「っ!!」

 

セイバーも剣を再び構え直す。

 

「…だが、それも貴殿の幻想に過ぎない…!!」

 

セイバーは言った。

 

「その通りだとも。この剣も、私の作り出したものだ。だが侮るな湖の騎士、これは私一人が作り出したものではない」

 

「…!?」

 

「来い!サー・ランスロット!」

 

キャスターの持つ"勝利すべき黄金の剣(カリバーン)"が、その輝きを増す。

 

「っ!!はぁぁぁぁぁ!!」

 

セイバーも、"無毀なる湖光(アロンダイト)"に己が最大の魔力を籠め、必殺の一撃を放つべく駆け出した。

 

「おぉぉぉぉぉ!!」

 

キャスターも駆け出し、二人の間合い一瞬にして詰められる。

 

膨大な魔力が渦となり、二人を囲った。

 

互いの宝具のレンジに互いが踏み込み、真名を解放する。

 

「──"無毀なる(アロン)"」

 

「──"勝利すべき(カリ)"」

 

「──!!」

 

その時、セイバーはキャスターの剣が放つ光の中で、それを見た。

 

──"勝利すべき黄金の剣(カリバーン)"を握るのは褐色の紅き武人ではなく…

 

(あぁ…)

 

──赤毛の少年と、その横にいるのは

 

(そうですか…)

 

──かつての、騎士の王

 

(それが、貴方の得た答えなのですね…)

 

「──"黄金の剣(バーン)"!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無事か、坊主」

 

ライダーに声をかけられ、ウェイバーはゆっくりと目を開いた。

 

左翼の軍勢は、右翼同様ほぼ壊滅していた。

 

「騎士王のやつめ、鼻から兵を狙ってきおったわい」

 

苦々しげに、ライダー言った。

 

「また、仲間を随分と死なせてしまったな…」

 

いつもの覇気とは程遠く、ライダーは呟いた。

 

ウェイバーは腕にある令呪を見た。

 

(これを使えば、もしかしたら騎士王を倒せるかもしれない…)

 

しかしそこで、先日のアーチャーとの戦いが頭を過る。

 

(失敗したら、今度は本当に…でも)

 

「ライダー、令呪を使おう」

 

ウェイバーは令呪をかざした。

 

「…アーチャーのやつの時と同じようにやるつもりか?」

 

ウェイバーは黙った。失敗したら死ぬ。それは互いに分かっていた。

 

「ふん…見違えたぞ坊主。それが意味することを分かっていながら、なお恐れぬか」

 

「馬鹿言え。僕だって死ぬほど怖いさ。でも、これ以外方法がないんだよ…!」

 

ウェイバーの声は震えていた。

 

「あぁ、それでいい」

 

ライダーは笑った。

 

「え…?」

 

「…ミトリネス!」

 

ライダーが叫ぶと、一人の兵士が姿を現した。

 

「王よ」

 

ライダーは頷くと、ウェイバーの体をつまみ上げた。

 

「な、なにするんだよって、うわぁ!」

 

宙を舞い、ミトリネスと呼ばれた兵士に抱かれる。

 

「ライダー!どういうつもりだよ!」

 

馬を駆り並走しながら、ウェイバーは叫んだ。

 

「すまんなぁ坊主。余も心外この上ないんだが、仕方ないのだ」

 

「何言ってるんだよ!令呪を使えば…!」

 

ミトリネスの駆る馬が、ライダーから少しずつ遠ざかる。

 

「余はなぁ、もう、そんなあやふやな物で誰かを死なせるのは嫌なんだ…それに」

 

ライダーが微笑んだ。

 

「征服王たる余は、臣下との約束を守らねばならんのだ」

 

「臣下って…それに約束…?」

 

「"坊主を死なせやせん"とな、だから余は、今確実に守れるものを守る」

 

「!!」

 

そんな約束を、したかもしれない。いや、自分はあれをライダーの一人言程度にしか認識していなかった。

 

「勝手なこと言うなよ!おい!ライダー!」

 

前方には、再び聖剣を構える騎士王の姿が見える。

 

「生きろ、ウェイバー…!」

 

ライダーはそういうと、ブケファラスをさらに加速させる。

 

「待てよ…ライダー!!」

 

騎士王が宝具の真名を解放する声が響く。

 

次第に小さくなるライダーの姿に、ウェイバーは手を伸ばす。

 

しかし、一瞬空間が歪んだと思うと、気が付けば辺りは灼熱の砂漠ではなく、柳洞寺の境内の林の中だった。

 

ミトリネスはウェイバーに一礼すると、静かに消滅した。

 

ウェイバーは腕にあった令呪を見る。残された一画には以前のような力は無く、ライダーとの魔力のパスも感じられない。

 

「…ふざけんなよ」

 

ウェイバーの体は震えていた。

 

「僕が…もっと早く令呪を使っていれば…あいつだって!」

 

令呪の跡をウェイバーは握りしめる。

 

「僕は…何もできなかった…!」

 

その時、林の奥から人影が姿を現した。

 

「!?」

 

銃を構えたその人物は、ライダーではなかった。

 

「貴方は…ウェイバー・ベルベットですね」

 

その人物は髪を短めに切り揃えた目付きの鋭い女性だった。

 

「サーヴァントは…いないようですね」

 

「殺せよ…」

 

ウェイバーが口を開いた。

 

「ライダーはもういない。僕は負けたんだ。でも、それでも僕はマスターだ!お前、聖杯戦争の関係者だろ!?だったら、敵である僕を今殺せよ!」

 

ウェイバーは、自分がこんなに大きな声を出せるとは知らなかった。

 

「…それは、できません」

 

「…!!」

 

その女性は、銃を下ろした。

 

「指示により、私は今出来る限りの人を救うように命令されています。故に、貴方を殺すことは出来ない。ここは危険です。サーヴァントがいないなら、即刻に去りなさい」

 

女性はそういうと、再び林の奥へと姿を消した。

 

ウェイバーは急に足に力が入らなくなり、地面に膝をついた。

 

(生きろ、ウェイバー…!)

 

「…!!」

 

ライダーが最後に言った言葉が、ウェイバーの中で蘇る。

 

「死ねるわけ…ないじゃないか…」

 

地面に、涙がこぼれ落ちる。

 

「死ねるわけ、ないじゃないかよ…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……つ!」

 

ライダーは消滅し、固有結界は解かれた。

 

黒き騎士王は片膝を突き、息をあげる。

 

短時間における連続した宝具の使用。騎士王の魔力はほぼ無限に等しいが、それでも聖剣の解放には体に大きな負担がかかる。

 

騎士王は征服王と、その兵士たちの姿を思い出す。

 

それにかつての自分と、騎士たちの姿を重ね合わせた。

 

「…っ!!」

 

苛立ちを覚える。絶望に身を委ねたはずのこの身が、あのようなものでその心が揺らぐなどあり得ない。

 

「…!!」

 

その時、騎士王は突然飛来してきた()()を弾いた。

 

それは、宝具の原典。

 

「随分と顔色が悪いな、騎士王?」

 

黄金の粒子と共に、その男が姿を現す。

 

「いや、元からだったか?」

 

クツクツと笑みを浮かべ、英雄王が騎士王と相対する。

 

「黙るがいい、黄金…!」

 

騎士王は体勢を立て直すと、剣を構えた。

 

「フン、相変わらず気に食わんやつよな。そう死に急ぐな、貴様はこの我が手ずから始末してやる」

 

「は、傷つき逃げていった男が、よく喚く」

 

「戯け、あまり調子に乗るなよ雑種」

 

英雄王はそう言うと、なにやら歪な形をしたものを取り出した。それを空間に向けまるで鍵を開けるかのような動作をすると、膨大な魔力が溢れだした。

 

「さぁ、目覚めよエアよ…!」

 

英雄王は、空間から奇怪な形をした剣を取り出す。そして、エアと呼ばれたそれは、英雄王が構えると渦を巻くように刀身が回転しだした。

 

「…!!」

 

騎士王も聖剣を構える。なにより騎士王の直感が、あの剣の異常性を感知した。騎士王の聖剣に、膨大な魔力が纏う。そして英雄王の剣からも、回転がさらに加速し魔力が迸る。

 

「失せるがいい、雑種」

 

英雄王がそういうと、エアから赤い魔力の渦が溢れだした。

 

「──"天地乖離す(エヌマ)"」

 

騎士王の聖剣からも、黒き魔力が轟々と唸りをあげた。

 

「──"約束された(エクス)"」

 

「──"開闢の星(エリシュ)"!!」

 

──赤い暴風と

 

「──"勝利の剣(カリバー)"!!」

 

──黒き旭光とが、衝突した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうも、枝豆です

なんか3週間?くらいサボってしまいました。

いや、この期間も個人的に色々あったんですよ。

と話は本編へ


ライダー消滅。ちょっと今回は批判覚悟

なんかちょっとうーん、てなりますよねはい。冷や汗

とセイバーも地味にフラグ。銃を構えた女性はまぁいいやさん。

分かりにくくてすみません。

以下アニメ


!?

ランサーが、めっちゃ動いとる

バーサーカーが踊った!?←

イリヤそんなに強かったのん!?

いや、アニメ素晴らしい。

イリヤ髪の毛だけであんなことできたのか…

ア●ャ子ネタにされそう

…来週も楽しみですな!

あ、あと今後3週間更新が少し厳しいです。
まことに申し訳ありません
もう少し予定がはっきりしたら活動報告に載せますのでよろしくお願いします

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